Unnamed Archive   作:Ryokuha

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時計じかけのパヴァーヌ編1章
第1話:始まりは奇妙な出会いから


 

 

 

 

 

……だ……おま………ろ。

 

 

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 

おま…………ぼう………な………から………れ。

 

 

 

 

 

 …………???

 

 

 

 

 

なに…………んだ…………こう………だよ。

 

 

 

 

 

 …………何だ?………声?…………でも………一体誰の…………

 

 

 

 

 

……あた…………ぜ。……おま……………な。

 

 

 

 

 

 …………ダメだ…………何を言ってるのか…………全く分からない………

 

 

 

 

 

あり………な。……あた…………を……………れて。

 

 

 

 

 

 ………俺は…………この声が誰なのか…………知らない………

 

 

 

 

 

たの…………ぜ。……この………ん………。あた………しあ…………た。

 

 

 

 

 

 ………知らない…………………はずなのに…………

 

 

 

 

 

だか………も………くれ。……だい…………だ。……おま…………れる。

 

 

 

 

 

 …………何で…………何で…………こんなにも………

 

 

 

 

 

……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………悲しいんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

■■

 

 

 廃墟

 

 それはここ、キヴォトスにある未知の地域であり、そして行方不明になった連邦生徒会長が立ち入りを禁止している場所。

 

 そしてその廃墟に、二人の少女と一人の先生がいた。

 

 一人の大人は、連邦捜査部シャーレという、超法規的機関の顧問である先生

 

 そしてもう二人の少女は、ミレニアムサイエンススクールという高等学校にある一つの部活、ゲーム開発部に所属している双子の姉妹である姉の才羽モモイと、妹の才羽ミドリ。

 

 彼女らは、はるか昔に存在していた伝説のゲームクリエイターが作った、「G.Bible」と呼ばれる物を探しに、ここ、廃墟へと来ていた。

 

 ……だが彼女らは、廃墟の中で遭遇した謎のロボットたちに襲撃されてしまい、それから逃れるためにとある工場へと避難していた。

 

 その工場に入ると、先ほどまで襲ってきたロボットたちは急に彼女らのことを追わなくなったのだ。

 

 一同はそれに対して各々が違った反応を見せるが、突如として謎の声が彼女らのいる部屋全体へと響いた。

 

 その声は才羽姉妹と先生のことを知っているようであり、何らかの資格の確認をしたようであった。

 

 才羽姉妹は資格がなかったようだが、先生に資格があったおかげで生徒である二人も資格を得られたようであった。

 

 ………だがしかし、資格を持った彼女らは下部の扉、つまり、床に穴が開いて地下へと落ちてしまったのだ。

 

 幸いその穴は深くはなかったようで、彼女らは特にこれと言った怪我はしていなかった。

 

 

 

 

 

 ………だが、彼女らが落ちた先には、太陽光に当てられている椅子に座って眠っている、一人の少女がいた。

 

 どうやらその少女は機械のようであり、椅子にAl-1Sと彼女の名前と推測される文字が書かれてあった。

 

 一同は一先ず彼女を連れてゆくことにし、この場を去ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 …だがしかし、一同は部屋の奥にある壁に、何かがあることに気づいた。

 

 それは一見ただの壁のように見えるが、目を凝らしてよく見てみれば、それは一つの扉であることが分かった。

 

 一同はこの場所から出ようとしていたのだが、その扉のことがどうしても気になってしまい、一度調査をすることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその選択によって、彼女らの物語の根底が、大きく変わることになるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 これは、謎に包まれた一人の少年と、一人の大人、世界の神秘を身にまとう少年少女たちが紡ぐ、もう一つの青春の物語である…………。

 

 

 

 

 

ーー・ーー

 

 

 

 

 

「……なんだろうね、この扉。…見た感じ、ただ壁に擬態しているくらいしか特徴がなさそうだけど……。」

 

「うーん、ねえ君、この扉について何か知ってる?」

 

 扉を調査することにした一同。

 

 ミドリは扉を見たところ、壁に擬態している以外で気になった様子はなかったようだ。それを聞いてモモイは、AL-1Sに対して扉のことを知っているかどうかを聞いた。モモイはきっと、ここで眠っていた彼女なら何か知っているかもしれないと、そう思ったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 …だが

 

 

 

 

 

「回答、本機にはこの扉についてのデータはありません。」

 

「そっか、あなたでも知らないんだね…。」

 

