ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す   作:猫ロボF

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第一話 地に落ちたガンダム

教室。

 

黒板に教師の声が響き、生徒たちはそれぞれノートを取りながら授業を受けていた。

 

その中で、一人だけ異様なほど真剣な表情を浮かべている少年がいた。

 

ドモン・カッシュ。

 

17歳。

 

表向きは普通の学生。

 

しかし、その魂にはかつて世界を救った英雄が宿っている。

 

そんな彼の隣の席では――。

 

「ねぇ、ドモン」

 

小さな声が聞こえる。

 

隣を見ると、少女がこちらを覗き込んでいた。

 

エレン。

 

「何だ?」

 

「さっきからずっと真面目に授業受けてるけど、楽しい?」

 

「授業中だからな」

 

「いや、そういうこと聞いてるんじゃないんだけど」

 

エレンは少し呆れたように頬杖をつく。

 

「普通、もう少し友達と話したりするもんじゃない?」

 

「必要ない」

 

「……」

 

即答。

 

エレンの表情が少しだけ曇る。

 

「本当にドモンって面白くないよね」

 

「そうか?」

 

「そうだよ」

 

ドモンは首を傾げる。

 

何故怒っているのか分からない。

 

戦場なら相手の感情を読むことなど容易い。

 

しかし、こういう日常のやり取りだけは未だに苦手だった。

 

「……」

 

エレンはそっぽを向く。

 

そんな彼女を見て、ドモンは小さくため息をついた。

 

(難しいな……)

 

戦うことなら誰にも負けない。

 

だが、人との接し方というものは、未だに修行不足らしい。

 

 

昼休み。

 

チャイムが鳴ると同時に、生徒たちは一斉に教室を出ていく。

 

「ドモン、お昼どうするの?」

 

「購買へ行く」

 

「また?」

 

「食堂は混む」

 

そう言って歩き出した時だった。

 

「君!」

 

廊下から声をかけられる。

 

振り返ると、武道系の部活動に所属している生徒たちだった。

 

「君、何か武術やってるだろ?」

 

「その動き、普通じゃない」

 

「うちの部に入らないか?」

 

熱心な勧誘。

 

しかしドモンは困ったような表情を浮かべる。

 

「悪い」

 

「俺にはやることがある」

 

そう言って断る。

 

「そっか……残念だな」

 

生徒たちは去っていった。

 

その様子を見ていたエレンが呆れたように言う。

 

「また断った」

 

「必要ない」

 

「本当に武道一筋だよね」

 

「……」

 

ドモンは窓の外を見る。

 

「俺は強くならなければならない」

 

その言葉に、エレンは少しだけ黙る。

 

時々。

 

ドモンは17歳とは思えない顔をする。

 

まるで、ずっと昔から何かを背負い続けているような。

 

 

「じゃあ、私は先に屋上行ってるね」

 

「分かった」

 

エレンと別れ、ドモンは購買へ向かう。

 

しかし――。

 

そこは戦場だった。

 

「焼きそばパン!」

 

「最後の一個!」

 

「こっちも!」

 

昼休みの購買。

 

そこでは、限られた商品を巡る激しい争奪戦が繰り広げられていた。

 

普通の学生なら諦めるだろう。

 

だが。

 

ドモン・カッシュは違った。

 

周囲の動き。

 

人の流れ。

 

商品の位置。

 

一瞬で把握する。

 

「……」

 

そして次の瞬間。

 

彼の姿が消えた。

 

 

数分後。

 

屋上。

 

「遅い」

 

エレンは不機嫌そうに言った。

 

「悪い」

 

ドモンは袋を差し出す。

 

「二人分買うのが思ったより難しかった」

 

「私の分も?」

 

「当然だろ」

 

エレンは一瞬驚いた顔をする。

 

そして。

 

「……まあ、許してあげる」

 

そう言いながら、顔を逸らす。

 

しかし、その表情は少しだけ嬉しそうだった。

 

 

午後の授業。

 

再び静かな時間が流れていた。

 

その時。

 

突然。

 

校内放送が響き渡る。

 

『緊急連絡です』

 

『付近にてホロウ災害の発生を確認しました』

 

教室がざわめく。

 

