レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~   作:鏑木カヅキ

30 / 30
第30話 ゴルゴルは進む、どこまでも

「遅い……ッッ!」

 

 ドゴォン。

 怒り心頭に発しながら、地面に大斧を振り下ろす巨躯。

 魔の王、ゴルデベルドだった。

 彼の王は玉座に座り、じっと入り口を凝視している。

 だが来ない。

 あいつは。

 あの狩り狂いは。

 まーーーったく来ないのだった。

 

「遅い遅い遅すぎる……ッ!

 いつも以上に時間がかかっているではないかッ!?

 余をまた小馬鹿にしておるのか、あの男は!」

 

 ついには立ち上がり、うろうろとし始めてしまう。

 王としての威厳は微塵もない。

 さながら想い人を待つ、恋する乙女のようだった。

 すこしばかりその表現は荒々しいが。

 と。

 ズゥン。

 大斧を下ろし、顔に手をやる。

 

「もしや……またか? またなのか!?

 あの男、また余を謀り、蔑むか!

 カンストしてから、しばらくしたらまた来ると言っていたはず!

 しかぁし! また別事に気を取られているのではないか!?

 ……新しいダンジョンが生まれていると小耳にはさんだが……はっ!?

 まさか!?」

 

 魔の王、ゴルデベルドは顔を上げる。

 まさか、そんな、あり得ない。

 

「あ、あやつ! もっと経験値効率がいい相手を見つけたのでは!?

 そ、そんなはずはない。

 王たる余を超える経験値を持つものなど……」

 

 そう、それはあり得ない。

 なぜならゴルデベルドこの大陸を統べる魔の王だからだ。

 自身を超える経験値を持つ魔物は存在しない。

 そうだ。当たり前のことではないか。

 ゴルデベルドは安堵する。

 だが次の瞬間、ふと閃いてしまう。

 

「……例えば魔物やボスの経験値が効率が良く、そしてその数が多ければ?

 狩りルートを構築すると考えて……最終的に余よりも経験値が多ければ!?

 時間効率が上がる可能性があるとしたら!?

 そうなれば、どうなる!?」

 

 狩り狂いはもうここへは来ないだろう。

 間違いない。

 あの狩り馬鹿クソ雑魚人間は間違いなく来ない。

 こっちの方が経験値効率がいいんだから、行く意味あるか? とか言うに決まっている。

 浮かんだ。

 その情景が。

 腸が煮えくり返る。

 

「狩ぁりぃ狂ぅいぃぃーーーーッッ!

 許さん! それは許さぬぞぉ!

 散々、余を弄び、余で経験値を得て、レベリングしたというのに!

 不要になったら捨てるなぞと!

 この! 魔の王! ゴルデベルドを!

 そのような扱いをするのは、断じて許さぬぞーーッッ!」

 

 ゴルデベルドは憤っていた。

 あの邪知暴虐の狩り狂いを縊り殺さんと。

 ドゴォンゴガァ。

 その場で暴れまわる。

 柱や壁や地面は隆起して、まともな部屋とは思えなかった。

 だが、すでにあの狩り狂いとの戦いで元々破壊されつくされている。

 それを見ると、なぜか余計にイライラが強くなった。

 過去の情景が浮かんでしまう。

 あの男との戦い。

 あの男とのやり取り。

 そして。

 

「逃がさぬ……絶対に逃がさぬぞ、狩り狂いぃぃぃ!

 余はここから出てやる……この忌々しい封印を!

 聖神の茨を! 破壊せしめ、そして貴様を追ってやる!

 ぬおおおおおおおおおお!

 御覧じろ! 魔の王ゴルデベルドの生き様を!」

 

 ゴルデベルドは謁見の間、扉に貼られた聖なる壁を殴りつける。

 轟音と共に衝撃が走る。

 しかし靄(もや)、もとい聖なる壁は微動だにしない。

 だが構わない。

 こんなことは過去に何度も起きている。

 だから知っている。

 この壁がどれほど強固かを。

 だとしても。

 

「ぐおおおおおおお!」

 

 ゴルデベルドを止めることはできない。

 触れた箇所が浄化する。

 激痛が走る。鎧が、兜が溶ける。

 だが、それがどうした?

 構いはしない。

 ここでずっと閉じ込められ。

 孤独に生きていた。

 たった一人の王。

 家臣も敵も、誰もいない。

 時折聞こえる臣下の囁きが耳朶を震わすだけ。

 それ以外には何もない。

 孤独な世界。

 そんな場所に悠久の中で現れた男。

 自身を蔑み、謀り、虐げ、殺し尽くした男。

 その男と相まみえるため。

 ゴルデベルドはその身が砕けようと止まらない。

 寂しさ? 悲しさ?

 そんな俗物的な感情ではない。

 これは矜持だ。

 これは誇りだ。

 ゆえに今までとは違う。

 外に出るという強固な意志があった。

 鎧が腕が髪が兜が焼ける。

 それがどうした?

 行け。

 行け!

 行けぇっ!!

 

「わが身を外へ!