 どうやら残念なことに、AL-1Sはその扉について何も知らないようであった。この近くで眠っていた彼女ですら知らないとなると、ますますこの扉の謎が深まってくる。

 

 

「…とりあえずさ、この扉開けてみない?開けてみないことには中に何があるかわからないでしょ?」

 

「…それもそうだね。それで大丈夫ですか?先生。」

 

“うん、問題ないよ。…それに、私としてもこの扉の奥に何があるのか気になるからね。”

 

 それを聞いてモモイは、考えていても仕方がないと言うことで、とりあえずこの扉を開けて中に何があるのかを確認してみたいようだった。

 

 ミドリも先生もその案に賛成して、心なしかAL-1Sも扉の先が気になっていたようなので、モモイは扉を開けるためにその戸のハンドルを掴んだ。

 

「よし!じゃあ、開けるよ!」

 

 そうして彼女たちは、その謎に包まれた扉を勢いよく開けて、中で広がっている景色を見るのであった。そして、開けた扉の先にあったものは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ!?」

 

「……お姉ちゃん?どうしたの………って、え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、男の子?」

 

「…ね、眠っているみたいだけど……。」

 

 何と、扉の先には一人の少年がいた。そしてどうやらその少年は。AL-1Sと同様に眠っている様子だった。

 

 …だがしかし、彼はAl-1Sとは違う点があった。それは…

 

「…で、でもあの人……緑色の液体が入ってる容器の中にいるみたい……。」

 

“…もしかして……あれは………。”

 

「……回答、恐らく培養液を使って身体を保存していると思われます。」

 

「ば、培養液!?」

 

 何やらその少年は、培養液に満たされたカプセルの容器の中で眠っているみたいだ。

 

 容器は地面よりも少し高いところに斜め向きで置かれており、部屋の周りにある複数のコンピューターのコードのほとんどが、その容器に集結していた。

 

 そしてその中にいた少年は凡そ165cm程度の身長であり、筋肉質な体つきで、白髪の髪を後ろに括っている見た目をしていた。

 

「…ねぇねぇ、この人ももしかして機械なんじゃない?」

 

「…うーーん。でも、機械だったら普通培養液の中に入れないんじゃない?」

 

「確かに……っていうことはこの人、人間………!?」

 

「肯定。恐らくそうかと思われます。」

 

 モモイは先ほど出会ったAL-1Sのように、眠っている少年が機械なのではないかと考えたようであったが、どうやらこの少年は、Al-1Sのような機械ではなく人間のようであった。

 

 …だとしても、この少年はただの人間ではないことは明らかだろう。何故ならこの少年は立ち入りが禁止されているはずの廃墟の工場、その地下でこうして眠っているのだから。

 

 しばらくその容器を観察していると、とあることに気がついた。

 

 

“見て、ここに何か文字が書かれている。”

 

「え?ほんとだ!…でも、全く読めない。…ってかこれ、日本語じゃないじゃん!」

 

「…英語でもなさそうだね。この文字、一体何語なんだろう?」

 

 どうやらその容器のすぐ下の場所に文字が書かれていたらしい。だがしかし、その文字は日本語でも英語でもない言語で書かれており、解読が困難な状況であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…回答、この文字は日本語でアルケーと書かれています。」

 

「え!?君、この文字読めるの!」

 

「肯定。この文字について類似検索をした結果、この文字の言語はギリシャ語であることが判明したため、日本語に翻訳をしました。」

 

 …どうやら、AL-1Sはその文字を解読することができるようだった。彼女によれば扉の文字はギリシャ語で書かれており、日本語で訳すとアルケーというそうだ。モモイは彼女が文字を読めることに対して目を丸くしながら驚いていた。

 

「アルケー…もしかして、この人の名前なのかな…。」

 

「…私もそうだと思う。…そうじゃなきゃ、容器の下なんかにないと思うし……。」

 

 才羽姉妹はその“アルケー”という文字に対して、これは眠っている少年の名前なのではないのだろうかと考えたようだった。

 

 ……だが、そこでまたAL-1Sが彼女たちにこう言った。

 

 

 

 

「回答、この文字の意味について検索をした結果、アルケーとは“根源”という意味だそうです。」

 

“根源…?”

