ホロウ内部。
崩壊した街並み。
その中心に、一人の鋼の戦士が立っていた。
白き装甲。
青き胴体。
赤き脚部。
黄金のV字アンテナ。
それは紛れもなく――。
シャイニングガンダム。
「……。」
ドモンは自分の両手を見つめる。
力を込める。
軽く拳を握る。
「まさか……。」
思わず呟く。
(この世界では、こういう形で現れるのか。)
前世では存在しなかった力。
しかし。
確かに感じる。
この身体は。
この力は。
間違いなくシャイニングガンダムだった。
「悪くない。」
ドモンは拳を構える。
その時。
「グオオオオオッ!!」
咆哮。
デュラハンが大剣を振り上げ、突進してくる。
「来るか。」
次の瞬間。
巨大な刃が振り下ろされた。
しかし――。
空を切る。
「……。」
デュラハンが動きを止める。
目の前から、シャイニングガンダムの姿が消えていた。
「速い……。」
エレンが呟く。
次の瞬間。
ドンッ!!
デュラハンの横腹へ拳が叩き込まれる。
巨体が大きく吹き飛ぶ。
「嘘……。」
カリンが呆然とする。
デュラハンはすぐに立ち上がる。
しかし。
その動きは先ほどとは違った。
シャイニングガンダムの前では、全てが遅い。
大剣。
突進。
薙ぎ払い。
どれも届かない。
まるで相手の動きを全て読んでいるかのように、ドモンは攻撃をかわしていく。
「これが……。」
ライカンは目を細める。
「彼の力ですか。」
シャイニングガンダムは拳を握る。
「まだだ。」
「こんなものではない。」
ドモンの中に、かつての感覚が蘇る。
戦うためではない。
守るための拳。
その時。
デュラハンが膝をついた。
身体には大きな損傷。
もう限界だった。
「終わりだ。」
ドモンは右手を構える。
「これで……!」
ガンダムのフェイスパーツが展開し、手に力が集まる。
「必殺ー!!」
しかし。
その瞬間。
ザシュッ!!
鋭い斬撃が走った。
デュラハンの身体が崩れ落ちる。
「……え?」
ドモンが振り返る。
そこには、大型のハサミを構えたエレンがいた。
「ごめん。」
エレンは淡々と言う。
「隙があったから。」
「……。」
ドモンは黙る。
「何?」
「いや……なんでもない。」
エレンは首を傾げる。
「変なの。」
◇
その後。
残っていたエーテリアスを全て撃破したヴィクトリア家政とドモンは、安全を確保するため一度ホロウを離脱した。
外へ出た瞬間。
ドモンの身体を再び黄金の光が包む。
そして。
光が消えた時。
そこにいたのは、いつもの制服姿の少年だった。
「……。」
「さて。」
エレンが口を開く。
嫌な予感がした。
「説明して。」
「……。」
ドモンは目を逸らす。
「何を?」
「全部。」
エレンの赤い瞳がじっと見つめる。
「なんで普通の学生がホロウにいるの。」
「なんで素手でエーテリアス倒せるの。」
「なんで突然、人型の何かになるの。」
「説明、お願い。」
「……。」
ドモンは困った。
前世のこと。
転生したこと。
神のこと。
全て話すわけにはいかない。
そんな時。
「エレン。」
ライカンが静かに声をかけた。
エレンが振り向く。
ライカンはドモンへ向き直る。
「まず、自己紹介を。」
「我々はヴィクトリア家政。」
「家事代行を表の顔とする組織です。」
一礼する。
「そして今回。」
「従業員であるカリンがホロウ災害に巻き込まれたため、救出のため全員で向かいました。」
カリンが慌てて頭を下げる。
「す、すみません……。」
「カリン。」
ライカンは優しく言う。
「あなたの責任ではありません。」
そして。
視線をドモンへ向ける。
「その中で、あなたが現れた。」
「我々を助けてくださったことについては、心より感謝しています。」
「しかし……。」
ライカンの表情が少しだけ変わる。
「一般人であるあなたが、我々の裏の仕事を知ってしまった。」
「そして。」
「目の前で、あのような力を見せられた。」
静かな沈黙。
「残念ながら。」
「何も聞かず、何もなかったことにして帰っていただくわけにはいきません。」
ドモンは黙ってライカンを見る。
