教室。
黒板に教師の声が響き、生徒たちはそれぞれノートを取りながら授業を受けていた。
その中で、一人だけ異様なほど真剣な表情を浮かべている少年がいた。
ドモン・カッシュ。
17歳。
表向きは普通の学生。
しかし、その魂にはかつて世界を救った英雄が宿っている。
そんな彼の隣の席では――。
「ねぇ、ドモン」
小さな声が聞こえる。
隣を見ると、少女がこちらを覗き込んでいた。
エレン。
「何だ?」
「さっきからずっと真面目に授業受けてるけど、楽しい?」
「授業中だからな」
「いや、そういうこと聞いてるんじゃないんだけど」
エレンは少し呆れたように頬杖をつく。
「普通、もう少し友達と話したりするもんじゃない?」
「必要ない」
「……」
即答。
エレンの表情が少しだけ曇る。
「本当にドモンって面白くないよね」
「そうか?」
「そうだよ」
ドモンは首を傾げる。
何故怒っているのか分からない。
戦場なら相手の感情を読むことなど容易い。
しかし、こういう日常のやり取りだけは未だに苦手だった。
「……」
エレンはそっぽを向く。
そんな彼女を見て、ドモンは小さくため息をついた。
(難しいな……)
戦うことなら誰にも負けない。
だが、人との接し方というものは、未だに修行不足らしい。
◇
昼休み。
チャイムが鳴ると同時に、生徒たちは一斉に教室を出ていく。
「ドモン、お昼どうするの?」
「購買へ行く」
「また?」
「食堂は混む」
そう言って歩き出した時だった。
「君!」
廊下から声をかけられる。
振り返ると、武道系の部活動に所属している生徒たちだった。
「君、何か武術やってるだろ?」
「その動き、普通じゃない」
「うちの部に入らないか?」
熱心な勧誘。
しかしドモンは困ったような表情を浮かべる。
「悪い」
「俺にはやることがある」
そう言って断る。
「そっか……残念だな」
生徒たちは去っていった。
その様子を見ていたエレンが呆れたように言う。
「また断った」
「必要ない」
「本当に武道一筋だよね」
「……」
ドモンは窓の外を見る。
「俺は強くならなければならない」
その言葉に、エレンは少しだけ黙る。
時々。
ドモンは17歳とは思えない顔をする。
まるで、ずっと昔から何かを背負い続けているような。
◇
「じゃあ、私は先に屋上行ってるね」
「分かった」
エレンと別れ、ドモンは購買へ向かう。
しかし――。
そこは戦場だった。
「焼きそばパン!」
「最後の一個!」
「こっちも!」
昼休みの購買。
そこでは、限られた商品を巡る激しい争奪戦が繰り広げられていた。
普通の学生なら諦めるだろう。
だが。
ドモン・カッシュは違った。
周囲の動き。
人の流れ。
商品の位置。
一瞬で把握する。
「……」
そして次の瞬間。
彼の姿が消えた。
◇
数分後。
屋上。
「遅い」
エレンは不機嫌そうに言った。
「悪い」
ドモンは袋を差し出す。
「二人分買うのが思ったより難しかった」
「私の分も?」
「当然だろ」
エレンは一瞬驚いた顔をする。
そして。
「……まあ、許してあげる」
そう言いながら、顔を逸らす。
しかし、その表情は少しだけ嬉しそうだった。
◇
午後の授業。
再び静かな時間が流れていた。
その時。
突然。
校内放送が響き渡る。
『緊急連絡です』
『付近にてホロウ災害の発生を確認しました』
教室がざわめく。
ホロウ。
この世界に存在する、人類最大の脅威。
巨大な異空間。
その内部には未知のエネルギー、エーテル。
そして、人を襲う怪物――エーテリアスが存在する。
『全生徒は指示に従い、速やかに避難してください』
教師の指示に従い、生徒たちは避難を開始する。
ドモンも移動しようとした。
しかし。
そこで違和感に気付く。
「……エレン?」
隣にいたはずの少女がいない。
そして。
校舎の外。
避難場所とは逆方向へ歩いていく人影。
「あれは……」
エレンだった。
「何をしている……?」
ドモンは周囲を確認する。
そして、誰にも気付かれないよう後を追った。
しかし。
角を曲がった瞬間。
「……消えた?」
そこにエレンの姿はなかった。
ドモンほどの反応速度を持つ人間が見失う。
それはありえないことだった。
「ただの学生ではない……か」
そう呟いた時。
別の方向から気配を感じる。
振り向く。
そこには――。
一人の人影。
そして。
その人物は迷うことなく。
ホロウの内部へと入っていった。
「……!」
ドモンは息を呑む。
ホロウ。
人類が恐れる異空間。
本来なら、誰も近付くべきではない場所。
しかし。
目の前で誰かが入っていった。
「……」
拳を握る。
かつて世界を救った男の魂が叫ぶ。
放っておくな、と。
「全く……」
ドモンは小さく笑った。
「平和な学生生活というものは……」
「どうやら俺には向いていないらしい」
そして。
ドモン・カッシュは歩き出す。
◇
ホロウ内部。
灰色の空の下。
崩れたビル群の間を、無数のエーテリアスが徘徊していた。
「カリン、左です。」
「は、はいっ!」
ライカンの冷静な指示が飛ぶ。
カリンは慌てながらも巨大なチェーンソーを振り抜き、迫ってきたエーテリアスを両断した。
「ふぇぇ……ま、また来ますぅ!」
