ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す   作:猫ロボF

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言い忘れていましたが今のドモンは精神が体に引っ張られて年相応な感じです。
だからいろいろ無茶します。


第五話 大脱走!囚われのドモン 上

深夜。

 

六分街。

 

ドモンの部屋。

 

「……。」

 

机に向かい、学校の課題を片付けていた。

 

現在の生活。

 

学校。

 

鍛錬。

 

ホロウでの戦闘。

 

そして――。

 

「ドモーン。」

 

聞き慣れた声。

 

ドモンの動きが止まる。

 

「……。」

 

ゆっくり窓を見る。

 

そこには。

 

当然のように。

 

黒い翼を持った少女が立っていた。

 

「こんばんは。」

 

ラミル。

 

正体不明の女性。

 

最近、なぜか毎日のように現れる存在。

 

「……。」

 

ドモンは無言で立ち上がる。

 

「今日こそ泊めてくれる?」

 

「断る。」

 

即答。

 

「まだ何も言ってないけど。」

 

「言うことは分かっている。」

 

「冷たいなぁ。」

 

ラミルは笑う。

 

しかし。

 

ドモンは窓を開ける。

 

「帰れ。」

 

「えー。」

 

「明日も学校だ。」

 

「疲れている。」

 

「だからこそ泊まって――」

 

「帰れ。」

 

「……。」

 

ラミルは少しだけ頬を膨らませる。

 

「頑固。」

 

「お互い様だ。」

 

「それ褒めてる?」

 

「違う。」

 

そして。

 

ドモンはラミルを外へ押し出した。

 

「またね。」

 

「来るな。」

 

窓が閉まる。

 

静寂。

 

「……。」

 

ドモンは椅子に座る。

 

最近。

 

全く休めていない。

 

学校。

 

鍛錬。

 

ホロウ。

 

そしてラミル。

 

「……。」

 

ため息。

 

その時だった。

 

机の上に置かれたものに気付く。

 

湯気の立つ湯飲み。

 

「……緑茶?」

 

いつ置かれたのか。

 

「……。」

 

ドモンは少し考える。

 

しかし。

 

すぐに答えは出た。

 

「ラミルか。」

 

追い出したが。

 

置いていったらしい。

 

「……。」

 

少しだけ口元が緩む。

 

「世話焼きなのか。」

 

一口。

 

緑茶を飲む。

 

「……。」

 

優しい香り。

 

どこか懐かしい味。

 

「悪くない。」

 

そう呟いた瞬間。

 

だった。

 

「……?」

 

視界が揺れる。

 

「なんだ……?」

 

急激な眠気。

 

身体から力が抜けていく。

 

「まさか……。」

 

立ち上がろうとする。

 

しかし。

 

遅かった。

 

ドサッ。

 

床に倒れる。

 

最後に見えたのは。

 

黒い鳥の影だった。

 

 

「……。」

 

目を覚ましたドモンは、周囲を見渡す。

 

木の香り。

 

墨の匂い。

 

静かな空気。

 

「ここは……。」

 

記憶を探る。

 

「雲嶽山。」

 

「……適当観か。」

 

昔。

 

何度か訪れた場所。

 

「懐かしいな。」

 

そう呟きながら、身体を起こそうとする。

 

しかし。

 

「……?」

 

動かない。

 

腕。

 

足。

 

視線を落とす。

 

そこには。

 

縄。

 

しかも、ただの縄ではない。

 

術式が込められている。

 

「……。」

 

ドモンは眉をひそめる。

 

「誰がこんなものを……。」

 

その時。

 

扉が開いた。

 

「起きたか。」

 

落ち着いた声。

 

長い銀髪。

 

金色の瞳。

 

黄色の道着。

 

「……儀玄。」

 

「久しいな。」

 

女性は静かに部屋へ入る。

 

「昔から変わらないな。」

 

儀玄は少しだけ目を細めた。

 

「そういうところもな。」

 

ドモンは縄を見る。

 

「助かった。」

 

「これをほどいてくれ。」

 

しかし。

 

儀玄は首を横に振った。

 

「断る。」

 

「……。」

 

即答だった。

 

「なぜだ。」

 

「なぜなら。」

 

儀玄は淡々と言う。

 

「縛ったのは私だからだ。」

 

「……。」

 

ドモンは数秒沈黙する。

 

「どうやってここへ。」

 

「術法だ。」

 

「眠りの術を私が入れた緑茶にかけた。」

 

「それを飲んでしまったわけか。」

 

「後は連れてくればいい。」

 

「……。」

 

納得するしかなかった。

 

儀玄ならできる。

 

昔からそうだった。

 

「だが。」

 

ドモンは儀玄を見る。

 

「なぜ俺を連れてきた。」

 

「なぜ拘束する必要がある。」

 

儀玄は少し黙る。

 

そして。

 

「……。」

 

「相変わらずだな。」

 

「何がだ。」

 

「自分のことになると、途端に鈍い。」

 

「……。」

 

「ドモン。」

 

儀玄は静かに歩み寄る。

 

「お前。」

 

「最近、無茶をしているな。」

 

「……。」

 

「ホロウ。」

 

その言葉に。

 

ドモンの表情が僅かに変わる。

 

「……知っていたのか。」

 

「当然だ。」

 

儀玄は答える。

 

「雲嶽山の術は、目に見えるものだけを追うものではない。」

 

「流れを見る。」

 

「兆しを見る。」

 

「お前が何をしているかなど、少し調べれば分かる。」

 

「……。」

 

ドモンは黙る。

 

儀玄はため息をついた。

 

「まったく。」

 

「昔から変わらん。」

 

「強い。」

 

「だが。」

 

「自分を顧みない。」

 

「……。」

 

「力がある者ほど。」

 

