レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~   作:鏑木カヅキ

18 / 22
第18話 俺はやりたいように生きる

 三日後。

 俺はフラウの家で寝泊まりしていた。

 俺を無視してずっと作業してるものだから、勝手に宿泊していたのだ。

 暇すぎたので竜丘陵の魔物を狩り回っていた。

 竜系の敵は巨大で戦いにくいからあまり好きじゃない。

 パリィもできないしなぁ。

 まあ、とりあえず周辺の敵は片付けておいた。

 今日も狩りを終えてフラウの家に戻った時。

 

「終わった」

 

 フラウが満足そうな顔をして仁王立ちしていた。

 その手には魔剣イースが握られている。

 美しいほど不気味な輝きを放っている。

 魔剣だからか、光も神々しいのではなく、なんというか禍々しい。

 刀身に欠けは一つも残っていない。

 完璧な仕事だ。

 

「どうどう?

 すごい?」

「ああ、すごいな。

 完璧な仕事だ。新品……いやそれ以上の出来だな」

「でしょ」

 

 ふふんと得意げに鼻を鳴らすフラウ。

 こう見るとかなり幼く見える。

 いつもと違ってかなりテンションが高い。

 相当に楽しかったんだろう。

 徹夜明け出しな。

 

「刀身は竜石で研磨した。

 柄はぐらついてたから嵌めなおしたし、黒炎の特性を強化するために火蜥蜴油を使っておいた。

 それと剣と手斧と防具もこっちも修理しておいた」

「助かった。

 サンキュな。さすがフラウだ」

「ふふん。

 あ、でももう下着に効果付与しないから!

 あんな変な仕事はもうお断り」

 

 フラウは嬉しそうに笑ったあと、急に怒り出した。

 普段はもう少し冷静というか、ダウナーな感じだ。

 俺に対しても態度が固く、距離がある。

 だが今は少し距離が近い。

 恐らく疲れから、距離感とかバグってんだろうな。

 その証拠に目の下にくまがある。

 目は輝いてはいるんだが。

 と、フラウは俺の手首を見るとぎょっとした。。

 

「……あれ?

 あなたのレベル……80?

 以前は確か60くらいだった。

 いつの間にそんなに……まさかレジェンド級冒険者になったの!?」

「いや、そんな面倒な肩書いらねぇよ。

 まあ、半年以上前にレベル80にはなってたんだけどな。

 カンストしてやり直して、またここまで来ただけだ」

 

 フラウは俺の言葉を聞いて、少し茫然とし、口を開いたままの状態になる。

 驚いているというより、えーと? 何言ってんの? みたいな反応だ。

 フラウが小首をかしげると同時に俺は言葉を繋げた。

 

「だからカンストしてここまで来たんだって」

「かんすと?」

 

 幼児みたいな反応だ。

 なんて意味なのぉ? みたいな顔をしてる。

 疲労もあってか反応が鈍い。

 

「カウントストップ。

 つまりレベルが限界まで行ったってこと。

 魔都でレベリングしてたら、レベル100まで行ったんだよ。

 んで、カンスト特典でレベル1からやり直しできて。

 その代わりに永続ボーナスとかカンスト限定能力とか得られるってわけだ。

 カンスト記念で新ダンジョンとかも出てきて――」

「ちょ、待って。

 ん? んんん?

 よくわからない。

 つまりあなたはレベルを上限まで上げた?」

「上げた」

「それでレベル1からやり直して、またレベル80になった?

 つまり……180レベルってこと??」

「そういうことだな」

 

 フラウは呆れたように嘆息する。

 

「はぁ、笑い話ならもっと面白いもの持ってきて。

 ……ふああぁ……くふっ。

 わたし、寝るから」

 

 フラウは馬鹿らしいとばかりにあくびをしながら、奥の部屋へと向かう。

 そんなに変なこと言ってたか、俺。

 カンストしたのは事実なのにな。

 ふむ、まあ別に信じてもらわなくてもいいが。

 別にちやほやしてほしいわけじゃないし。

 ゲームでカンストを目指していたのは自己満足のためだ。

 ゲーム世界が現実になったとしても、それは変わらない。

 俺の目的はレベルを上げることだけ。

 他はどうでもいいしな。

 俺は修繕された装備を見て、にまっと笑う。

 ちょっと嬉しいな、これは。

 武器防具を装備するとかなりしっくりきた。

 防具は軽防具で、見た目はそこら辺の冒険者と同じような感じ。

 だが実際は防御力向上、各属性耐性などの効果を付与している。

 これもフラウの仕事によるものだ。

 以前は下着にまで付与してもらったんだが、かなり不機嫌になってしまったんだよな。

 

「色々と助かった。

 邪魔したな」

 

 俺は別れの言葉のつもりだった。

 しかしなぜかフラウは足を止め、振り返る。

 なぜか少し気まずそうだった。

 

「……ね。あなたはいいの?」

「何が?」

「わたし、ダークエルフ。

 関わると不幸になるって言われてる。

 誰もここには近寄らない。

 ……母さんだって」

 

 俯きながら話しているが、悲しみはあまり感じない。

 悲しくないわけじゃない。

 多分、慣れてしまったんだろうと思った。

 

「どうでもいいな」

「信じてない?

 迷信じゃない。事実に基づいてる。

 実際、わたしと関わった商人の人も……」

 

 フラウは俯いてしまう。

 なるほど。

 俺も完全に超常的なものや霊的なもの、神的なものを否定するつもりはない。

 日本では八百万の神様が存在していると言われているし。

 神社や寺の文化は根差している。

 だが。

 

「信じる信じないじゃない。

 どうでもいいんだよ。

 俺はやりたいように生きる。

 価値や意味がある奴には関わるし、どうでもいい奴には関わらない。

 それで不幸な目に遭ったっていいんだよ。

 俺の運が悪かったってだけの話だ。

 仮に何かあってもどうにかすりゃいいだけどのことだしな」

 

 フラウはパチパチと瞬きをして俺を見つめていた。

 驚いているんだろうか。

 

「俺はフラウとこれからも関わるつもりだ。

 まあ、おまえが拒絶しなけりゃな。

 おまえほど優秀な鍛冶屋は他にいないんでね」

 

 フラウの表情が徐々に変わる。

 驚き、戸惑い、そして最後にはなぜか、ぷっと噴き出した。

 そしてはにかむように笑うと、いつもの怠そうな顔に戻り。

 

「そ」

 

 と溢した。

 そのまま何も言わず、あくびをしながら奥の部屋へ入っていく。

 あの母親である長老に言われた伝言はフラウには伝えない。

 フラウは言わずともわかっているし、伝えれば悲しませるだけだからだ。

 あの保身ばかり考えている母親なら渡した羊皮紙に書いてそうだけどな。

 

「じゃあな、フラウ。

 また来る」

 

 奥の部屋からフラウの手だけが出てきて、ひらひらと動いた。

 彼女なりの挨拶だろう。

 拒絶されてはいないみたいだ。

 俺は口角を上げ、店を出る。

 さて、魔都ルーンデルに戻るか。

 愛しのゴルゴルが待ってるからな!

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。