レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~ 作:鏑木カヅキ
経験値は俺たち全員に吸収され。
そして僅かな静寂が訪れて。
「や、やった……やったあああああああ!」
「うわああああ!
すごいすごい……すごすぎるってぇ!」
「お、俺たち助かったのか……うぐっ、うううっ」
低レベル組全員が喜びあい、抱き合い、そして泣いていた。
よほどの恐怖だったのだろう。
震えている奴らまでいる。
その気持ちはわからないでもない。
「あ、ありがとう。
君のおかげで倒せたよ……。
す、すごい人だね、君は」
「いや、あんたの攻撃があったからだ。
俺じゃ、奴らにダメージが通らないからな。
っと、レベルが上がったみたいだ」
ステータスリングを見るとレベルが7に上がっていた。
経験値は基本的にパーティやアライアンスに分配される。
ただ平等分配ではない。
基礎分配と貢献分配分がある。
基礎分配は参加しているだけで貰える経験値分で、それほど多くはない。
貢献分配は戦闘やクエストで貢献した割合によって分配される経験値だ。
俺とカスパーが倒したから、貢献分配は半々ってところだろう。
「一回の戦闘で一気にレベル7か。
僕もレベルが1だけ上がったよ。
……割がいいのか悪いのか。
とにかく助かったよ。
僕一人じゃ死んでたと思うし、君がいなければ勝てなかったよ」
カスパーが俺の顔をじっと見つめる。
「……君、本当にレベル1だったんだね」
「ステータスリングを見ただろ。
それに今のレベルは7。低レベル帯だよ」
「信じられない……あんなに強いレベル1がいるなんて」
「俺は敵の攻撃を弾いただけだ。
パリィに関してはレベルは関係ない。
技術があれば誰でもできる」
「……できないって!
それにさっき思い出したよ。
パリィって使えないスキル扱いされてるってこと」
「は? パリィが?
そんなわけないだろ。
こんな有用なスキル他にないぞ?」
ゲーム世界でもパリィは上級者必須のスキルだった。
八割くらいの攻撃は弾けるし、低レベルでも使えるからだ。
上手い人であれば強敵を低レベルで完封できるくらいなのだ。
使えないわけがない。
ん?
いや……なんだ?
何か失念しているような。
「確かに敵の攻撃を弾ける!
大きな隙を作ることもできる!
でも、失敗したらほぼ死ぬんだよ!
パリィを使う間は使用者にも隙が出来て、防御力が下がるんだから!」
そうだ。
パリィは確かに強いし有用だ。
だがそれは成功すればの話。
失敗すればほぼ死ぬ。
毎回、綱渡りをするようなプレイヤーは少なかった。
『ブラッドループ』では一度死ねば最初からやり直しだ。
だからパリィのようなリスクの高いスキルを使うのは極一部だけだったのだ。
まあ、それはわかったけども。
だからなんだ?
「そりゃそうだろ。
これだけ効果が絶大なんだからそれ相応のリスクがあるのは当然。
死ぬくらいはするんじゃないのか?」
「し、死ぬくらいって……。
そ、そんなリスクを取って君はパリィを?」
「ああ、そうだが?」
当たり前だろ。
死というリスクがあるからこそ、このスキルは強い。
確かに安全マージンは必要だ。
安全性は狩りに必須と言える。
だが、敵を倒すにはダメージを与える必要がある。
だから攻撃は必須だ。
そして高レベルになればなるほど敵は強くなり、そして経験値効率は悪くなる。
だったらどうする?
適正レベルよりも上の敵を倒して豊富な経験値を得るしかないだろ?