「慌てなくて結構です。落ち着いて対処しなさい。」
ライカンはそう言うと、自らは一歩も動じることなく義足を振り上げる。
凍気を纏った蹴撃。
鋭い一閃がエーテリアスの群れをまとめて吹き飛ばした。
その横では、リナが優雅に微笑む。
「ドリシラ、アナステラ。」
「行ってらっしゃい。」
二体のボンプが宙を舞い、電撃を放ちながら敵陣へ飛び込む。
エーテリアスたちは次々と倒れていく。
だが――。
「……少し、多いですね。」
リナは笑みを崩さないまま呟いた。
倒しても倒しても、新たなエーテリアスが霧の奥から姿を現す。
「数が減りません。」
ライカンも静かに状況を分析する。
「このままでは消耗戦になります。」
その時だった。
「悪い、遅れた。」
気だるそうな声が響く。
全員が振り向く。
そこには、メイド服姿へ着替えたエレン・ジョーが立っていた。
「エレンさん!」
「うん。」
棒付きキャンディーを口に咥えたまま、エレンは周囲を見回す。
「数、多いね。」
「合流できて何よりです。」
ライカンが静かに頷く。
「では、掃除を続けましょう。」
「あたし、残業は嫌なんだけど。」
そうぼやきながらも、エレンの姿は一瞬で消えた。
次の瞬間にはエーテリアスの懐へ潜り込み、大剣を振るう。
一撃。
二撃。
無駄のない動きで敵を切り伏せていく。
普段の気だるげな学生の姿とは別人だった。
しかし――。
ガシャン。
重い音が響く。
大型エーテリアス。
デュラハン。
「来ます。」
ライカンが警戒を促す。
四人は連携して迎え撃つ。
だが。
「……っ。」
エレンが一体のエーテリアスを斬り伏せた、その一瞬だった。
死角。
デュラハンが大剣を振り上げる。
「エレンさん!」
カリンの悲鳴。
避けられない。
そう思われた瞬間。
ドゴォォォンッ!!
凄まじい衝撃音が響いた。
デュラハンの巨体が横へ吹き飛び、廃墟へ激突する。
「……え?」
エレンが目を瞬かせる。
瓦礫の陰から、一人の少年が姿を現した。
制服姿。
武器はない。
拳だけを握り締めている。
「ドモン……。」
エレンの口から思わず名前が漏れる。
「話は後だ。」
短く言い放ち、ドモンは拳を構えた。
「一般人です!」
カリンが慌てる。
「危険です! 逃げてください!」
しかし。
ドモンは答えなかった。
踏み込む。
拳が閃く。
一体。
二体。
三体。
エーテリアスが次々と吹き飛び、砕け散る。
「素手で……。」
カリンは言葉を失う。
「そんな……。」
リナも僅かに目を見開く。
ライカンも静かにドモンを見据える。
「あの少年は、一体……。」
ドモンは戦いながら思う。
(まだ遅い。)
(身体も軽い。)
(前世の俺なら、この程度……。)
全盛期には遠く及ばない。
それでも。
拳を止める理由にはならない。
「はあぁっ!」
鋭い正拳突きがエーテリアスを吹き飛ばす。
その時。
ガァァァァァッ!!
吹き飛ばされたデュラハンが再び立ち上がった。
一直線にドモンへ襲い掛かる。
大剣。
蹴り。
突進。
ドモンは紙一重でかわし続ける。
だが。
ギィンッ!
刃が頬を掠めた。
赤い血が一筋流れる。
「……。」
ドモンは血を親指で拭う。
(決め手が足りない。)
(ならば……。)
静かに息を吸う。
右手を高く掲げる。
「これまで積み重ねてきた修行……!」
周囲のエーテルが渦を巻き始める。
ヴィクトリア家政の四人が思わず動きを止めた。
「エーテル反応……?」
リナが呟く。
「違う……。」
ライカンが静かに首を振る。
「これは私たちの知る力ではありません。」
ドモンは叫ぶ。
「今こそ、形となれ!」
デュラハンが大剣を振り下ろす。
その瞬間。
「出ろぉぉぉぉぉっ!!」
右手の指を弾く。
「ガンッダァァァァムッ!!」
眩い光柱がホロウを貫いた。
轟音と共に、ドモンのいた場所に機械が現れる。
本来よりは小さなブッドキャリアー。
それはゆっくりと展開を始めた。
その姿は、まるで一輪の蓮が咲くようだった。
「なっ……!」
エレンが思わず息を呑む。
やがて光が晴れる。
そこに立っていたのは、もはや制服姿の少年ではなかった。
白き装甲。
青き胴体。
赤き脚部。
そして額に輝く黄金のV字アンテナ。
流派東方不敗の正統後継者は、鋼の武人へと姿を変えていた。
「来たか……。」
ドモンは静かに拳を握る。
その手から伝わる確かな力。
「シャイニングガンダム。」
ドモン・カッシュ自身が変身した、新たなる戦士の姿。
ホロウの戦場に、新たな伝説が降り立った。
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みなさんお待ちかね!
シャイニングガンダムへと変貌したドモンはエーテリアスを蹴散らしていく!
彼のシャイニングガンダムに挑戦するデュラハン!
しかし!その裏では少女が、デュラハンに恐るべき執念を向けていたのです!
次回、ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す「唸れ!横槍!」に、レディィィ、ゴォォォ!!
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