「ははは、くく、はははははは──ッ!」
少年は燃え盛る自らの屋敷を前に嗤う。
自分の全部が、人生が、黒煙を吐いて燃え尽きていく。
それが滑稽で仕方なくて、涙を流しながら、鼻水を垂らしながら、ただただ嗤っていた。
「……兄さん」
その姿を、少女は言葉をかけることもできず見ていたが、──少年がこちらへ向き直る。鋭い刃を振りかざして。
「桜ぁ……、次はお前だ……!」
一切の容赦無く、憎悪に任せて振り下ろされた刃が、少女を両断する。
瞬間、少女の身体は真っ赤な業火に包まれた。
「ぎィ、ぎぃやぁぁぁあああ──ッ!?」
上がる悲鳴。
豪邸は焼け落ち、少女を斬り裂き、少年は。
「はははは、ははははははは──」
嗤った。
涙と鼻水でめちゃくちゃになった顔で、嗤い狂った──。
熱線が柳洞寺の地表を焼く。それをものともしない黄金のサーヴァント。
名剣魔剣が空を裂く。それを躱して空を舞うキャスター。
黄金の男とキャスターが繰り広げる戦いは、一対一だが戦争と呼ぶに相応しい破壊規模で繰り広げられた。
「こんなの付き合ってられるかよ! 僕はキャスターが無力化できるって聞いたから来たんだ! 話が違うじゃないか!」
半泣きで文句を叫び、逃げ出そうとする少年、間桐慎二。
しかしその視線に柳洞寺本堂に立ち尽くす妹、桜の姿が映った。キャスターは黄金の男に掛かりきり、葛木は串刺しになって死んでいる。……今、桜を守る者は誰もいない。
「……そうだ、僕は逃げるんじゃない。僕は元々桜を取り返しに来たんだから、桜さえ助ければここにいる義理なんて無い、それだけなんだ!」
飛び交う刃に怯えながらも桜へ駆け寄る。
声をかけても手を引いても、その虚ろな目に反応は無い。
「くそ、手のかかる奴め……! お前は本当に僕がいなきゃ何も出来やしないんだからな……!」
文句を垂れながら桜を背負った。重い。衛宮士郎はこの妹の事をよく餌付けしているらしい、と脳内で悪態を吐きながらとにかく戦場になっている山門から離れる。
しかし山門を塞がれて、どこから脱出したものか。そう考えていたところで、寺の中からわらわらと人々が出てくるのを目撃した。避難か? いや、それにしては皆徒歩で、虚ろな目をしているが──、とそこまで疑ったところで。
その虚ろな人々の行き先に、裏口があるのを発見した。
「──っ! あそこだ──!」
寺の連中の態度がおかしいことなど知ったことか。慎二は我先にと裏口から外へ出る。
砂利道を、桜を背に下っていった。幸い間桐邸はそう遠くはない、しばらく歩けばその屋根が見えてきて──、
「────」
あと一息で自宅というところで、立ち塞がるように一人の男が立っていた。
赤い外套をはためかせる、褐色の男。その姿を慎二は知っている。
「──お前、遠坂のサーヴァント……! 何の用だよ」
「慎二」
サーヴァントは戦場でしか会ったことのない慎二に対して、まるで旧知の友にでも話しかけるように気安く話しかけた。
「慎二。何故妹を助けた。君は己の命が一番可愛い手合いの筈だ。危険を冒してキャスターから妹を救い出す? そんな人間では無いだろう、君は」
何故この男は知ったような口で自分を語るのか。むっとした慎二だったが、何故か怒りは込み上げて来ない。どころか、この男は数少ないありのままの自分をぶつけられる相手だという気すらして、思わず口を開いた。
「当たり前だろ! 僕はセイバーがキャスターを無力化できるって言うから来たんだ、こんな危険なことになるなんて知ってたら来なかったね!」
それは紛れも無い本心。あんな怪物同士の戦いに巻き込まれると知っていたら、桜など簡単に見捨てたかもしれない。それは事実。
「……ただ」
