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ミレニアム校舎の最上階に鳴り響く激しい銃撃音と爆発音。そして破壊された壁や床から立ち上る黒い煙。
アリスと合流した俺たちは、襲い掛かる生徒会から逃げながら差押品保管所へと向かっていた。
俺たちの敵はアリスのおかげで大半が戦闘不能となっている。
そしてその中にはアスナ先輩もいる。つまり、一番厄介だった敵側の最高戦力がいなくなったんだ。……これなら、いける!
“アルケー!右の5体との接敵を止めて前に進んで!ミドリはその5体の敵の処理を!”
「「了解!」」
先生の指示に従って接敵していたロボットたちを無視して前へ前へと前進していく。その後ミドリが正確な射撃で残った5体をそれぞれ一発ずつで破壊した。
“アリスとモモイは左の3体を集中して!倒したらミドリと一緒に前進!”
「分かった(分かりました)!」
一方でアリスとモモイの二人は左の3体の人型ロボットに対して、モモイは広範囲の乱射を、アリスは溜めに溜めた特大な威力を誇る光の一撃を放つ。二人の攻撃によって3体のロボットは瞬く間に倒された。その後二人はミドリと一緒に俺の後ろをついていくように前進する。
こうして俺たちは息を合わせて敵を倒し、順調に目的地へと進んでいくことができていた。
……とはいっても、まだ最後の関門が残っているけどな。
「そこまでよ!」
“「「「「ッ!」」」」”
「これ以上先にはいかせないわ。」
「やっと追いつきました………。もう逃がしませんよ………!」
最後の関門………それは、ユウカ先輩とアカネ先輩の二人だ。どうやら二人は俺たちがロボットたちの相手をしている間に先回りをしていたようだ。
アカネ先輩はアスナ先輩と同じように戦闘のプロで、ユウカ先輩だって生徒会の中の実力ではかなり上澄みの人だと聞く。加えて後ろには大量の箱形のロボットとドローンたちがいる。
……あの量、今ある機体を全部出してきているっぽいな。恐らく、先輩たちはここで決着をつける気なのだろう。
………だが、こっちにはチームワークが得意なモモイとミドリの二人、戦闘指揮能力がずば抜けて高いシャーレの先生。………そして、俺たちの最高戦力であるアリスがいる。今の俺たちなら、あの陣形を絶対に突破できるはずだ!
“いくよ!ここを突破して、一気に突き抜ける!”
「「「「了解(です)!」」」」
先生の掛け声を合図に、俺たちはユウカ先輩たちとの戦闘を開始した。
俺たちの陣形はいつも通り、俺とモモイが最前線で敵のヘイトを集め接敵し、ミドリとアリスが俺たちのサポートと後方にいる敵への攻撃を行う。いつもならこれで大体の敵の軍団を突破できる。
………だが、
「………ッ!や、やっぱり強い!」
「……クソッ、相手の連携が思ったよりも取れてやがる………!」
やはりと言ったところか、どうやら一筋縄ではいかないらしい。
まず、ユウカ先輩とアカネ先輩の基本的な戦闘力が上澄みなのもあり、そう簡単には倒れてくれない。
それに加えてあの二人はロボットたちの数が多い中、適切な連携が取れている。一体一体のロボットを壊していってもそれをカバーできているし、戦闘に於いての立ち回りもかなり良くできている。
……だが、量が多いなら圧倒的な火力をぶつければいい。ただそれだけだ。
「魔力充電100%………行きます!」
「光よ!!!!」
光の剣の充電を終えたアリスは、ユウカ先輩たちへと向けて多くのロボットとアスナ先輩を戦闘不能にさせた強烈な一撃を与えようとする。
「ッ!ユウカ!」
「えぇ、任せて頂戴!」
だが、アリスが特大の一撃を放とうとする瞬間、ロボットたちとアカネ先輩が突如としてユウカ先輩を盾にし始め、ユウカ先輩も衝撃に備えるために防御態勢に入った。
そしてやがてアリスの光の一撃が放たれられ、ユウカ先輩が蒼い光に飲み込まれた後大きな爆発が起きた。
「やった!命中したよ!」
「……これで、結構なダメージを与えられた筈………!」
