それと今回の話では地味に第1話で描写し忘れたやつが書かれています。
お兄さん許して
■■
「とにかく、あらためまして。」
「ゲーム開発部の部長、ユズです。」
「この部に来てくれてありがとう、アリスちゃん、アルケーさん。」
「これからよろしくね。」
「あぁ、こちらこそよろしく頼むぜ、ユズ。」
ゲーム開発部の部長、花岡ユズはあらためてこの部にやってきたアリスとアルケーに対して自己紹介をして、それに対してアルケーもユズに対して挨拶を返した。
「よろ、しく……?」
「……理解。」
「ユズが仲間になりました、パンパカパーン!」
「……合ってますか?」
「あ、うん。だいたいそんな感じ、かな。」
「ふふっ、その様子だと、本当にわたしたちのゲームを楽しんでくれたんだね……仲間が増えるのは、RPGの醍醐味の一つだもんね。」
アリスは先ほどのユズの言葉を受けて、今持っている知識を使って自分なりにその意味を表現した。…それに対して、ユズは少し困惑しながらも、その表現をしたということはアリスが自身たちが作ったゲームを楽しんでくれたということなので、嬉しく思っているようだった。
「あ、もしRPGを面白いなって思ってくれたなら……」
「わたしが、他にもおすすめのゲームを教えてあげる。」
「ちょっと待ったぁ!アリスにおススメするのは私が先!」
「良質なゲームをやればやるほど話し方も自然になって、私たちの計画の成功率も上がるんだし!」
「さあ、まずは「英雄神話」と「ファイナル・ファンタジア」と「アイズ・エターナル」と……」
「何言ってるの、アリスちゃんはゲーム初心者だよ!?「ゼルナの伝説・夢見るアイランド」から始めるのが一番だって!」
「これだけは譲れない、次にやるべきは「ロマンシング物語」だよ。あ、でも第3弾だけはちょっと、個人的には、やらなくても良いかなって……。」
「……?」
ユズがアリスに自身がおススメするゲームをやらせようとすると、それを阻止しようと横からモモイが良質なゲームをプレイさせようとする。だがこれまたしかし、それを阻止しようと妹のミドリが初心者用のゲームをさせようとして来ており、完全にいたちごっこと化していた。
…その様子は、ただ単に自分が好きなゲームを他の人にやらせて、その良さを知ってもらいたいかのようであり、もはや当初の目的を忘れているように見えるだろう。
…だが、もともとゲーム開発部のメンバー、ゲーム好きとしては、ゲームのことをまだまだ知らないアリスに、自分たちがやっているゲームのことをたくさん知ってもらいたいというのは仕方のないことなのかもしれない。
……そして、
「……ふーん!だったら私は、アルケーにゲームを教えるもん!」
「はぁ!?お、俺……!?」
「あっ!ず、ズルい!私だってアルケーさんにゲームやってもらいたい!」
「ちょっ!み、ミドリさん!?」
「……わ、わたしも……アルケーさんに、ゲームを………!」
モモイとミドリ、ユズの三人はアリスだけでなく、同じくゲームのことを全く知らないアルケーまでをも巻き込もうとしていた。…それに対して、彼は突然のことから困惑を隠せずにいた。
「アルケー!私が教えるゲーム、やってくれるよね!」
「もちろん、「ゼルナの伝説・夢見るアイランド」をやってくれますよね!アルケーさん!」
「あ、アルケーさん……「ロマンシング物語」、私と一緒にやりませんか……?」
「ダアァもう!分かった!分かったから!全員分やってやっからこっちに近づくんじゃねぇ!」
彼女たちは、後少しで身体がくっついてしまうほどにアルケーのすぐ傍まで近づき、わちゃわちゃとねだり合戦を始めていた。…アルケーはそれに対して、全員分やると言い彼女たちが明らかに近すぎていることから離れるよう示唆した。
[……ったく、そんなに焦んなくても、言われたらちゃんとやるっつうのに………。]
[……でも……まぁ、悪くはないな………。]