ホロウ。

 

この世界に存在する、人類最大の脅威。

 

巨大な異空間。

 

その内部には未知のエネルギー、エーテル。

 

そして、人を襲う怪物――エーテリアスが存在する。

 

『全生徒は指示に従い、速やかに避難してください』

 

教師の指示に従い、生徒たちは避難を開始する。

 

ドモンも移動しようとした。

 

しかし。

 

そこで違和感に気付く。

 

「……エレン?」

 

隣にいたはずの少女がいない。

 

そして。

 

校舎の外。

 

避難場所とは逆方向へ歩いていく人影。

 

「あれは……」

 

エレンだった。

 

「何をしている……?」

 

ドモンは周囲を確認する。

 

そして、誰にも気付かれないよう後を追った。

 

しかし。

 

角を曲がった瞬間。

 

「……消えた?」

 

そこにエレンの姿はなかった。

 

ドモンほどの反応速度を持つ人間が見失う。

 

それはありえないことだった。

 

「ただの学生ではない……か」

 

そう呟いた時。

 

別の方向から気配を感じる。

 

振り向く。

 

そこには――。

 

一人の人影。

 

そして。

 

その人物は迷うことなく。

 

ホロウの内部へと入っていった。

 

「……!」

 

ドモンは息を呑む。

 

ホロウ。

 

人類が恐れる異空間。

 

本来なら、誰も近付くべきではない場所。

 

しかし。

 

目の前で誰かが入っていった。

 

「……」

 

拳を握る。

 

かつて世界を救った男の魂が叫ぶ。

 

放っておくな、と。

 

「全く……」

 

ドモンは小さく笑った。

 

「平和な学生生活というものは……」

 

「どうやら俺には向いていないらしい」

 

そして。

 

ドモン・カッシュは歩き出す。

 

 

ホロウ内部。

 

灰色の空の下。

 

崩れたビル群の間を、無数のエーテリアスが徘徊していた。

 

「カリン、左です。」

 

「は、はいっ!」

 

ライカンの冷静な指示が飛ぶ。

 

カリンは慌てながらも巨大なチェーンソーを振り抜き、迫ってきたエーテリアスを両断した。

 

「ふぇぇ……ま、また来ますぅ!」

 

「慌てなくて結構です。落ち着いて対処しなさい。」

 

ライカンはそう言うと、自らは一歩も動じることなく義足を振り上げる。

 

凍気を纏った蹴撃。

 

鋭い一閃がエーテリアスの群れをまとめて吹き飛ばした。

 

その横では、リナが優雅に微笑む。

 

「ドリシラ、アナステラ。」

 

「行ってらっしゃい。」

 

二体のボンプが宙を舞い、電撃を放ちながら敵陣へ飛び込む。

 

エーテリアスたちは次々と倒れていく。

 

だが――。

 

「……少し、多いですね。」

 

リナは笑みを崩さないまま呟いた。

 

倒しても倒しても、新たなエーテリアスが霧の奥から姿を現す。

 

「数が減りません。」

 

ライカンも静かに状況を分析する。

 

「このままでは消耗戦になります。」

 

その時だった。

 

「悪い、遅れた。」

 

気だるそうな声が響く。

 

全員が振り向く。

 

そこには、メイド服姿へ着替えたエレン・ジョーが立っていた。

 

「エレンさん!」

 

「うん。」

 

棒付きキャンディーを口に咥えたまま、エレンは周囲を見回す。

 

「数、多いね。」

 

「合流できて何よりです。」

 

ライカンが静かに頷く。

 

「では、掃除を続けましょう。」

 

「あたし、残業は嫌なんだけど。」

 

そうぼやきながらも、エレンの姿は一瞬で消えた。

 

次の瞬間にはエーテリアスの懐へ潜り込み、大剣を振るう。

 

一撃。

 

二撃。

 

無駄のない動きで敵を切り伏せていく。

 

普段の気だるげな学生の姿とは別人だった。

 

しかし――。

 

ガシャン。

 

重い音が響く。

 

大型エーテリアス。

 

デュラハン。

 

「来ます。」

 

ライカンが警戒を促す。

 

四人は連携して迎え撃つ。

 

だが。

 

「……っ。」

 

エレンが一体のエーテリアスを斬り伏せた、その一瞬だった。

 

死角。

 

デュラハンが大剣を振り上げる。

 

「エレンさん!」

 

カリンの悲鳴。

 

避けられない。

 

そう思われた瞬間。

 

ドゴォォォンッ!!

