レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~   作:鏑木カヅキ

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第26話 ソロでボス狩り

「し、信じられない」

「う、嘘だろ……こ、こんなことが……」

 

 剣戟の合間を縫って、アイリたちの声が聞こえた。

 ガギンガギンガギン。

 パリィパリィパリィ。

 何度も何度も蟲毒のデーモンの攻撃を弾いた。

 奴の腕や脚、体当たり。

 そして『まき散らした毒』さえも。

 

「な、なんで!?

 全部の攻撃を弾いてる!?」

「毒さえ弾くなんて……。

 初期スキルであんなに強いなんて驚きっしょ」

 

 パリィは可能性の塊だ。

 だが扱いが非常に難しいとも言われている。

 それにパリィだけで敵を倒すことはできない。

 パリィはあくまで防御手段。

 そして蟲毒のデーモンは体幹が強い。

 ゆえに体勢はなかなか崩れない。

 ではどうする?

 

「グガアアアア!」

 

 ザン。

 斬る。

 隙を見つけて。

 ザンザンザンザン。

 何度も斬る。

 パリィをすれば相手の体勢が大きく崩れずとも、攻撃を止めることは可能。

 ほんの僅かな隙は生まれる。

 俺はそこを狙った。

 ヒットアンドアウェイならぬ。

 パリィアンドヒットだ。

 ガギン。

 ザン。

 ガギン。

 ザン。

 蟲毒のデーモンのHPは無駄に多く、そして防御力も高い。

 本来、こいつは魔術で倒す。

 だが俺が持っている魔術は火球・下級のみ。

 レベル60以上の敵にはダメージは皆無だ。

 だから地道にこうして斬るしかない。

 のだが。

 

「さすがに面倒だな」

 

 俺は苛立ちながらつぶやく。

 こいつは倒すのに時間がかかる上に、経験値がまずい。

 なのに戦わなくてはならない状況に腹が立ってきた。

 

「ゴルゥ!」

 

 敵の大ぶりのパンチ。

 触れたら毒に冒され死ぬ攻撃だ。

 俺はそれを僅かに屈んで避けつつ、魔剣イースを両手持ち。

 力と意思を手に伝え。

 刀身に溢れた黒い炎。

 魔剣イースの持つ特殊攻撃。

 発動までは少し時間がかかる。

 その間、パリィはできない。

 

「ギゴルゴルゴル!」

 

 蟲毒のデーモンの猛攻。

 俺はそれをパリィせずにすべて回避する。

 

「あ、あの猛攻をすべて避けてる!?」

「なんて体捌きっすかっ!?」

 

 蟲毒のデーモンの動きはすべて覚えている。

 だがゲームの中と違って、ある程度のランダム性がある。

 プログラムじゃないから、当然だ。

 だがそこまで奇抜な動きはしない。

 だから避けられる。

 俺は魔剣イースに力を込めながら、ひたすらに避け続ける。

 そして。

 ブン。

 大ぶりな敵の攻撃を飛び退いて避けると。

 

「時間だ」

 

 俺は魔剣イースを振るった。

 『黒炎の斬撃』。

 すべてを灰燼に帰す一撃。

 

「ゴルウゥゥアアァ!」

 

 蟲毒のデーモンが断末魔の悲鳴を上げる。

 体液を飛び散らすが、すべて黒炎が焦がした。

 そして。

 蟲毒のデーモンは倒れた。

 

「狩り終了」

 

 俺は武器をインベントリに戻し。

 そして振り返る。

 

「た、倒しちゃった……本当に。

 一人で……あのボスを」

「し、信じられないっしょ。

 推奨レベル60のダンジョンボスを……」

 

 全員が呆気にとられた表情を浮かべていた。

 と。

 俺たち全員に蟲毒のデーモンの経験値が注がれる。

 だが俺のレベルは上がらなかった。

 分配している上に、こいつの経験値はまずい。

 当然、そうなるわな。

 まあ、俺が選んだ道だ。

 誰のせいでもない。

 

「や、やった……やったんだな……!

 俺たち……『青毒沼の洞窟』をクリアしたんだな!」

 

 目を覚ましていた冒険者の一人が嬉しそうに叫んだ。

 一部はまだ気絶しているが、大半は目覚めているようだ。

 全員が嬉しそうに笑顔を浮かべている。

 

「ああ、やったんだ……!

 未踏破ダンジョンをクリアしたんだ!」

「これで俺たちの名声は轟くんだ!

 がははは!」

「金持ちになれる!

