とある科学の擬似発現   作:ついついつい

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第十三話:死角の盾(アンシーン・シールド)

「ウギャァァァァァァァッ!!」

AIMバーストの絶叫が、第十七学区に響き渡る。

美琴の放った落雷を受け、化け物の巨体が大きく揺らいだ。

しかし、その巨体が崩壊する際に生じる余波は、周囲の環境にとって致命的な破壊力を持っていた。

ドゴォォォォッ!

数百トンはあるであろう施設の鉄骨とコンクリートの壁が、爆発的な衝撃で吹き飛ばされる。

その軌道上には、現場へ駆けつけようとしていた風紀委員の車両と、逃げ遅れた数名の一般人がいた。

「しまっ……!」

美琴がそれに気づいた時には、もう遅かった。

彼女の位置からでは、どうやっても間に合わない。巨大な瓦礫が、彼らを押し潰そうとした。

その瞬間。

瓦礫の直前で、空間が不可視の壁に阻まれたようにピタリと停止した。

「……え?」

風紀委員たちが目を白黒させる。

空中で停止した瓦礫は、次の瞬間、見えない刃に切り刻まれたように数千の破片へと細断され、周囲に無害な雨として降り注いだ。

「な、何が起きたんですの……?」

遠くから駆けつけた黒子も、信じられないものを見るように立ち尽くした。

「がはっ……!」

現場から数百メートル離れた暗がり。

瀬川空は、壁に手をつき、大量の血を吐き出していた。

「ハァッ……ハァッ……」

脳の奥で、何かがぶちりと切れる音がした。

足元には、真っ二つに割れたプラスチックのペンが転がっている。

 《念動力》による質量停止。

 《空間断裂》による切断。

 《空力使い》による粉砕。

一瞬の間に、三重の並列処理を強制的に起動した。空洞化された脳のキャパシティを完全に超過している。

右目からツーッと一筋の血が流れた。眼球の毛細血管が破裂したのだ。

「……『肉体再生』、バックグラウンド展開」

震える声で、自分自身に命じる。

激痛に意識が飛びそうになる中、細胞を強制的に修復する演算を走らせる。自壊を防ぐための地獄のマルチタスク。

「あぁ……痛ぇな……」

血塗れの顔で、空は笑った。

視界の先では、美琴が最後の力を振り絞り、自身の電撃と初春が作成したワクチンプログラムを使って、AIMバーストの核を完全に破壊しようとしていた。

閃光。

そして、超電磁砲の轟音。

AIMバーストは断末魔の叫びとともに崩壊し、夜空に溶けるように消滅していった。

『幻想御手』のネットワークが解体され、事件が終わった瞬間だった。

「……終わったか」

空はズルズルと壁伝いに座り込んだ。

被害者はゼロ。誰も死なず、誰も欠けなかった。

御坂美琴は、英雄としてその場に立っている。

「完璧な、ハッピーエンドだ」

空は懐からもう一本、極甘の缶コーヒーを取り出し、震える手でプルタブを開けた。

血の味と、暴力的なまでの甘さが口の中で混ざり合う。

「……帰ろう」

痛む体を引きずり、誰にも見られないように。

空は一人、暗闇の中を歩き出した。彼が盾となって守り抜いた命が、明日も笑えるように。

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