仮面ライダー×仮面ライダー SAO大戦 作:BRAKER001
俺は暗くなったトールバーナの街を歩いていた。
さっきキバオウが言ったことを思い出しながら。
確かにベータテスターではない者は、彼の言う様に感じているかもしれない。
だが俺は知っている、その死んだ2000人の中にベータテスターが少なからずいることを。
下手に情報を持っているからこそ、ほんの少しのベータ版からの変化によって命を落とす危険があるということを。
ただ、後ろめたいことが全くないかと言えば…
『おめえにこれ以上世話になるのはいけねよな、だから気にしないで次の街に行ってくれ。』
「クライン…」
「おい、キリト!」
声に気づいて振り向くとブレイドが立っていた。
「ブレイド。あれ、ウィザードは……」
「用を思い出したから宿を見つけといてくれって言われてな。そしたらお前を見つけたんだ。
どうした? 何か考えてる様だったが……」
「いや、ちょっとな……」
あんな話の後だ。自分がベータテスターだと言うことは知られたくなかった……のだが。
「キバオウって奴が言ってたことか?」
「なっ……」
まさか図星を当てられるとは思わず、動揺してしまう。そんな俺の反応を見て、ブレイドは納得した様な表情になった。
「お前……ベータテスターなんだろ?」
「どうして……」
「昼間、そして今のお前の表情だ。何か思い悩んでる様子だったからな」
迂闊だった。確かにあの時も俺は思うところがあったが、そこまで顔に出ていたとは……
「……俺を責めるか?」
俺は意を決した。
人間関係に亀裂があってはパーティーとしての意味がない。
最悪パーティーを抜けることも考えていた。
「責める理由なんかないだろ?」
だが帰ってきたのは意外な答えだった。
「キリトが本当にキバオウの言う様な人間なら、会ったばっかりの人間に簡単にアイテムを渡したりしないはずだ」
「でも俺は、一度仲間を見捨てた……」
「それを馬鹿正直に言う時点で、お前が悪いやつじゃないって分かるさ。それに、何か事情があったんじゃないのか?」
何と返したらいいか分からなかった。
「俺はお前がベータテスターだろうがなんだろうが良いさ。
でももし、それでもキリトが納得できないなら……パーティーの他の二人にも話してみたらどうだ?」
いきなりブレイドが思いもよらない提案をしてきた。
「話を聞いてもらえば楽になることだってある。
それに向こうにとっても隠し事を話してくれた人間の方が信用できるんじゃないか?
大丈夫、どっかのイガイガと違ってあいつらは固い頭じゃないだろうよ」
ブレイドがおどけながら言う。
俺は悩んだ。
確かに命を預ける仲間だ。隠し事は無い方がいいだろう。
だが、果たしてそれで俺を受け入れてくれるだろうか? むしろ不信感を抱かれる可能性もある。
悩めば悩むほど俺の気持ちは乱れていった。こんな気持ちではボス戦なんてできそうにない。
「分かった、話してみるよ。俺もこのままだとまともに戦えそうにないしな……」
「なら決まりだな。
えーと、ウィザードの位置は……あれ? さっきの女の子と一緒だな」
メニューからパーティーを開くとブレイドの言う通り、二人は同じ場所だった。
「ならウィザードに伝えて貰えばいいか。場所は……」
「俺が今借りてる家にしよう。あそこならゆっくり話せる」
「え? このゲーム家借りて住めるのか?」
「知らなかったのか? 部屋も広いし風呂とかもあるから宿屋より落ち着けるんだ。」
「……ちなみに泊まれたりは?」
そう言えば宿を探しているって言ってたな……。
「ブレイド達がいいなら……」
「ありがとう!」
両手をガシッと掴まれる。
この暖かさも電気信号なんだよな、とくだらないことを考えながら、俺はプライドに揺さぶられていた。
「よっ!」
俺は座ってパンを頬張っている少女に声をかける。
少女は一瞬びくっと驚いたが、フードの中からこちらを確認するとすぐに言葉を返してきた。
「何か用?」
「いや、たまたま見かけたからさ。
まあ同じパーティーになったんだし、挨拶でもしようと思ってね」
と、言うのは嘘。少し様子が気になったから位置を確認して来たのだが。
「それだけ? ならもういいでしょ」
またパンを食べ始める少女。
「まあ、そう言わずにさ……あ、これ使うか?」
俺は一真がキリトに貰った小瓶を取り出す。
「これは?」
「クリームだよ。昨日ブレイドがキリトから貰ったらしいんだけど、これがうまくてさ……」
少女はしばらく考えたあと、パンにクリームを塗って一口……食べた後二、三口でそれを食べきった。
「な、うまいだろ。
あ、キリトに入手方法聞くか?」
少女は少し反応したが、首を横に振った。
「美味しい物を食べる為に私はこの街に来たわけじゃない」
「へぇ……じゃ何のためだよ?」
「私が私でいるため。
最初の町の宿屋に閉じこもってゆっくり腐って行くくらいなら最後の瞬間まで自分のままで居たい。
たとえ怪物に負けて死んでも、このゲーム、この世界には負けたくない……どうしても」
フードの奥に見えたその表情は、どこか諦めた様な表情だった。
俺が一番嫌いな、そして一番見てきた表情だ。
「あんたは明日自分が死ぬと思うのか?」
「どうせ全滅するに決まってるわ……今まで何人もあそこで死んでいるんだから」
「でも今まであそこまで人が集まったことは無いらしい。今回は勝てるかもしれないぜ?」
「だとしても次の層……そこも越えれたとしても、いつか死ぬ。
始めから抜け出せるわけが無いのよ、こんな絶望だらけの世界」
それは聞き逃せない言葉だ。
今この世界ではゲートもファントムは関係ない。だが、目の前に絶望しかけている人間がいる以上、放っておくことなど出来なかった。
「絶望だらけだとは限らないだろ?」
「じゃああなたはこの世界をクリアできると言うの?
一ヶ月経ってまだ一層もクリア出来てないのに、百層まで辿り着けると思っているの!?」
「そんなことは俺にだって分からないさ」
「だったら……」
「でも」
ああ、やっと分かった。彼女に感じる既視感の原因を。
「前に進むには今を受け入れるしかない、俺たちが何者だろうと、ここがどんな世界だろうと、今を生きようぜ」
「っ!」
少女は黙り込む。
「だけど、もしどうしても絶望してしまいそうなことがあったら……」
俺は約束する。
「そのときは、俺がお前の最後の希望になってやる」
少女は少し呆気にとられた様だったが……
「……な、何言ってるのあなたは?」
すぐに元通りになった。
「ん? 俺なんか変なこと言ったか?」
「……はぁ、何でもない。」
よく分からなかったが、直後メッセージが届いたせいで考える暇はなかった。
「お、ブレイドからだ。えーと……キリトが話したいことあるらしいから集まれってさ。
あんたも連れて来いと」
「……遠慮しておくわ、作戦とかなら明日の朝でも聞けるし」
「そうか。
……へぇ、このゲーム家なんか借りれるんだな。広い部屋に風呂付きなんて……」
後半は完全に独り言だったのだが……気がつくと少女の顔が目の前にあった。
「場所は!?」