レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~   作:鏑木カヅキ

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第3話 ラストダンジョンで狩りをする

 魔都ルーンデル。

 この世界に似ているゲーム『ブラッドループ』におけるラストダンジョン。

 そこにはラスボス『魔の王ゴルデベルド』が存在する。

 ネット民からは、やたら濁点が多いので濁点王などと揶揄されている。

 俺は街で道具や食料の補充を終えて、魔都ルーンデルに足を踏み入れた。

 

「……遠すぎだろ、ここ」

 

 『ブラッドループ』世界は日本の九州みたいな形をした大陸だ。

 大陸中に魔物は存在し、魔都ルーンデルは最北端にある。

 人間が住む領域は南側。大陸中央から下半分だ。

 北へ向かうほど魔物が多くなり、人間が少なくなり、環境がどんどん劣悪になっていく。

 毒だの、穢れた土地だの、瘴気だのが増えていくのだ。

 ダンジョンはそこかしこにあるが、レベルの高い敵は必然的に北へ集中していく。

 『青毒沼の洞窟』もやや北側に存在している。

 魔物が北側から攻めてきている、みたいなイメージだ。

 とはいえ、大陸の北側一割程度しか侵食されてはいない。

 でも大陸中に魔物は存在している。

 うん、ちょっと意味がわからないよな。

 人間で言えば、敵国の中に自軍兵士が点在しているみたいなもんだし。

 でも魔物は大陸中にいるから、他に説明のしようがない。

 まあ、ゲーム世界だからな。

 そこら辺の設定は緩いと思ってくれていい。

 

 大陸中央には最大の白金都市『プラチナム』がある。

 交易や商業も盛んな都市で、俺も良く足を運ぶ。

 ……国だの街だの情勢だの話すと長くなる。

 正直、あんまり興味がないし、これくらいにしよう。

 

 俺はそのプラチナムからここまで徒歩で来た。

 『腐海』と呼ばれる穢れた樹海を通り。

 『竜丘陵』と呼ばれる竜が跋扈する丘を登り。

 『白霧湖』と呼ばれる霧で充満した湖を渡り。

 ようやくたどり着いたのだ。

 いや、遠いって!

 まあ、ゲームで場所は知っていたけど、実際に来ると遠すぎる。

 ゲームだと一時間もかからずに来れたのに。

 現実だとなんと一週間もかかってしまった。

 『青毒沼の洞窟』でコツコツレベル上げしていた方がよかったのだろうか。

 

「……言っても始まらないか。

 ここまで来たらやるしかないしな」

 

 目の前に聳え立つ、巨大な都の防壁、そして正門。

 縦数十メートルはありそうな壁が俺を出迎えてくれた。

 門の横には鎧に身を包んだ魔物が数匹立っている。

 体から黄金の粒子を生み出している。

 黄金騎士と呼ばれる魔物だ。

 魔物だが見た目は人間に見える。

 まあ、鎧の中には誰もいないんだが。

 

「さてやりますか」

 

 ブゥン。

 俺は右手に魔剣イース。

 左手に手斧を手に取る。

 と、勢いよく駆け出す。

 黄金騎士たちが俺に気付く。

 俺を攻撃せんと迫ってきた。

 俺はそれを無視。

 完全に無視。

 当たりそうな攻撃のみをパリィか武器で受け流して、素通りした。

 

「おまえら強いから一旦無視するぞ!

 じゃあな!」

 

 門を抜ける。

 まっすぐに伸びる巨大な道。

 左右には人の街のような家屋が聳え立っている。

 繋ぎのない美しい工芸品のような建築物。

 おそらく魔術で作り出したものだろう。

 哨戒している黄金騎士と何度か遭遇したが無視してさらに進む。

 階段を上り、巨大な岩が落ちてくるのを避け、突如目の前に出現した黄金魔術師も無視。

 そのまま走り、城へとたどり着く。

 俺は迷いなく中へ疾走。

 ホールに出るとそのまま右。

 黄金騎士どもが邪魔をしようとするが当然無視。

 城内は豪奢で、すべて黄金で出来ている。

 魔都なのにすべて金とは、魔の王は相当に趣味が悪い。

 金色の絨毯を踏みしめ、さらに先へ。

 しばらく進むと、一つの部屋に入る。

 俺は扉を閉め、息を整えた。

 

「ふう、ここまで……十五分。

 上出来だな」

 

 かなり長い道だった。

 この部屋は今後拠点になる場所。

 ベッドとクローゼットだけがある簡素な客室。

 しかし中央には『安らぎの聖石』が浮かんでいる。

 ひし形の聖なる石。

 これはダンジョン内でプレイヤーが休憩できる唯一の場所となる。

 誰が置いたのか、なぜ魔物が襲ってこなくなるのか、理由を俺は知らない。

 だが聖なる力で魔を退け、冒険者や探索者に安らぎを与えてくれるのだ。

 聖石に触れるとHPとMP、スタミナが回復。

 ちなみにスタミナは数値として現れない。

 現実同様、トレーニングして地道に増やすしかない項目だ。

 

「さて、ここでスキルを変えておくか」

 

 安らぎの聖石では休憩以外にも、スキルの付け替えが可能だ。

 『ステータスリング』を掲げるとホログラムが表示される。

 

●スキルポイント: 3(123)

 スキル  :パリィ、二刀流、道具使い・下級、錬金術・中級、インベントリ・小、投擲・中級

 魔術   :火球・下級

 聖術   :癒し・中級

 