それでも多少の危険くらいは承知していた訳で。なお桜を助ける気になったのは……、
「セイバーに言われたんだよ。僕は口先ばかりで何もしてない『豚の欲望』だって。同じように魔術を使えないセイバーは成りたい騎士に成ったけど、お前はどうなんだ、って」
吊り目の、平凡な顔に平凡な背格好をしたセイバー。そいつが自分には出来たぞ、お前はどうだ、なんて突っかかってきて。それに対して慎二が何を思ったかなど決まっている。
「セイバーの奴、使い魔の分際で舐めた口聞きやがって! どうだ、僕はやってみせたぞ! 兄として妹の面倒を見た。僕は口先だけじゃないって事がこれで証明された! 僕は間桐慎二。こいつのただ一人の兄貴だ、そうだろ!」
何故か関係無い目の前のサーヴァントに啖呵を切る。
それは醜く、浅ましく、どうしようもない劣等感と承認欲求の発露だったが。
……サーヴァントは顔を伏せ、吹き出した。
「──フッ。凡人に手を差し伸べられるのは凡人だけだという訳だ」
「……は? よく分からないけど、それ、僕に喧嘩売ってる?」
突然現れておいて生意気なサーヴァントに、青筋を立てる慎二。
しかし、サーヴァントは気にせず手を差し出す。その手に魔力が走り──、
「──
手に出現したそれは、灼熱を思わせる紅色に輝く宝剣だった。
「は……? なんだよ、それ……」
サーヴァントは剣を慎二に握らせる。
「オレからの餞別だ。この剣は斬りたいもののみを斬り、焼きたいもののみを焼く。せいぜい上手く使うといい」
言って、サーヴァントが消えてしまった。
その場には、桜を背負い片手に剣を握る慎二が残される。
「はぁ……? なんだったんだ、あいつ。こんなもの渡されても困るっての。桜背負ってるのに
言い捨てた慎二だったが、
──『せいぜい上手く使うといい』。
「…………」
何故か、その宝剣がすぐに必要になる気がして。
桜を背負ったまま、剣を手に、間桐邸に入っていった。
「……何を考えているの、アーチャー。慎二に宝具級の魔剣を渡すなんて」
「私はマスターの期待に応えただけだが。間桐桜に幸せになって欲しいのだろう?」
「それは──、いや、だとしても慎二に魔剣を渡すことが桜の幸せに繋がる訳ないでしょう! 桜の為になんか絶対振るわないわよ、あいつ」
「大丈夫だ。斬るべき相手はあの剣が選ぶだろう」
「…………?」
「それに今の慎二の目は、この前ほど腐ってはいなかったよ、凛。──私の贔屓目が入っていないとは言わないがね」
「慎二、何故桜を連れ戻した」
「じ、爺さん……?」
帰宅した慎二を待っていたのは、祖父、間桐臓硯の詰問であった。
間桐邸の居間。桜は椅子に寝かせ、魔剣も彼女の体の傍に置いてある。
桜を寝かせたところで、間桐家の実権を握る魔術師・臓硯はまるで桜を奪還した事を責め立てるように問うてきたのだった。
「えっ……、いや、だって。衛宮たちが言う分には聖杯を呼ぶ生贄にされるところだったって話だったから。それは、まぁ、助けるだろ……?」
「……慎二。お前は本当に余計なことをする」
臓硯は深く深く溜息をついて、
「良いか。桜は聖杯を召喚する為に手を加えてきた器だ。多少手順は違ったが、本来の用途で運用されようというところで邪魔をしおって」
「……器? ……運用?」
祖父の発言に、慎二は引っ掛かりを覚える。
桜は慎二から居場所を奪い、間桐の教育を施された選ばれた者の筈だ。本来慎二が受ける筈だった寵愛を一身に受けた存在の筈だ。それが何故、こうもぞんざいな物言いをされているのか。
「あ、えっと、爺さん……? 桜は間桐の後継者、なんだよな?」
「そうとも。その身に聖杯を降ろす、間桐の悲願を成就する贄として調整してきた大事な娘よ」