…だが、アルケーは決して悪い気分ではなかったようだ。…いや、それどころかとても嬉しい気分であるようにも見える。…彼はなんだかんだ言って、こうして誰かと一緒に遊べるのが嬉しいのだろう。
そしてしばらくした後、アリスとアルケーによるゲーム大会が始まった。ゲームをしている最中に、アリスがテキストを一瞬とも言える速度で読むという人間からかけ離れた技を見せたり、アルケーが、初見殺しが多い難易度が他のゲームと比べてとても高いアクションゲームを、たった3回ゲームオーバーになっただけでクリアするといった芸当を見せたりしていた。
…特に、アルケーが次のステージが来た瞬間瞬時に崖につかまらないと、そのままマグマに落下してゲームオーバーになってしまうところを初見でクリアしたときは、アリス以外の三人が驚きすぎて何人かは口を開いたまま固まってしまっていた。
ーー・ーー
「(Zzz……)」
「……ふにゃ。」
[…皆、すっかり眠ってやがるな……。]
時刻は深夜2時ごろ、アルケーとアリス以外の皆は徐々に込み上げていった睡魔に耐え切れず、そのまま彼女らは一人ずつ夢の底へと沈んでいっていた。
そして残ったアルケーとアリスは、モモイたちに勧められたゲームを進めることにした。とはいっても、アルケーの方はゲームをするのよりも見ている方が楽しいという理由から、日にちを改めて残ったゲームをやることにし、今はゲームをしているアリスを見守ることにしたそうであった。
二人の様子を見るに、彼らには眠気と呼ばれるものが存在しないのか、彼らの目元は淀むことを知らずに平然とテレビから発せられている青い光を眼の中へと入れていた。
「(ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ……)」
「……クリア。」
[…もうクリアしたのか、めちゃくちゃ早えな……。]
無言のままただ淡々と手元にあるコントローラーを操作していたアリスは、たった今プレイしていたゲームをクリアしたみたいだった。
そしてそのままアリスはクリアしたゲームのカセットを取り出し、プレイ済みのゲームカセット達が置かれてある床のエリアにそっと置いた後、まだプレイしていないゲームカセット達が同様に置かれてあるエリアに視線を向け、次にプレイをするゲームをじっくりと考えて選び始めた。
「…………。」
一方でアルケーは、ガサゴソと音を立てながらゲームを選んでいるアリスのことを見つめた後、顔を下にして何かを考え込み、その後はまたアリスのことを見つめ始めたりと、同じような動作をずっと繰り返していた。
……その様は傍から見れば、確実に不審に見えることだろう。
「…アルケー?どうかしましたか?」
「……へ?」
そんな様子のおかしい彼に気づいたアリスは不思議に思い、アルケーに対して何かあったのか尋ねていた。
それを聞いてアルケーは思わず素っ頓狂な声を出してしまい、少々慌てた様子でアリスにこう言った。
「あ、あぁいや、何でもねぇ。気にしないでくれ…。」
「…ですが、先ほどからアルケーは、アリスを見つめては顔を下にして考え込んだりと、どこかおかしいように思えます。…とても何もないようには思えません。」
「そ、それは……」
アルケーはアリスの問いに対して何でもないと答えるが、アリスはアルケーの様子が明らかにおかしいと感じたことから、それは嘘であると見抜いた。
「…もしかして、何か悩みがあるのですか?アリスに言ってみてください。もしかしたら解決できるかもしれません。」
「い、いや…その……。」
アリスはもしかしたらアルケーが何か悩みを持っているのではないかと推測し、真剣な表情をしながらアルケーの元へと近づいていき、アルケーの相談相手になろうと彼に話しかけた。
そして少しの時間が経った後、そんな真剣なアリスの様子を見てアルケーは観念し、彼はアリスに対して自白することにした。
「…なぁ、アリス。お前は、本当にこれで良かったのか……?」
