仮面ライダー×仮面ライダー SAO大戦 作:BRAKER001
「それで、さっきの話はどういうことなんだ?」
流石に街の中央で話せるレベルを超えてきたので、場所を変えて建物の中に移る。もちろんネズハも一緒にだ。
「ああ、それなんだが……」
ブレイドは話し始める前に一度ネズハを見つめた。
ネズハは全てを覚悟して居るのだろう。神妙な面持ちで頷き、ブレイドに全てを託した。
「先に謝らせてくれ。実はネズハと同じギルドの人達の話を盗み聞きさせてもらった」
そう前置きしてブレイドが話し始めたのは、ある意味想像していた話だった。
「もう限界だよ……」
俺が盗み聞きを始めたのは、ネズハのその一言からだった。
「大丈夫、まだまだイケるって!」
「大騒ぎにはなってないんだし、まだ平気だよ!」
他のメンバーがネズハを励ます(?)が、ネズハの顔色は晴れない。
「もう十分に元は取れたじゃないか……これ以上は……」
「何言ってんだよ、ここからだろ? 頼むよネズハ、お前の稼ぎが頼りなんだ!」
稼ぎが頼り? でもならネズハはなんで嫌そうに……
いや、ここまで来て目を逸らしても仕方ないだろう。本当はわかって居るのだ。ネズハが嫌がる理由なんて一つしかない。
「これ以上他の人を騙すのは……」
「なぁ、なんかドアが変じゃないか?」
その声を聞いた瞬間俺は大きく飛び、手近な物陰で隠蔽スキルを発動させる。
すぐにドアから先程ネズハと話してたうちの1人が出てくるが、暗さのお陰もありどうやらバレずには済んだみたいだ。
「というわけだ。
ネズハは自分の私利私欲のために……いや、自分の私利私欲はあるかもしれないけど、それだけじゃない。
仲間たちのためにやってたんじゃないか?」
「……」
ネズハは答えない。それは弱みを握られているからか、はたまた仲間を守るためか。
いずれにせよ、この事はハッキリさせなければいけない。これがただのゲームならまだしも、今後絶対同じようなことがあってはならないのだ。
そしてそれはネズハの処遇に関しても言える事だ。この世界でプレイヤーをどう裁くかは、今後のアインクラッドを左右すると言っても過言ではない。
「キリトくん、それに2人も、ごめんなさい。私、それでもネズハさんが根っから悪い人には見えない」
だんまりを決め込むネズハの前にアスナが立つ。
「教えてネズハさん。どうして、何のためにこんなことをしたの?」
しばらく口を閉ざしてたネズハだが、やがて口を開いた。
「もし、誰かが僕の詐欺に気づいたら……その時は死んで償おうと思ってたんです」
「「それはダメだ」」
ブレイドとウィザードの即答が被り、一瞬場の空気が固まる。
被った2人も顔を見合わせ、やがてブレイドが話し始めた。
「いいか、もうこの世界はゲームじゃない。この世界の命は本物なんだ」
一瞬、ブレイドが顔を顰めた……気がした。
「自己犠牲は楽かもしれない。でもそれは何も償ってないのと同じだ。
何よりこの世界で死を以って償う人間が出てきたらそのあとどうなるか……想像できないわけじゃないだろう?」
「それは……」
「もう君一人だけの問題じゃないんだ。そしてそれは、君のギルドの人達も同じことだ」
そう。仮にこの件がネズハだけへの処遇で終わった場合、最も怖いのはネズハと同じギルドの仲間たちだ。
ネズハに悪事をやらせ、その上ネズハを切り捨てるような連中だとしたら……その先は考えたくもない。
「それでも僕とみんなは違います。僕みたいなノロマは遅かれ早かれすぐ死ぬんですよ……あなた方には分からないんです!」
「ふふっ」
その言葉に、今度はウィザードが小さく笑った。ありえない目を向ける3人と、心なし傷ついたように見えるネズハの視線を受け、ウィザードは慌てて弁解する。
