ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す   作:猫ロボF

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ドモンの性格に少し違和感を感じているため次回あたりで直します。


第五話 大脱走!囚われのドモン 中

数時間後。

 

適当観。

 

深夜。

 

静寂が辺りを包んでいた。

 

部屋の中。

 

ドモンは目を閉じている。

 

「……。」

 

眠っているように見える。

 

しかし。

 

意識は完全に起きていた。

 

(……。)

 

縄。

 

術式。

 

部屋の構造。

 

そして。

 

外の気配。

 

全て確認した。

 

「……。」

 

ドモンは小さく息を吐く。

 

(やはり昔より強化されている。)

 

普通の縄ならば、力で引きちぎれる。

 

だが。

 

これは儀玄の術法によって作られたもの。

 

力任せでは解除できない。

 

「……。」

 

それでも。

 

ドモンは諦めなかった。

 

昔からそうだった。

 

無理だと言われたことほど。

 

挑みたくなる。

 

「……少しだけ試すか。」

 

僅かに力を込める。

 

すると。

 

縄に刻まれた術式が淡く光った。

 

「……。」

 

反応した。

 

つまり。

 

術式には一定の力を感知する仕組みがある。

 

「なるほど。」

 

「力で突破するのは無理か。」

 

ならば。

 

別の方法を試す。

 

ドモンは呼吸を整える。

 

「……。」

 

しかし。

 

その瞬間。

 

「そこまでだ。」

 

声が響いた。

 

「……。」

 

ドモンが顔を上げる。

 

いつの間にか。

 

部屋の入口に儀玄が立っていた。

 

「起きていたか。」

 

「いや。」

 

「今起きたところだ。」

 

「嘘だな。」

 

即答。

 

「……。」

 

「お前は昔から、悪巧みをするときだけ妙に静かになる。」

 

「悪巧みではない。」

 

「脱出だ。」

 

「同じようなものだ。」

 

儀玄は淡々と言う。

 

「……。」

 

ドモンは少し黙る。

 

「気付いていたのか。」

 

「当然だ。」

 

儀玄は部屋へ入る。

 

「術式が反応した。」

 

「それに。」

 

「お前が大人しく寝ているなど、最初から信用していない。」

 

「……。」

 

図星だった。

 

「信用がないな。」

 

「信頼しているから分かる。」

 

「矛盾している。」

 

「そうか?」

 

儀玄は首を傾げる。

 

「お前なら必ず逃げようとする。」

 

「それを理解しているだけだ。」

 

「……。」

 

ドモンはため息をついた。

 

「しかし。」

 

儀玄は縄を見る。

 

「悪くない。」

 

「何がだ。」

 

「試みだ。」

 

「力だけではなく、術式の構造を見ようとしていた。」

 

「昔より頭を使うようになったな。」

 

「褒めているのか?」

 

「半分は。」

 

「半分は?」

 

「まだ無茶をしている。」

 

「……。」

 

「力を使わず抜け出せれば。」

 

「その後どうするつもりだった。」

 

「帰る。」

 

「どうやって衛非地区から六分街まで行くんだ?かなりの距離があるぞ?」

 

「...」

 

「貨物用の飛行船に忍び込むにしても、しばらく飛行船は来ない。」

 

「大人しくしているんだな。」

 

「……。」

 

ドモンは黙り込む。

 

確かに。

 

言われてみればその通りだった。

 

ここは衛非地区。

 

六分街までは距離がある。

 

仮に縄を抜けたとしても。

 

仮にシャイニングガンダムの力を使ったとしても遠すぎる。

 

先に体力が尽きてしまう。

 

 

「……。」

 

静かな部屋。

 

儀玄は眠ったドモンを見つめていた。

 

縄で拘束されているというのに。

 

彼はまだ戦うことを考えている。

 

逃げる方法を探している。

 

自分が傷つく可能性など考えずに。

 

「……本当に。」

 

儀玄は小さく呟く。

 

「昔から変わらないな。」

 

幼い頃から。

 

そうだった。

 

誰かが困っていれば助けに行く。

 

自分が傷ついても笑っている。

 

無茶をして。

 

無理をして。

 

それでも前へ進もうとする。

 

儀玄は知っている。

 

それがドモンという人間の強さであることを。

 

だが。

 

同時に。

 

それが弱さでもあることを。

 

「……。」

 

儀玄は拳を握る。

 

脳裏に浮かぶ。

 

失ったもの。

 

もう戻らない人。

 

守れなかった存在。

 

「……もう。」

 

声が震える。

 

「これ以上……大切な人を失いたくない。」

 

誰にも聞こえないほど小さな声。

 

それは。

 

十三代宗主としての言葉ではなかった。

 

一人の人間としての。

 

儀玄自身の本音だった。

 

「ドモン。」

 

眠っている彼へ近付く。

 

「お前まで……。」

 

その先の言葉は出なかった。

 

そして。

 

儀玄は。

 

静かにドモンへ抱き着いた。

 

「……。」

 

「頼むから。」

 

「もう少し、自分を大切にしろ。」

 

いつもの冷静な声ではない。

 

そこにあったのは。

 

ただの願いだった。

 

 

翌朝。

 

「……。」

 

儀玄は目を開けた。

 

「……?」

 

見慣れた天井。

 

適当観の部屋。

 

「……。」

 

数秒。

 

状況を理解する。

 

そして。

 

「……。」

 

固まった。

 

「……。」

 

「私は……。」

 

「そのまま眠ったのか。」

 

よりによって。

 

