Random Play。
ヤヌス区、六分街にある小さなビデオ屋。
いつものように店内には穏やかな空気が流れていた。
……しかし。
今日は少しだけ違う。
店の奥では、複数の人間が集まり話し合いをしていた。
「つまり。」
アキラが確認する。
「ホロウに落としてしまった金庫の場所を特定する必要がある。」
ニコは頷いた。
「そういうこと。」
ビリーが腕を組む。
「なるほどな。」
アンビーも頷く。
「合理的。」
「同時に、別の作業も必要。」
視線が向けられた先。
そこには破損したチャーム型のメモリディスクが置かれていた。
「こっちは私たちの仕事ね。」
リンが言う。
「このメモリディスクを修復する。」
アキラも頷く。
「データが戻れば、依頼品についてもっと詳しく分かるかもしれない。」
ニコは笑う。
「決まりね。」
「邪兎屋は金庫の位置を調べる。」
「パエトーンはメモリディスクの修復。」
「両方終わったら、次の行動に移る。」
全員が頷いた。
こうして。
それぞれの準備が始まった。
---
そして。
数分後。
店の片隅。
「……。」
ムサシは床に正座していた。
背筋は伸びている。
視線は真っ直ぐ前。
まるで戦場よりも緊張しているようだった。
その目の前には。
リン。
腕を組み、静かに立っている。
「……。」
「……。」
沈黙。
先に口を開いたのはリンだった。
「ムサシ。」
「はい。」
即答。
「どうしてホロウに入ったの?」
「……。」
「それは……。」
ムサシは言葉に詰まる。
「ビリーやアンビーが危険だったから。」
「助けたかったから。」
リンは頷く。
「うん。」
「その気持ちは分かるよ。」
「ムサシが優しい人なのも知ってる。」
一瞬。
表情が柔らかくなる。
しかし。
次の瞬間。
「でも。」
空気が変わった。
「勝手に危険な場所へ行くのは別の話だよね?」
「……。」
ムサシの背筋がさらに伸びる。
「はい。」
「しかも。」
リンは指を一本立てる。
「武器も持たず。」
「ホロウの危険性も完全には理解していなくて。」
「その上、生身でエーテリアスの前に飛び出した。」
「……。」
ムサシは何も言えない。
「もしガンダムになれなかったら?」
「もし変身する前に攻撃されていたら?」
「もし戻れなかったら?」
一つ一つ。
静かに問いかけられる。
ムサシは俯いた。
「……ごめん。」
リンはため息をつく。
「怒ってるんじゃないよ。」
「心配してるの。」
その言葉に。
ムサシは顔を上げた。
リンは少し困ったように笑う。
「ムサシは、自分が傷つくことを軽く考えすぎ。」
「助けたいって気持ちは大切。」
「でもね。」
「助ける人が倒れたら、助けられた人も悲しいんだよ。」
「……。」
ムサシはしばらく黙った。
そして。
「分かった。」
「次からはちゃんと相談する。」
リンは頷く。
「約束ね?」
「約束する。」
少しの沈黙。
そして。
「……じゃあ。」
リンが笑う。
「説教はここまで。」
ムサシはホッと息を吐く。
「助かった……。」
しかし。
リンはすぐに続けた。
「でも。」
「帰ったらお話しようね?って言ったよね。」
「……。」
ムサシの顔が固まる。
「まだ続くのか!?」
---
メモリディスクの修復作業も一段落し、店内には少しだけ落ち着いた空気が戻っていた。
リンは端末を確認する。
「……うん。」
「これなら大丈夫そう。」
隣ではアキラも頷く。
その時だった。
店の入口から声が聞こえる。
「リン。」
振り向くと、そこにはムサシが立っていた。
「ニコたちが駐車場で待ってるよ。」
「……。」
ムサシが一歩前へ出る。
「俺も行く。」
リンとアキラが同時にムサシを見る。
「え?」
「ムサシ?」
ムサシは真剣な表情だった。
「今回の金庫の件。」
「俺も手伝わせてほしい。」
リンは少し驚く。
「でも。」
「これは邪兎屋の仕事だよ?」
ムサシは頷く。
「分かってる。」
「でも、俺はもう関係ないとは言えない。」
「ビリーもアンビーも、命懸けで戦っていた。」
「それを助けたかったのは本当だけど。」
少し間を置く。
「助けてもらったのは、俺の方でもあると思う。」
アキラは静かに聞いていた。
ムサシは続ける。
「六分街に来てから。」
「俺は何も知らなかった。」
「自分が何者なのかも。」
「でも。」
拳を握る。
「あの日、ホロウ内で倒れていた俺を連れだしたのは邪兎屋とあんた達だった。」
「そしてここで出会った人たちは、そんな俺を普通に受け入れてくれた。」
「だったら。」
「今度は俺が力を貸したい。」
その言葉に。
リンは少し黙る。
そして。
「……。」
「ムサシ。」
「はい。」
