???「エアコンは持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない、強力な空気調節装置なんですよ?」
???「機械は使わなきゃ...高い金払って買ったのは使うためでしょ?」
何奴?!?!??
ホロウ内部。
先ほどまで響いていたエーテリアスの咆哮は、いつの間にか消えていた。
静寂。
それを確認したアンビーは、周囲を見回す。
「……あの上級エーテリアスの声は、もう聞こえない。」
その言葉に、ビリーは大きく息を吐いた。
「よ、よかった……!」
「走りすぎて足の油圧ロッドが折れるかと思ったぜ!」
「あなたの場合、精神的な疲労の方が大きいと思う。」
アンビーは淡々と告げる。
「適度な休憩を取ることを提案する。」
そしてイアスへ視線を向ける。
「いい? プロキシ先生。」
アキラが同期したイアスはすでに近くの瓦礫へ腰を下ろしていた。
「もう横にならせてもらっているよ。」
「ちょうど、イアスを調整しなくちゃならないんだ。」
アンビーは頷く。
「了解。」
「プロキシ先生とビリー、それからムサシは休んでいて。」
「私が周囲を警戒する。」
「じゃあ、遠慮なく休ませてもらうぜ。」
ムサシがそう言った瞬間だった。
ソードストライクガンダムの装甲が、徐々に色を失っていく。
赤。
青。
白。
黄色。
鮮やかな色彩が消え、灰色の装甲へ変化する。
そして。
全身が光に包まれた。
次の瞬間。
そこに立っていたのは――。
巨大な鋼の戦士ではなく、一人の青年。
ムサシだった。
「うぉぉ……。」
ビリーが目を丸くする。
「戻った……。」
「ムサシって、もしかして知能構造体だったのか?」
ムサシは首を横に振る。
「いや。」
「俺はれっきとした普通の人間さ。」
「ただ……あの形態に変身できるってだけだ。」
その答えに、ビリーの目が輝く。
「かっけぇぇぇ!!」
「まるでスターライトナイトみたいだぜ!」
ムサシは苦笑する。
「そこまで大層なものじゃないさ。」
「あの姿の名前は――ストライクガンダム。」
「最強の兵器だ。」
その言葉に、ビリーはさらに興味を示す。
「ストライクガンダム……。」
「ああ。」
「だがあの形態は長時間維持できない。」
「体力をかなり消耗するし、フェイズシフト装甲を起動している間はバッテリーも消費する。」
「バッテリー?」
ビリーが首を傾げる。
「どういう仕組みなんだ?」
ムサシは自分の腕を見る。
「フェイズシフト装甲っていうのはな。」
「一定の電圧を流すことで、金属そのものに相転移――フェイズシフトを起こして、装甲を著しく硬化させる技術だ。」
「ミサイルや実体剣みたいな物理攻撃に対して、ほぼ無敵と言える防御力を発揮する。」
「そしてアクティブ状態になると、装甲があのカラフルな色に変化する。」
「なるほど……。」
ビリーは頷く。
「じゃあ、バッテリーが切れると?」
「その能力が使えなくなる。」
ムサシは説明を続ける。
「電力がなくなれば、装甲はメタリックグレーになる。」
「つまり、あのカッコいいカラーリングじゃなくなって、防御力も落ちる。」
ビリーが言う。
「ちゃんと弱点もあるんだな。」
ムサシがそれに答える。
「もちろん。」
ムサシは苦笑する。
「攻撃を受けるたびに電力を消費するし。」
「ガンダム自体はバッテリー駆動の機体だからな。」
「活動時間には限界がある。」
ビリーが納得したように言う。
「だから節約しながら戦ってるってことか。」
「そういうこと。」
ムサシは頷く。
「それに……。」
「フェイズシフト装甲はビーム兵器には弱い。」
「熱エネルギーによる攻撃を防ぐことはできない。」
ビリーは感心したように言う。
「そこまで詳しいとは……。」
「どうしてそんなこと知ってるんだ?」
ムサシは少し考える。
「俺自身の能力っていうのもある。」
「それに……。」
「なんというか。」
「頭の中に最初から情報が入っているんだ。」
「ガンダムのことも。」
「機能も。」
「戦い方も。」
ビリーは少し驚いた顔をする。