「…………」
臓硯のその発言は、慎二の地獄の三年間にヒビを入れた。
桜の存在が慎二を苦しめたのは、桜が間桐の後継者だったからだ。自身が選ばれた魔術師であるという驕りは打ち砕かれ、父からも祖父からも邪魔者として扱われ、とうの桜本人から憐れまれるという、慎二の自尊心を完全に粉砕する出来事があったからだ。
しかし、その桜が後継者などでなく、ただの祖父の欲望の為の贄であったのなら、この三年間は一体なんだったのか。慎二が理想と現実の乖離に心を軋ませた三年間は、ただ無能が生贄に嫉妬していただけだというのか。
「──ははっ、なんだよ、それ」
「……慎二?」
……それは、なんと滑稽なことか。
間桐の家には慎二が羨望し嫉妬した魔術師など初めからいなかったのだ。
いるのは、自分という無能と、桜という生贄と、臓硯という死に損ないの妄念だけ。
慎二は口元を歪め嘲笑の笑みを浮かべながら振り返る。
「……爺さんはああ言ってるけどさ。お前、それで良いわけ?」
「…………」
椅子に寝かされていた桜は、黙って体を起こした。
「桜……! 起きておったか……」
……キャスターによる催眠は、山から下りた頃には切れていた。キャスターが退去し、効力が切れたのだろう。そこから桜の意識はあり、慎二とサーヴァントとの会話も、今の臓硯の発言も全て桜は聞いていたのだ。
その桜へ、慎二は据わった目で問いかける。
「桜。お前、僕から間桐の当主の座を奪ったんじゃなかったのかよ。お前、魔術師になるんじゃなかったのかよ」
「……それ、は──」
「正直に思ってる事を言えよ。お前、爺さんの生贄になって死ぬって事で良いわけ?」
慎二は桜に問う。……臓硯の見ている前で。
「──っ」
臓硯は桜の返事を薄く笑みを浮かべて待つ。……蟲倉で悲鳴を上げる桜を見るのと、同じ顔でだ。
──臓硯による桜への教育は、徹底的な折檻・凌辱によって行われた。桜は骨の髄まで、逆らうことの恐ろしさ、無意味さを教え込まれている。間桐桜が間桐臓硯に楯突くことなど出来はしない。そのように育てられたのだから。
だから桜は、間桐の為の贄になると、それを受け入れると、そう言うしか──、
「──あたた、かい……?」
桜が感じたのは、己を包む陽の光のような暖かさだった。
それは、自分の傍らに置かれている剣から感じられた。苛烈で、情熱的で、それでいて桜の全てを包み込むような、太陽の如き紅。
その暖かさは、桜をありのままで良いと肯定するようであり。
……桜の頬を涙が伝う。
押さえていたものが、堪えられなくなる。
「なりたい、わけ、ないじゃないですか。魔術師にも、生贄にも……! あんな痛くて、苦しくて、つらいのは、もう嫌……!」
涙と共に洩れ出た言葉。
それが、十年以上誰も聞き届ける事の無かった、誰にも告げる事の無かった、間桐桜の本音だった。
「つら、かった、です。ずっと、ずっとずっとずっと辛かった──!」
「……桜、お前」
「当然じゃないですか。暗い蟲倉に押し込まれて、苦痛を与えられて、体中作り変えられて、食事に毒を混ぜられて、平気な訳、ないじゃないですか……! どうして世界はこんなにも私を嫌っているんだろうって、どうして助けに来てくれないんだろうって。ずっと、私は──助けに、来て、欲しくて──!」
泣き言が堰を切って溢れ出す。
誰かに助けを求める声。……それはもしかしたら、慎二に向けられたものでは無かったかもしれない。桜にはもっと別に、助けに来て欲しい誰かがいたのかもしれない。
だが、その誰かは此処にいない。今いるのは、慎二だけだ。
今、桜の望む誰かになれるのは、間桐慎二ただ一人だ。
故に、その誰かは魔剣を手に取り──、