 

「肯定、この言葉は自然哲学の専門用語でも使われており、万物の根源とは何か、つまり、万物のアルケーの正体について議論がなされていました。」

 

「…万物の根源、か……いいね!もしかしたらゲーム制作に使えるかも!」

 

「お姉ちゃん……。」

 

 AL-1Sがアルケーという文字について、意味は根源であり、自然哲学にも使われていたと解説した。それを聞いてモモイはゲーム制作に使えるかもと考えていたが、ミドリはそんなモモイの楽観的姿勢に対して呆れているようであった。

 

 

「……どうする?…この人も、起こしてみる………?」

 

「い、いや……起こすにしても、何をすればいいのか分からない以上、どうしようもないんじゃ………。」

 

“……それもそうだね。でも、この子を放っておくこともできないから、何とかして起こしてあげたいけど………。”

 

 モモイは眠っている彼のことを起こそうとするが、ミドリの言う通り起こし方が分からない以上、彼女らにはどうすることもできない。…だが、先生は廃墟で眠っていることから放っておくことができず、どうにかして起こしたいようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ……すると、突如として周りに設置されていたコンピューターが、一斉に起動し始めた。

 

 

“……ッ!”

 

「な、何!?」

 

「ど、どうして急に起動して……!」

 

 突如として起こった出来事に、先生や才羽姉妹は驚きを隠せずにいた。…だがそんな彼女たちのことを知らずに、コンピューターの方にまた変化が起こっていた。

 

 

【認証プロセスを確認………。これより個体名、ἀρχήの起床を開始します。】

 

「に、認証プロセス!?」

 

「こ、コンピューターに文字が……!」

 

“……これは………一体………?”

 

 どうやらコンピューターの方で、何かの認証プロセスを取得した後に文字が入力されていっているようであった。

 

 …そして、文字が入力し終えられて数秒後、容器の様子が変化し始めていた。

 

「…あ、あれ?な、何か……培養液がどんどん無くなっていってない……!?」

 

「ほ、本当だ……!も、もしかして本当に目を覚まそうとしているのかな……。」

 

“………とりあえず、今は様子を見てみよう。”

 

 どうやら、容器に入っている培養液が徐々に抜けていっているようであった。…もしかしたら、ミドリの言う通りその少年が目を覚まそうとしているのかもしれない。

 

 …だがいずれにせよ、まだ培養液が完全に抜けていない以上、先生の言う通り今は様子を見た方が良いだろう。

 

 

 

 

 

 

 ……そして約2分の時が経った後、容器の中に入っていた培養液が、完全に無くなったのであった……………。

 

 

【……保存溶液の抽出を完了しました。これより、容器の蓋を開放します。】

 

 そうコンピューターが宣言した後、容器の方向から何かの音が聞こえた。…それは、容器の蓋が開放されている音であった。

 

 

 

「ひ、開いちゃった………。」

 

「………。」

 

 それを見て才羽姉妹は唖然としており、ミドリに至っては言葉すら出ないほど驚愕しているようであった。

 

 

 

 

 

 

 そして……………

 

 

 

 

 

 

「…………ん?」

 

「…しゃ、喋った……!?」

 

「……ほ、本当に起きてる………。」

 

 容器の中で眠っていた少年がその目を開き、そして声を発していた。…どうやら少年は、頭の上にある白いヘイローが浮かんでいることから、本当に目が覚めたようであった。彼は眠っていた容器から上半身を起こし、その白い瞳をこすりながら周りを見渡していた。

 

 

 

【対象の起床を確認しました。おはようございます、ἀρχή。…良い旅を。】

 

「……ん?コンピューターから文字が出てる……。良い旅をって、何のことd―――――あれ?」

 

 

 そう言った後にコンピューターは完全に稼働を停止したようだった。…コンピューターの言葉を聞いて少年は困惑していたが、彼はそのコンピューターの近くにいたモモイたちのことに気がついたようで、彼の視線はモモイたちの方へと移された。

 

 

「…誰だ?お前ら……。もしかして、俺のことを起こしたのは、お前らなのか……?」

 

「えっ!?い、いや、それはその…………。」

 

 少年が突如として話しかけてきたことにより、先ほどまで唖然としていたミドリが急にあたふたしながら答えようとするが、彼女は上手く言葉が出せないようであった。それを見て少年は………

 

 

 

「……その様子だと、意図的に俺のことを起こしたわけじゃなさそうだな……。」

 

「え?わ、分かるの……?」

 

「……いやまぁ、そんだけ慌てられたら嫌でもそう考えるだろ。…別に怪しそうな奴らでもなさそうだしな。」

 

 少年はミドリの様子を見ただけでモモイたちの事情をある程度把握したようであった。…未だにあたふたしているモモイたちと比べて、彼はかなり落ち着いているみたいだ。

 

“……君は一体、何者なんだい………?”