「無茶しない?」
「……。」
一瞬。
ムサシは目を逸らす。
「……努力する。」
リンはため息をついた。
「そこは即答で『する』って言ってほしかったな。」
「でも。」
少し笑う。
「分かった。」
「お兄ちゃん。」
アキラを見る。
アキラも頷いた。
「僕もいいと思う。」
「ムサシの力は、ホロウ攻略では大きな助けになる。」
「ただし。」
アキラは真剣な目を向ける。
「無茶はなし。」
「一人で突っ込まない。」
「仲間と連携する。」
ムサシは笑った。
「了解。」
その言葉にリンは苦笑する。
「……本当に?」
「はい。」
「じゃあ、期待してるね。」
---
「来たわね。」
駐車場へ到着すると、ニコが腕を組んで待っていた。
その表情には、いつもの余裕が戻っている。
「金庫の位置はもう把握したわ。」
「それで。」
ニコはリンを見る。
「この前頼んでたやつはどうなったの?」
リンは持っていた端末を軽く掲げる。
「メモリディスクの修復のこと?」
「うん。」
「バッチリ!」
その言葉に、ニコの顔が少し明るくなる。
「さすがパエトーンね。」
するとリンは続ける。
「それに――。」
「ニコの勘も当たってた。」
「中には金庫の暗証番号が入ってたよ。」
ニコは満足そうに笑った。
そして全員を見る。
「さあ、みんな!」
「プロキシのおかげで準備は整った。」
「そろそろ次の計画に移るわよ!」
ニコはアンビーへ視線を向ける。
「アンビー!」
「計画を説明してちょうだい!」
アンビーは静かに頷いた。
「了解。」
「コホン……。」
なぜか一度咳払いをする。
そして。
テーブルの上に新エリー都の地図を広げた。
「諸君。」
「こちらにある新エリー都の地図を見てくれたまえ。」
ムサシは少し驚いた。
(……アンビーが珍しく気合いを入れてる?)
アンビーは続ける。
「我々の行動計画は――。」
「クリティホロウに入り。」
「上級エーテリアス『デュラハン』を倒して。」
「金庫を手に入れることである。」
「……。」
沈黙。
全員がアンビーを見る。
そして。
数秒後。
ムサシが口を開いた。
「それで?」
「続きは?」
アンビーは首を傾げる。
「以上よ。」
「……。」
ムサシは固まった。
リンも困惑した表情になる。
「じゃあ……。」
「新エリー都の地図を用意した意味は?」
アンビーは少し考える。
「ニコは、協力者になめられないよう。」
「プロらしく振る舞おうと言っていた。」
「さもないと後々値切りが面倒に――。」
「んむむむむ。」
突然。
ニコがアンビーの口を塞ぐ。
「また余計なこと言って!」
「ビリー!」
「何でちゃんと見張ってないのよ!?」
ビリーは慌てる。
「俺のせいじゃねえって!」
「アンビーが準備した『プロ』のミーティングがこんなんだとは思わなかったんだよ!」
そして何かに気付く。
「あ。」
「だから集合前に。」
「探偵映画のミーティングシーンを観てたのか!」
アキラが苦笑する。
「あの……。」
「全部聞こえてるんですけど……。」
ニコは咳払いする。
「コホン!」
「と、とにかく!」
「アンビーが説明したように、計画はいたってシンプルよ!」
指を立てる。
「金庫を探して取り戻す!」
ムサシは頷く。
「分かりやすくて助かる。」
ニコは続ける。
「ただし。」
「外からじゃ、ホロウ内の状況をリアルタイムで確認することはできない。」
「だから。」
「中での支援とガイドは任せたわ。」
アキラが頷く。
「了解。」
リンも続ける。
「ホロウ内部のルート確認とサポートは任せて。そして今回もムサシが同行するよ」
ビリーがムサシを見る。
「ってことは。」
「また一緒に戦えるってわけだな!」
ムサシは笑う。
「ああ。」
「今度はもっと連携して戦おう。」
アンビーも頷く。
「前回より効率的な戦闘が可能。」
「ガンダムの能力も把握できれば、さらに有効活用できる。」
ムサシは苦笑する。
「できれば、ガンダムにならずに済む方がいいけどな。」
ビリーが笑う。
「それは無理だと思うぜ。」
「なんで?」
「だってよ。」
ビリーはニヤリと笑う。
「主人公ってそういうもんだろ?」
「……。」
ムサシは少し黙る。
「……スターライトナイトの影響か?」
「もちろん!」
即答だった。
そんなやり取りを見て。
アキラとリンは小さく笑う。
こうして。
準備は整った。
目的地。
クリティホロウ。
相手。
上級エーテリアス――デュラハン。
そして。
未知なる力を持つ青年。
ムサシ。
新たな仲間を加えた邪兎屋の作戦が、始まろうとしていた。
作品二つ投稿はかなりしんどい、けど自分がやり始めたことだから頑張らなきゃ。