ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す   作:猫ロボF

4 / 9
これがやりたかっただけである。

レミエールはいいぞ。


日常回
第三話 倒せ!GOD FINGER


ある日の六分街。

 

ドモンはビデオケースをカウンターへ置く。

 

「毎度ー。」

 

リンが笑顔で手を振る。

 

「ねえねえ!あの映画、どうだった?」

 

アキラが尋ねる。

 

「悪くなかった。」

 

ドモンは短く答える。

 

「最後の展開は予想できたが、アクションは見応えがあった。」

 

「相変わらず渋い感想だね。」

 

アキラは苦笑する。

 

「もっと『面白かった!』とかないの?」

 

「面白かった。」

 

「いや、そうじゃなくて……。」

 

リンは思わず肩を落とした。

 

そんな二人の様子に、ドモンはほんの僅かだけ口元を緩める。

 

店内には穏やかな時間が流れていた。

 

しばらく世間話を続けた後、ドモンは壁に掛けられた時計を見る。

 

「長居するのも悪いな。」

 

「今日はこの辺で帰る。」

 

「またね、ドモン。」

 

「ああ。」

 

ドモンは軽く手を上げると、ビデオ屋『Random Play』を後にした。

 

 

六分街の通りを歩く。

 

現在、ドモンは六分街のアパートで一人暮らしをしていた。

 

両親は健在だ。

 

離れた場所で静かに暮らしており、ときどき野菜や米、保存食などを仕送りしてくれる。

 

そのおかげで食費にはあまり困らない。

 

「今日は……カレーにするか。」

 

じゃがいも。

 

玉ねぎ。

 

人参。

 

肉もまだ残っていたはずだ。

 

献立を考えながら歩いていると、一軒のゲームセンターが目に入る。

 

大きな看板。

 

そこには力強く書かれていた。

 

**『GOD FINGER』**

 

「……。」

 

ドモンは思わず立ち止まる。

 

「ゴッドフィンガー、か。」

 

懐かしい響きだった。

 

前世では幾度となく叫んだ、自らの必殺技。

 

自然と口元が緩む。

 

「少しだけ寄るか。」

 

そう呟き、店内へ入った。

 

 

ゲームセンターの中は、多くの学生で賑わっていた。

 

クレーンゲーム。

 

音楽ゲーム。

 

レースゲーム。

 

その奥に並ぶ対戦格闘ゲームの筐体。

 

ドモンは空いている席へ腰掛ける。

 

コインを投入。

 

対戦開始。

 

相手はすぐに現れた。

 

しかし――

 

「KO!」

 

一試合。

 

「PERFECT!」

 

二試合。

 

「WINNER!」

 

三試合。

 

負けない。

 

圧倒的だった。

 

前世で極限の戦いを潜り抜けてきた反射神経は、ゲームの世界でも健在だった。

 

「なんだあの人……。」

 

「強すぎるだろ。」

 

「一回も攻撃当たらねぇ。」

 

周囲に人だかりができ始める。

 

「ドモン!」

 

聞き覚えのある声だった。

 

振り返ると、リンとアキラが立っていた。

 

「遊びに来たら、なんかすごい人がいるって聞いてさ。」

 

「まさかドモンだったとは。」

 

「勝負しよう!」

 

「いい。」

 

二人も席に座る。

 

結果は――

 

「PERFECT!」

 

「あー!」

 

「負けた!」

 

「もう一回!」

 

「構わない。」

 

何度挑んでも結果は同じだった。

 

「強すぎる……。」

 

リンが机に突っ伏す。

 

「ゲームでも容赦ないね。」

 

アキラも苦笑するしかない。

 

その後も挑戦者は絶えなかった。

 

中には途中で対戦を切断する者まで現れる。

 

「うわ、切った!」

 

「そこまでして負けたくないのか……。」

 

周囲から苦笑が漏れた。

 

気づけば夕日が街を赤く染めていた。

 

挑戦者も少なくなり、リンとアキラも店へ戻っていった。

 

「そろそろ帰るか。」

 

ドモンは席を立とうとする。

 

その時だった。

 

対戦受付のランプが点灯する。

 

「最後に一戦だけ。」

 

ドモンは再び座った。

 

対戦開始。

 

「……。」

 

強い。

 

今までの相手とは明らかに違う。

 

読みが鋭い。

 

反応も速い。

 

ドモンも自然と表情が引き締まる。

 

互いに一歩も譲らない攻防。

 

