​スーパー負けヒロイン大戦 〜選ばれなかった16人の未練を断ち、最高のハッピーエンドを掴み取るIF救済劇〜 ​   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

34 / 36
選ばれる順番、選び続ける責任【リゼロ/レム VS 五等分/中野三玖(決勝)】

「最終段階を開示します。選択は、受け入れられて初めて履歴へ追記されます」

 

大結界の光が、俺とヒロインの間に3つの輪を示した。

 

第1、完全同期。

 

第2、同期人格と俺自身の選択一致。

 

第3、ヒロイン本人の自発的受容。

 

3つすべてが成立したとき、大結界が真正性を認証し、過去のあとへ新しい結果を追記する。

 

「拒否できるんですね」

 

レムが確認する。

 

「できます」

 

オルドが答える。

 

「順位は機会の順番であり、受容の強制ではありません」

 

三玖も俺を見る。

 

「違うと思ったら、受け入れない」

 

「そうしてくれ」

 

俺は答えた。

 

鐘が鳴る。

 

決勝。レム対中野三玖。

 

青い屋敷と静かな細道が現れる。レムは『結末不要の日常』を、三玖は『受け入れ反転』の青い糸を展開した。

 

「レムは1位でなくても、スバルくんを愛し続けます」

 

レムが先に言う。

 

「だからこそ、1位を譲りません」

 

三玖は弓を構える。

 

「私は、待たない。1番に風太郎から選ばれたい」

 

矢が飛ぶ。レムの鎖が弾く。青い鉄球が地面を割り、三玖は糸で瓦礫を引いて盾にする。

 

俺は最後の分析を場内へ告げる。

 

「レムは結果にならない日常を守る。三玖は言えなかった日々から現在の一歩を作る。どちらも過去を消さず、選択後も自分であり続ける力を得た」

 

レムの鎖が三玖の弓へ巻き付く。

 

「三玖さんは、風太郎さんが選ばなかった過去を残したまま、もう1度選ばれることを受け入れられますか」

 

「受け入れる」

 

「前の選択が間違いだったと思わずに?」

 

三玖の指が止まる。

 

屈服判定が集まる。

 

「四葉を選んだ風太郎も否定しない」

 

三玖は弓を手放す。

 

「私を選ばなかった風太郎を消したら、私が変わった日々も消える。だから、違う結果をそのあとにもらう」

 

『非訂正追伸』。

 

青い一文が過去の履歴線の先へ加わる。屈服判定が砕けた。

 

三玖が問い返す。

 

「レムは、スバルに選ばれたあとも献身を続ける?」

 

「続けます」

 

「選ばれたから、もっと尽くさなきゃって思わない?」

 

レムの鎖が重くなる。

 

選択が報酬ではなく負債になる危険。愛された分だけ返さなければならないと、自分を再び消す可能性。

 

「思うでしょう」

 

屈服判定がレムへ集まる。

 

「ですが、返せない日も受け入れます」

 

レムは鉄球を地面へ置く。

 

「選ばれたことを、働きで維持する契約にはしません」

 

『受愛休息日』。

 

何もしない1日が屋敷へ生まれる。整えられていない寝台、作られていない朝食。それでも消えない関係。屈服判定が消えた。

 

2人は同時に接近する。

 

三玖の糸がレムの鎖へ絡み、強さを道として利用する。レムは受け入れ反転を予測し、自分から鎖を緩める。三玖の足場が消え、体勢が崩れた。

 

レムの腕が腰へ回る。

 

三玖は鉄球の柄を蹴り、距離を作る。折れた弓片を両手へ持ち、近距離戦へ移る。

 

「1位じゃなくても同じ順番は来る」

 

レムが言う。

 

「それでも、なぜ1番を?」

 

「二乃を倒したから」

 

「姉妹への勝利のため?」

 

「それもある」

 

三玖は隠さない。

 

「でも、1番に選ばれて、私が変わった結果を最初に確かめたい」

 

青い弓片がレムの肩を打つ。

 

「レムは?」

 

「スバルくんを待ってきた時間に、1日でも早く続きを加えたい」

 

鉄球の鎖が三玖の足を払う。

 

2人の執着は純化されない。競争、焦り、報われたい欲。すべてを含んで決勝の力になる。

 

三玖は倒れながら青い糸をレムの腕へ巻く。レムも鎖を三玖の腰へ回す。互いに引き合い、真正面で衝突した。

 