「はい!これでアリスたちが有利になりました!」
ユウカ先輩たちの姿は爆発による黒煙で全く見えないが、少なくともモモイの言う通り命中したのは確かだ。モモイたちはユウカ先輩たちがまともに一撃を受けたことから、自分たちが有利な状況となっていると思い歓喜し始めていた。
「………………………。」
…………だが、俺はそうは思わなかった。それは、突如としてユウカ先輩を盾にし始めたこと。そして、極めつけはあの先輩たちの自信満々な表情…………。それらから導き出されることは、ユウカ先輩たちは今………………
“…………残念だけど、どうやらそうでもないみたいだよ。”
「「「……えっ?」」」
「………ふぅ。少し怖かったけど、案外何とかなるものね。」
「えっ!?嘘!?何で立ってるの!?」
「確かに、命中したはずなのに…………!」
「…そ、そんな………。」
黒煙が消えた後、そこにいたのはアリスの一撃を受けて五体満足なまま立っているユウカ先輩たちだった。それを受けてモモイとミドリ、アリスは余程信じられないのか、汗を額から落としながら大きく動揺していた。
……でも、こいつらの反応は別におかしくない。俺だって少し混乱している。だって、どうしてアスナ先輩はアリスの一撃を食らってあれほどのダメージを受けたっていうのに、ユウカ先輩の方は無傷なんだ?
まさか、単純に二人の耐久力に大きな差が………いや、それはあり得ない。ユウカ先輩よりもアスナ先輩の方が戦闘経験の差から圧倒的に強いはずだ。もしもアリスの一撃を素で耐えられるなら、それだけでもアスナ先輩とやり合えるだろう。だからこそ、そこまで耐久力に差があるのは絶対におかしい。
一体、何がどうなって……………
“………シールドだよ。”
「「「「えっ?」」」」
俺たちがそれぞれ混乱している中、突如として先生が口を開いてその答えを紡いだ。
「……シールド、ですか?」
“うん。実はユウカは自分自身にシールドを展開して、一時的に自身の体力を増やすことができるんだ。……実際に、私が最初にキヴォトスへと来た時に使ってたよ。”
「何それ!?ユウカってそんなことできたの!?」
「……でも、それならアリスちゃんの一撃を受けて何ともなかったのにも納得がいく………!」
どうやら先生によると、ユウカ先輩は頑丈なシールドを自身に張ることができるそうだ。ミドリの言う通り、それならさっきの謎は簡単に説明ができる。
…ただ、いずれにせよ重要な問題がまだ残っていた。
「で、ですが……仮にそうだとしても、どうすればいいんでしょうか?魔力充電は時間がかかります。例え、また攻撃ができるようになっても、きっとさっきのように防がれるだけなんじゃ……。」
“………確かに、そうだね。”
そう。問題はこちらの火力を相手に押し付けられなくなったということだ。アリスの言う通り攻撃をしてもさっきのように防がれるだけだ。それに先にユウカ先輩を倒そうとしても、ロボットたちが邪魔をしてきて徹底的に阻止されるだろう。何も解決できていない。
「……ふぅ、ありがとうございますユウカ。貴方のおかげで助かりました。」
「このくらい別に大丈夫………って言いたいけど、やってて気持ちの良いものでもないから、できることならもうやりたくないわね…………。」
「ふふっ、ですが……あの子たちは先ほどのものを見て戦慄しているみたいですよ?」
「……そうね。あの子たちには悪いけど、こっちだってやられる訳にはいかないもの。」
「…えぇ、ですね。では………
そろそろ、終わりにしましょうか。」
「………分かったわ。」
「……ッ!お前ら、来るぞ!」
“「「「ッ!」」」”
こちらに考える暇すらも与えずに、ユウカ先輩たちは猛攻撃を俺たちへと仕掛ける。
どうやらあの表情を見るに、そろそろフィニッシュを決めるつもりのようだ。…まぁ、あっちとしても戦闘をあまり長引かせたくないんだろう。
“皆!今はできるだけ被弾を避けるんだ!相手の攻撃が終わった瞬間に、一気に叩き込む!”