 

凄まじい衝撃音が響いた。

 

デュラハンの巨体が横へ吹き飛び、廃墟へ激突する。

 

「……え?」

 

エレンが目を瞬かせる。

 

瓦礫の陰から、一人の少年が姿を現した。

 

制服姿。

 

武器はない。

 

拳だけを握り締めている。

 

「ドモン……。」

 

エレンの口から思わず名前が漏れる。

 

「話は後だ。」

 

短く言い放ち、ドモンは拳を構えた。

 

「一般人です!」

 

カリンが慌てる。

 

「危険です! 逃げてください!」

 

しかし。

 

ドモンは答えなかった。

 

踏み込む。

 

拳が閃く。

 

一体。

 

二体。

 

三体。

 

エーテリアスが次々と吹き飛び、砕け散る。

 

「素手で……。」

 

カリンは言葉を失う。

 

「そんな……。」

 

リナも僅かに目を見開く。

 

ライカンも静かにドモンを見据える。

 

「あの少年は、一体……。」

 

ドモンは戦いながら思う。

 

(まだ遅い。)

 

(身体も軽い。)

 

(前世の俺なら、この程度……。)

 

全盛期には遠く及ばない。

 

それでも。

 

拳を止める理由にはならない。

 

「はあぁっ!」

 

鋭い正拳突きがエーテリアスを吹き飛ばす。

 

その時。

 

ガァァァァァッ!!

 

吹き飛ばされたデュラハンが再び立ち上がった。

 

一直線にドモンへ襲い掛かる。

 

大剣。

 

蹴り。

 

突進。

 

ドモンは紙一重でかわし続ける。

 

だが。

 

ギィンッ!

 

刃が頬を掠めた。

 

赤い血が一筋流れる。

 

「……。」

 

ドモンは血を親指で拭う。

 

(決め手が足りない。)

 

(ならば……。)

 

静かに息を吸う。

 

右手を高く掲げる。

 

「これまで積み重ねてきた修行……!」

 

周囲のエーテルが渦を巻き始める。

 

ヴィクトリア家政の四人が思わず動きを止めた。

 

「エーテル反応……?」

 

リナが呟く。

 

「違う……。」

 

ライカンが静かに首を振る。

 

「これは私たちの知る力ではありません。」

 

ドモンは叫ぶ。

 

「今こそ、形となれ!」

 

デュラハンが大剣を振り下ろす。

 

その瞬間。

 

「出ろぉぉぉぉぉっ!!」

 

右手の指を弾く。

 

「ガンッダァァァァムッ!!」

 

眩い光柱がホロウを貫いた。

 

轟音と共に、ドモンのいた場所に機械が現れる。

 

本来よりは小さなブッドキャリアー。

 

それはゆっくりと展開を始めた。

 

その姿は、まるで一輪の蓮が咲くようだった。

 

「なっ……!」

 

エレンが思わず息を呑む。

 

やがて光が晴れる。

 

そこに立っていたのは、もはや制服姿の少年ではなかった。

 

白き装甲。

 

青き胴体。

 

赤き脚部。

 

そして額に輝く黄金のV字アンテナ。

 

流派東方不敗の正統後継者は、鋼の武人へと姿を変えていた。

 

「来たか……。」

 

ドモンは静かに拳を握る。

 

その手から伝わる確かな力。

 

「シャイニングガンダム。」

 

ドモン・カッシュ自身が変身した、新たなる戦士の姿。

 

ホロウの戦場に、新たな伝説が降り立った。

 

 

 




---
みなさんお待ちかね!
シャイニングガンダムへと変貌したドモンはエーテリアスを蹴散らしていく!
彼のシャイニングガンダムに挑戦するデュラハン!
しかし!その裏では少女が、デュラハンに恐るべき執念を向けていたのです!
次回、ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す「唸れ!横槍!」に、レディィィ、ゴォォォ!!
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