レベルカンストした俺は2周目に突入する ~永続ボーナスや特典能力を貰ってレベル1からやり直していたら噂が広まりすぎて、周りが放っておいてくれないんだが~ 作:鏑木カヅキ
「おい聞いたか」
街の出口に向かっていると、道中で大声で話をしている冒険者たちに気付く。
「ああ、出たんだろ。
新しいダンジョンが」
「らしいぜ。
いつもは何もない場所に、突然出現したんだと!
何がきっかけかわからないから不気味だよな」
新ダンジョン?
……あ。これ、あれか!
俺がカンストしたから解放された奴か!
って、俺だけの特典じゃなくてこの世界全体のことだったのかよ!
おいおい、さすがに影響力、高すぎないか?
たかがレベルカンストしただけなのにさ。
……まあいいか。
ダンジョンが増えるのは間違いないし。
しかし気になるな、中が。
「もう調査隊を送ったんだろ?」
「ああ、調査したのは入り口付近だけらしいけどな。
どうやらレベル20程度のダンジョンらしい。
ただ、未踏破ダンジョンだからな。お宝がある可能性があるぜ」
「ダンジョンボスが何を落とすかも気になるな。
未発見のボスなら新しい武器とか落とすかもしれん。
装備レベルが低くても、新しい効果があるかもしれないしな。
新しい武器防具は価値が高いぞ」
アイテム類はどうでもいい。
どうせ使える武器防具はないだろうし。
ただ、狩場として使える可能性はある。
レベル1~10くらいは冒険者の人口が多いためか狩りがやりにくい。
どこの狩場も人が多いからだ。
穴場もあるが遠いし、ややレベルが高い魔物が出てくるところを通らなければならない。
レベルが低い分、遠出は危険だ。
ただ必要経験値が少ない分どうにでもなりはする。
レベル11~20くらいまでも同じ感じだが、ライバルが減る。
大体は死ぬか、冒険者に向いてないって感じだろう。
何度も言うがこの世界の魔物は強い。
恐らくレベル10まで生きている冒険者の数は恐らく五割程度だろう。
そして問題はレベル20~30。
ここから比較的、腕に自信がある奴らが増えてきて、狩場も減っていく。
その分、人が多くなりやすく、競合がいる可能性が高くなる。
俺の場合は、無理やりレベル40くらいの不人気ダンジョンに行ってレベル上げしている。
かなり危険で、罠も多いし、環境も最悪だ。
まあ『青毒沼の洞窟』みたいな場所だな。
それでもたまに攻略組がやってくるくらいなんだが。
話を戻そう。
レベル20付近のダンジョンがあれば狩場候補として入るだろう。
まあ、最初の内は人気があるだろうから人が多いだろうが。
今後のことを考えると一度は入った方がよさそうだ。
よし、今から行くか!
「ギルドで攻略組を募ってるって話だ。
しばらくはギルド側でダンジョンを管理するから個人じゃ入れないとかなんとか」
なんでだよ!
だからギルドは嫌いなんだよ!
すぐに冒険者やらダンジョンやら装備の販売やら色んなものを規制して管理する。
奴らはなんだ?
神にでもなったつもりか?
神はな、開発だけで十分なんだよ!
しかし、困った。
どうする。
新ダンジョン攻略というのは魅力的だ。
単純に新しい狩場はテンションが上がるし、レベル上げの狩りルートを更新できるかもしれない。
ただ今まで通りの狩場で、すぐにレベル上げをするのも悪くはない。
攻略組に参加する連中が多いなら、ライバルも減る可能性もある。
まあ、攻略組っていうくらいだから低レベルの奴は少なそうだけども。
………………決めた。
「たまには攻略組に参加するか」
普段はソロだがたまにはパーティを組むのも悪くないか。
面倒だし、経験値効率は低いし、人付き合いもやりたくないが。
ただソロに勝っている部分がある。
安全性だ。
俺はちゃんと安全マージンは取ってるから問題ないが、過信は禁物。
新ダンジョンでは何が起こるかわからないし。
カンストを転機に出現したダンジョンなんて、何かあるに決まってる。
このゲームの開発は意地が悪いからな。
俺は思わず笑みをこぼした。
楽しみだ。
そう思いながらギルドへ足を運んだ。
●◇●◇●◇
「レベル1ぃ?
初心者ですらねぇ、ただの雑魚じゃねぇか」
ギルドに入った瞬間にこの対応だった。
相手は休憩所にいた男。
確かカスパーにロイドと呼ばれていたな。
こいつが新ダンジョン攻略組のリーダーらしい。
さすがに攻略組に参加するにはレベルが低すぎるみたいだ。
やっぱり、ソロで入るか。
こっそり入ればバレないだろ。多分。
と。
「後方支援組に入ってもらえばいいんじゃないかな?
荷物持ちとマッピングとか、色々やってもらう予定だし」
カスパーと名乗っていた男が困ったような笑みを浮かべながら擁護してくれた。
どうやら彼らがこのダンジョン攻略を主導するらしい。
ロイドは、小さく舌打ちをする。
仲間にする態度じゃないな。
仲悪いのか、こいつら。
「……低レベル組か。
ギルドの指示で連れてけって言われてたんだったか。
ちっ、面倒だな。
まあ、雑務ならレベル1のクソ雑魚でもできるか。
中堅だと誰もやりたがらねぇからな。
カスパー。おまえが面倒見ろよ」
「わ、わかったよ」
笑顔で頷くカスパーに、ロイドはこれ見よがしに舌打ちをするとどこかへ行ってしまう。
ダンジョン攻略は危険だ。
低レベルの人間がいれば足を引っ張られる可能性だってある。
だが、あいつは一つ大きな勘違いをしている。
この世界(ゲーム)ではレベルがすべてではない。
当然、レベルが上がればHPもVITも上がる。
だから敵の攻撃で死ににくくなる。
だが雑魚敵でさえ、攻撃を複数食らえば普通に死ぬのがこの『ブラッドループ』の世界だ。
レベルはあくまで指針でしかない。
ちなみにレベルはクエストか魔物を倒すことでしか上がらない。
だが体を鍛えたり、武術を習ったりしている人間もいる。
つまりレベル1の達人も存在するってことだ。
もちろん、そういった連中の初期ステータスは高い。
だが大抵の連中はステータスは見ずに、レベルで判断するのだ。
それだけレベルによる恩恵は大きいということ。
だが、魔物でもレベルは低くても厄介で強い個体もいるのだ。
レベルは絶対ではない。
ただ、わかりやすく実力がわかるという側面もある。
ここはあいつの言う通り、邪魔しないように後ろに下がっておこう。
その後に!
途中で逸れたふりしてソロ狩りに勤しめばいいよな!
「それじゃ、アライアンス参加の申請を受付でしてきてね。
僕はカスパー。君は?」
「マイルだ。よろしくな」
「うん、よろしくね」
カスパーには悪いが俺にとってレベリングがすべてだ。
まあ、俺みたいなレベル1の初心者、途中で離脱しても誰も気づかないだろ。
俺は楽観視しながら受付へと向かった。