「審判自身に選ばれたい?」

 

レムが問う。

 

三玖は俺を見る。

 

「選ばれたい。風太郎を理解したあなたにも、私を見てほしい」

 

「レムもです」

 

2人の言葉で、俺の胸が締め付けられる。

 

彼女たちは想い人の代用品だけを求めていない。試合を見た俺の意志まで要求している。

 

三玖が先に動く。青い糸を自分で切り、レムとの引力を断つ。勢いを失ったレムの脇へ入り、背後を取った。

 

『単独最終歩』。

 

誰の先行も強さも利用せず、自分の足で出す最後の一歩。

 

三玖はレムを押さえ込む。腕を背へ回し、青い糸で固定する。

 

観客席が息を呑む。

 

1秒。2秒。

 

レムは動かない。

 

三玖の勝利が見えた瞬間、屋敷の何もしない朝が三玖の周囲へ広がる。攻撃ではない。温かな静けさ。勝つために動き続けてきた三玖へ、休んでも価値は消えないと包む。

 

三玖の力が一瞬緩んだ。

 

レムはその隙を力で破らない。三玖の腕を取り、自分と一緒に横へ転がる。上下を入れ替え、抱き止める形で固定した。

 

『献身なき抱擁』。

 

相手を救おうとせず、役に立とうともせず、ただ離さない技。

 

三玖は糸を伸ばす。しかし、利用できる相手の力がない。レムは強く締めず、逃げる動きだけを受け止める。

 

「離して」

 

「嫌です」

 

「献身じゃないの?」

 

「レムが、離したくないからです」

 

10秒。

 

鐘が鳴った。

 

「勝者、レム」

 

順位が空へ刻まれる。

 

1位、レム。

 

2位、中野三玖。

 

三玖はレムの腕の中で目を閉じ、やがて小さく息を吐いた。

 

「負けた」

 

「はい」

 

「1番に行って。ちゃんと確かめて」

 

レムは三玖を立たせる。

 

「必ず」

 

全順位が確定した。

 

歓声は上がらなかった。16人は順位表を見上げ、それぞれの数字を黙って受け取った。救済される順番が決まっただけで、誰の愛が上かを示す表ではない。それでも数字は残酷なほど明確だった。

 

二乃は3位の位置から三玖を睨み、やがて拳を上げる。三玖も2位の場所から同じように拳を上げた。触れない距離で交わす姉妹の合図だった。詩羽は4位の白紙へ新しい題名を書こうとして止め、ランカは5位の席で声を出さずに呼吸を整える。

 

下位の者たちも席を離れない。五月は16位の文字を見つめたあと、赤鉛筆を置いた。『この順位を不正解とは採点しません』。万里花は15位から頷く。『しかし次に譲る理由にもなりませんわ』。

 

順位戦の全結果が、俺の掌へ熱として流れ込む。16の人物像、16の要求、複数の想い人。同じ人物へ同期する場合さえ、ヒロインごとに異なる関係が輪郭を変える。

 

その瞬間、俺の影が一斉に十六方向へ揺れた。声、姿勢、呼吸。誰にも完全にはならない断片が身体を引いた。膝が崩れそうになる。

 

レムが支えようとして止まった。『今、助けてよいですか』

 

彼女は献身を反射で差し出さず、俺の希望を聞いた。

 

『支えてくれ』

 

答えると、レムは腕を取った。三玖も反対側へ来る。2人に支えられながら、俺は自分の名前を口にした。輪郭が戻る。

 

『救済前に壊れないで』と三玖が言う。

 

『努力する』

 

『努力で保つものではありません』とレムが続けた。

 

俺は返せなかった。自分を保つことすら、彼女たちから学ばなければならない。

 

全順位が確定した。

 

大結界が巨大な履歴線を16本、夜空へ描く。その先端はすべて空白だ。

 

明日、第1位から選択実行が始まる。

 

俺は掌を見た。

 

最初の同期対象は、ナツキ・スバル。

 

レムが俺の前へ立つ。

 

「審判」

 

「何だ」

 

「明日は、スバルくんのふりをしないでください」

 

彼女の瞳は厳しかった。

 

「レムのすべてを理解したスバルくんとして、来てください」




お気に入り登録や評価で応援していただけると大変励みになります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。