レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~   作:鏑木カヅキ

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第2話 ソロ狩りは最高だ

「やれやれ、冒険者ってのは命知らずな奴らばかりだな。

 安全マージンは狩りの基本だろうに、ったく」

 

 俺は女性冒険者を出口に送った後、再び『青毒沼の洞窟』に戻ってきた。

 魔物が再出現(リポップ)するまでの時間は計っている。

 狩り効率を考えると必要なことだからだ。

 女性冒険者と出会った場所の少し先まで戻る。

 洞窟の開けた場所。

 数百メートル級に広いホールで、半分くらいは毒沼に埋まっていた。

 そこには魔物は一体もいない。

 当然だ。

 俺が狩ったからな。

 懐から懐中時計を取り出す。

 この世界では珍しい逸品であり、特注品。

 狩りには必須のアイテムだ。

 

「まだもう少し時間がかかるか。

 冒険者がいたところに戻るか?

 いやあそこは2体しか湧かないし、効率が悪い。

 この開けた場所が一番狩り効率がいいし、待つか」

 

 入口からここまでの道中の敵を倒しているが、入口まで折り返す狩りルートは効率が悪い。

 敵の数、敵の種類、経験値、立地の悪さ、導線の悪さが原因だ。

 この開けた場所なら毒沼周辺を一周するだけで綺麗に狩ることができる。

 ここがこのダンジョンの最高効率狩りルートだ。

 

「今の内に状況確認しておくか」

 

 俺は腕時計を見るように、手を上げた。

 手首には『ステータスリング』がはめられている。

 金属製で、やや太めのブレスレット。

 つるっとした質感で表面には文字が浮かんでいる。

 『Lv80』と表示されていてその横にゲージがあり、経験値の割合が確認できる。

 やや機械を連想させるが、これは錬金術で生み出される魔道具って奴だ。

 俺は思念を送り、リングを稼働させる。

 するとホログラムが目の前に表示された。

 

●名前:マイル

 レベル:80

 EXP:248500/249910

 

 ステータス:HP  891/891

       MP  210/210

       STR 77

       VIT 51

       AGI 70

       INT 31

       MND 39

       LUC 55

 

 スキルポイント: 1(121)

 スキル  :パリィ、二刀流、道具使い・下級、錬金術・中級、インベントリ・小、投擲・中級

 魔術   :火球・下級

 聖術   :癒し・中級

 

 順調だ。

 スキルや魔術、聖術の数が少なく、そして内容が最低限なのは理由がある。

 それぞれの習得できる数が限られているからだ。

 個々に習得領域がある。

 なんでも覚えられるわけではないし、効果が高いものであればあるほど習得領域を大幅に使う。

 まあ、スキルポイントを消費する感じだと思ってくれていい。

 俺はソロ狩り優先のビルドにしている。

 覚えたいスキルや魔術、聖術はいくらでもあるにはあるが、この構築が一番効率がよかった。

 

 おっと、ビルドだなんだと言っていることに違和感を覚えただろ?

 言い忘れていたけど俺は転生者だ。

 前世は日本の大学生。

 そして今はここ……『ブラッドループ』と呼ばれる、死にゲーの世界に転生している。

 かなりの高難易度、いや理不尽でバランス崩壊したゲーム。

 敵は異常に強く、初期の雑魚敵でさえ殺されることもある。

 敵が複数いれば難易度が一気に跳ね上がる。

 レベルを上げれば敵の攻撃を数度耐えられるようになるが、それでも危険なことには変わりなく。

 しかもレベルに必要な経験値は無駄に多い。

 そしてボスはの攻撃はほぼ即死。

 しかもモーションが複雑で、避けるのは技術と経験と知識がいる。

 ダンジョンは無駄に長く入り組んでいて、魔物や罠の配置がいやらしい。

 それだけならまだいい。

 最大の問題は『一度死んだら最初からやり直し』という点だ。

 バカげてるだろ?