「わ、分かった!」
「先生の言う通り、今はできるだけ耐えないと………!」
「皆!アリスの後ろに隠れてください!アリスの剣を盾にします!」
先生の指示を受けて、相手の隙が生まれるまでできるだけ被弾を避けることを意識した動きをしながら戦闘を継続する。そして自身の身を守るために、モモイとミドリはアリスの後ろに隠れてやり過ごしている。
…だが、
「よっ!」
“なっ!?あ、アルケーッ!?”
「アルケー!?何してるの!?!?」
「アルケーさん!?どうして前にいるんですか!?は、早く隠れてください!」
「アルケー!HPが尽きる前に、早くこっちに!」
俺はアリスの後ろに隠れず、前に出てユウカ先輩たちとの接敵を行っている。……あっ、ちなみに何も考えていないわけじゃないからな?
もちろん先生の指示通りにできるだけ被弾を避ける動きはしているさ。ただ、相手の隙なんか待っていても恐らくこの状況は突破できない。アリス以外は連戦続きで消耗しているから、こっちとしても長期戦は避けたい。
だからこそ、今ここで前に出て先輩たちを倒さないといけない。それは先生も分かってるんだろうが、先生としては皆の安全を最優先にしたいからああ言った指示をしたんだろう。
…まぁ、事実として前に出ていることから当然敵のヘイトは全部俺に向いてるから、当然俺はダメージを受けている。ぶっちゃけた話箱形のロボットから離れながら接敵しないといけないし、全部を避けることはできねぇから、まぁまぁな量の弾幕を食らってるからそこそこ痛い。
…でも、
「へっ!その程度でやられるかよ!食らいやがれ!」
「……グッ!?」
俺は先輩たちの攻撃を受けても平然とし、逆にM2-R1によるフルオートの射撃を厄介なユウカ先輩へと食らわせる。俺は自分の裁量くらい分かってるからな。最初からある程度のダメージを覚悟して前に出ている。
そして先輩は俺の動きが予想ができなかったのか、まともに俺の射撃を食らったようだ。
……どうやら、先輩はダメージを受けていることからシールドの展開はしていないみたいだな。そういえば、ユウカ先輩シールドを展開する前に何かいじってたな。ってことは多分、あのシールドを展開するには準備が必要ってことか。
「クッ、中々やるわね………。」
「……ですが、彼も決して不死身ではないはずです。このまま押し切ってしまいましょう!」
俺を確実に倒すために、先輩たちの攻撃が更に苛烈なものへと移り変わっていく。その様はもはや弾丸の雨と言ってもいいほどに、圧倒的な弾幕量が俺へと襲い掛かって来ていた。
クソッ……あの量を受けたら流石の俺もきつい………!
……仕方ねぇ。ここは腹を括って受けきるか……。この状況を突破するには
「ハアアアアッ!!」
「なっ!?噓でしょ!?どうしてこれだけの攻撃を受けて立っていられるのよ!?」
「くッ!……まさか、これほどとは………!」
俺は先輩たちからの弾丸の雨をその身で受けながらも、アサルトライフルの反撃をユウカ先輩たちへと食らわせる。
…どうやら、俺の身体は何か思ったよりもかなり頑丈……というよりも、タフなようだ。正直なところあり得ないくらいに痛いが、これだけの攻撃を受けてもほんのちょっとだけ動きが鈍っているだけだ。
……へへっ。これならまだまだ戦えるぜ!
「あ、アルケー…………。」
「……アルケーさん。」
「………行きましょう!アリスたちも、負けていられません!」
“………そうだね。皆、アルケーに続こう!私たちも一気に仕掛けるよ!”
「「「はい(うん)!!」」」
「……なっ!?あの子たちまで!?」
どうやらモモイたちの方も、最前線へと出て先輩たちとの接敵をし始めたみたいだ。……こいつは助かる。ヘイトが分散したことで、これで俺の方もかなり動きやすくなった。このまま押し切ってやるぜ!
