スーパー負けヒロイン大戦 〜選ばれなかった16人の未練を断ち、最高のハッピーエンドを掴み取るIF救済劇〜 作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった
「最終段階を開示します。選択は、受け入れられて初めて履歴へ追記されます」
大結界の光が、俺とヒロインの間に3つの輪を示した。
第1、完全同期。
第2、同期人格と俺自身の選択一致。
第3、ヒロイン本人の自発的受容。
3つすべてが成立したとき、大結界が真正性を認証し、過去のあとへ新しい結果を追記する。
「拒否できるんですね」
レムが確認する。
「できます」
オルドが答える。
「順位は機会の順番であり、受容の強制ではありません」
三玖も俺を見る。
「違うと思ったら、受け入れない」
「そうしてくれ」
俺は答えた。
鐘が鳴る。
決勝。レム対中野三玖。
青い屋敷と静かな細道が現れる。レムは『結末不要の日常』を、三玖は『受け入れ反転』の青い糸を展開した。
「レムは1位でなくても、スバルくんを愛し続けます」
レムが先に言う。
「だからこそ、1位を譲りません」
三玖は弓を構える。
「私は、待たない。1番に風太郎から選ばれたい」
矢が飛ぶ。レムの鎖が弾く。青い鉄球が地面を割り、三玖は糸で瓦礫を引いて盾にする。
俺は最後の分析を場内へ告げる。
「レムは結果にならない日常を守る。三玖は言えなかった日々から現在の一歩を作る。どちらも過去を消さず、選択後も自分であり続ける力を得た」
レムの鎖が三玖の弓へ巻き付く。
「三玖さんは、風太郎さんが選ばなかった過去を残したまま、もう1度選ばれることを受け入れられますか」
「受け入れる」
「前の選択が間違いだったと思わずに?」
三玖の指が止まる。
屈服判定が集まる。
「四葉を選んだ風太郎も否定しない」
三玖は弓を手放す。
「私を選ばなかった風太郎を消したら、私が変わった日々も消える。だから、違う結果をそのあとにもらう」
『非訂正追伸』。
青い一文が過去の履歴線の先へ加わる。屈服判定が砕けた。
三玖が問い返す。
「レムは、スバルに選ばれたあとも献身を続ける?」
「続けます」
「選ばれたから、もっと尽くさなきゃって思わない?」
レムの鎖が重くなる。
選択が報酬ではなく負債になる危険。愛された分だけ返さなければならないと、自分を再び消す可能性。
「思うでしょう」
屈服判定がレムへ集まる。
「ですが、返せない日も受け入れます」
レムは鉄球を地面へ置く。
「選ばれたことを、働きで維持する契約にはしません」
『受愛休息日』。
何もしない1日が屋敷へ生まれる。整えられていない寝台、作られていない朝食。それでも消えない関係。屈服判定が消えた。
2人は同時に接近する。
三玖の糸がレムの鎖へ絡み、強さを道として利用する。レムは受け入れ反転を予測し、自分から鎖を緩める。三玖の足場が消え、体勢が崩れた。
レムの腕が腰へ回る。
三玖は鉄球の柄を蹴り、距離を作る。折れた弓片を両手へ持ち、近距離戦へ移る。
「1位じゃなくても同じ順番は来る」
レムが言う。
「それでも、なぜ1番を?」
「二乃を倒したから」
「姉妹への勝利のため?」
「それもある」
三玖は隠さない。
「でも、1番に選ばれて、私が変わった結果を最初に確かめたい」
青い弓片がレムの肩を打つ。
「レムは?」
「スバルくんを待ってきた時間に、1日でも早く続きを加えたい」
鉄球の鎖が三玖の足を払う。
2人の執着は純化されない。競争、焦り、報われたい欲。すべてを含んで決勝の力になる。
三玖は倒れながら青い糸をレムの腕へ巻く。レムも鎖を三玖の腰へ回す。互いに引き合い、真正面で衝突した。