「いや、アスナ……そこのお嬢さんも1層で似たようなことを言ってたなぁと思ってさ」
「え?」
ネズハがあっけに取られる。俺も驚いた。そんな話は初耳だ。ブレイドだけはどうやら納得したような表情だったが。
「あの、アスナさんって前線攻略集団の方ですよね?」
「え? まあ攻略集団といえばそうかもしれないけど……私のこと知ってるの?」
「先日話しかけた時にもしかしたらと思いましたが、お名前を聞いて確信しました。
前線唯一の女性プレイヤーのアスナさんは、攻略集団以外でも有名ですよ」
複雑そうな顔をするアスナ。こんな世界で、自分が話題になって居るというのは女性からしたらどんな気持ちなんだろうか。
「ちなみに俺のことは……?」
思わず聞いてしまう。俺が攻略集団以外でどんな評価なのか。
「いや、知らないです……すみません……」
「あ、いやいいんだ! そっか……」
今度は他の3人が笑いを堪える。ほっとけ。
「でもそうなんですね、アスナさんみたいな人でも同じ気持ちになることもあるんだ……」
「正直、まだその気持ちは消えていないわ。私たちはまだ二層、百層なんてとても見えないもの」
アスナは瞳を閉じ、そして俺たちを見つめた。
「でもね、こんな世界になって……ううん。こんな世界だからこそ必死に戦ってる人がいる。
だから私も、死ぬために戦うのはやめようって思ったの」
そう語るアスナの顔に、迷いはなかった。
「私にはささやかだけど確かな目標がある。あなたにもあるんじゃない? はじまりの街から出てきたあなたにも」
ネズハは俯き、足元を見つめる。その足に履かれているのは街用のシューズなどではなく、れっきとした防具だった。
「確かにありました……僕にも、目指したものが。
でも無理なんです、FNCの僕には」
「FNC?」
ウィザードが怪訝そうな声をあげる。
「FNC……Full dive Non Conforming。用はフルダイブ不適合者だ」
俺はウィザードたちに説明する。フルダイブ環境で不適合になる意味を。それがどれだけ稀有で……どれだけ残酷なのものかを。
「僕に異常が出たのは視覚でした。見えないとかではないんです。ただ、両目視機能……つまり遠近感がうまく働かなくて。
それがどんな影響を及ぼすか、皆さんなら分かるでしょう……?」
そう笑うネズハの顔は、とても悲痛だった。
弓すら存在しないこの剣の世界で、遠近感が働かないのは致命傷だ。敵との距離が把握できなければ、攻撃することも攻撃を避けることもできないだろう。
それでもこれがただのゲームなら、慣れていくこともできたはずだった。
ネズハに訪れた不運は、確かに俺たちには計り知ることのできないものだろう。
「なら、なんで無理にSAOに参加したんだ?」
ウィザードが何気なく質問する。だがその質問は残酷だろう。なぜなら……
「オイオイ、酷な事聞くなヨ」
「っ!?」
新たな人物の声にまたしてもネズハが身を強張らせる。だが、俺たちにはこの特徴的な喋り方にすぐ思い当たる節があった。
「仲間たちが遊んでルゲームを一人だけ我慢しなきゃいけないなんテ、そんなの誰だって耐えられないだろうヨ」
少し開いた窓の外、そこには俺たちのよく知る情報屋が立っていた。
「邪魔して悪いガ、この件はオレっちも見過ごせないんでナ。
というかお前ラ、こんな人気のなイ建物とはいえ無用心がすぎるゾ。
窓くらいきちんと閉めとケ」
うっかりしていた。先程盗み聞きの話を聞いたばかりなだけに、耳が痛い。
「情報屋さんまで……そっか。これだけの人が気にしてたのなら、もうとっくに手遅れだったんでしょうね」
ここまで囲みこむと、もはやネズハに哀れみを覚えるが、そうも言っていられない。
「お前さンのギルド、『レジェンド・ブレイブス
』だロ?