「………アルケー君、本当に厄介ね。これほどの実力があるだなんて、今までミレニアムで噂にすらなっていなかったのが不思議なくらいよ。」
「……えぇ、私もそう思います。それに彼の力………恐らく、身体能力だけだったら、部長に匹敵するかもしれません………。」
「えっ!?あのネル先輩と!?ど、どうするのよ!?」
「心配はいりませんユウカ。……ここは私に任せてください。」
「……ッ!何か策があるのね?……分かったわ。それじゃあ、頼んだわよ!」
……どうやら、先輩たちには策があるらしい。何を仕掛けてくるのかは知らないが、今のままの火力だと先輩たちは俺たちを倒すことはできない。だからこそ、次で一気に俺たちを仕留めようとするはずだ。
…そして、その手段は………
「これなら、どうですかっ!?」
「……っ!あ、あれはもしかして……っ!」
「ば、爆弾っ!?!?そ、それも……あんなに大きいバッグに………っ!」
……アカネ先輩は自身が持っている多くの爆弾が詰まってあるであろうカバンを持ち上げ、そして俺たちへとそれを投げつけた。
……爆弾、か。確かに、銃弾だけだったら無理だが、爆弾ならやべぇかもな。今の俺は何故か動けているが、ダメージ自体はかなり受けている。それもあれほどでかいバッグにパンパンに入ってるんだ。食らったら間違いなく終わりだろうな。
…まぁ、食らったらの話だけどな。
「……へっ!そいつを待ってたんだよっ!!!」ガコンッ!
「なッ!?」
「ろ、ロボットを――」
「蹴り飛ばした!?!?」
俺はその爆弾が放り投げられた後、すぐに近くにいた箱形のロボットを空中にある爆弾へと目掛けて蹴り上げた。
そしてそのロボットは見事爆弾へと命中し、爆弾はロボットごと耳をつんざくような激しい音を出しながら大きな爆発を起こしていった。
「…なっ!?ろ、ロボットがっ!?」
「グぅっ!?」
「や、やばっ!私たちも飛ばされるっ!?」
その爆弾による爆発によって、モモイたちとユウカ先輩たちは吹き飛ばされないように爆圧の衝撃に耐えていた。
だがしかし箱形のロボットは爆発の衝撃に耐えきれず破壊され、ドローンは空中に浮かんでいることから支えになるものがどこにもないので、爆圧に耐えきれずかなり遠くへと勢いよく吹っ飛ばされていき、地面へと強く衝突して停止した。
…そいつを簡単にまとめるとつまり、ロボットたちがいともたやすく壊れてかつ、キヴォトス人が踏ん張らないといけない程に、あの爆発は強いものだったということだ。
……まっ、俺からしたらそんなこと関係ないんだけどな。
「しめたっ!隙ありっ!」
「なっ!?あ、アルケー君っ!?!?」
そう。俺からしたらあの程度の爆発なんかどうってことない。…むしろ、俺にとってはこの強さが良いんだ。
……だって、この強さのおかげで、先輩たちが動けない中、俺だけが動けるんだからな。俺からしたら先輩たちの隙を突き放題って訳だ。
そして……
「ユウカ先輩!すみません!」
「えっ?」
「ハアッ!」トンッ!
「ゔっ!?」
「なっ!?ゆ、ユウカッ!?」ドサッ!