店内には操作音だけが響く。

 

激戦の末――

 

「WINNER!」

 

ドモンの勝利だった。

 

「いい勝負だった。」

 

思わずそう呟く。

 

相手にも一言伝えようと、筐体の裏側へ回った。

 

そこにいたのは――

 

漆黒のドレス。

 

夜のように黒い翼。

 

そして、鮮やかなピンク色の髪。

 

一人の女性が静かに立ち上がる。

 

「負けちゃった。」

 

女性は肩をすくめ、くすりと笑った。

 

「久しぶりに楽しかったよ。」

 

「お前が対戦相手か。」

 

「うん。」

 

女性は優雅に一礼する。

 

「初めまして。」

 

「ラミル。」

 

「そう名乗ってる。」

 

ドモンも軽く頷く。

 

「ドモンだ。」

 

「ドモン。」

 

ラミルはその名前を一度口にすると、楽しそうに微笑んだ。

 

「いい名前。」

 

「気に入った。」

 

「そうか。」

 

短い返事。

 

だが、それだけで会話は終わらなかった。

 

「ねぇ。」

 

ラミルはドモンの腕を軽く引く。

 

「ちょっと付き合って。」

 

「……?」

 

「面白い人を見つけたから。」

 

「今日は暇でしょ?」

 

「いや、夕飯の支度を――」

 

「なら食べさせてくれる?」

 

ラミルは悪びれもせず笑う。

 

「断る。」

 

ドモンは即答した。

 

「そう?」

 

ラミルは首を傾げる。

 

「一人分も二人分も、そんなに変わらないでしょ?」

 

「変わる。」

 

「食材の量もある。」

 

「なにより君をそこまで知らない。」

 

「ふーん。」

 

ラミルは一歩近付く。

 

「じゃあ、お買い物から付き合う。」

 

「断る。」

 

また一歩。

 

「料理を見てるだけ。」

 

「断る。」

 

さらに一歩。

 

「味見だけ。」

 

「断る。」

 

気付けば二人の距離は随分と縮まっていた。

 

「……。」

 

(近い。)

 

ドモンは一歩後ろへ下がる。

 

しかしラミルも一歩前へ。

 

「……。」

 

このままでは埒が明かない。

 

ドモンは小さく息を吐くと、不意に空を見上げた。

 

「あ。」

 

「どうしたの?」

 

「用事を思い出した。」

 

「そう。」

 

「失礼する。」

 

次の瞬間だった。

 

ドンッ!!

 

地面が弾けるような音と共に、ドモンの姿が消えた。

 

「……!」

 

ラミルは一瞬だけ目を丸くする。

 

「速い。」

 

しかし。

 

その口元には楽しそうな笑みが浮かんでいた。

 

「そう来るんだ。」

 

バサッ――。

 

漆黒の翼が大きく広がる。

 

「じゃあ。」

 

「追いかけよう。」

 

 

夕暮れの六分街。

 

道路を駆け抜ける一人の少年。

 

その後ろを追う黒い翼の女性。

 

「待ってよー!」

 

「待たん!」

 

ドモンは振り返りもせず答える。

 

「食事くらいいいじゃない!」

 

「よくない!」

 

角を曲がる。

 

階段を飛び越える。

 

手すりを蹴り、屋根へ飛び移る。

 

普通の人間なら到底追いつけない速度だった。

 

だが。

 

「もう少し!」

 

ラミルは翼を羽ばたかせ、建物の上空を一直線に飛ぶ。

 

「あっちだ。」

 

「逃がさない。」

 

「……。」

 

ドモンは思わず顔をしかめた。

 

(空を飛ぶのは反則だろ。)

 

さらに速度を上げる。

 

六分街を縦横無尽に駆け抜ける。

 

数分後――。

 

「……。」

 

ドモンは足を止めた。

 

周囲を見回す。

 

気配はない。

 

「撒いたか。」

 

小さく息を吐く。

 

「さすがに追っては来られまい。」

 

そう呟くと、アパートへ戻る。

 

階段を上り、自室の前へ。

 

鍵を開ける。

 

ガチャ。

 

扉を開いた。

 

「おかえり。」

 

「……。」

 

部屋の中。

 

テーブルの前に、ラミルが座っていた。

 

ドモンの動きが止まる。

 

「……なぜいる。」

 

「窓。」

 

ラミルは当然のように答える。

 

「開いてたから。」

 

「ちゃんと戸締まりしないと駄目だよ?」

 