 超高難易度な上に理不尽な展開も多いこのゲームで何やらかしてんだと。

 当然、批判は殺到した。

 だが、ゲーマーってのはおかしな連中も多い。

 ぬるいゲームに飽きた連中がこぞって『ブラッドループ』に没頭したのだ。

 俺もその一人。

 

 何千時間もこのゲームに費やした。

 大学はさぼった。

 留年した。

 就活もしなかった。

 ライブ配信や動画配信、情報ブログの更新などで身銭を稼ぎ、ずっとゲームをプレイしていたのだ。

 その結果、俺は世界初のレベルカンスト直前まで行った。

 独自の狩りルートとビルド構築でそこまで到達したのだ。

 ではなぜ、レベル100でカンストとわかるのか。

 それはステータスの上昇値やデータ解析情報によって、カンストがレベル100で間違いないと言われているからだ。

 確定情報ではないので、もしかしたら間違っているかもしれない。

 それを確かめるためにも俺はレベルを上げ続けた。

 そして気の遠くなるような時間を費やしてレベルを99まで上げた。

 もうすぐ終わる。

 そう思った瞬間。

 俺は心臓麻痺で死んだ。

 まあ、ずっと徹夜続きだったからな。

 俺は志半ばで死んだというわけだ。

 俺は青毒沼の洞窟の天井を見上げた。

 ここは発光水晶が壁に埋まっているため、松明はいらない。

 明るいものだ。

 

「……あれはむかついたな」

 

 いまだに後悔している。

 休まなかったこと?

 ゲームを続けたこと?

 違う。

 死んでしまったことだ。

 俺の体がもう少し丈夫だったら死ななかった。

 あと少しでカンストしたのに。

 おっと、話が逸れたな。

 俺は日本で死んだ。

 そしてこの『ブラッドループ』のような世界に転生していたのだ。

 俺がそれに気づいたのは俺……つまりマイルが十二歳の時。

 マイルは田舎村の出身で森に遊びに行っていたところ、魔物に遭遇し、殺されかけた。

 その時の衝撃か、前世の記憶が目覚めた。

 ってかマイルって名前、いいよな。

 気に入ってる。

 なんか貯まりそうだろ?

 閑話休題。

 

「あれから五年……村では鍛錬、街では情報収集と道具や装備の準備をして、ソロで狩りをして、あらゆる要素がゲームと同じだと気づいて……」

 

 今までずっと狩り続けていた。

 結果、俺はレベル80。

 まだ前世の時には届かないが、ここまで来た。

 正直、前世よりもこっちの方が時間がかかっている。

 やはりゲームのようにはいかない。

 恐怖心などの感情もあるし、実際の体を使うのだから違いは多い。

 でも、ゲームと同じような快感はある。

 そのために俺はずっと狩り続けているのだ。

 

「過去回想終わり。現実と向き合うか」

 

 俺は独りごちて肩を回した。

『インベントリ』スキルを使って、手元に複数のアイテムを取り出した。

 ゲーム内のユニーククエストで手に入るレアスキルだ。

 『インベントリ』と呼ばれる特殊な空間にアイテムを保管して、そこから即座に取り出すことができる。

 まあ、ゲームでは一般的なシステムではある。

 この世界ではかなり特殊なスキルだけどな。

 俺は狩りのために用意していたアイテムを使った。

 『極鳥風羽』でAGI強化。

 『オーガの魂』でSTR強化。

 『永剛薬』でVIT強化。

 これで万全だ。

 

「10、9、8、7、6」

 

 俺は右手を横に伸ばす。

 虚空から生まれたのは魔剣イース。

 少し前、ダンジョンボスから手に入れたレア武器だ。

 武器も当然インベントリから取り出せる。

 さて、そろそろか。

 俺は懐から懐中時計を取り出す。

 これはインベントリに入れてない。

 ここで狩るのはこれで何度目か。

 頭の中で自分の行動を反芻する。

 

「5、4、3、2、1」

 

 俺は魔剣を振りかぶる。

 近くに敵はいない。

 だが俺は魔剣を横なぎに振り払った。

 と。

 ザン。

 

「グギャ!」

 