少し育ち方が妙だったからナ。調べてみたら案の定、てわけダ」
どうやらアルゴは元々ネズハのギルドの方を追っていたらしい。その上で、ネズハの武器破壊の話に行きあたったってところか。
「仲間たち……ってことは、ネズハは向こうでの友人たちとギルドを組んでるのか?」
リアルに踏み込むのはタブーだと知りつつも、踏み込んでしまう。むしろこんなことをさせているのが、この世界で知り合った人間だとは思いたくない。
「いえ、元々はSAOよりも前に出たアクションゲームでのチームでした」
その言葉に、俺は複雑な表情を浮かべるしかなかった。出会ったばかりではないというなら、まだ出来心の範囲だろうか。
「別に無理に脅されたとかじゃ無いんです! 僕が足を引っ張ってばかりだったから……だから、恩返しができるならって気持ちはありました」
俺の考えを知ってか知らずか、ネズハが慌てて付け加える。
「アルゴさんは、なんでネズハさんたちが昔から知り合いだって分かったの?」
「ン? あァ、アーちゃんたちは知らないのカ。レジェンド・ブレイブスのギルドは名前に統一性があってナ」
アルゴの話だと、最近そのレジェンド・ブレイブスが突然攻略に名を上げてきたらしい。その活躍だけでなく、プレイヤーネームもあって有名なのだと言う。
クフーリン、ベオウルフ、オルランド。アルゴが名前を挙げたプレイヤーはどれも、俺ですら聞いたことある『英雄』の名前だった。
でもそれなら……
「それなら、ネズハはどうなんだ? 俺はそんな名前の偉人聞いたことないけど」
「ああ、オレっちもそう思った。だガ、本当の読み方は『ネズハ』じゃ無かったんダ。
だロ? 『ナタク』?」
「本当に、全て気付かれちゃいましたか……」
俺の気持ちを代弁してくれたウィザードに、アルゴが答えた。
「ナタク……確か孫悟空と戦った武将とかだっけ」
「ご存知なんですか!?」
「あ、いや、前に何かで見たことがあって……」
少し明るさが戻ったネズ……ナタクにたじろぎながら、頭の中で槍を振り回す女性(?)をかき消す。
「……負い目はあったんです。ただ、それでも内心では、僕だって英雄なんだぞって。みんなと戦って行けば、いつか胸を晴れる日が来るんじゃ無いかって。
本当……どうしようも無いですよね」
これで全て合点がいった。そもそも彼は最初から鍛冶屋をやる気なんてなかったのだ。
元々FNCだった彼は、それでも仲間たちとSAOの世界で戦いたかった。だからクイックチェンジのmodが取れるまで、熟練度も上がっていたのだろう。
「でもこの世界は変わってしまった。それであんなことに手を出したのね」
「足を引っ張っている僕が、みんなを助けられるなら……と。許されることで無いのはわかっています。でも、みんなすごく喜んで……僕を褒めて……」
そこでネズハは言葉を止めてしまった。
なんとも言えない空気。あのアルゴですらやや気まずい顔をしつつ、どうするか悩んでいるようだった。
「確かに、足を引っ張るくらいならみんなのサポートをしたいというのは分かるわ。でも、なんでそれが詐欺にまで発展してしまったの?
そもそもこれは、誰のアイデアなの?」
そんな空気を変えるどころか、バッサリと確信に触れたのは、我らが細剣使い様だった。
それこそが、この場の全員が知りたいことであり、欲しい情報なのだ。
こんなことを思いついたのは、やろうと言い始めたのは誰なのか。
「SAOがこんなことになって、僕は最初『《投剣スキル》を使おうとしたんです。
けど結局ダメで……僕に付き合ってくれたみんなはかなり出遅れちゃいました」
なるほど、確かに投剣スキルならネズハが今のまま拳を振るうよりは現実的だろう。
だが、投げナイフなどは消耗品。コストもバカにならず、緊急用に投剣スキルを取っておくプレイヤーはいても、あれをメインに戦うのは無謀という他ない。
「僕が投剣スキルを諦めた時、かなり険悪な雰囲気になりました。鍛冶屋に転向するにも時間とお金がかかりますし……
結局みんなが送り出してくれて、頑張ろうと言う気持ちで鍛冶屋を始めましたが、儲けは思うように出ませんでした。
彼が話しかけてきたのはそんな時です」
「彼?」
まさか、と言う予感があった。詐欺のアイデアを発案したのは、レジェンドブレイブスのメンバーじゃ無いのか?
「話し合いをしていた酒場の隅で、NPCだと思い込んでいたプレイヤーが話しかけてきたんです。
『その鍛冶屋が戦闘スキルを持っているなら、クールな稼ぎ方がある』……って」