「…??どういうことですか??」
「…あぁ、ちょっと言い方が悪かったな……。」
「アリス、お前は本当にこの場所に、ゲーム開発部にいたいのか…?」
「えっ……?」
突如アルケーの口から告げられた問い。それを聞いてアリスは突然のことで困惑してしまっていた。
だが、アリスはてっきり彼自身に関することが述べられると思っていた。しかし何故か彼女自身のことを彼から告げられたので、そうなってしまうのは仕方ないかもしれない。
唖然としているアリスの様子を見てアルケーは自身の失言に気がつき、急いで詳細を説明しようとした。
「い、いや……言い方が悪いかもしれねぇけど、お前は半ば強制的にここに連れてこられた身だろ?」
「だから、お前自身の意志を尊重するんだったら、一回この話はした方が良いと思ってな……。」
「…まぁつまり、俺はお前が本当にゲーム開発部にいたいと思っているのか、念のため確認したかったのさ。」
「な、なるほど……。」
どうやらアルケーの質問の意図は、アリスが本当に自分の意志でここゲーム開発部にいたいのか知りたい、とのことだそうだ。アリスはそれを聞き、未だに疑念が残ってはいるがとりあえずは彼が何を聞きたいのかを理解することはできた。故に、アリスはひとまずその問いに対して答えることにした。
「…アリスは、ここに来て良かったと思っています。」
「…アリスはこの場所で、ゲームの面白さを知りました。」
「…それはモモイとミドリ、アルケーと出会ったから、そして、この場所が、ゲーム開発部があったからこそできたことです。」
「だからこそ、アリスはゲーム開発部に来て本当に良かったと思っています。」
「アリスはこれからもずっと一緒にいたいです。この場所で、ゲーム開発部の皆と!」
「……そうか。」
…アリスはアルケーの問いに対して、誰から見ても決して嘘偽りがないと理解することができる、屈託のない笑顔をしてそう答えた。
そしてアルケーは、そんな様子のアリスの話を一言一句しっかりと嚙みしめるかのように聞いた後、自身の悩みは杞憂だったことを理解して安堵した。
「…アルケー、本当にそれだけですか?」
「…へ?」
だが、今度はアリスの方からアルケーに対して聞きたいことがあったそうだ。
アリスの発言によってアルケーはまたもや素っ頓狂な声を上げて驚愕してしまい、アリスの方へと視線を移した後そのまま固まってしまっていた。
そんなアルケーのことを知らずにアリスは彼に対して自身の言葉を紡いでいく。
「…アリスには、アルケーがまだ何かを隠しているような気がします。」
「か、隠してるって……安心しろよアリス。もう悩んでることなんかないからさ。」
アリスによるアルケーがまだ何かを隠しているという発言に対して、アルケーは安心させるように笑いながら否定する。
……だが、
「……嘘です。だってもしそうなら……………
どうして、そんなに辛そうな顔をしているんですか…………?」
「……えっ?」
アルケーの否定の言葉に対してアリスは嘘だと言った。
その理由はアルケーの顔にある。アリスの答えを聞いた彼は安堵したが、それはあくまでも一瞬の出来事だ。それ以降の彼の顔はどこか葛藤しているような、別の何かが混じり合ったように、とても複雑で、とても辛そうな顔をしていた。
「…教えてください、アルケー。アリスは、アルケーが辛そうな顔をしているのを、見ていられないんです……。」
「………っ。」
……アリスは、アルケーのことを心の底から心配しているようであり、涙目になりながらアルケーに対して悩みを打ち明けてほしいと懇願した。
しばらく黙ったままでいたアルケー。だがしかし、アリスのその顔を見て観念したのか、自身の本当の悩みを打ち明けることにしたようだった。
「…俺に過去の記憶が無いことは知っているよな?」
「…はい。」
「…確かに、俺には過去の記憶が無い。でもな……………
アリス、多分俺は元々、お前のことを知っている。」
「……え?」