 丁度現れた魔物、ポイズンゴブリン数体を真っ二つに寸断した。

 奴らの体から粒子状の黄色い光が現れ、俺の体に吸収される。

 これが経験値だ。

 しかし、時間ぴったりだったな。

 リポップした瞬間を狙ったのだが想定通り。

 倒したのを横目で確認。

 即座に移動開始。

 全速力で毒沼周辺を駆け抜ける。

 

 インベントリから『火炎瓶』を取り出す。

 何もいない場所に投擲。

 同時にウーズが現れる。いわゆるスライムだ。

 粘質な液状の魔物。

 固まった液体がうにょうにょと動いている。

 バリン。

 火炎瓶が着弾。

 

「ズオオオ!」

 

 火に弱いウーズは即座に燃え上がり、動かなくなる。。

 

「次!」

 

 俺の足は止まらない。

 リポップの瞬間を狙い、攻撃する。

 それが最も討伐が早く、リスクが低い。最高効率の動きだ。

 続けてポイズンゴブリンとウーズを何十体も倒す。

 

「3、2、1」

 

 カウントと同時に、俺は斬撃を放つ。

 が。

 スカ。

 リポップしなかった。

 ここの魔物は少し遅れて倒したことを忘れていた。

 俺が攻撃し終えた数瞬後、魔物が現れた。

 グレーターデーモンが三体と、エリート級のデーモンウィザード。

 通常のコモンの魔物に比べ、エリートは上位種。

 やや強めに設定されている魔物だ。

 グレーターデーモンは先に倒しておくつもりだったが、計算を間違った。

 この世界では複数の魔物を相手にするのは危険。

 俺は大きなミスをしてしまった。

 ……なんてな。

 俺にその常識は当てはまらない。

 

「火球!」

 

 俺は魔物がこちらに気付く前に、即座に作戦変更。

 火球を奴らの足元に放つ。

 俺の火球は下級レベル。

 60レベル付近の魔物にダメージは大して入らない。

 だが目的は攻撃じゃない。

 

「ゴルゥ!?」

 

 生まれた土埃と煙で奴らの視界を奪う。

 俺は地面を滑るように疾走。

 そして一瞬の迷いもなく、奴らの間を駆け抜ける。

 ザザザン。

 完璧な腰斬。

 グレーターデーモン三体は一瞬で塵となる。

 その刹那、俺はその場から横っ飛びする。

 俺がいた場所に巨大な氷の槍が何本も突き刺さった。

 氷槍だ。

 着地、そして振り返る。

 

「やっぱり気付かれたか。

 最初の攻撃はほぼ氷槍だもんな、おまえ」

 

 見据えるはデーモンウィザード。

 憤怒の表情で杖を構えている。

 全身真っ白な異形の存在。

 神々しさと不気味さを兼ね備えた魔物。

 だがそんなことは俺にとってどうでもいい。

 こいつは狩り対象でしかない。

 相手との距離はおよそ十歩。

 俺の武器は長剣と魔剣、そして手斧。

 すべて近距離武器だ。

 地を蹴る。

 敵は魔術を唱え始める。

 近づく前に奴の魔術が完成する。

 デーモンウィザードは余裕の表情を浮かべる。

 が。

 ザシュッ。

 

「ゴルゥ……!?」

 

 奴の腹部に俺の長剣が突き刺さった。

 

「投擲スキルがあるんだな、実は」

 

 デーモンウィザードは腹を抑えつつ、倒れる……寸前で態勢を整えた。

 どうやらHPを削り切れなかったようだ。

 やっぱり近距離攻撃に比べて、投擲じゃダメージが少ないな。

 デーモンウィザードの魔術が完成。

 奴との距離はおよそ五歩。

 間に合わない。

 奴の手元に数メートル級の氷の槍が生まれる。

 それは一瞬で俺のもとへと飛んできた。

 避けられる速度じゃない。

 まともな冒険者であれば。

 ガギン

 俺は魔術をパリィした。

 

「……ッ!?」

 

 デーモンウィザードが驚愕の表情を浮かべる。

 魔術をパリィ、つまり剣で弾くなんて芸当は誰にでもできるものじゃない。

 ゲーム内でもかなり難しい部類とされていた。

 魔術は通常攻撃に比べて早く、そして軌道が複雑。

 しかもかなり強力な上に、掠っただけでも凍傷、火傷、毒などを食らうことが多い。

 だが俺はレベルカンスト直前まで行った男。

 当然、魔術パリィくらいはできる。

 俺は魔剣を手に取り、身構える。

 デーモンウィザーとは俺を警戒して動かない。

 だがそれが命取りだ。

 僅かな時間を経て。

 