敵意はない。
しかし。
プロフェッショナルとしての責任がある。
「……なるほど。」
ドモンは小さく笑う。
「つまり。」
拳を握る。
「俺のことを知りたいというわけか。」
ライカンは頷く。
「ええ。」
「あなたが何者なのか。」
「そして――。」
「あの力が何なのか。」
ヴィクトリア家政とドモン。
奇妙な出会いは。
ここから始まるのだった。
◇
ヴィクトリア家政に連れられてとある一室に案内される。
ドモンは椅子に座り、目の前の四人を見ていた。
エレン。
ライカン。
リナ。
カリン。
ヴィクトリア家政。
「……。」
沈黙。
最初に口を開いたのはライカンだった。
「改めて確認させていただきます。」
「あなたの名前は?」
「ドモン・カッシュ。」
即答。
「年齢は?」
「17歳。」
「職業は?」
「学生だ。」
ライカンは静かに頷く。
「では、なぜホロウ内部へ?」
「……。」
ドモンは少し黙る。
正直に言えば簡単だった。
エレンを追いかけた。
ただ、それだけ。
「エレンが入っていくのを見た。」
「だから追った。」
エレンが少し目を細める。
「……あたしを?」
「ああ。」
「なんで?」
ドモンは少し考える。
そして。
「友達だからだ。」
その一言。
エレンは一瞬だけ黙った。
「……。」
「……そ。」
そっけなく返す。
しかし。
その尻尾はわずかに揺れていた。
それを見逃さなかったリナが微笑む。
「ふふ。」
「エレンさん、嬉しそうですね。」
「違う。」
即答。
「全然違う。」
「そうですか。」
リナは優しく笑う。
エレンは顔を逸らした。
「では。」
ライカンが続ける。
「次の質問です。」
「あなたの力について。」
空気が変わる。
「シャイニングガンダム。」
その名前を聞いた瞬間。
ドモンの表情が僅かに変わる。
「……知っているのか。」
「いいえ。」
ライカンは首を振る。
「ですが、あなた自身がそう呼んでいました。」
「あれは一体何なのですか?」
「機械なのか。」
「能力なのか。」
「それとも……。」
一拍置く。
「あなた自身なのか。」
ドモンは拳を見る。
そして。
ゆっくり答えた。
「俺自身だ。」
「……。」
「シャイニングガンダムは、俺の力だ。」
嘘ではない。
全てを話してはいない。
だが、嘘でもない。
「俺は昔から拳を鍛えてきた。」
「守るための力を得るために。」
ライカンは黙って聞いている。
「ホロウが危険なら戦う。」
「目の前で誰かが傷つくなら助ける。」
「それだけだ。」
しばらくの沈黙。
やがて。
「……なるほど。」
ライカンが口を開く。
「少なくとも。」
「あなたが我々の敵ではないことは理解しました。」
カリンがほっと息を吐く。
「よ、よかったです……。」
「でも。」
エレンが口を挟む。
「まだ謎だらけ。」
「普通の学生じゃない。」
「絶対。」
「……。」
ドモンは目を逸らす。
図星だった。
「それに。」
エレンは続ける。
「あたしのクラスで。」
「いつも無表情で。」
「授業中も寝てて。」
「昼飯買う時だけ異常に速い奴が。」
「ホロウで化け物倒すとか。」
「意味わかんない。」
「……。」
ドモンは返す言葉がなかった。
◇
「その後。」
ライカンは静かに告げた。
「ヴィクトリア家政として、あなたに提案があります。」
「提案?」
ドモンは眉を上げる。
「はい。」
ライカンは一礼する。
「あなたは我々の秘密を知ってしまいました。」
「しかし。」
「あなたを拘束する理由もありません。」
「……。」
ドモンは黙って聞く。
「それに。」
ライカンは続ける。
「あの力。」
「シャイニングガンダムと呼ばれるもの。」
「それは、この街にとって大きな意味を持つ可能性があります。」
エレンが口を挟む。
「つまり?」
「監視するより。」
ライカンはドモンを見る。
「協力関係を結ぶ方が合理的だということです。」
ドモンは少し考える。
「俺に協力してほしいということか。」
「ええ。」
「ただし。」
ライカンの目が鋭くなる。
「条件があります。」
「条件?」