突如としてアルケーがアリスへと送った一言。それはアリスに驚きを隠せずにいさせるには十分な威力のものだった。
だがしかし、それも仕方ないだろう。何故ならば、まだ会ってから一日も経っていないはずの人物から、実は自身のことを知っていると、そう告げられたのだから。
「ど、どういうことですか………?どうして、アルケーがアリスのことを知っているのですか……?」
「……そいつは分からねぇ。でも、モモイからお前の本名を聞いたとき、どっかで聞いたことがあるような、そんな気がしたんだ。」
アリスはアルケーに対してどうして自身のことを知っているのかと聞くが、それは彼自身もよく分かっておらず、ただ何となく聞いたことがあるような気がすると答えた。
これだけならば特に何も問題はないと思うだろう。だがしかし……
「…そして、そいつのせいなのか知らねぇけど、どうやら俺はお前のことを特別視しているみたいなんだ。」
「特別視、ですか……?」
「……あぁ。お前だけは守らねぇとって、謎の守護心が俺の中に生まれててな………。」
アルケーは、アリスのことを特別視していると言った。そしてそのことを彼は過去にアリスのことを知っていたことが原因だと推測しているようだ。
……だがしかし、先ほどの彼の言い回しにはおかしい部分があった。それに気づいたアリスは彼に対して質問をする。
「……で、ですがアルケー。特別視している
そうだ。先ほど彼は特別しているみたいと、みたいと言ったのだ。それはまるで、彼自身が意図的にしていることではないという風に、そして、彼自身ではない何かがアリスのことをそう見ているように聞こえる。
「……そうだ。その目線は少なくとも今ここにいる俺自身のものじゃない。今の俺自身はアリスもモモイたちも同じように大切に思ってる。」
「………でもな、確かにいるんだ、俺の中に。お前のことを特別視している俺が、何者なのかも分からない俺が、俺じゃない俺自身が、な。」
「アルケーじゃない……アルケーが…………?」
今現在も驚愕しているアリスがそう言うと、アルケーは無言で頷いて肯定した。アルケーが発言している時、ほんの少しだけではあるが彼の顔が淀んでいるように見えた。
「……しかも、そいつだけじゃねぇんだよ。そいつ以外にも、どこか、そいつとは違う別の何かが、俺の中にいるような、そんな気がするんだ………。」
「別の、何か?…それは一体………」
「…分からねぇ、分からねぇんだよ、そいつの正体も………。」
「………ただ、そいつらの共通点として、一つだけ確実に分かることがあるとすれば、そいつらは少なくとも、どこかおかしいってことだけだ………。」
「……さっきした質問だって今の俺からのものじゃない。……あれは、お前のことを特別視している奴からのものなんだ。」
「……異質な何かが、しかも、正体が全く分からねぇ奴らが俺の中にいるなんて、そして既にそいつらに侵食されつつあるこの状況が、正直、怖くてしょうがねぇんだ………。」
どうやら彼の中にはまだ別の何かが存在しているらしい。そして彼は自分自身じゃない自分と別の何か、それらに対して極度の恐怖を感じているようだ。
…その恐怖は、彼がそう発言した後に彼の身体が震え始めていることから、余程のものと推測できる。
「…ふぅ。……まぁつまりだ。俺自身ではない俺が俺の中に存在すること、そしてそいつらの正体が全くと言っていいほどに分かんねぇこと、俺はそいつらに悩んでいるのさ。」
「果たして今の俺は本当の俺なのか、それともそうじゃなくてさっき言った奴らが本当の俺なのか、はたまた全員本物じゃないのか、マジで何もかもが分からねぇからな……。」
「……まぁ、憶測だけの話ならば、そいつらの正体が俺の過去に直接関わってくること、それだけは何となくそうな気がするんだけどな………。」
彼は一度落ち着くために大きな息を吐いて、その後自身の悩みについて要約した。