「なんかすげぇな……。」
「他にもガンダムの機能は色々ある。」
「でも、それはまた今度だ。」
ムサシは笑った。
「了解。」
ビリーは頷く。
「にしても、さっきは本当に危なかったぜ。」
「あの赤牙組のおっさんが、まさかあんな風に異化するなんてな。」
「店長が俺たちを連れ出してくれて。」
「さらにムサシがガンダムになって戦ってくれた。」
「おかげで助かったぜ。」
アキラは首を振る。
「いやいや。」
「プロキシとして当然のことをしただけだよ。」
ムサシも笑う。
「俺は恩を返しただけさ。」
アンビーが静かに口を開く。
「ニコのことだから。」
「節約のために自力で対処しろと言ってくると思っていた。」
「それがまさか……。」
「有名な『パエトーン』を探してくるとは。」
アンビーはアキラとムサシを見る。
「二人が来てくれなかったら。」
「私たちはエーテリアスの領地から脱出できなかった。」
「ありがとう。」
ビリーも笑う。
そしてしばらくビリーとアキラが話していたが。
その時だった。
アンビーの表情が変わる。
「……エーテリアスの声。」
「え?」
ビリーが固まる。
「はやくね!?」
「まだ横になろうとしてたところだってのに!」
アンビーは立ち上がる。
「すぐに撤退する。」
そして。
「でも。」
「ビリーが望むなら、ここで永遠に眠るのもいいかも。」
「来年のスターライトナイト新作ベルトを、あなたの墓前に供えてあげる。」
ビリーは震える。
「そういうこと真顔で言うなよ!」
「本気か冗談か分からなくなるだろ!」
ムサシは立ち上がる。
「移動しよう。」
アキラも頷く。
「三人とも、しっかりついてきて。」
アンビーは銃を構える。
「道中の戦闘は任せて。」
ビリーは笑う。
「もちろん!」
「でも、戦いが長引いたら――。」
ムサシは拳を握る。
「もちろん手を貸すさ。」
「頼もしいぜ!」
再び光がムサシを包み込む。
そして。
そこに現れたのは――。
ガンダム。
しかし。
ビリーはすぐに違和感に気付いた。
「あれ?」
「さっきと違わないか?」
ムサシは頷く。
「言い忘れてた。」
「ストライカーパックは、一度使うとしばらく再使用できない。」
「えぇ!?」
ビリーが叫ぶ。
「じゃあどうやって戦うんだよ!」
ムサシは腰へ手を伸ばす。
「これがある。」
取り出されたのは、小型のナイフ。
「え?」
ビリーが呆ける。
「ナイフ?」
ムサシは笑う。
「電源内蔵型、高周波振動ナイフ。」
「アーマーシュナイダー。」
「ストライカーパックが使えない時や、エネルギー残量が少ない時の緊急用装備だ。」
ムサシはナイフを構える。
「まあ……。」
「ないよりマシだろ。」
「HAHA。」
ビリーは苦笑した。
こうして。
剣は再び歩き出す。
その手に握られていたのは。
巨大な剣ではなく。
一本の小さなナイフだった。
---
ホロウ内部。
三人と一匹は、出口を目指して走り続けていた。
「右!」
アンビーが叫ぶ。
次の瞬間、瓦礫の影からエーテリアスが飛び出した。
「来る!」
ビリーが銃を構える。
しかし、その前にムサシが一歩前へ出た。
「任せろ!」
ガンダムの姿となったムサシ。
しかし、今の彼の手にあるのは巨大な対艦刀ではない。
一本の小さなナイフ。
アーマーシュナイダー。
「そんな小さい武器で大丈夫なのか!?」
ビリーが叫ぶ。
ムサシは笑った。
「武器っていうのはな。」
「大きさだけで決まるものじゃない。」
迫るエーテリアス。
その攻撃をムサシは紙一重でかわす。
そして懐へ入り込む。
「そこだ!」
高速振動する刃が、エーテリアスの装甲を切り裂く。
巨大な身体が揺らぐ。
その隙を。
ビリーは逃さない。
銃撃。
正確な射撃が弱点を貫く。
エーテリアスは黒い粒子となって消滅した。
「ナイス連携!」
ビリーが叫ぶ。
「ガンダムにナイフってのも意外と絵になるな!」
ムサシは苦笑する。
「褒めてるのか、それ?」
「もちろん褒めてるぜ!」
「スターライトナイトにも秘密兵器回とかあるからな!」