「単独で危険区域へ向かわないこと。」
「そして。」
一拍置く。
「無理をしないことです。」
ドモンは少し苦笑する。
「最後が一番難しそうだな。」
エレンが小さく呟く。
「分かってるじゃん。」
「……。」
「絶対、無茶するタイプ。」
否定できなかった。
「だが。」
ドモンは拳を握る。
「一つだけ約束できない。」
「……。」
ライカンが見る。
「もし目の前で誰かが危険になったら。」
「俺は助ける。」
「それだけは変えられない。」
静かな声。
しかし。
そこには迷いがなかった。
ライカンはしばらくドモンを見る。
そして。
「……分かりました。」
「あなたらしい答えです。」
リナが微笑む。
「優しい方なのですね。」
「そんなことはない。」
ドモンは首を振る。
「ただ。」
「後悔したくないだけだ。」
その言葉に。
ライカンはわずかに目を細めた。
まるで。
過去に同じ覚悟を持った人物を見たかのように。
「では。」
ライカンは手を差し出す。
「改めまして。」
「ヴィクトリア家政と、協力関係を。」
ドモンはその手を見る。
そして。
握り返した。
「よろしく頼む。」
◇
数日後。
新エリー都。
学校。
「……。」
教室。
ドモンはいつも通り、自分の席に座っていた。
周囲から見れば。
ただの学生。
無口で。
少し近寄りがたくて。
いつも難しい顔をしている少年。
しかし。
隣の席には。
彼の秘密を知る少女がいる。
「ねぇ。」
エレンが机に頬杖をつく。
「ドモン。」
「なんだ。」
「本当に普通の学生?」
「そうだ。」
即答。
あまりにも迷いのない返事。
エレンは数秒黙る。
「……。」
「普通の学生は。」
「ホロウでロボットになる?」
「……。」
ドモンは視線を逸らした。
「事情がある。」
「便利な言葉。」
エレンはため息をつく。
だが。
以前とは少し違っていた。
そこにあるのは警戒ではない。
興味。
そして。
少しだけの信頼。
「まあ。」
エレンはいつものように棒付きキャンディーを口に咥える。
「……あの時は。」
「助けてくれて、ありがと。」
小さな声。
いつもの気だるげな態度とは違う。
素直な感謝。
ドモンはそれを聞き逃さなかった。
「礼ならいらない。」
「俺は当然のことをしただけだ。」
「……。」
エレンは少しだけ目を細める。
「そういうところ。」
「ほんと変。」
「?」
ドモンは首を傾げる。
その反応に。
エレンは小さく笑った。
少しの沈黙。
そして。
ドモンはエレンを見る。
「……だが。」
「ん?」
エレンが顔を向ける。
ドモンは真剣な表情のまま言った。
「普通の学生は。」
「メイド服を着て、ホロウの中で戦わないと思うが。」
「……。」
エレンの動きが止まる。
数秒。
沈黙。
「……。」
「それ、今言う?」
「事実だろう。」
「いや。」
「まあ……事実だけど。」
エレンは視線を逸らす。
「……。」
そして小さく呟いた。
「ドモンにだけは言われたくない。」
「なぜだ。」
「自覚ないんだ。」
「何のだ。」
エレンは呆れたように息を吐く。
「互いに普通ではない、ということか。」
「そういうこと。」
エレンは肩をすくめる。
そして。
小さく笑った。
その表情は。
ホロウで戦っていた時の冷たいエージェントの顔ではなく。
ただの同級生の少女のものだった。
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みなさんお待ちかね!
ゲームセンターの格ゲーで連勝していたドモン!
ドモンに戦いを挑むため、大勢の挑戦者が集まります!
しかし!そこで出会ったお調子者の翼のシリオンによって、ドモンはとんでもないピンチに巻き込まれてしまうのです!
次回、ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す「倒せ!GOD FINGER」に、レディィィ、ゴォォォ!!
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