 前回のレベルアップでスキルポイントが2増えている。

 まあ、正直それで新しいスキルをつけるのは無理だが。

 さて、問題はスキル構成だな。

 『ブラッドループ』では行動指針によってビルドを変えるのが当たり前だ。

 残念ながらステータスをいじることはできず、クラスや生い立ちなどによってステータス傾向を変えることもできない。

 ちなみにゲームだと『騎士』やら『魔術師』やら『奴隷』やらの生い立ちやクラスから、ステータスや初期スキルなどを変えることができた。

 まあ、実際はそんな簡単に生まれを変えることなんてできないから仕方ない。

 それはそれとして。

 ダンジョンやフィールドなど幅広く活動する場合と、ボスなど強力な魔物を倒す場合では当然ながらスキル構成は変わってくる。

 今は雑魚狩り優先のビルド。

 アイテムで移動速度や攻撃力などを上げて、狩り効率を上げていた。

 だが、ここ魔都ルーンデルの魔物は全員がエリートモンスター、あるいはボス級。

 このスキルだと心もとない。

 

「とすると……ちょっと重いけど、ダメージ重視か」

 

 俺はステータス画面を操作する。

 

●スキルポイント: 3(123)

 スキル :パリィ、二刀流、瀕死回避、リゲイン、錬金術・中級、インベントリ小

 魔術  :なし

 聖術  :なし

 

 と、こんな感じか。

 各スキルポイントは瀕死回復が40、二刀流が30、錬金術・中級が20、自動回復・小が20、インベントリ・小が8、パリィが2って感じだ。

 瀕死回復は体力以上の攻撃を食らった時、一度だけ耐える。

 リゲインは敵に与えたダメージの一部をHPに変換して回復できる。。

 道具使用系のスキルを外して、回復系を入れた感じだ。

 正直レベル81の割には付けられるスキルが少ないし、やや効果が弱い。

 しかしこの世界に似た『ブラッドループ』というゲームは実際にこんな感じだった。

 かなり高難易度、スキル選択の幅の狭さ、バランス崩壊などなど。

 色々と不備や不親切な部分があったのだ。

 まあ、これはこれで選択肢が絞られるからいいんだが。

 もっとこう数十、数百あるスキルから選びたいもんだよな。

 

「まあ、あの開発じゃ無理か」

 

 俺は苦笑する。

 開発会社のプロデューサー配信なるものが定期的にあった。

 このゲームで最も不満の要因となっていた『死んだら最初からやり直し』要素に関して、プレイヤーたちの意見が殺到していたようだ。

 そんな中、このゲームのコンセプトを聞かれた時、プロデューサーはこう答えた。

 

『タイトル通り、やり直しがコンセプトですね笑。

 なので、死んだら最初からっていうのは変える気はないです。

 そんな簡単なの面白くないでしょ?』

 

 当然、ライトユーザーはブチ切れ。

 開発の傲慢な態度に不買運動まで始める始末。

 俺からすればなぜ怒るのかわからなかったが。

 エンタメってのは万人に受けるものである必要はない。

 ライトユーザーを切り捨てるゲームがあってもいい。

 だからこそ面白いっていうゲームだってある。

 一般人に寄せて何が楽しいのか。

 大衆向けほどつまらなく、平坦なものはない。

 実際、俺はこの人生(ゲーム)を楽しんでる。

 

「とはいえ、もっと遊びの幅が欲しいけどな。

 さすがにスキルは少ないし、ステータスもいじれないし。

 プラスアルファの装備やシステムもない。

 まあやりがいはあるしレベル上げは最高だけどな」

 

 俺は小さく愚痴を漏らし、しかしそれはわがままだと気づく。

 こんな最高な世界に転生してきて、まだ餌を欲しがるとは。

 不平不満ばかり漏らすユーザーと同じではないか。

 

「……準備完了。

 行くか。こっからが本番だ」

 

 ゲームで魔都ルーンデルに来たのは数回程度。

 レベル上げのために来たことを思い出す。

 ラストダンジョンである魔都には強敵がごろごろ転がっている。

 ボスも複数いる。

 それぞれが非常に強く、今の俺でも一撃で殺されるレベルの奴もいる。

 そんな中で、レベル上げのために狩るのはどの魔物か。

 倒す対象は決まっている。

 俺は休憩所から出ると再び廊下を走る。

 しばらくすると巨大な扉が出迎えてくれた。

 俺はそれに手を添えた。

 手にはインベントリから取り出した『謁見の間の鍵』を握っている。

 門の前に紋章が浮かび、それが弾ける。

 巨大な扉が開かれ中に入る。

 眼前に見えるは玉座。

 そして巨大な影。

 と。

 

「……矮小なる人間。

 ここまで来るとは、愚昧か蒙昧か。

 あるいは狂人か……」

 

 巨大な影が玉座から立ち上がる。

 それは漆黒の鎧を身に纏い。

 顔は兜で覆われて見えず、声はくぐもっている。

 左手に水晶石の杖、右手に巨大な斧を持ち。

 風にたなびく黒い髪。

 体中から瘴気を生み出し、部屋中を穢れさせる。

 異常な魔力。

 そして存在感。

 

「余の前に立つは死と同義。

 この魔の王ゴルデベルドの手で涅槃に落ちるがよい」

 

 魔物が身構える。

 そう。

 こいつが俺の標的。

 狩り対象。

 レベル上げのために狩る魔物。

 魔の王ゴルデベルドだった。

 

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