レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~ 作:鏑木カヅキ
俺はレベル80になっていた。
ループレベルは1のままだ。
ここまでなんと2か月しか経過していない。
自分でも驚いている。
まあ、駆け出しの時はどうしても経験不足、検証、準備などなど色々と時間が必要になるからな。
ゲームと現実とは勝手が違うし。
だが二度目となると、すでにやることは決まっているし情報もある。
時間短縮できるのも当然だ。
装備とか道具もあるし、スキルもあるからな。
ちなみに【経験値効率アップ・小】の効果だが。
途中の狩りで『10%ほど経験値が上がる』ことが判明した。
ちょっと渋い気もするが、悪くはないな。
そして俺が今どこにいるかというと。
「き、きききき、貴様ァッ!!
なぜまた現れた!?」
魔都ルーンデルの謁見の間にいた。
そして眼前には魔の王ゴルデベルド。
通称ゴルゴルが怒りでふるふる震えていた。
顔は兜で見えないが、絶対にブチ切れていることだろう。
「なぜってレベル上げのためだ」
「もう来ないと!
貴様はそう言った!
レベルカンストしたというのは嘘だったのか!?」
「いやカンストはした。
でもやり直してるのさ」
正直に答えた。
なのにゴルゴルの怒りは頂点に達する勢いだった。
「きき、貴様ァァァァァ!
適当なことを!
余の感情を揺さぶり、謀り、蔑み、飄々と虚言を吐きおるか!
ここまでの侮辱を受けたのは初めてだ……ッ!
許さん……やはり貴様は殺さなければならない……ッ!
この世から消え失せろ、愚昧ッ!
御覧じろ、魔の王の威風を!」
「おお、おお、怒ってんなぁ。
永遠に戦い続けようとか言ってただろ。
仇敵とまた戦えるんだから喜んだらどうだ?」
「誅(ちゅう)を下すッッ!」
激情のあまり、ゴルゴルの声がしゃがれていた。
逆鱗に触れたらしい。
なんでそんなに怒ってるのだろうか。
いや、さすがに狩りまくられたらそりゃ怒るか。
迫るゴルゴル。
そして俺はパリィ。
「ぐわあああああ!」
そして倒れるゴルゴル。
と思った瞬間、ゴルゴルは横に転がった。
「なっ!?」
ゴロゴロと地面を何度も転がり、そして体勢を整える。
パリィをしたはずだ。
「くはははは! その顔が見たかったぞ!
貴様のパリィはもう効かん!
体勢を崩す瞬間、その流れに身を任せ受け身をとる!
これはパリィ殺しの戦術よぉ!」
「まさか対策を練ってくるとは思わなかったぞ、ゴルゴル」
「そのゴルゴルをやめろっ!
ふん……これで貴様になす術はない。
今後こそ死ぬがよい!」
ゴルゴルの巨大な斧が地を這う。
俺はそれをパリィ。
「無駄だ!」
ゴルゴルは体勢を崩すが、そのままゴロゴロと転がった。
そして再び姿勢を正す。
ふむ。
「くははははは!
パリィなど無意味!
仕切り直しになるだけだ」
「あのさ」
「なんだ、降参か?
だが許さん。貴様は四肢をもぎ、激痛にもだえ苦しめ!
この世のすべてを恨み、後悔しながら死ぬ姿を見なければ気が済まぬ!
余を侮辱した不埒者は厳罰に処す!
さあ、続きだ……狩り狂い!」
「いや、だからさ」
「しつこい!
今さら命乞いなぞ」
「そうじゃなくて。
これってどうやって決着を着けるんだ?」
「……決着?