ドモンを抱き締めたまま眠ってしまった。

 

「……。」

 

「私としたことが。」

 

小さく呟く。

 

しかし。

 

そこで違和感に気付く。

 

「……?」

 

身体に何かが掛かっている。

 

視線を落とす。

 

それは。

 

「……。」

 

ドモンのマント。

 

「……。」

 

儀玄はしばらく動かなかった。

 

「……。」

 

そして。

 

周囲を見る。

 

「……。」

 

ドモンがいない。

 

代わりに。

 

床には。

 

縄だけが残されていた。

 

「……。」

 

一瞬。

 

儀玄の表情が変わる。

 

「まさか。」

 

だが。

 

すぐに冷静さを取り戻す。

 

「……いや。」

 

「慌てるな。」

 

状況を見る。

 

縄は切られていない。

 

解かれている。

 

しかも。

 

術式は破壊されていない。

 

「……。」

 

儀玄は縄を手に取る。

 

「力ではない。」

 

「ならば。」

 

一つの答えに辿り着く。

 

「関節か。」

 

ドモン。

 

昔から無茶苦茶なことをする。

 

「手首の関節を外したか。」

 

「その状態で縄を抜けた。」

 

「……。」

 

儀玄は目を閉じる。

 

「次は。」

 

「監禁では足りないな。」

 

静かな声。

 

しかし。

 

そこには少しだけ怒りが混ざっていた。

 

 

数分後。

 

儀玄は適当観を飛び出していた。

 

「……。」

 

空中。

 

呪符を足場に進む。

 

同時に。

 

術式を展開。

 

昨日。

 

ドモンへ仕込んだ術。

 

解除されていない。

 

「ならば。」

 

「まだ追える。」

 

術式が示す方向。

 

それは。

 

衛非地区の港。

 

そして。

 

「……。」

 

儀玄の足が止まる。

 

海の向こう。

 

巨大な黒い球体。

 

異質な空間。

 

ラマニアンホロウ。

 

「……。」

 

数秒。

 

沈黙。

 

そして。

 

儀玄の表情が変わった。

 

「……そういうことか。」

 

拳を握る。

 

「私から逃げるために。」

 

「ホロウへ入ったのか。」

 

普段。

 

決して感情を荒げない儀玄。

 

しかし。

 

今。

 

その瞳は、濁っていた。

 

 

同時刻。

 

ラマニアンホロウ内部。

 

「……。」

 

ドモンは拳を振り抜いた。

 

ドゴォンッ!!

 

エーテリアスが吹き飛ぶ。

 

「……。」

 

周囲を確認。

 

敵影なし。

 

「……。」

 

息を整える。

 

計画通りだった。

 

「儀玄なら。」

 

「追跡術を仕込むと思った。」

 

ドモンは呟く。

 

昔からそうだった。

 

儀玄は慎重だ。

 

逃げ道まで考えている。

 

だからこそ。

 

ドモンも対策した。

 

ホロウへ入り。

 

エーテル環境を利用する。

 

術式の感知を乱す。

 

その間に。

 

解除方法を探す。

 

そして。

 

衛非地区へ戻る。

 

飛行船を待つ。

 

完璧な計画だった。

 

「……。」

 

「少し悪いとは思うが。」

 

「許してくれ。」

 

ドモンは進む。

 

 

さらに奥。

 

ドモンは最後のエーテリアスを倒した。

 

「……。」

 

周囲が静かになる。

 

「今だ。」

 

精神を集中。

 

術式を見る。

 

追跡の流れ。

 

構造。

 

術式の結び目。

 

「……。」

 

少しずつ。

 

解いていく。

 

「あと少し。」

 

しかし。

 

その瞬間。

 

背後。

 

気配。

 

「……!」

 

振り向く。

 

遅い。

 

エーテリアスの爪が迫る。

 

「しまっ――」

 

その瞬間。

 

墨。

 

黒い奔流が走った。

 

ズドンッ!!

 

エーテリアスが消し飛ぶ。

 

「……。」

 

ドモンは目を見開く。

 

「……。」

 

そして。

 

理解した。

 

「……一歩。」

 

「遅かったか。」

 

階段。

 

そこから。

 

一人の女性が歩いてくる。

 

長い銀髪。

 

金色の瞳。

 

黄色の道着。

 

儀玄。

 

「……。」

 

しかし。

 

いつもの彼女ではなかった。

 

瞳が。

 

濁っている。

 

「儀玄……。」

 

彼女は答えない。

 

ただ。

 

静かに歩く。

 

「……。」

 

ドモンは構える。

 

戦うためではない。

 

理解したからだ。

 

今の儀玄は。

 

怒っている。

 

「……ドモン。」

 

低い声。

 

「なぜだ。」

 

「……。」

 

「なぜ。」

 

一歩。

 

「そこまでして。」

 

「自分を傷つける。」

 

ドモンは黙る。

 

儀玄の声が震える。

 

「私は。」

 

「お前を止めたかった。」

 

「ただ休ませたかった。」

 

「それだけだった。」

 

「なのに。」

 

拳を握る。

 

「お前は。」

 

「また。」

 

「自分の身体を削る方法を選んだ。」

 

「……。」

 

「もう。」

 

儀玄の周囲に墨が渦巻く。

 

「分からせるしかない。」

 

「お前が。」

 

「どれだけ無茶をしているのか。」

 

静かな声。

 

だが。

 

その奥には。

 

今まで抑えていた感情があった。

 

「覚悟しろ。」

 

「ドモン。」

 

「今日は。」

 

「逃がさん。」

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