「審判自身に選ばれたい?」
レムが問う。
三玖は俺を見る。
「選ばれたい。風太郎を理解したあなたにも、私を見てほしい」
「レムもです」
2人の言葉で、俺の胸が締め付けられる。
彼女たちは想い人の代用品だけを求めていない。試合を見た俺の意志まで要求している。
三玖が先に動く。青い糸を自分で切り、レムとの引力を断つ。勢いを失ったレムの脇へ入り、背後を取った。
『単独最終歩』。
誰の先行も強さも利用せず、自分の足で出す最後の一歩。
三玖はレムを押さえ込む。腕を背へ回し、青い糸で固定する。
観客席が息を呑む。
1秒。2秒。
レムは動かない。
三玖の勝利が見えた瞬間、屋敷の何もしない朝が三玖の周囲へ広がる。攻撃ではない。温かな静けさ。勝つために動き続けてきた三玖へ、休んでも価値は消えないと包む。
三玖の力が一瞬緩んだ。
レムはその隙を力で破らない。三玖の腕を取り、自分と一緒に横へ転がる。上下を入れ替え、抱き止める形で固定した。
『献身なき抱擁』。
相手を救おうとせず、役に立とうともせず、ただ離さない技。
三玖は糸を伸ばす。しかし、利用できる相手の力がない。レムは強く締めず、逃げる動きだけを受け止める。
「離して」
「嫌です」
「献身じゃないの?」
「レムが、離したくないからです」
10秒。
鐘が鳴った。
「勝者、レム」
順位が空へ刻まれる。
1位、レム。
2位、中野三玖。
三玖はレムの腕の中で目を閉じ、やがて小さく息を吐いた。
「負けた」
「はい」
「1番に行って。ちゃんと確かめて」
レムは三玖を立たせる。
「必ず」
全順位が確定した。
歓声は上がらなかった。16人は順位表を見上げ、それぞれの数字を黙って受け取った。救済される順番が決まっただけで、誰の愛が上かを示す表ではない。それでも数字は残酷なほど明確だった。
二乃は3位の位置から三玖を睨み、やがて拳を上げる。三玖も2位の場所から同じように拳を上げた。触れない距離で交わす姉妹の合図だった。詩羽は4位の白紙へ新しい題名を書こうとして止め、ランカは5位の席で声を出さずに呼吸を整える。
下位の者たちも席を離れない。五月は16位の文字を見つめたあと、赤鉛筆を置いた。『この順位を不正解とは採点しません』。万里花は15位から頷く。『しかし次に譲る理由にもなりませんわ』。
順位戦の全結果が、俺の掌へ熱として流れ込む。16の人物像、16の要求、複数の想い人。同じ人物へ同期する場合さえ、ヒロインごとに異なる関係が輪郭を変える。
その瞬間、俺の影が一斉に十六方向へ揺れた。声、姿勢、呼吸。誰にも完全にはならない断片が身体を引いた。膝が崩れそうになる。
レムが支えようとして止まった。『今、助けてよいですか』
彼女は献身を反射で差し出さず、俺の希望を聞いた。
『支えてくれ』
答えると、レムは腕を取った。三玖も反対側へ来る。2人に支えられながら、俺は自分の名前を口にした。輪郭が戻る。
『救済前に壊れないで』と三玖が言う。
『努力する』
『努力で保つものではありません』とレムが続けた。
俺は返せなかった。自分を保つことすら、彼女たちから学ばなければならない。
全順位が確定した。
大結界が巨大な履歴線を16本、夜空へ描く。その先端はすべて空白だ。
明日、第1位から選択実行が始まる。
俺は掌を見た。
最初の同期対象は、ナツキ・スバル。
レムが俺の前へ立つ。
「審判」
「何だ」
「明日は、スバルくんのふりをしないでください」
彼女の瞳は厳しかった。
「レムのすべてを理解したスバルくんとして、来てください」
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