 

「……俺のことか?まぁ、そうだな………。状況を見た感じ、どうやら普通じゃねぇのは俺の方みたいだしな。……なんか変な容器の中で眠っていたっぽいし。」

 

 彼はそう言ってジト目になりながら自身が眠っていた容器の方を見つめていた。…どうやら彼は、状況的におかしいのは自身の方だと考えたようで、先生の質問に答えるそうであった。

 

 

 

 

「……んじゃあ、先に名乗らせてもらうぜ。俺の名は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………俺の名は………………」

 

 

 

 

 

 

 

[……あ、あれ?……俺の名前って何だったっけ………。]

 

[…や、やべぇ………。そ、そういや、何でこんな場所に眠っているのかも分からねぇし、何なら寝る前のことすら覚えてねぇぞ……?」

 

[お、思い出せ!……何か、何かないのか………!?」

 

 

 …少年はふと自身のことを思い浮かべてみる。…だが、彼は自身の名前とここで眠っている理由、そして自身の過去ですら覚えていないようであった。彼はそれを認識して、どうにか自身に関する何かを思い出そうとするが……

 

 

 

 

 

 

 

[……ダメだ。何にも思い出せねぇ………。どうやら俺は、記憶喪失になっているようだな………。]

 

 

 残念なことに、彼は何一つ思い浮かぶようなことはなかったそうだ……。それを認識して少年は冷静に、自身が記憶喪失になっていることを悟った。その様子を見て不思議に思ったモモイは、もしかしたらと思い彼にこう言った。

 

 

「……もしかして、何も覚えていないの……?」

 

「……あぁ、どうやら、そうみたいだ………。」

 

“…………そうか、()()そうなんだね……。”

 

「……すまねぇな。先に自己紹介をするって言ったのn―――――ん?」

 

「……待て。()()、だと?……その言い方だと、他にも記憶喪失の奴がいるように聞こえるが…」

 

“うん。実はそこにいる子も、さっきここの外で眠っていてね。そして、彼女も記憶がないみたいなんだ。”

 

「…そいつがか?」

 

 彼が驚いた様子でそう言ったことに対して、先生は無言で頷いた。…そして少年は、先ほどから今までの話を聞いて、首をかしげてキョトンとした様子で自身を見つめている少女に対して視線を送った。

 

「…へぇ、そうなのか。……っていうかさっきも聞いたが、アンタらは一体何者なんだ?どうしてここに来たんだ?」

 

“そういえば、私たちの自己紹介をしていなかったね。………そうだね。君のことを教えてもらったし、私たちのことも言わないとね。”

 

 そう言って先生と才羽姉妹は彼に対して自己紹介をして、何故ここに来ることになったのかの経緯を彼に伝えた。彼らは、自身らの部活が廃部にされるのを防ぐために、G.Bibleという伝説のゲームクリエイターが作ったとされる、所謂神ゲーなるものを作る秘伝の情報が載っているものを探しにここ、廃墟と呼ばれるところに来ていたということを……。

 

 

 

 

 

「なるほど、大体の事情は把握したぜ。…随分と大変なことになっているようだな。」

 

「………はい。でも、これも部活を守るためなので………。」

 

「…そうか。……よし、決めた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺もそのG.Bibleってやつを探すのを手伝うぜ。人手は多いほうがいいだろ?」

 

“「「…え?」」”

 

 突然のことで困惑する才羽姉妹とシャーレの先生、どうやら彼女らは、彼のその発言に対してとても驚いたようだった。

 

 …だが、それもそうだろう。何故なら彼と彼女らは初対面のはずだ。それなのに彼は自身らのことを手伝うと言ったのだ。驚くのも無理はない。

 

 そして、彼の発言に驚いた一人であるモモイが彼に対してこう言った。

 

「な、なんで手伝ってくれるの?!いや、確かに嬉しいけどさ……!」

 

「なんでかだって?それならまぁ、アンタらが俺のことを起こしてくれたから、かな。」

 

「で、でも!それはたまたまここに来ただけだし、それに私たちが何もしなくてもあなたは………」

 

「……だったら、何で俺はアンタらが来るまで目が覚めなかったんだ?……多分、さっきのあのコンピューター、アンタらがトリガーになって起動したんじゃないのか?」

 

「そ、それは………。」

 

 そう、原理は不明だが、実際に彼はモモイたちが来たことによって眠りから覚めた。そしてそれは、確かな事実であったのだ。彼はそれが理由で、モモイたちのことを助けようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 ……そして、彼には彼女たちを手伝う理由が、他にもあった。