俺は爆圧に耐えて突っ立ってるユウカ先輩の腹に目掛けて掌底打ちをし、できるだけ痛みが無いようにユウカ先輩を吹っ飛ばした。ユウカ先輩の隙を突けたから、何とか先輩がシールドを展開する前に攻撃を通すことができたみたいだ。
そして吹っ飛ばされた方向にはアカネ先輩がいたことから、ユウカ先輩はアカネ先輩と勢いよくぶつかり、二人ともそのまま仰向けに倒れていった。
「今だお前ら!さっさと逃げるぞ!」
”「「「!!!」」」”
「あ、アルケー……もしかして、このために――――」
「行くよアリスちゃん!アルケーさんが作ってくれた隙を無駄にするわけにはいかない!」
「ッ!わ、分かりましたっ!」
「なっ!?し、しまっ!?」
「に、逃げられる…………っ!?」
俺の合図を聞いてモモイとミドリ、アリス、先生は一気に前へと駆け抜けていく。
……アリスとミドリの二人は気づいたようだが、俺がわざわざ先輩たちの猛攻を隠れずにこの身で受け続けていたのは、攻撃を耐え抜いてアカネ先輩があの爆弾を使うように促していたからだ。
爆弾を使ってロボットを全部破壊して、爆弾の威力に怯んでいる間に一気に叩き込む。そして、俺たちが逃げられる隙を作るって算段だ。
アカネ先輩が爆弾をよく使うという情報はヴェリタスから聞いていたからな。そして、アカネ先輩がぶっ壊した生徒会のシャッターはかなり頑丈なものだ。それをぶっ壊せるほどの威力だったら、利用できそうだと思うだろ?
「へっ!そんじゃお先に失礼しますね先輩たち!ミレニアムプライス、楽しみに待っててくださいよ!」
「くッ!?」
「ちょっ!?ま、待ちなさい!コラアアァ!!!」
こうして俺たちはユウカ先輩たちからの襲撃を乗り切るために全力で走っていった。
後ろからガヤガヤと声が聞こえてくるが、あれは全く聞く必要がない奴だな。
よしっ!このまま真っすぐ差押品保管所に向かうとするか!
ーー・ーー
「はあ、はあ、逃げ切れた……!?」
「先生、ミドリ、アリス、アルケー、大丈夫!?」
「はい。HPは十分です。」
「私も先生も、大丈夫。」
「俺も問題ない。」
「良かった……ところで、ここが差押品保管所?何かだいぶ滅茶苦茶だけど。」
「ガラスも割れてるし、棚も倒れてる……。」
「カリン先輩の跳弾かな……戦闘とか爆発の余波が、ここまで届いたのかも。」
俺たちは今、ユウカ先輩たちからの襲撃から何とか逃れることに成功し、差押品保管所へと来ていた。
…ミドリの言う通り、物や家具がかなり散らかっていやがるな。マジでぐっちゃぐちゃだ。
「ユウカは、もうさっきの時点でアリスが「鏡」を持ってると思い込んでるだろうから……きっと、部室の方に逃げたって考えてるはず。まさか、私たちがここに来てるとは思わないだろうね。」
「とりあえず「鏡」さえ持ち出せれば、後はヴェリタスがどうにかしてくれるはず……!」
……確かにモモイの言う通り、ユウカ先輩たちは間違いなく部室の方に向かっているだろう。俺たちはそいつを考慮して、あえて遠回りしながらここに向かってたし。
だから、先輩たちがここに来ることは無いはずだ。つまり、後は「鏡」を手に入れるだけの簡単な作業ということになる。
「あっ、見つけた、「鏡」!これさえあれば……!」
どうやらミドリが「鏡」を見つけたようだ。……何だこれ、USBか?こん中にハッキングツールがあるのか?