 これでゴールドランク……いやダイヤランクに!」

 

 空気が弛緩している。

 さっきまでの緊張感は一瞬で霧散していた。

 俺は小さく嘆息する。

 だが何も言わない。

 俺は俺の仕事をしただけ。

 だから、こいつらがどういう考えをして、どういう生き方をするかはどうでもいい。

 俺にとって未踏破ダンジョン攻略に魅力もこだわりもない。

 

(この世界の冒険者ってのはこんなもんなのか)

 

 カスパーたちの攻略組を思い出す。

 自分優先。

 お粗末な狩り。

 ダンジョンや狩り、魔物に関する知識の欠如。

 奴らとこいつらにそんなに違いはないだろう。

 少しの落胆。

 少しの理解。

 それが一気に去来した。

 そんな中、一人立ち上がる人物がいた。

 アイリだ。

 全員の注目が集まる中。

 彼女は。

 

「ダメね! これじゃ攻略したとは言えないわ!

 最初からやり直し!」

 

 そう言い放った。

 静寂。

 そして数秒後。

 

「な、何言ってんだリーダー!

 ボスは倒しただろ!?」

「倒したのは狩り男じゃない!

 あたしたちはボスのHPを大して削れもしなかった!

 ボス部屋に来れたのも狩り男のおかげでしょ!」

「そ、そりゃそうだけどよ。

 でもそいつも仲間だろ!」

 

 ビシッと俺を指さす一人の冒険者。

 仲間かどうかは微妙だが、協力者ではあるか。

 

「いいえ、手伝ってもらっただけ!

 なのに大半は狩り男がやってくれた!

 これって攻略したって言える!?

 ここまでの道中とボス戦をみんな見たわよね!?

 薄々みんなもわかってるでしょ!

 狩り男はソロでもこのダンジョンを攻略できたのよ!」

 

 アイリがビシッと俺を指さす。

 うん、人を指さすのやめてな?

 

「狩り男は思っていた以上にすごかった!

 そしてあたしたちは思っていた以上にダメだった!

 だからこの『青毒沼の洞窟』を攻略できなかったのよ!

 でもだからって今回の攻略を自分たちの手柄にしていいの!?」

 

 ハイネはアイリをじっと見つめている。

 何を考えているのかは傍目からはわからない。

 冒険者たちは苛立ちながらも何も言い返さない。

 図星だと思ってるみたいだ。

 

「あたしはねある程度有名になって、多少ちやほやされて、それなりの男貴族に見初められて、まあまあな家に住んで、可愛い子供二人を生んで、幸せな人生を歩みたいの!

 そのために冒険者になったし、未踏破ダンジョンを攻略しようと思ってるの!

 俗っぽい夢だってわかってる!

 冒険者である必要もない!」

 

 最初は苛立ち、不服そうにしていた冒険者たちの表情が変わっていく。

 アイリの言葉を素直に受け止めているらしい。

 こいつらは俺からすればただの冒険者。

 だがそれぞれの人生があるのだろう。

 

「でもね、あたしにだってプライドってもんがあんのよ!

 こんなズルみたいなやり方で得たもので幸せになりたくなんかない!

 あたしは! 堂々と! 胸を張って! そんで幸せになるの!

 だから、今回の攻略はダメ! なし! 最初からやり直す!

 狩り男の力を借りるんじゃない!

 あたしたちだけでやり遂げるのよ!」

 

 しんと静まり返る。

 そんな中、動いた人間が一人。

 ハイネだ。

 

「ははは、普段はリーダーらしくないのに。

 こんな時はずいぶんと正論突き刺してくるっしょ。

 確かに姐さんの言う通りっしょ。

 俺もモヤモヤしてたんすよねぇ。

 あんたらはどうだ?」

 

 冒険者たちに振り返るハイネ。

 逡巡、そして。

 

「俺たちも冒険者だ。

 確かに……すっきりはしてねぇ」

「ああ、狩り男に任せっきりじゃなぁ。

 格好がつかねぇ」

「ガキに自慢話しても、嘘が混じっちゃ格好がつかねぇや」

「仕方ねぇ。リーダーの言う通り、最初からやり直すってことで」

 

 全員が立ち上がり、アイリの前に立つ。

 

「みんな……ありがと!」

 

 アイリが嬉しそうに、ハイネは仕方ないなとばかりに、冒険者たちははにかむように笑った。

 全員が思いを一つにして、ダンジョンを攻略する。

 それがもしかしたら冒険者としての矜持なのかもしれない。

 パーティやアライアンスの面白さがそこにあるのかもしれない。

 俺は、ふっと笑い。

 ハイネの肩に手を置くと。

 

「茶番は良いから新ダンジョンの情報くれるか?

 さっさと狩りに行きたいんだが」

 

 全員が俺を信じられないという顔で見ていた。

 なぜだ。

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