「泥棒が入る。」

 

「お前が言うな。」

 

ドモンは即座に突っ込んだ。

 

「まあ、細かいことはいいじゃない。」

 

ラミルは悪びれる様子もなく笑う。

 

「上から見てたら、この部屋に入るのが見えたから。」

 

「窓から失礼したよ。」

 

「……。」

 

ドモンは額に手を当てる。

 

(空から追跡していたのか。)

 

普通なら思い付かない方法だった。

 

いや、思い付いても実行できない。

 

「逃げるのは諦めた?」

 

「……。」

 

ドモンはしばらく黙っていた。

 

再び逃げても、また追ってくる気がした。

 

それに。

 

ここまで執着される理由も気になる。

 

「分かった。」

 

「食事だけだ。」

 

ラミルの表情がぱっと明るくなる。

 

「やった。」

 

「ありがとう。」

 

ドモンは小さくため息をつく。

 

「期待するほどのものではない。」

 

「構わない。」

 

「君の料理が食べたいだけだから。」

 

その一言に、ドモンは少しだけ首を傾げた。

 

「……変わった奴だ。」

 

「よく言われる。」

 

ラミルは楽しそうに笑う。

 

ドモンはキッチンへ向かい、仕送りでもらった野菜を取り出す。

 

玉ねぎ。

 

人参。

 

じゃがいも。

 

そして肉。

 

「予定通り、カレーにする。」

 

「うん。」

 

ラミルは椅子に座り、どこか嬉しそうにその背中を眺めていた。

 

 

キッチンに立つドモン。

 

包丁を握り、野菜を切る。

 

トントントン――。

 

規則正しい音が部屋に響く。

 

ラミルは頬杖をつきながら、その様子を眺めていた。

 

「……。」

 

「なにか言いたいことがあるなら言え。」

 

ドモンは手を止めずに言う。

 

「え?」

 

「さっきから見ている。」

 

「ああ。」

 

ラミルは小さく笑った。

 

「いや。」

 

「少し意外だっただけ。」

 

「何がだ。」

 

「君みたいな人が。」

 

「普通に料理するんだなって。」

 

ドモンは少し黙る。

 

「料理くらいする。」

 

「生きていくためには必要だ。」

 

「ふーん。」

 

ラミルはテーブルに置かれた食材を見る。

 

「自分で買ったもの?」

 

「違う。」

 

「両親から送られてきた。」

 

その言葉に。

 

ラミルの表情が僅かに変わった。

 

「……両親。」

 

「ああ。」

 

「元気なの?」

 

「健在だ。」

 

ドモンは鍋を火にかけながら答える。

 

「旧都が落ちた時も。」

 

「俺が助けた。」

 

「だから今は離れた場所で暮らしている。」

 

ラミルは静かに聞いていた。

 

「そっか。」

 

「大事にしてるんだね。」

 

「当然だ。」

 

ドモンは即答する。

 

「家族だからな。」

 

その返事に。

 

ラミルは少しだけ目を細めた。

 

「……。」

 

「何だ。」

 

「いや。」

 

「やっぱり面白いなって。」

 

「君。」

 

ドモンは首を傾げる。

 

「俺の何が面白い。」

 

「強いのに。」

 

「妙に普通で。」

 

「普通なのに。」

 

「全然普通じゃない。」

 

「……。」

 

 

しばらくして。

 

部屋には香辛料の香りが広がっていた。

 

「完成だ。」

 

テーブルに二つの皿が置かれる。

 

湯気の立つカレー。

 

ラミルは目を輝かせる。

 

「いただきます。」

 

「……。」

 

ドモンは少し驚いた。

 

「意外だな。」

 

「何が?」

 

「もっと勝手に食べると思っていた。」

 

「失礼だなぁ。」

 

ラミルは笑う。

 

「食事の前の挨拶くらいするよ。」

 

「一応、育ちはいいから。」

 

「そうか。」

 

二人はスプーンを手に取る。

 

一口。

 

ラミルが目を見開いた。

 

「……。」

 

「どうだ。」

 

「……おいしい。」

 

「そうか。」

 

「もっと喜んでもいいんじゃない?」

 

「褒められることに慣れていない。」

 

「本当に?」

 

「ああ。」

 

ラミルは少しだけ笑う。

 

「変なの。」

 

「料理上手なのに。」

 

「強いのに。」

 

「褒められるのが苦手。」

 

「……。」

 