ここまでの話からするに、アルケーが抱えている悩み、それは、自分自身の存在についてのことだった。
つまるところ、彼は明確に分からないのだ、不気味ともいえる自分たちと今の自分、“本当の”彼は果たしてどちらなのか、それともどちらでもないのか。はっきりと彼は答えることができないのだ。
そしてそれは、自分自身の存在を完全に定義できないということ。つまり、今の自分自身が“曖昧な存在”だと言っているようなものだ。
もしかしたら自分自身は偽物なのかもしれない。もしかしたら本当の自分が、今も自分の中で眠っているのかもしれない。もしもそうだとしたら、本物が目覚めた時、今こうして喋っている自分はどうなってしまうのだろうか。
…いやいっそ、そうであると判明している状態ならば、彼もここまで悩む必要はなかっただろう。何故ならそれは、自分自身の存在が偽物だと“はっきりと”自覚できているからだ。明確に偽物だと自覚しているのならば、偽物なら偽物としての見合った行動を選択することができる。
つまり、彼は分からないのが怖いのだ。自分自身が何者なのか、その正体が何なのか。はっきりと定義されていないことから、彼は自分自身の存在をコントロールできないのだ。
そしてそれは、自分の身にいつ何が起こるか分からないといっても過言ではない。それこそもしかしたら、自分自身がいつの間にか消えてしまったり、自分が自分ではなくなって暴走してしまうかもしれない。
誇張表現かもしれないが、明確に分からない以上絶対にあり得ないとは言い切れず、なおかつ対処のしようがないのだ。そしてそれこそが、彼をここまで不安にさせている原因なのであった。
一方でそんなアルケーの様子を見たアリスは、汗を垂らしていて唖然としてしまい、言葉を発することができない状態にいた。
彼女は理解してしまったのだ。彼が何故ここまで悩んでいるのかを、そして彼が今、大きな壁に立ち塞がれているのを。
…見知らぬ場所で眠っており、お互いに過去の記憶がない状態と、アリスとアルケーの境遇というものはかなり似ている。違いがあるとすれば、アルケーの方だけ一般教養があることくらいだ。
そしてアリスは自身のことについて。そこまで気になっているわけでは無かった。それは彼女にとって、何もかもが新鮮に感じているからだ。ゲームのことであったり、感情のことだったりと、自身の正体など気にしていられないほどに、彼女にとっては何もかもが経験したことが無く、そして楽しいものだったのだ。
だがアルケーは違った。彼は自分自身のことに、自身の正体が何者なのか分からないことに悩んでいる。
…そしてアリスは、そのことが決して他人事ではないと感じた。何故なら彼女自身だって、その正体が分からないからだ。彼のように自分自身の中に何かが確実にいるという自覚があるわけではないが、正体が不明な以上、アルケーの悩みは彼女自身にも当てはまることであったのだ。
アリスはアルケーの話が自身のことにも当てはまることを自覚した後、自身の中にある恐怖の感情が全身へと込み上げてきていた。
「おっとアリス、言っとくがさっきの話はあくまで俺自身の問題だ。お前が気にする必要なんかどこにもない。」
「確かに、正体が分からねぇのはお前も同じだ。でもお前はちゃんと自分をコントロール出来てるだろ?」
「だから何も心配するな。お前はこれからの楽しいことだけを考えていればいい。それだけで十分だ。」
「……アルケー。」
そんなアリスの様子に気づいたアルケーは咄嗟に心配する必要がないと力強く、そして安心させるような表情と口調でアリスへと話しかけた。
それを聞いてアリスは安心したのか、沸き上がっていた恐怖の感情が大きく和らいでいく感覚を受けた。
「……すまなかったなアリス。お前が心配しちまうようなことを言っちまって………。」
「でも安心しろ。俺の悩みに関する話はもうここまでだ。話を聞いてくれてありがとなアリス。一通り喋ったからなのか、何かスッキリした気分になったぜ。」