「己を見失いやすい。」

 

儀玄はドモンを見る。

 

「だから。」

 

「一度止めた。」

 

「……。」

 

「少し休め。」

 

「それだけだ。」

 

ドモンは目を細める。

 

「そのために縄で縛ったのか。」

 

「そうだ。」

 

即答。

 

「……。」

 

「手段が強引ではないか。」

 

「逃げるだろう。」

 

「否定できない。」

 

儀玄は小さく頷く。

 

「ならば正しい判断だ。」

 

「……。」

 

ドモンは何も言えなかった。

 

 

「変わらんな。」

 

「何がだ。」

 

「昔から。」

 

「修行中でも、誰かの心配ばかりしていた。」

 

「自分の傷は放置するくせにな。」

 

「……。」

 

ドモンは言い返せなかった。

 

幼い頃から。

 

儀玄には何度も言われてきた。

 

『己を大切にしろ』

 

『倒れてからでは遅い』

 

その言葉を。

 

今でも覚えている。

 

「だが。」

 

儀玄は静かに続ける。

 

「お前がそういう人間だからこそ。」

 

「私は放っておけん。」

 

「……。」

 

ドモンが少し目を見開く。

 

儀玄はいつもの無表情だった。

 

だが。

 

その声には確かな心配があった。

 

「儀玄。」

 

「なんだ。」

 

「昔からそうだったな。」

 

「何がだ。」

 

「俺を止めようとするところだ。」

 

「当然だ。」

 

儀玄は即答する。

 

「危険へ向かう者を止める。」

 

「それは弟子であろうと、友であろうと変わらん。」

 

「……友、か。」

 

ドモンが呟く。

 

「何か問題でもあるか?」

 

「いや。」

 

「少し意外だった。」

 

「失礼な。」

 

儀玄は眉を僅かに動かす。

 

「私にも友と呼ぶ相手くらいはいる。」

 

「……。」

 

「なんだ、その顔は。」

 

「いや。」

 

「昔から人付き合いが苦手だったからな。」

 

「お前にだけは言われたくない。」

 

即座に返される。

 

ドモンは少しだけ笑った。

 

 

「それで。」

 

ドモンが尋ねる。

 

「いつまでここにいさせるつもりだ。」

 

「お前次第だ。」

 

「俺次第?」

 

「休む気になれば、すぐに解く。」

 

「なら。」

 

ドモンは縄を見る。

 

「今すぐ――」

 

「駄目だ。」

 

即答。

 

「……。」

 

「まだ目に疲労が残っている。」

 

「見れば分かる。」

 

儀玄は淡々と言う。

 

「お前は昔から、限界まで動いてから休もうとする。」

 

「今も変わらん。」

 

「……。」

 

図星だった。

 

「だから。」

 

儀玄は座る。

 

「休め。」

 

「それも修行のうちだ。」

 

「……。」

 

ドモンは少し黙った。

 

「休むことが修行、か。」

 

「そうだ。」

 

儀玄は頷く。

 

「動と静。」

 

「戦うだけが鍛錬ではない。」

 

「己を整えることもまた、道だ。」

 

その言葉に。

 

ドモンは昔の日々を思い出す。

 

雲嶽山で過ごした時間。

 

儀玄と拳を交えた日々。

 

互いに競い。

 

互いに成長した。

 

「……懐かしいな。」

 

「何がだ。」

 

「修行していた頃だ。」

 

「そうだな。」

 

儀玄も少しだけ目を細める。

 

「お前は毎回無茶をした。」

 

「先輩たちを倒して。」

 

「その後、さらに修行を求めてきた。」

 

「……。」

 

「正直。」

 

「最初は思った。」

 

「君、本当に子供か、と。」

 

「失礼だな。」

 

「事実だ。」

 

淡々と返される。

 

ドモンは苦笑した。

 

その時。

 

部屋の外から声が聞こえた。

 

「師匠ー!」

 

「……。」

 

儀玄が僅かに視線を向ける。

 

「橘福福か。」

 

扉の向こう。

 

「師匠、さっき何か運んで――」

 

「入るな。」

 

即答。

 

「えっ?」

 

「今は取り込み中だ。」

 

「何してるんですか?」

 

「……。」

 

儀玄は一瞬黙る。

 

そして。

 

「古い友人を保護している。」

 

「保護?」

 

「……。」

 

ドモンは縄を見る。

 

「これは保護と言うのか?」

 

「細かいことは気にするな。」

 

「細かくない。」

 

儀玄は静かに立ち上がる。

 

「福福。」

 

「はい?」

 

「これは秘密だ。」

 

「……。」

 

「分かりました!」

 

足音が遠ざかる。

 

ドモンは呆れたように息を吐いた。

 

「弟子にまで隠すのか。」

 

「余計な騒ぎは避けたい。」

 

「なるほど。」

 

儀玄は再びドモンを見る。

 

「さて。」

 

「しばらく大人しくしていろ。」

 

「……。」

 

「逃げようとしても無駄だ。」

 

「術式は強化してある。」

 

ドモンは黙る。

 

そして。

 

「……。」

 

「試すだけ試すか。」

 

その瞬間。

 

儀玄の目が細くなる。

 

「やはりそう来るか。」

 

「昔から変わらん。」

 

「脱出を考えるところまで含めてな。」

 

ドモンは少し視線を逸らした。

 

「……。」

 

「だが。」

 

儀玄は僅かに笑う。

 

「少し楽しみでもある。」

 

「何がだ。」

 

「お前が本気で抜け出そうとするなら。」

 

「こちらも久しぶりに腕を使える。」

 

ドモンは目を細める。

 

「逃げ切れるとは思うなよ。」

 




書いたらなんか怖くなっちゃった。
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