……不思議なもんだな。こんな小さいものに、そんな凄い奴が入っているなんt――――ッ!。
「よしっ!さあ、早く帰ろー……」
「……静かに、ミュートでお願いします。」
「ん?」
「……誰かがこちらに向かってきています。足音から考えて、恐らく人数は一人。」
……俺は、誰かがここに向かってきているのを感じた。…そして、どうやらアリスも俺と同じで気配を感じ取って気がついたようだ。
…って、この気配……もしかして――――
「うーん……このままここにいて、ユウカとかメイド部がまとめて戻ってきたら困るし、一人くらいならみんなで無理やり突破しちゃおっか。」
モモイが向かってきているのが一人と聞いた瞬間、一人くらいならと俺たちで倒してしまおうと言った。
……だが、多分それは無理なことだろうな。
「……いや、ダメだ。お前ら、今すぐ隠れろ。」
「……え?」
「…ど、どういうこと?アルケー。」
「足取りや気配、色々なものを総合してみたが、多分今向かってきている奴はアスナ先輩よりも圧倒的に強い奴だ。……そして恐らく、俺たち全員がかかってもそいつには勝てない。」
「……え!?……そ、それじゃまるで、今向かってきている人は………」
俺が今向かってきている人の特徴をモモイに対して告げた。そしてモモイは、その人物に心当たりがあったようだ。
……まあ、俺もそんなことに当てはまる人なんざ、ミレニアムでは一人しか思い浮かねえ。
「……多分、ネル先輩だ。」
「う、嘘でしょ!?どうしてネル先輩が……!?……いや、それよりも早く隠れなきゃ!!」
モモイの言う通り、相手がネル先輩ならさっさと隠れた方が良い。
…つっても隠れる場所は机の下くらいだ。だから俺たち5人は、ネル先輩が来る前にと急いでその机の下へと隠れた。
「…………ふーん、もうめっちゃくちゃだな。」
……そして、とうとうその姿が俺たちの前へと現れた。
その人は橙色のショートヘアー、そしてメイド服の上にスカジャンを纏い、鋭い赤い瞳を持った視線を部屋中に差し向けていた。
[……この人が、ネル先輩………なんて人だ。戦ってすらいないのに、この気迫……!どうやら、ミレニアム最強は伊達じゃねえらしいな……。]
俺は差押品保管所へとやって来たネル先輩を見て、その圧倒的な気迫を感じ取っていた。
…隠れて正解だった。もしこのまま戦っていたら、本当にこれまでの計画がパーになっていただろうな。
……だが、このまま気配を消していりゃあ流石のネル先輩もいつかはここから去るはずだ。
…それまでの辛抱だ。………絶対に、ここで失敗してたまるか……!!
「(ほ、ホントにネル先輩だ!!)」
「(な、なんで!?どうしてあの人がここに!)」
[ッ!?ば、バカ野郎!何声出してんだ!!]
…モモイとミドリの奴が、ネル先輩に驚いて声を上げてしまっていた。多分、あまりの気迫で耐えきれなかったんだろう。それにその声量はとても小さったから、かなり些細なことだった。
「んん……?」
「何か、声が聞こえたような気が……。」
…だが、あのネル先輩が、そんな些細なことに気づかないわけがない。ネル先輩は視線を動かしながら部屋の中を散策していたが、モモイたちの声を察知した後その身体を止めて意識を集中させていた。
「(!?)」
「(ひいぃ……!)」
「(……この人、何かが違います……)」
「(恐怖……初めての感情……)」
「(今この状況で、戦闘が発生した場合の成功確率……ほぼ0%……!)」
「(落ち着けお前ら!喋らなければあの人もいつかはこっから去るはずだ!それまで我慢するんだ!))
俺はネル先輩に気づかれないように三人にしか聞こえない声量で落ち着くように促すが、どうやらモモイたちはネル先輩の気迫にかなりの恐怖を感じているようで、どうしても声を出さずにはいられないようだった。
そして当然のことに、その声はネル先輩にとっては違和感の正体を決定づけるものとなった。
「ふーん……。」
「確かに気配が……机の下か?」
…まずい、ついに気配を感じ取って、どんどん机に近づいてきてやがる!このままじゃ、間違いなく鉢合わせしちまう……!
………仕方ねえ。かくなる上は……!!
「あ、あの!」
「あん?」
……って、あれ?この声は、もしかして――――!
「ね、ネル先輩!大変です!」
「(!?)」
「(ゆ、ユズちゃん!?)」
[な、何であいつが……?]