「………さてと、そろそろ良い時間だし、俺も寝ることにするかな。流石に徹夜するほど体力が有り余ってるわけじゃねぇしな。」
アルケーがアリスに対して安心しろと釘を刺し、この話はここで終わりだと言った後、モモイたちと同様に自身も睡眠をとるためにその準備をし始めた。…時刻は深夜3時を示している。流石の彼も、そろそろ睡眠を取った方が良いと考えたのだろう。
だが……
「待ってください。」
「…ん?どうしたアリス。まだ何かあんのk(ギュッ)――――って、えっ?」
アルケーが寝る準備に入ろうとする前に、アリスがアルケーに対して待ったと声を掛け、そして彼の両手を握りしめた。その様子を見るに、アリスにはまだアルケーにもの申したいことがあるようだ。
「…アリスも、アルケーのことをとても大切に思っています。」
「モモイとミドリ、そしてユズと同じように、アルケーもゲーム開発部の仲間です。」
「…だから、もしも何か困ったことや、辛いことがあったら、いつでもアリスに言ってください。」
「記憶のことでも、自分自身のことでも、それこそ、どんな些細なことだって大丈夫です。」
「アリスは、いつでもアルケーのクエストを引き受けますから。」
「アリス……。」
アリスは、アルケーの話を一通り聞いて居ても立っても居られずに、困ったときは自身を頼ってほしいとアルケーに対してそう言った。…その顔は人を安心させるような純粋無垢な笑顔をしていた。そんな太陽のような顔を見たアルケーは、自身の気持ちが一気に和らいでいく感覚を覚えた。
「…ありがとなアリス。それじゃ、困ったときは頼らせてもらうぜ。」
「はい!…あっ、でももしものときはアリスだけでなくモモイたちにも相談してほしいです。…もしかしたら、アリス一人だけでは解決できないかもしれませんから……。」
「…そいつもそうだな。分かったよ。でも、アリスの方も何かあったらすぐに俺かモモイたちに言えよ?困ったときはお互い様だからな。」
「はい!分かりました!」
「よし。………あっ。じゃあ早速頼らせてもらうが、さっきのことはモモイたちには内緒でな。」
「これは俺自身の問題だ。自分自身の問題なんだから、話すんだったら俺から直接話したいんだ。」
「…頼めるか?」
「もちろんです!アリス、アルケーのクエストを引き受けます!」
「ありがとな、アリス。…へへっ。本当に頼もしい限りだぜ。」
アルケーとアリスは互いに、困ったときは必ず仲間に頼ることにすると決めた。そしてその決め事によって、彼ら二人の仲間としての絆が深まったようだった。
電子機器の青い光によって照らされている舞台。その上で行なわれた謎多き二人の人物による対談は、こうして幕を閉じたのだった……。
ーー・ーー
チュンチュン……
「うーーん……。」
「えっ、もう朝!?しまった、準備しなきゃ……!」
時刻はおよそ9時頃、ミドリはアリスとアルケーがゲームをしている時うっかり寝落ちをしており、寝た時間帯が遅かったのもあってか、彼女が起きた時間は朝よりも少し遅い時間であった。
「…おはようミドリ。随分と眠っていたようだな。」
「あ、アルケーさん。おはようございます。…随分とお疲れのようですが、もしかして、寝ていなかったんですか?」
「…あぁいや、寝てはいたんだが、シンプルにまだ疲れがとれていないだけだ。…昨日までに色んなことがあったからな……。」
「そ、そうでしたか……。確かに、昨日は色々ありましたからね……。」
アリスとの話の後に眠ったアルケーは、先ほど起きたミドリに対して挨拶をした。…彼はかなり夜遅くまでアリスと一緒に起きていたのもあるが、昨日で色々な出来事があったために睡眠をしてもまだ疲れが取れていない様子であった。
「ようやく気が付いたか……。」
「無事に目を覚ましたようで何よりだ、君は運がいいな。」
「え!?」
「あ、アリスちゃんか……調子はどう?色々と覚えられた?」
「君の言葉を肯定しよう、必滅者よ。」