「……そういうものなのか。」
ムサシは少し納得したように頷いた。
しかし。
次から次へとエーテリアスが現れる。
一体。
二体。
三体。
「数が多い。」
アンビーが冷静に分析する。
「でも。」
「進むしかない。」
「だな。」
ムサシはアーマーシュナイダーを握り直す。
「行こう。」
「みんなで帰るぞ。」
三人と一匹は、ホロウの奥へ進んでいく。
---
しばらくして。
「店長!」
ビリーが叫ぶ。
「次はどの方向に行けばいいんだ?」
イアスを通じてアキラへ問いかける。
すると。
「全速力で直進だ!」
返ってきた答えは、あまりにも単純だった。
「了解!」
ビリーは頷く。
「全速力で直進!」
しかし。
その言葉を聞いたムサシが呟く。
「……待てよ。」
「直進だと!?」
「ん?」
ビリーが振り返る。
「どうした?」
ムサシは前方を見る。
そこには――。
巨大な壁。
「けどよ。」
「この先、壁だぜ?」
「破れってことか?」
「今の火力じゃ、流石にキツイと思うが……。」
すると。
通信越しにリンの声が響いた。
「心配しないで。」
「お兄ちゃんの言う通りにすれば大丈夫だから。」
ビリーが驚く。
「もう一人の『パエトーン』!」
「その言葉、信じるぜ!」
リンは続ける。
「知っての通り。」
「ホロウの中は秩序のない混沌。」
「つまり――。」
アンビーが続ける。
「生への道が死に見えたり。」
「死への道が地獄へ繋がっていたりする。」
ビリーは苦笑した。
「アンビー。」
「貴重な常識をシェアしてくれてありがとな……。」
リンはさらに説明する。
「それに、ホロウを出た後の脱出経路も手配してある。」
「だから。」
「私たちを信じて。」
そして。
「お兄ちゃん。」
「もう感覚同期を解除してもいいよ。」
「了解。」
アキラの声が返る。
「それじゃ、切るよ。」
「またね。」
その瞬間。
イアスの動きが止まる。
「……?」
ムサシが首を傾げる。
「え?」
アンビーが呟く。
「静かになった。」
ビリーも確認する。
「普通のボンプに戻ってる。」
ムサシは思わずツッコむ。
「いや。」
「なんで肝心な時に『憑依』を解くんだ……。」
アンビーは前を見る。
「直進する。」
「衝撃に備えた体勢を。」
ビリーが青ざめる。
「え?」
「ちょっと待て。」
「ぶつかるぶつかるぶつかるぅぅぅ!!」
次の瞬間。
三人と一匹の身体が――。
壁をすり抜けた。
奇妙な浮遊感。
そして。
一気に広がる外の空気。
「……。」
アンビーが呟く。
「エーテルの圧迫感が消えた。」
ビリーは周囲を見る。
「やっと……。」
「出てこれたんだな。」
---
ホロウの外。
そこにはニコが待っていた。
「時間も場所も。」
「全部『パエトーン』の予想通りね……。」
ニコは笑う。
「さすが私が見込んだ――」
そこで。
ニコの視線が止まる。
「……。」
目の前にいる巨大な鋼の戦士。
ストライクガンダム。
「……。」
数秒の沈黙。
そして。
「ほら、二人とも――。」
「……って。」
「アンタ誰よ!?」
ムサシは苦笑する。
「ああ、ごめん。」
「すぐ戻るよ。」
すると。
ストライクガンダムが光に包まれる。
装甲が消え。
光が収束する。
そこに立っていたのは。
いつもの青年。
「ムサシ?!」
ニコは目を見開く。
「どういうこと?」
「まあ……詳しい話は後よ。」
「今は――。」
ニコは車を指差す。
「乗って!」
「ビリー!」
ビリーは嬉しそうに叫ぶ。
「ニコの親分!」
こうして。
ムサシ、アンビー、ビリー、そしてイアスは車へ乗り込む。
だが。
「急ぐわよ!」
ニコがアクセルを踏み込む。
「え?」
次の瞬間。
車は猛スピードで走り出した。
「ちょ、ニコ!」
「信号!」
「赤だぞ!?」
「知ってるわよ!」
「でも今は一秒でも早く帰る方が大事でしょ!」
「いや駄目だろ!!」
ビリーの叫びが街中へ響く。
ムサシは車内で呆然とする。
「……。」
「これが邪兎屋の日常なのか?」
アンビーは淡々と答えた。
「慣れる必要がある。」
「そうなのか……。」