仮面ライダー×仮面ライダー SAO大戦 作:BRAKER001
「♪〜」
横で上機嫌なアスナを見ながら、俺はウルバスの街をうろついていた。
「随分嬉しかったみたいだな」
「え? あ、ごめんなさい、私……」
全くの無意識だったのか、気づいて急に顔を赤くするアスナ。
「……でも、やっぱり嬉しいわ。どれだけ頑張っても確率は100%にはならないもの」
「それでも必死に素材集めたんだから、それはアスナが導いた結果さ」
「それはブレイドくんも……ううん、ありがとう」
さっきと同じやりとりになると思ったのか、お礼の言葉と微笑みで済ませるアスナ。
「どういたしまして」
だから俺もそれに応える。
「にしても成功率80%だっけ?失敗しても素材が無くなるだけなら充分な気もするけど……」
「強化上限のシステムがあるものね……もう少し確率を上げる方法は無いのかしら」
「ありますよ」
唐突にかけられた声の方を向くと広場の中央で何やら広げている少年がこちらを見ていた。
「あ、すみません! つい、お話が聞こえてきたんで職業柄と言いますか……」
「いや、気にしないでくれて大丈夫だ。それよりさっき言ってたのって?」
二人で少年のところに近づきながら、少年に尋ねる。
近づいてみると、少年の足元にはカーペットのようなものが敷いてあり、いくつかの武器が並んでいた。
「あ、はい。と、その前に自己紹介を……僕はネズハ、ここで鍛冶屋をやっています」
ネズハの指差す先を見ると、そこには
《Nezha's Smith Shop》
の文字があった。
「鍛冶屋……へぇ、確かにこの世界には店が開ける機能があるって聞いたけど」
剣を振るしか脳がない……頭にない俺にとって、いざそういう人を見てみると不思議な気分だった。
「それで? 確率を上げられるって本当なの?」
アスナが本題に切り込んだ。
「あ、はい。なんか売り込みみたいな気がして申し訳ないんですけど……熟練度の存在が僕のような生産系のスキルにも存在することはご存知ですよね?」
「それはまあ、この世界のスキルはほとんどが熟練度によって何かしらの制限があるからな」
「はい、そして鍛冶スキルの場合その制限はこのハンマーの装備に影響します」
そういうネズハの手には鉄のハンマーのようなものが握られていた。
「これは《アイアン・ハンマー》です。先程、NPC鍛冶屋で強化を行って来たんですよね?どんなハンマーでした?」
「え? ええと……」
ハンマーなんて全く気にしてなかったぞ……
「茶色……いえ赤褐色だったかしら? まるで銅のような……」
記憶を探っている俺とは裏腹に、アスナははっきりと答えていた。
「はい、まさしくここのNPCは《ブロンズ・ハンマー》、銅のハンマーを使っています」
「よく覚えてたな……」
「当たり前じゃない、私の命に関わることだもの」
……確かに。
「それで……つまりあなたのハンマーの方が、NPCのよりも性能が高いってことでいいのかしら?」
「あ、はい。その通りで……僕の《アイアン・ハンマー》の方が要求スキル値が高いんです」
「なるほどねぇ」
確かに、そのような差別化がなければ、プレイヤーが生産職をやる意味がなくなってしまう。上手い調整と言えるだろう。
「とはいえ、結局は確率ですからね。プレイヤーに頼むよりNPCの方がトラブルとかもありませんし気が楽って人も……」
「私はそうは思わないわ」
アスナが強い口調で言い放った。
「あなたも私たちと同じプレイヤーだもの。
戦闘か生産系かは違えど、努力して今の位置にいることはなんとなくわかる。
あなたの方がNPCより優秀だって根拠もちゃんとあるわけだし」
そう言いながらハンマーを見つめるアスナの目にはどこか懐かしむような感情が込められている気がした。
「教えてくれてありがとう、次の強化の時には是非お願いさせてもらうわ」
笑顔とともにそう話すアスナに、ネズハは一瞬惚けた後慌てて、
「任せてください、丹精込めて打たせていただきます!」
そう返した。
「前にも言ったけど……私ね、このゲームに閉じ込められたって聞いたとき自暴自棄になってたの」
ネズハと別れて歩いていると、アスナが話し始めた。
「今のアスナからしたら考えられない……とも言えないか。誰だってあんな話聞いたら動揺するよな……」
この世界で死んだら現実でも死ぬ。そんな話を聞いて正気を保っていろと言う方が難しい話だ。
俺ですら完全に冷静ではいられなかったのだから……
「それだけってわけじゃないんだけどね。
死んだら死んだだ、それまでひたすら戦おうって、馬鹿みたいにダンジョンにこもって……」
後悔するような自嘲するような表情でアスナは語った。
「で、そこからまた色々あったんだけど……今は思うの、なんであんなことしてたのかなぁって」
「今はどう思ってるんだ?」
アスナは少し考え、
「少なくとも、無駄に命を捨てたくないとは思ったかな……
それにね、ネズハさんみたいな人を見てると思うの。自分はなんて失礼だったんだろう、この世界で生きていこうと頑張ってる人達もいるのにって」
「そんなの……」
アスナが思ってるだけで、他の人は気にしてなんていない。そう言おうとした気持ちはアスナの表情を見て消え去った。
真剣な表情だった。
「ネズハさんだけじゃない、キリトくんやウィザードくん、もちろんブレイドくんだってこの世界で必死に頑張ってる。
だから決めたの。私はせめてみんなと並んで肩を並べられるようになるんだって」
そう言うアスナの目には強い決意が宿っていた。
しかし、すぐに表情を緩め、
「ごめんなさい、変な話しちゃったわね。
私、そろそろ休むわ。今日は色々とありがとう」
「……ああ」
笑顔で言う彼女の裏を知って、そして自分を省みて……そう返すのが精一杯だった。
「本当に……やるの?」
「せっかくいい話を聞いたんだ、やらなきゃ損だろ?」
「大丈夫だよ、言われた通りならバレたりしないって!」
いつになく表情の明るいみんなを前に、
「……分かった、やってみる」
そう答えるしかなかった。
さっき言われた言葉が、重く心にのしかかっている気がした。