「──そっか。じゃあ全部燃えちゃえよ」
──灼熱の剣、『陽剣』が祖父の体を横凪ぎに断つ。
真剣など振るった事の無い慎二だったが、悪鬼を斬るその剣筋はこれ以上無く冴えていた。
軌跡に尾を引いた焔はそのまま拡散し、瞬く間に居間に燃え広がる。
「ぐぁぁああ──!? なにを、なにをする、慎二──!」
両断され炎に包まれた臓硯が唸った。
なにをする? そんなもの、
「兄貴の務めに決まってる!」
臓硯の体が焔に包まれ炭と化していく。
その光景に──特に感慨を抱くことなく『陽剣』を振るい、椅子を、机を、絵画を焼いていく。
慎二の弱い心は、間桐桜を汚す事で優位性を保ち自己を保っていた。だが、その桜が弱者でしかないのなら。慎二の桜への暴行に正当性など無く、ただあの老獪に踊らされていただけだというのなら。
慎二が己の愚行を正当化する為に恨みをぶつけるべきは、この祖父、この家をおいて他にない──。
「僕から魔術師である事を取り上げた上で、今度は僕から兄貴である事を取り上げようとした家だぞ。要るかよ、こんな家!」
あくまで保身の為に、あくまで愚かな自分を赦す為に。
そんなちっぽけな男のちっぽけな自尊心によって、
──歴史ある魔術師の家、間桐の工房が炎上する。
間桐邸が、燃え尽きていく。
慎二と桜は屋敷を脱出し、門の前で炎に巻かれる屋敷を見上げた。
それを見ていると涙で慎二の視界が揺らいだ。元から成れないのだと頭で分かっていても、魔術師の夢が夢のまま崩れていくのは、堪えるものがあった。……いっそ、笑いが込み上げてくる。
「ははは、くく、はははははは──ッ!」
少年は燃え盛る自らの屋敷を前に嗤う。
自分の全部が、人生が、黒煙を吐いて燃え尽きていく。
それが滑稽で仕方なくて、涙を流しながら、鼻水を垂らしながら、ただただ嗤っていた。
「……兄さん」
その姿を、桜は言葉をかけることもできず見ていたが、──慎二がこちらへ向き直る。
「はは──、は。……まだだ」
泣き顔のまま、鋭い刃を桜へと振りかざした。
「桜ぁ……、次はお前だ……!」
「え──、に、兄さん!? やめ──」
制止の声も聞かず、一切の容赦無く、憎悪に任せて振り下ろされた刃が少女を両断する。
瞬間、少女の身体は真っ赤な業火に包まれた。
「ぎィ、ぎぃやぁぁぁあああ──ッ!?」
上がる悲鳴。
それは──先刻両断された筈の、臓硯のものだった。
「あ、れ──、痛く、ない……」
桜の体は燃え上がるが──桜の表情に苦痛は無い。
代わりに聞こえるのは幾つもの蟲の断末魔と、臓硯の困惑の声。
「ぎぃぃ──、な、何故、いや何を、どうなっている──!?」
「質問は一つずつにしろよ爺」
桜の体内から臓硯の声が響く。桜を包む焔が臓硯の身を焼いているようで、しきりに苦悶の声をあげた。
「──っ、慎二、何故お前如きが、儂の居場所を突き止めた──!」
「僕ならそうするから。爺さんみたいに蟲になれるんなら、僕だって本体は身内の体内に隠しておくね。桜が聖杯の贄だっていうなら尚更だ。──爺さんは否定したいだろうけど、僕だって爺さんの間桐の血を引いてるから分かっちゃうワケ」
「ぐぅ──、な、何故、桜が燃えていない──! 一体何をした──!?」
「桜の中にいる蟲だけを斬ったんだよ。これは斬りたいものだけを斬れるって話だから、出来ると思ってさ」
「な、なんだそれは──! どういう魔術で、がッ──儂だけが燃える、儂が、燃え、燃えて──ッ!」
「そんなの魔術師じゃない僕が知るもんかよ。爺さんが僕を魔術師にしてくれてたら答えられたかもね」
臓硯が矢継ぎ早に口にする疑問に答える。
死を忌避する臓硯にあっても、無価値と捨て置いた慎二に殺されるという想定外の結末には「何故」が溢れ出て止まらない。