 

 

 

 

 

「…それに、とっても大事なものなんだろ?その部活ってのは。……わざわざ立ち入り禁止区域に来てまでも守ろうとしてんだ。そんだけ大事だってことは、記憶がない俺でも分かるさ……。」

 

 それは、彼女たちが本気で自身のものを守ろうとしていること、それを彼は理解したからであった。……彼の言う通り、実際に廃墟は立ち入りを禁止されており、その実態は謎のロボットたちが蔓延るとても危険な地域だ。そんな場所に来てまでも部活を守ろうとしているのだから、それだけ本気であると捉えることができるだろう。

 

「…そっか。………それじゃあ、お願いしちゃおっかな!」

 

「お姉ちゃん!?いいの!?」

 

「良いも何も、手伝うって言ってくれてるんだからいいんじゃない?」

 

「そ、それはそうだけど……。」

 

"……いいんじゃないかな?モモイの言う通り、彼が手伝うと言っているしね。それにどっちみち、この子を放っておくことはできないからね。"

 

「せ、先生……分かりました。先生がそう言うなら……。」

 

 彼の言葉に対して、ミドリは心配しながらも先生が促したことから、渋々認めることにした。とはいっても、彼女も手伝ってくれるのは嬉しいと感じている。

 

「…決まりでいいか?」

 

「うん!これからよろしくね!……えっと、アルケー?でいいのかな……?」

 

「アルケー?なんじゃそりゃ、それが俺の名前なのか?」

 

“実は、君が入っていた容器の下のところに、アルケーと文字で書かれていてね。それでもしかしたら、君の名前なんじゃないかなと思ったんだ。”

 

「え?……あっホントだ。ギリシャ語でちゃんとアルケーって書いてあるな。」

 

「…えっ!?あ、あなた、ギリシャ語読めるの!?」

 

「……いやまぁ、普通に読めるけど、そんなに不思議なことなのか………?」

 

 少年が容器の下にギリシャ語で書いてあるἀρχήという文字、それを読めたことから、モモイは目を丸くして驚いていた。

 

 …彼はそれを不思議に思っていたようだが、ここキヴォトスでは基本的に日本語が主な言語である。教養としてほとんどの者が英語を学ぶことはあるが、ギリシャ語を学ぶことがあるのはそれこそ一部の者だけだ。…それが故にギリシャ語の文字を解読できることは、少なくとも普通ではないと言えるだろう。

 

「にしても、アルケーか。………いいな。」

 

「よし、今から俺の名前はアルケーだ。よろしく頼むぜ、みんな。」

 

「うん!よろしくね!アルケー!」

 

「よろしくお願いします。アルケーさん。」

 

“こちらこそよろしくね、アルケー。”

 

 少年、アルケーが彼女たちに改めて挨拶をして、才羽姉妹と先生はそれに対して笑顔で挨拶を返した。

 

[アルケー……。何だか、めっちゃしっくりくる名前だな……。多分、それが本当に俺の名前だったんだろうな……。]

 

 どうやら、アルケーにとってその名前はとても馴染みがある言葉なようだ。彼はその言葉を聞き懐かしんでいるのか、彼の顔は少し微笑んでいるように見えた。

 

「…よっしゃ!んじゃあ早速探しに行こうぜ。善は急げって奴だ。」

 

「あっ、それなんだけど、一旦G.Bibleを探すのは止めて帰ろうと思うんだ。」

 

「…え?なんで?………もしかして、今の時間外って結構暗かったり?」

 

「…いえ、まだ一応探索はできる時間帯なのですが……お姉ちゃん、どういうこと?」

 

 どうやらモモイは、一度廃墟の探索を止めて帰ろうとしているようであった。…それに対して、アルケーとミドリは困惑している様子をしていた。

 

「ふっふっふっ、良いこと思いついちゃったんだ。」

 

「…良いこと?」

 

「…何だろう、ものすごく嫌な予感がする……。」

 

 そうしてモモイたちは一度、廃墟の探索を中止し帰還することにしたのであった。…果たしてモモイの案とは一体何なのか。アルケーはただ疑問に思っているだけであったが、ミドリの方は、ものすごく嫌な予感を感じているようであった…………。

 

 こうして、少年アルケーと先生、少女たちの物語が、奇妙な出会いを介して始まった。…果たして彼らは、この物語の行く末で何を見るのだろうか……。

 

 

 

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