時間をかけ続けても、レベルは上がらない。
どこかでリスクを取る必要はあるのだ。
だから俺はそのリスクを『パリィ』を使うことで受け入れている。
それ以外は可能な限り危険を排除しているつもりだ。
魔の王ゴルデベルドもパリィがなきゃ、かなり苦戦するはずだ。
結局、どうあがいてもリスクはあるわけで。
「パリィは戦術の要だしな。
これがあってこそ強敵に勝てる」
「君は……と、とんでもない人だ。
見たことがない。君みたいな人は」
わなわなと震えているカスパー。
そんなに驚くようなことだろうか。
「冒険者なんていつ死ぬかわからない職業だろ。
狩りは特に危険だ。そこかしこに死ぬ要素があるからな。
目に見えず、気が付かず、だが近くに死は潜んでる。
今回だってそうだっただろ」
俺は低レベル組の方に視線を送る。
カスパーがはっとした顔をする。
「俺からすればおまえらは自殺願望があるのかと思ったぞ。
ダンジョンの特性から魔物の種類や弱点を予測もせず、事前準備もせず、隊列も組まず、連携もせず、戦闘組は真っ先に逃げる。
理解して死を受け入れるのか、理解しようともせず死へと向かうのか。
同じようでまったく違うと思うが」
「そ、それは……」
しゅんとしてしまった。
説教しているつもりはないんだが。
別にどうだっていいし。
ただ。
「死ぬなら一人で死ぬ。
責任は全部自分で取る。
それなら好きにすりゃいいが。
誰かを巻き込むなら、それ相応の責任ってものが出てくるからな。
目下の人間がいるならなおのことだ」
だから俺はソロをしている。
まあ、経験値効率がいいとか、邪魔がいないとか、そもそも一人の方が好きとか他にも理由はあるけどな。
パーティやアライアンスを組むなら組むでやり方は変えるべきだろう。
そこまで考えてふと気づく。
(レベル1だった男に色々言われたらプライド傷つくよなぁ。
ま、死ぬよりゃマシだろ。次は少しは考えるだろうしな)
カスパーはマシな方だ。
むしろ頑張っている。
低レベル組を見捨てずにいてくれたしな。
だから、まあこれは、正直俺からの助言だ。
何も言わずさっさと帰ってもよかったんだが。
いい奴だからな、こいつ。
死んでほしくないって、思っちまった。
「準備を怠るな。
調べろ。
考えろ。
すべてを用意しろ。
あらゆる事態を想定しろ。
引き際をわきまえろ。
最後の最後、命がありゃまた挑戦できるからな」
「……うん、君の言う通りだ。
僕たちは……僕は甘く見ていたかもしれない」
さらに委縮してしまうカスパー。
もっと言い返していいんだがな。
正直、罵倒されても構わないと思っていたし。
こいつ、真面目過ぎるだろ。
思わず俺はふっと笑い、そしてカスパーの肩をぽんと叩いた。
「ってことで、帰ろうぜ。
おい! いつまで抱き合ってんだ!
こんなキラキラしてる場所さっさと出るぞ!
目が痛いからな!」
低レベル組は慌てて身なりを整える。
駆け出しとはいえこいつらも冒険者だ。
この経験を乗り越え、いい冒険者になって欲しいもんだ。
俺の狩りの邪魔をしない程度のな。
と。
「ん? なんだこれ」
インベントリに何か入っている。
何か手に入れたつもりはないんだが。
それは『水晶核の欠片』と書いてあった。
取り出してみると、かなり小さなビーズのようなものだった。
しかし物体とは違う。
感触はなく、半透明で、不可思議な青い光を生み出している。
「これ何かわかるか?」
「え? これって? 何かあるの?」
カスパーはただじっと見つめるだけだった。
見えていない?
俺だけが見えてる?
……あ! もしかしてこれって!
(これがレリックか!?)
カンストした時にあった、新要素の一つ。
アイテムとは違う、別枠の装備か?
(どうやって装備するんだこれ
ん? うお!?)
胸に触れさせると、レリックが俺の中へと入っていく。
なんだ!? 何が起こった!?
消えてしまった。
まさか、と思いステータスを見る。
レリック:水晶核の欠片
VIT+5 危機的状況で防御力が一時的に上がる
ただし、その後、一時的に防御力が下がる
これってつまり、バフ効果? いやデバフもあるな。
なるほど。レリック……遺物か。
ボスを倒せば手に入るのか?
通常装備はステータスに影響はないし、ここまで直接的な副次的効果もない。
おいおいマジか。
ここに来て、ローグライト要素来ちゃうか!?
つまり、ボスを倒してレリック堀りをしろと、そういうことですか!?
俺はレベル上げが一番好きだ。
そして狩りも好きだ。
さらにこういう成長要素も大好きだ。
『ブラッドループ』では装備の効果は固定だった。
つまり一度手に入れたらそれで終わりだ。
もちろん、修理は必要だがそれだけだ。
だが、この強化要素は熱い!
狩りがより楽しくなるじゃあないの!
「はははっ! なあ、カスパー!
楽しいな、この世界はよぉ!」
「え? と、突然どうしたの!?」
俺は豪快に笑い、カスパーの肩を何度も叩き、そのまま歩き出す。
『ブラッドループ』の世界は最高だ。
俺はこの世界に転生してきて、本当によかった。
心からそう思った。