しかしその間にも灼熱は止まってはくれない、桜の体内、そこへ取り付いた蟲・間桐臓硯はもう燃え尽きようとしていた。
「い、嫌だ、まだ、死ぬ訳には──! ──っ、慎二! 育てた、恩を──、仇で返す気か──ッ」
「うーん、そうだな。確かに礼くらいは言っておくべきかもしれないなあ」
慎二は桜の胸元へ顔を近づけると、
「じゃあな、クソ爺。僕の人生を滅茶苦茶にしてくれてありがとよ!」
「ごぁ──、────」
慎二の言葉が届いたか。
間桐臓硯は、その五百年の妄執諸共、塵と消えた。
「……く、くく、ははは、はははは──! あんだけ偉そうにしておきながら、簡単にくたばってやんの! 僕を虐げるからこんな事になるんだ! ははははは、ははははは──っ!」
慎二は嗤う。
涙と鼻水で滅茶苦茶になった顔で。
「はははは、ははははははは──」
嗤った。
嗤った。
憧れも、家も、妹以外の全てを失った少年は、ただ嗤った。
「…………え?」
間桐桜を襲った感情は、困惑だった。今、剣で斬られたにも関わらず無傷な事も不思議だが。
自分を捕えて逃がさなかった間桐の家は焼け落ち、恐ろしくて仕方なかった臓硯は消え、憐れな兄は二度も自分を救っていた。……まるで意味が分からない。
未だ現実感の無いふわふわとした心持ちで、その兄を見やる。
先程まで高笑いしていた彼は、
「ああっ! 僕の剣が消えていく! 僕の剣、僕の力が──っ!」
先刻の啖呵は何処へやら、役目を終えて大気に還る魔剣を取り戻そうと、無様に虚空を抱いていた。本当にどうしようもない人間だ。……だが、そのどうしようもない兄が、桜を間桐邸の外へと連れ出してみせたのだった。
「……連れ出した、というか。焼け出されたんですけどね」
苦笑する桜。屋敷は燃え盛り、祖父は焼け死に、とても笑っていられるような状況ではないのだが、この突飛な状況にもはや苦笑する事しかできない。
──と、そこで桜は炎上する間桐家以外の光源に気付く。
「あ──、朝……」
桜を照らす太陽。頭上には青空が広がっている。そういえば、キャスターの催眠が解けてから空を見上げていなかった、と桜は気が付いた。
暗い蟲倉の天井ではない、どこまでも広がる、青い、青い空。
不出来な兄と太陽の剣によって強引にもたらされた夜明けに、桜は呆然としてしまう。
自由など十年以上知らなかったのに、こんな広大な世界に突然放たれてどうしたら良いのか。
……隣を見れば、慎二も呆然とした様子で空を見ていた。なら良いか、と桜は同じように空を眺める。
黒焦げになった間桐邸を背に、その兄妹は自分たちに訪れた遅すぎる朝に漫然と身体を預けていた。
「おい、桜」
「はい、兄さん」
「間桐家が無くなって、僕、この先何になればいいんだろうな」
「何にでもなれると思います。兄さん、勉強も運動もできるから」
「……そっか。そうだよな」
「それと──」
「あ?」
「たとえ間桐家があったところで兄さんは当主になれないので、間桐家があっても無くても兄さんの人生は何も変わりませんよ」
「──っ!? 桜、お前、言うようになったな……!?」
「ご、ごめんなさい……! その、正直に思ってる事を言えって、さっき兄さんが言ったから……」
「……チッ、身の程を弁えろよ、桜ぁ! 間桐家が無くなった以上、いくら魔術が使えても意味は無いんだ! お前はただのグズの妹なんだからな!」
「はい、兄さん。それで、その妹が早速頼りたいんですけど……」
「は? なんだよ」
「兄さんのせいで家財まで全て焼け落ちてしまいました。私たち、今日寝るところも無いです。どうしましょう?」
「…………衛宮の家、行くか」