 行け! 行けぇ!!」

 

 ゴルデベルドは前へと進む。

 憎き聖神の制約を砕くため。

 そしてあの狩り狂いに相まみえるため。

 この世界との隔たりを壊すため。

 絶えず進み続け。

 そして。

 

 砕けた。

 

   ●◇●◇●◇

 

「なんだ? 今、誰かの声が聞こえたような」

 

 『灰城メナス』の牢屋に俺はいた。

 なぜか声が聞こえたような気がして振り返ったのだが、誰もいない。

 どうやら気のせいみたいだな。

 

「おお、情報通り。牢屋の中に穴があるな」

 

 奥は暗闇に覆われている。

 俺はインベントリから松明を取り出し、着火。

 巨大な穴があり、梯子と脆そうな足場があるだけだった。

 足場は奥へ奥へと続いている。

 こんな場所があるなんて。

 ネット上にもこんな場所の情報はなかった。

 もしかしてこの世界だけか?

 真っ暗闇。

 だが俺は恐怖よりもワクワクしていた。

 

「まったく、この世界は楽しませてくれるな」

 

 レベル上げだけでなく、レリック、そして新しい敵。

 経験値はどれくらい貰える?

 効率は?

 さらに追加される要素はあるのか?

 

 ああ、楽しみでたまらない。

 こんな場所で一人悦に浸っている。

 それが異常だという自覚はなくもない。

 だが。

 それでいい。

 俺は狩りをして、レベルを上げる。

 それが好きで好きでしょうがないんだから。

 さあ、行こう。

 新しいダンジョンへ。

 そして無限にレベルを上げ続け、カンストさせるのだ。

 

「待ってろよ、経験値ちゃんたち!」

 

 俺はそう叫びながら。

 新たなダンジョン『奈落の底』へと向かったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

最強ギルドマスターは十年前のゲーム世界に転生した 〜未来知識だけを武器に、見習い傭兵から王座を目指す〜(作者:窮北の風)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ゲーム開始十年前。最強だった男は、最弱の見習い傭兵として戦場に立つ。▼かつて俺は、世界的人気ゲーム『Throne of Glory』で最強ギルドを率いるギルドマスターだった。▼しかしギルド任務の最中、操作していたキャラクターは強敵に倒されてしまう。▼……次に目を覚ました時、俺はそのゲーム世界に転生していた。▼しかも時代は、ゲーム開始の十年前。▼今の俺は、ただ…


総合評価:3481/評価:8.45/連載:87話/更新日時:2026年07月25日(土) 23:16 小説情報

スキル制ステータスで現代をお気楽に過ご……したい(作者:逆鯖)(オリジナル:現代/ノンジャンル)

▼ 工場派遣として働く25歳、佐藤直人。▼ ある日突然、視界に《スキルシステム》なんてものが現れた。▼ 《清掃》《料理》《プログラミング》みたいな普通の技能から、《豪運》《魔術》《錬金術》《ダンジョン作成》なんて明らかにおかしいものまで、SPさえあれば取得可能。▼ だったらまあ、使うっきゃない。▼ 仕事は楽に、金はなるべく効率よく稼いで、自分の時間はしっかり…


総合評価:1883/評価:8.5/連載:6話/更新日時:2026年09月26日(土) 14:32 小説情報

崩壊世界でルートシューター(作者:穴熊拾弐)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

ルートシューターってジャンルのゲームがある。広大な廃墟に放り出されてゴミを漁って持ち帰る。それを売ったり、施設を改良したりして成長していくってゲームだ。俺はそれをやらされている。何故か人を喰う怪物が闊歩し、滅亡寸前の現実世界で。▼金が尽きれば命が尽きる。崩壊世界で生きる1人の傭兵の話。▼


総合評価:3176/評価:8.29/連載:57話/更新日時:2026年09月25日(金) 08:00 小説情報

ドールマスターヒロシ(作者:我島甲太郎)(オリジナル:SF/冒険・バトル)

人形使いは木製のマネキン人形を召喚して戦わせる職業だ。▼ゴーレムより脆く、精霊よりも火力がない木偶人形にも一つだけ利点があった。▼それはレベルを上げていけば、人間並みの知能を得られるということ。▼――なら、人工声帯とオナホ仕込んで嫁にするしかないよね。▼そんな性欲に脳を犯された猿どものせいで風評被害に塗れたとある人形使いの少年は、ある日に飛び降り自殺を図って…


総合評価:2489/評価:7.97/連載:125話/更新日時:2026年09月20日(日) 18:00 小説情報

【書籍化決定】クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

学校で進路を悩んでいた斎藤隆史(サイトウ タカシ)はクラスに馴染めずに居た。▼そんな最中、突如異世界にクラスごと召喚もとい拉致され、魔王と戦えと言われる。▼そして各自に役職と能力が付与されているからとステータスを開くように言われてステータス画面を見ると……皆が普通のRPG表記なのに、俺だけポケ◯ンみたいにレベル形式だし、技ってのが見える。▼そして始まる異世界…


総合評価:3171/評価:7.98/完結:95話/更新日時:2026年08月06日(木) 10:50 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>