ドモンはカレーを食べながら答える。

 

「俺はただ。」

 

「できることをしているだけだ。」

 

「それだけだ。」

 

ラミルはその横顔を見る。

 

「……。」

 

その目には。

 

先ほどまでの興味とは少し違うものが浮かんでいた。

 

夜。

 

食事を終え、片付けも終わった頃。

 

ラミルは椅子に座ったまま、ふとドモンを見る。

 

「ねぇ。」

 

「なんだ。」

 

「ドモンってさ。」

 

「何歳?」

 

突然の質問。

 

ドモンは少しだけ目を瞬かせる。

 

「……17歳だ。」

 

即答。

 

しかし。

 

ラミルは数秒黙った。

 

そして。

 

「嘘。」

 

「……。」

 

ドモンの動きが止まる。

 

「なぜそう思う。」

 

「雰囲気。」

 

ラミルは頬杖をつく。

 

「仕草。」

 

「言葉遣い。」

 

「それに。」

 

少しだけ笑う。

 

「目。」

 

「17歳の目じゃないよ。」

 

「……。」

 

図星だった。

 

前世の記憶。

 

戦いの日々。

 

失ったもの。

 

背負ってきたもの。

 

それらは、どれだけ姿が若返っても消えることはなかった。

 

「……。」

 

ドモンは黙り込む。

 

言うべきか。

 

隠すべきか。

 

普通なら。

 

答える必要などない。

 

だが。

 

目の前の女には。

 

なぜか話してもいい気がした。

 

「……138歳だ。」

 

「え?」

 

ラミルの表情が固まる。

 

「俺の本当の年齢だ。」

 

「138歳。」

 

しばらく。

 

部屋に沈黙が流れた。

 

「……。」

 

ラミルはドモンを見る。

 

冗談ではない。

 

その目がそう語っていた。

 

「そっか。」

 

「やっぱり。」

 

小さく呟く。

 

「薄々は感じてた。」

 

「君が普通じゃないって。」

 

「でも。」

 

ラミルは苦笑する。

 

「まさかね....」

 

「……。」

 

ドモンは首を傾げる。

 

「驚かないのか。」

 

「驚いてるよ。」

 

ラミルは即答した。

 

「かなり。」

 

「でも。」

 

「私自身が普通じゃないからね。」

 

「人のこと言えない。」

 

その言葉に。

 

ドモンは目を細める。

 

「……。」

 

「今度はこちらの番だ。」

 

「え?」

 

ドモンはラミルを見る。

 

「お前が名乗った名前。」

 

「本当の名前ではないだろう。」

 

一瞬。

 

空気が変わった。

 

ラミルの笑顔が僅かに止まる。

 

「……。」

 

「ラミル。」

 

「それは偽名だ。」

 

「違うか?」

 

沈黙。

 

やがて。

 

ラミルは小さく笑った。

 

「すごいね。」

 

「そこまで分かるんだ。」

 

「目だ。」

 

ドモンは答える。

 

「お前も。」

 

「何かを隠している目をしている。」

 

「……。」

 

ラミルはしばらくドモンを見つめる。

 

そして。

 

「ごめん。」

 

「それはまだ教えられない。」

 

「理由は。」

 

「秘密。」

 

悪びれもせず笑う。

 

「そうか。」

 

ドモンはそれ以上追及しなかった。

 

無理に聞くことではない。

 

自分もそうだったから。

 

 

しばらくして。

 

ラミルは立ち上がる。

 

「じゃあ。」

 

「今日は帰ろうかな。」

 

「そうしてくれ。」

 

即答。

 

「冷たいなぁ。」

 

ラミルは笑う。

 

そして。

 

玄関へ向かう――と思った。

 

しかし。

 

次の瞬間。

 

振り返る。

 

「ねぇ。」

 

「なんだ。」

 

「泊まっていっていい?」

 

「……。」

 

ドモンは数秒。

 

完全に思考を停止した。

 

そして。

 

「断る!!」

 

即答。

 

六分街の夜に。

 

ドモンの声が響いた。

 

 

 

 




---
なさんお待ちかねぇ!
虚狩り、星見雅!
ドモンに戦いを挑むため、修行と言いドモンを道場に呼び出す!
そして怒った雅は郊外に颯爽と出陣!荒野を舞台にガンダムと武士道が激しくぶつかり合います!
次回、ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す「いざ勝負!虚狩り」にぃ、レディィィ、ゴォォォ!!
---
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。