「これで終わりだ」

 

 俺は魔剣を振るった。

 まだ相手との距離があるにも関わらず。

 次の瞬間、刀身に生まれた黒い炎がデーモンウィザードへと放たれる。

 『黒炎の斬撃』だ。

 

「ゴルゥッゥウ!」

 

 デーモンウィザードは避ける術なく、黒炎に焼かれ倒れた。

 これで毒沼周辺の魔物はすべて狩りつくしたはずだ。

 

「狩り終了」

 

 ギュワギィン。

 お? この金属音か、雷か、なんとも言えない効果音は。

 俺はすぐにステータスを確認した。

 

●名前:マイル

 レベル:80 → 81

 EXP:90/301240

 

 ステータス:HP  891/891 → 899

       MP  210/210 → 214

       STR 77 → 79

       VIT 51 → 53

       AGI 70 → 72

       INT 31 → 32

       MND 39 → 40

       LUC 55 → 56

 

 スキルポイント: 121 → 123

 

「レベルが上がった!

 やっと81か。長かったな……1レベル上げるのに一週間は長いって。

 昔のMMOじゃねぇんだからさ」

 

 愚痴と笑みを同時にこぼす。

 やはりレベルが上がる瞬間は楽しいし、嬉しい。

 この瞬間のためにやっていると言っても過言ではない。

 まだまだカンストには程遠い。

 だがゴールは見えている。

 

「一周で1500くらいの経験値か。

 リポップまで30分くらい……。

 残り300000くらいの経験値だとすると……6000分。

 狩りする時間が5分と考えても、200回必要だから足して7000分か。

 寝ずに狩っても約5日かかるって計算になるな」

 

 さすがにこの『青毒沼の洞窟』でのレベル上げだと効率が悪くなってきた。

 さっき同業者らしき冒険者もいたし、攻略組とやらがまた来ないとも限らない。

 そうなると狩場の奪い合いになる。

 効率は著しく悪くなるし、そもそも助けるために時間がとられる。

 無視すればいいのだが、それはさすがにできない。

 狩り優先とはいえ、助けられる人間が目の前にいるのに見捨てるほどクズではないからな。

 

「そろそろ狩場を変えるべきか。

 安全性を考えるとここで続けた方がいいが……」

 

 レベリングで重要なのは第一に安全性。そして次に狩りの効率性だ。

 死んでは元も子もない。

 だが狩りの効率は最大限に高めなければならない。

 その両立がレベリングでは不可欠だし、難しい部分でもある。

 とはいえ。

 

「ここも飽きてきたしな。

 じめじめしてて、臭いし、怠いし、暗いし」

 

 俺も人間だ。

 狩り効率がよければどこでもいくが、どこでも快適に過ごせるほど楽観主義ではない。

 適応力は高い方だが、さすがにここは過ごし辛すぎる。

 街からやや遠いから、必然的にダンジョン内か外で野営することになるのだが、まともに寝られない。

 一旦、街に戻って別の狩場に行くとしよう。

 次の狩場は……。

 俺はインベントリから羊皮紙の束を取り出す。

 俺が記憶している限りの『ブラッドループ』の情報を書き記している。

 そういえば、ゲーム内でも同じような状況になったな。

 確かあの時は……。

 ページをめくる手が自然に止まった。

 

「そうだ。次はここだった」

 

 そこにはこう書かれていた。

 ラストダンジョン『魔都ルーンデル』と。

 

「魔の王の住む最後のダンジョン……。

 雑魚敵もボスクラス。強敵、高レベル、凶悪な魔物が跋扈する場所。

 いいな。そろそろ安全な狩りにも飽きてきた頃だ。

 やってやろうじゃねぇの!」

 

 俺はほくそ笑み、手を振り上げる。

 さあ、次の狩場へ向かうぞ!

 

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