レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~ 作:鏑木カヅキ
「ああああああああああああああああ!
みみみみ、み、見つけたあああーーーーっっ!!」
『青毒沼の洞窟』で狩りをしている時のことだった。
6週目ですでにレベルは70。
グレーターデーモンをリポップ狩りしていたら、甲高い声が聞こえた。
「ん?
ああ、あんた確か以前ここで助けた。
えーと、ア、アイ……アイナ!」
「アイリ! 疾風迅雷のアイリよ!」
以前見た時より元気になっているようだった。
あの時は、死にそうな顔だったからな。
「無事でよかったな。
で? 何か用か?」
「何かって! それは……えーと」
さっきまでの勢いはどこへやら。
アイリはなぜか目を泳がせると俺に背を向け、長髪の男とひそひそと話し始めた。
その後ろには七人の冒険者たちが立っている。
なんだ、こいつら。
「会ったら何を言おうか考えてなかったんだけど!」
「あいつが狩り男なんすよね?
だったら素直に手伝ってくれと言えばいいっしょ。
噂だとずいぶん親切な男って話だったはずっすよね?」
「そ、そうね。
それでいきましょう」
再び俺に向き直るとごほんと咳払いするアイリ。
「『青毒沼の洞窟』を攻略したいの!
ボス討伐に手を貸してちょうだい!」
「断る」
「ええ、ありがとう。
じゃあ……え? い、今なんて?」
「だから断るって言ったんだ。
レベリングしたいからな」
アイリは呆気にとられ、後ろの長髪の男は戸惑っていた。
その後ろにいる冒険者たちも同じような感じだ。
なんだってんだ、藪から棒に。
「えーと、以前、あたしが困ってたら助けてくれたわよね?」
「ああ、それが?」
「い、いえ、だから今回も助けて欲しいんだけど。
も、もちろん報酬は出すわ!
手に入ったものは全員で均等に分けるつもりだし」
「いらん。
金も道具も武器も防具も間に合ってる。
俺が欲しいのは経験値だけだ」
「だ、だったら!
討伐したらボスの経験値が入るわよ!」
「全員で分配することになる。
それじゃ効率が悪すぎる。
俺はパーティもアライアンスも、基本的には組まん。
ソロの方が経験値効率がいいからな」
「あ、あのね!
ここは未踏破ダンジョンなの!
あたしたちが一番に攻略すれば、それだけ箔がつくのよ!
あんたの地位や名声も向上する!
冒険者の格も上がるし、ランクも上がる!
だから」
「興味ないな。
そもそも俺はソロ狩り専。
ギルドのことなんか知ったことじゃない」
俺の顔を見るとアイリは表情を曇らせた。
子供みたいにおろおろし始めた。
なんだ?
もしかして俺が頼みを快く聞くと思っていたのか?
「あいつが本当に狩り男なのか?」
「なんか噂と違うような」
「普通の冒険者じゃねぇか」
「魔物みたいな人間だって話だろ」
「中肉中背のただの人間……ってか頼りなさそうだぞ」
ひそひそと後ろで冒険者たちが話している。
俺を見て、ずいぶん訝しがっている様子だ。
なんだ?
あいつら何を話してるんだ?
「あー、その、狩り男さん。
ちぃと、うちらの話も聞いてくれはしないっすかね」
「聞いてる。
そのせいで時間を無駄に消費してる」
俺は少し苛立っていた。
狩りを邪魔されるのは結構なストレスだ。
この時間に魔物を狩っていたらと考えるだけ手が震えてくる。
経験値、経験値、経験値が欲しい……!
「いや、すみませんねぇ。
こちらが一方的に話しすぎました。
うちのリーダー、突っ走っちゃうところがありまして。
ボアみたいなもんと思ってください」
「だ、誰が突っ走りイノシシ野郎よ!」
長髪の男は地団太を踏むアイリを無視して、会話を続ける。
「先の話通り、うちらはこの『青毒沼の洞窟』を踏破したいんす。
でもうちらだけだとこのダンジョンをクリアするのは難しい。
で、協力をあなたに願いたいっす。
ただ、あんたが噂の狩り男だったとしても正直、俺らからすれば眉唾物でもあるわけで」
長髪の男と他の冒険者たちは怪訝そうな顔をしている。
俺を値踏みしている、そんな感じだ。
「ってか、なんなんだ狩り男って?
俺のことを言っているのか?」
「おや、ご存じないっすか?
あんたがそこかしこで活躍してるって噂が広まってるっしょ」
「活躍?
俺は好きに狩りをしているだけだ。
噂になるようなことは何もしてないぞ」
「なるほどぉ、浮世離れしてるってのは噂通りだ。
興味がないって感じっしょ。
アイリ姐さんの話もあながち間違ってないみたいっすねぇ」
「あたしが嘘つくわけないでしょ!