何を言って……」
そこでゴルゴルがはっとした顔をする。
そうなのだ。
俺はゴルゴルのあらゆる攻撃をパリィできる。
ゴルゴルは俺のパリィをすべていなすことができる。
俺の基本戦術はパリィだ。
つまり。
決め手がない。
「な、ならば長期戦と行こうか!」
「いや、長期戦になったら俺はここから逃げるぞ。
あんた、確かこの謁見の間から出られないだろ。
強力な魔物は一か所に封印されているって設定だったし」
ボスは基本的にボス部屋から基本的に出られない。
少なくともゲームではそうだった。
だが新ダンジョンでは赤い水晶人が部屋から出てきた。
あれは新ダンジョンの新ボスだからこそできた芸当だろう。
だけどこいつは違う。
ゴルゴルはいわゆる旧ボス。
ボス部屋からは出られないだろう。
「ぐぬ」
ゴルゴルが小さく唸った。
言い返す言葉はないらしい。
さてどうするか。
俺はこいつを倒して経験値が欲しい。
ゴルゴルは俺を殺したい。
しかし互いを殺す手がない。
とすると。
仕方ないがやるしかない。
俺は魔剣イースを装備した。
今までは片手斧か長剣との二刀流をしていた。
今は右手に魔剣イースを持っているだけだ。
「……何を」
「戦術を変える。
これからはパリィはしない。
つまり泥仕合ってわけだ」
「ほう? パリィという強力な武器を捨てる覚悟を決めたと、そういうわけか。
よいだろう。ならば卑怯な手はなしだ。
ここからは全力で……ぐわああああ!」
ゴルゴルの口上を無視して俺はゴルゴルに切りかかった。
ザン。
直撃。
「ぐっ! 喋ってる途中で攻撃とは……!
貴様……許さんぞッッ!!」
「ボスとの会話イベントなんて攻撃でキャンセルするのが当然だろ。
よっ!」
ザンザンザン。
連撃を放つ。
「くっ! 鋭い……ッ!
いい加減にせぬか!」
ブン。
ゴルゴルの剛腕が唸る。
俺は奴の攻撃を身を低くして避ける。
一、二、三、四。
攻撃を回避して即座に攻撃へと転じる。
「ぐわああああ!
なぜ軽々と避ける!
鬱陶しい!」
ブンブンブンブン。
サッサッサッサッ。
敵の攻撃が止んだ。
俺は剣を身構える。
「かかったな!」
ゴルゴルが僅かに遅れて再度、巨大な斧を振るう。
ディレイ攻撃だ。
ぶぉん。
強風が俺の頭上を通る。
俺は軽々と回避した。
「な!?」
ゴルゴルが目を見開く中、俺の攻撃は続く。
「ぐわああああああ!」
ゴルゴルは防御をすることさえ叶わない。
そりゃそうだ。
パリィ戦術を実践レベルにするまでは、ずっとこの戦い方をしてたからな。
相手の攻撃を完璧に読んで回避。
そして小さな隙を狙って攻撃。
敵の攻撃パターンはすべて覚えている。
当然、避け方も、隙をついた攻撃も。
そして。
魔の王ゴルゴルは膝をついた。
「ぐ……き、貴様……ッ!
余の会心の攻撃さえ、避けるとは……ッ!
パリィなぞせずとも戦えるではないか……ッ!」
「パリィは今の俺の基本戦術なだけだ。
効率がいいからな。
ただ、このやり方でも普通に敵は倒せる」
「く、くくく……やはり貴様は異常だ……。
我ら魔の者相手に効率を求めるか。
狂気の沙汰……だが……おも……しろい。
また、戦うぞ……次は負けぬ……!
次は一時間後……待っておるぞ、狩り狂い……!」
ゴルゴルは光となって消えていく。
なんだかちょっと満足そうな笑顔を残して。
「……なんだったんだ?」
俺は首を傾げ、ゴルゴルの心情をまったく理解できずにいた。
まあ、いいか。
どうせ、また狩るし。
経験値は12万くらいもらえるし。
と。
剣の刀身が欠けていた。
「あ、やべ、久しぶりにブンブン振ったからか?
力加減ミスったか。
ってかしばらく修理してなかったしな。
よし、一旦近くの村に戻って、久しぶりにあいつに会いに行くか」
俺はこの世界における、数少ない知り合いの顔を思い出す。
まあ、レベル上げはいつでもできるしな。
と。
なぜか突然、背中から視線を感じた気がした。
不思議と誰かが俺を非難しているような感覚に陥る。
気のせいか?
ずっと狩りづくめだったし、疲労が溜まっているのかもしれない。
少しだけ身体を休めてもいいかもな。
「じゃ、帰るか!」
俺はさっさと謁見の間から出る。
後ろからは、何か妙な威圧感を感じていた。
それは魔都ルーンデルを出るまで続いた。