英霊スバルのゼロから始める聖杯戦争   作:どんぱち

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プロローグ 『Re:運命の夜』

 ──稲妻のような切っ先は標的を失い、虚空を穿ち唸る。

 

 それは本来在る筈の無い光景だった。

 稲妻を人の目で捉えられはしない。ましてやそれを人の身で逸らすなど、()()()()()()()()()()()()()()易々と叶うことではないだろう。

 故に、その槍が(しな)る鞭に弾かれて獲物を仕留め損なったことは、槍の繰り手と標的、双方にとって理外の出来事だった。

 

「なに──!?」

 

初動狩り(リスキル)はルールで禁止にしようぜ! 名乗り中の不意打ちは御法度だろうが──よっ!」

 

 つい一瞬前までその場にいなかった筈の『第三の男』は、鋭い破裂音と共に鞭を振るう。鞭は凄まじい速さで槍の繰り手──蒼い槍兵へと襲い掛かった。

 

「チィ──!」

 

 鞭を叩きつけられ、槍兵はたまらず距離をとる。

 そうして眼前で起こった事態に、忌々しげに口を開いた。

 

「──本気か。七人目のサーヴァントだと……!?」

 

 サーヴァント。そう呼ばれた鞭使いは、槍の標的だった人物──尻餅をついた少年に向き直る。

 月明りが差し込む土蔵。月光に照らされた鞭使いの姿は、神速の槍兵を退けた功績とはお世辞にも結び付かない風貌だった。ありふれた黒いジャージに身を包み、10代後半と思しき顔つきは吊り上がった目つきの悪さが印象的だ。

 

 しかしそれが、少年の身を凶刃から守り抜いた、紛れもない騎士の姿だった。

 

「あんた無事か、無事だな、そりゃなにより。さて──うぉっほん!」

 

 咳払いをした鞭使いは、天高く人差し指を掲げ──、

 

 

「サーヴァント・セイバー、ナツキ・スバル。召喚に応じてただいま参上! あんたが俺のマスターか?」

 

 

 そう、高らかに名乗りをあげた。

 

「────」

 

 自らの啖呵に、自慢げに笑みを浮かべる鞭使い。目つきも相俟(あいま)ってどこか悪童の印象が拭えないその男を前に、少年は思わず息を飲む。

 

 自分とそう歳が変わらないであろうその鞭使いの言動を。

 おおげさに格好をつけて登場したその姿を。

 

 ──まるで、物語に見る正義の味方のようだと、そう思った。

 

 

 

 こうして、運命は彼らを引き合わせる。

 

 異世界にて最も新しい英雄とならんとした少年、ナツキ・スバル。

 正義の味方を目指して英雄の道を辿り得る少年、衛宮士郎。

 

 二人の英雄未満が、揃って第五次聖杯戦争の舞台にあがる。

 

 

 

「まぁ、とは言っても──俺のご主人様はエミリアたんだけなんだけどね! 言うなれば俺はサーヴァントになる前から愛の奴隷(サーヴァント)っ!」

 

「…………」

 

 ……静寂に包まれた夜闇に、おどけた声だけが虚しく響き渡った。

 

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