って、勝手に話し進めないでくれる!?」
「……まあまあ。
で、うちらはあんたに協力してほしい。
噂の真偽を確かめたいってのと、このダンジョンを攻略したいってのがある。
ただ、一方的に何かしてもらうってのも都合が良すぎるっすよね。
で、そちらさんの要求があれば聞きたいんすよねぇ。
例えば、ソロのあんたでは手に入りにくいものとかないすか?
物品じゃなくても伝手、情報、何かしらの協力とか色々あるっしょ」
アイリとかいう女冒険者に比べると交渉しようという姿勢が見えた。
俺の第一優先はレベル上げ。
そのために狩りがしたい。
そして次に重要なのが効率的な狩りだ。
そのためには効率のいい狩場と経験値の多い魔物、そして俺の成長が必要となる。
が。
レベル上げ以外で俺を強くするものもある。
それは『レリック』だ。
レリックは新ダンジョンのボスしか落とさない。
そして経験値効率をさらに高めるにはどうすればいいか。
「俺が欲しいのは新ダンジョンの情報だ。
新しい狩場の情報は常に欲しいからな」
「ほう。なるほどなるほど。
狩り男の名の通り、本当に狩りが第一優先ってわけっすか。
それなら俺に伝手があるっしょ。
こう見えて顔が広いんす」
「いいだろう。
俺はダンジョンの攻略を手伝う。
おまえは新ダンジョンの情報を渡す。
それでいいな?」
「交渉成立っしょ。
アイリ姐さん。狩り男さんが手伝ってくれるっすよ」
「え? あ、そ、そう。
……な、なんかあたし蚊帳の外じゃない?
この攻略組を集めたのあたしなんだけど」
「まあまあ、いいじゃないっすか。
リーダーは後ろでどんと構えるのが仕事っすから。
おっと遅れたっす。
俺はハイネ。よろしくっしょ」
「俺はマイルだ。
よろしく」
差し出された手を、俺は握り返す。
人好きのしそうな笑みを浮かべるハイネ。
コミュニケーションが得意なタイプらしい。
だが俺には通じない。
愛想がいい奴ほど、腹に何かを抱えているものだ。
ま、短い付き合いだし、どうでもいいけどな。
「で、一応確認。
俺のレベルは52。
リーダーは53っしょ。
あんたは?」
「今は70だな」
「な、ななじゅう!?
レジェンド級冒険者と同じくらいじゃない!
って、あはは! ま、まあ予想はしてたけどもね!」
アイリが驚き、叫び、そしてなぜか気まずそうに腕を組んだ。
忙しい奴だな。
「ちょっと失礼」
ハイネが俺のステータスリングをじっと見つめる。
リング表面には現在のレベルと現在の経験値ゲージが表示されている。
「……本当に70っすね。
まさかソロの冒険者がこのレベルに至れるとは……。
ありえないことっしょ」
呟くように言うハイネ。
少し俯いていたハイネが、顔を上げるとギラリと眼光を鋭くしていた。
しかしそれも一瞬。
すぐにいつもの軽い雰囲気が漂う。
「お、おい、本当にレベル70なのか?」
「だとしたら、なんでソロ?」
「何か裏があるんじゃないのか?
例えば闇市とかで買ったとか……」
「非合法のリングはまともに機能しないぞ。
それはさすがに」
ひそひそと冒険者たちが何かを話している。
……面倒だな。
「じゃあ、さっさとボスを倒しに行くぞ。
ついてこい」
俺がさっさと先を歩くと、アイリたちが慌てて後に続く。
「ちょ、ちょっと!
リーダーはあたしなのよ!
仕切らないでくれる!?
あと、前に助けてくれてありがとね!
ちゃんとお礼言ってなかったから!」
早口で一息で言い放った。
姦しい。
アイリの声が洞窟内に反響している。
ここは魔物の巣窟であることを理解しているのだろうか。
まあ、この辺りの魔物は全部狩っているが。
俺は嘆息し、歩を進める。
「おい、本当に大丈夫なのかよ。
レベル70とは思えないぞ。
見ろよ、あの覇気のない顔と平凡な装備を」
「それに、あいつが狩り男って保障あるのか?
ダンジョンに籠っているだけの変人かもしれないぞ」
「ってかそもそも噂が本当なのかどうかわからねぇからな」
後ろで不満が噴出している。
別に何を話そうがいいが、俺に聞こえてることをわかってんのか?
突っ走る向こう見ずなリーダー、アイリ。
口が軽く、妙に怪しげなハイネ。
そして統率なんて微塵も取れていない攻略組の冒険者たち。
こんなアライアンスでよくダンジョン攻略しようと思ったな。
(それとも他のアライアンスやパーティもこんなもんなのか?
カスパーたちと組んだ時も酷いもんだったしな……。
やっぱり、ソロが一番だな)
嘆息し、俺は気を取り直す。
さっさとボスを倒して終わらせよう。