「な、何か偏った台詞ばっかり覚えてないですか……!?」
「……どうやら、おんなじようなゲームばっかやってたせいで、こいつのセリフのレパートリーが変に偏っちまったようなんだ。」
…どうやら、アリスの喋り方がかなり個性的なものになっているようで、かなり目立つようなものになってしまったようだ。それに対してアルケーはもう少し起きていれば良かったと少し後悔していた……。
「ふぁ……みんな、おはよう……。」
「…おはようユズ。ちゃんと眠れたか?」
「は、はい…。おはようございます、アルケーさん。」
アルケーがアリスに対して思い悩んでいたところ、ユズが起きて来たので彼は彼女に対して挨拶をした。それに対して、ユズも少しぎこちなくはあるが、彼に挨拶を返した。
ガチャッ
「おはよう!」
彼がユズと話をしていた時、モモイが部室へと入って来た。彼女はミドリとユズよりも早く起きて、どこかへと出かけていたようであった。
「アリス、アルケー、これ。」
「……?」
「…えっと、これは……学生証か?」
「そう!それは「学生証」だよ。」
「学生証……?」
「この学生証は、私たちの学校の生徒だっていう証明書。生徒名簿にもヴェリタスがハッキ……いや、登録してくれたから、もうアリスとアルケーも正式に私たちの仲間だよ!」
[正式、ねぇ…。まぁ、確かに
アルケーはモモイがどのようにその学生証を手に入れたのかを何となく察しているので、モモイの“正式に”という言葉を聞いて苦笑いしていた。
[…そういや、学生証の中身はどうなってんだろうな。ちょっと見てみるか。…えっと、何々?…ミレニアムサイエンススクール一年生、ゲーム開発部所属 、
[…世牙って、もしかして俺の名字か?…まぁ、確かに学生証に登録するんなら名字は必要か。]
アルケーは自身の学生証を見て、新たに自身に関する情報、名字が加えられていたことについて少し気になっていたようだった。…だがしかし、彼は学生証にそれも必要だったから付けただけだろうと考えて、あまり気にしないことにした。
「仲間……なるほど、理解しました。」
「パンパカパーン、アリスが「仲間」として合流しました!」
「おっ、またさらに口調が洗練されてるね。…うん!話し方の方は問題なさそうだね!」
「ねえ、今「ハッキング」って言わなかった……?」
「大丈夫大丈夫!さて、後はアルケーにこれもあげないとね。」
「ん?……それはもしかして、制服か?」
「そう!いつまでもそんな服だと怪しまれちゃうからね!男子生徒用の制服を貰って来たんだ!」
「…確かに、こんな服装じゃあとても一校の生徒だとは思えねぇだろうしな……。」
アルケーはモモイに男子生徒用の制服をもらった。…それは黒を基調としたジャージと白いワイシャツに青色のネクタイ、そして黒い長ズボンといったシンプルな服装のものだった。
元々彼の服装は、黒いズボンに緑色のTシャツといったこれまたシンプルな服装をしていたのだが、そもそもの話学生なのだから制服が無いのはおかしいということで、モモイは男子生徒用の制服を調達しに行っていたみたいだった。
「よし!二人の服装と学生証、それに話し方!この辺は全部解決できたから……。」
「あとは……武器、だね。」
「武器?…あぁ、そういや俺とアリスには武器、というか銃がなかったな。…確かキヴォトスでは、銃を持ってないのは服を着ていないのとおんなじなんだっけ?」
モモイが残りの問題、アルケ-とアリスには武器、もとい銃がないということを指摘した。このキヴォトスでは銃を常に携帯するのが常識となっている。それが意味することはつまり、銃を持っていなければ周りの余計な視線を集めてしまうことになるということだ。
「そう!だからアリス、アルケー、せっかくだし案内するよ。」
「…ん?」
「案内……?」
「私たちの学校、ミレニアムを!」
この時のアリスのエミュがめっちゃ難しい………
これ、ちゃんと出来てるよね………?