戦いから数時間後。
ラマニアンホロウを後にした一行は、適当観に集まった。
円卓を囲み、湯気の立つ料理が並ぶ。
「結局。」
儀玄が小さく息を吐く。
「店へ行くつもりだったのだがな。」
「今日は人が多すぎた。」
本来は店で食事をする予定だった。だが、この時間はどの店も満席。
行き先に困っていた一行へ事情を聞いた潘引壺が、適当観で料理を振る舞ってくれたのだ。
「たまには、こういうのも悪くないさ。」
穏やかな空気。
戦いの緊張は、もうそこにはなかった。
「ドモン。」
儀玄が声を掛ける。
「もっと食べろ。」
「……十分だ。」
「傷の回復には栄養が必要だ。」
「分かってる。」
あの後シャイニングガンダムの姿を解除したドモンは傷だらけだった。
だからドモンは体中に絆創膏が張られていた。
ぶっきらぼうに返しながらも、箸を伸ばす。
その姿に、儀玄は小さく笑った。
少しだけ。
本当に少しだけ。
変わったのだ。
食事も一段落した頃。
ドモンが立ち上がる。
「少し。」
皆を見る。
「散歩してくる。」
「一人でか。」
儀玄が聞く。
「ああ。」
短く答える。
「すぐ戻る。」
「……。」
儀玄は少しだけ考え。
やがて頷いた。
「行ってこい。」
「ありがとう。」
ドモンは静かに歩き出した。
◇
澄輝坪。
海を望む高台。
潮風が吹く。
ドモンは手すりへ軽く寄り掛かり。
静かに水平線を見つめていた。
「……。」
青い海。
遠くまで続く空。
その景色を見ていると。
自然と、あの時のことを思い出す。
白い世界。
師匠。
東方不敗。
「……。」
もし。
あの時。
師匠が現れなかったら。
自分はどうなっていただろう。
儀玄の想いにも気付かず。
また一人で全てを背負い。
誰かを心配させ。
傷付け続けていたかもしれない。
未来は分からない。
だが。
一つだけ確かなことがある。
ドモンは静かに拳を握った。
「未来は。」
小さく笑う。
「この手でつかむ。」
潮風が髪を揺らす。
「師匠。」
空を見上げる。
「もう。」
「殴られないように頑張るさ。」
「バカ弟子なんて。」
「もう言わせない。」
その言葉には。
決意が込められていた。
「もう。」
「周りに心配は掛けない。」
「大切な人も。」
「泣かせない。」
「一人で突っ走るのも。」
「今日で終わりだ。」
少しだけ照れ臭そうに頭をかく。
「……まあ。」
「師匠のことだから。」
苦笑する。
「神様に頼み込んででも。」
「こっちの世界へ赤ん坊から生まれ直して。」
「また俺を殴りに来そうだけどな。」
思わず笑みがこぼれる。
「その時は。」
「また付き合ってやるよ。」
静かな風。
海を眺めていると。
胸の奥に。
どこか懐かしい感覚が込み上げてくる。
「この景色……。」
「似てるな。」
脳裏に浮かぶ。
ランタオ島。
師匠――東方不敗マスター・アジアとの最後の決闘。
勝利の果てに、自らの腕の中で師匠を看取ったあの場所。
忘れることなど。
できるはずがない。
ドモンは大きく息を吸い込む。
そして。
海へ向かって叫んだ。
「流派! 東方不敗は!!」
その声が。
海原へ響き渡る。
「王者の風よ!!」
「全新!!」
「系列!!」
「天破!!」
「侠乱!!」
ドモンは拳を高く掲げる。
「見よ!!」
「東方は――」
力強く。
誇らしく。
「赤く燃えている!!」
声が空へ吸い込まれていく。
静寂。
潮風だけが吹き抜ける。
その時だった。
「……ふっ。」
背後から、小さな笑い声が聞こえた。
振り返ると。
少し離れた場所で儀玄が腕を組み、静かに立っていた。
「最初から。」
「いたのか。」
「口上の途中からだ。」
儀玄は穏やかに答える。
「……全部聞いたか。」
「最後だけだ。」
少しだけ口元を緩める。
「いい叫びだった。」
ドモンは照れくさそうに視線を逸らす。
「聞かれるとは思わなかった。」
「安心しろ。」
儀玄は海を見つめる。
「誰にも言わん。」
「……助かる。」
二人は並んで海を眺める。
言葉はない。
それでも、不思議と気まずさはなかった。
吹き抜ける潮風は、どこまでも穏やかだった。
師より受け継いだ拳は、これからも人を守るために振るわれる。
ドモン・カッシュの新たな一歩は、静かに始まっていた。
◇
六分街。
ドモンはようやく、借りているアパートへ戻ってきていた。
「……。」
荷物を置く。
久しぶりの我が家。
そう思っていた。
しかし。
扉を開けた瞬間。
空気が変わった。
「……。」
ドモンの動きが止まる。
部屋の奥。
そこには。
一人の女性が立っていた。
ラミル。
ただし。
いつもの雰囲気とは違う。
周囲には。
黒いオーラが漂っている。
笑顔。
確かに笑っている。
しかし。
目だけは。
全く笑っていなかった。
「おかえりなさい。」
優しい声。
だが。
その瞬間。
ドモンの背筋に戦慄が走る。
これは。
戦場で感じる殺気とは違う。
もっと身近で。
もっと逃げ場のない恐怖。
「ドモン。」
ラミルは笑顔のまま歩み寄る。
「随分。」
「楽しそうなことをしていたみたいね。」
「……。」
ドモンは無意識に一歩下がる。
(まずい。)
直感だった。
(これは。)
ラミルから放たれる威圧。
それは。
かつて何度も死線を越えてきたドモンですら、警戒するほどだった。
「……。」
ドモンは思う。
(下手をすれば。)
(マスターガンダムの威圧にすら……。)
(届くんじゃないか?)
脳裏に浮かぶ。
黒い装甲。
赤いマント。
圧倒的な存在感。
東方不敗マスター・アジアが駆った最強のモビルファイター。
その姿。
その気迫。
それに匹敵するほどの圧を。
今。
目の前の女性から感じていた。
「ドモン?」
「……はい。」
思わず返事が敬語になる。
「……。」
ラミルはゆっくり近付く。
「色々。」
「聞かせてもらうわね。」
「どうして怪我をして帰ってきたのか。」
優しい声。
しかし。
その言葉の重さは。
巨大な鉄球のようだった。
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みなさんお待ちかね!
自宅に帰ってきたドモンを待っていたのは、恐るべきラミルでした!
ラミルは何者なのか?初代虚狩りとは!?
ラミルの真の名前が今!明らかになるのです!
次回!ゼンレスゾーンゼロ 流派東方不敗、再臨す「闘えドモン!自室がリングだ」にぃ、レディィィ、ゴォォォ!!
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