俺が最終手段を仕掛ける前に、何故かは知らないがユズが差押品保管所へと来ていた。ユズはユズで、ミレニアムプライスのゲーム作成のために部室で待機していたはずだ。それなのに、一体どうしてここに……
「あんたは……?」
「せ、生徒会「セミナー」所属の、ユズキです。」
「戦闘ロボットが暴走したせいで今、あちこちがめちゃくちゃなんです!アカネ先輩とカリン先輩が、制圧を試みていますが……。」
「なんだよ、暴走か?あれを差し押さえたのなんかずいぶん前だろうに、まだ整備が終わってねえのか。」
「じょ、状況的に、助けが必要かと思い……それで、ここにいらっしゃると聞いたので……。」
「…………………。」
ユズは自らを生徒会と偽って、虚偽の情報をネル先輩に伝えていた。……だが、ネル先輩は机の方をずっと見つめていた。気配を感じ取っているのはあの人の言葉を聞いて分かったから、恐らく俺たちがいることを確信しているはずだ。
…だが、
「……はぁ、仕方ねぇな。」
[!?!?]
……ネル先輩は、俺たちの方に向けていた意識全てを完全に別の方へと向けたようだ。多分この後ユズから聞いた虚偽の情報を元に、アカネ先輩たちのところへと向かうつもりだろう。
「わ、わたしはここの整理をします。そ、その、戦闘は怖くて……経験も、あまり無いですし……。」
「んなこたどうでもいいけど、それよりあんた……。」
「覚えときな。戦闘で一番大事なのは、武器でも経験でもねぇ。」
「は、はい……?」
「度胸だ。」
「その点で、あんたに素質が無いとは思わねぇ。」
「自分がどう思われてるかくらい、あたしにも分かってる。それに、あんたが結構ビビりなこともまあ分かる。それなのに、初対面でこのあたしに声をかけるなんてのは、それなりに度胸がいることだろうからな。」
「は、は、はい!あ、ありがとうございます!?」
「じゃあな、またどっかで会おうぜ。」
「ふぇぇ……。」
……ユズはネル先輩との会話を終えて、緊張がほぐれてその場に座り込んでしまった。
ーー・ーー
「し、死んじゃうかと思った……。」
「ユズうぅぅぅぅぅー!!」
「ユズちゃんすごい!おかげで命拾いしたよ!」
「……サンキューユズ。おかげでマージで助かったぜ。」
「ち、力になれて、良かった……。」
俺とモモイ、ミドリはネル先輩をここから出したユズにそれぞれ感謝だったり賞賛の声を上げた。
……いや、ホントに凄いと思う。おかげさまで命拾いしたぜ。
「そ、それより、今アリスちゃんが持ってるのが……」
「はいっ。」
「これが人類と世界を救う、私たちの新たな武器。「鏡」です!」
そう言いながらアリスは、「鏡」を頭の上へと掲げて、嬉しそうに俺たちへとそれを見せていた。
「や、やっと……!」
「お祝いは後にして、急ごう!ネル先輩が戻ってきたら今度こそ一巻の終わり!」
「この先には戦闘型ロボットがたくさんいる……気を付けて!」
「そうだね、まだ任務は終わってない!」
「わたしたちの目的は「鏡」じゃなくて……「G.Bible」!早く、ヴェリタスの部室に行かなきゃ……!」
「前衛は俺に任せろ!全員蹴散らしてやる!」
「後方は私が担当します。先生、指示を!」
そうだ。ミドリの言う通り、まだ任務は終わってない。
そろそろ、ネル先輩がユズが言ってたことが嘘だと気づいているところだろう。……モモイの言う通り、あの人がここにやってきたらそれこそ本当に終わりだ。…そうなる前に、早くこっから出て行ってヴェリタスへと向かわねぇと!
“……みんなで無事に、部室まで戻ろう!全員、戦闘準備!”
「はい!」
「絶対……無事に帰ろう!」
「アリス、戦闘を始めます!」
「よし!さっさと終わらせるぞ!!」
こうして、「鏡」をかけた最後の戦いが始まった。
……とはいっても、さっきのユウカ先輩たちの襲撃と比べたら、大したことのない連中ばっかなはずだ。
しかも、さっきとは違って今はユズがいる。これなら、絶対に突破できるはずだ!さっさと逃げちまって、戦利品のチェックをしねぇとな!