とりあえずやりたい展開はほとんどできたので満足です。
「シーザースラッシュ!」
「ふん。」
ハーメルとオーボウの力を封じられ、トロンとクラーリィの2人でベースに挑んでいる。しかし実力の差は歴然で、全力で攻撃してもベースには手も足も出ない。
フルートの回復魔法のお陰でギリギリ戦えてはいるが、このままでは負けは必然だ。
「おい、どうするんだよ!このままじゃ負けちまうぞ!」
「そんな事は分かっている!喰らえ、天輪!」
クラーリィは最強の光撃魔法をベースに放つ。しかし...
「その程度か。雷帝よ...ライトニング!」
ベースは天輪と同程度の威力の魔法を、片手で簡単に放ってみせた。
「この程度の力でわしに勝とうとは、片腹痛いわ!」
「ちいっ!こうなったら...チビ!突っ込め!」
「分かった!うおおーっ!」
クラーリィの指示通り、トロンがベースに突っ込む。
「結界縛!」
クラーリィが魔法でベースを拘束する。しかし、その結界もすぐに破壊されてしまった。
「甘い!ブラッディー・デス・イーター!」
トロンの足音に、魔法でできた巨大な口が出現した。そのままトロンを飲み込もうと近づいてくる!
「な、なんだこれ!?こ、こんなもの!シーザースラッシュ!」
トロンは臆さず斬りかかるが、巨大な口を斬ることはできなかった。
「お前の父親でさえも破れなかったのだ。未熟なお前ごときに破れるはずがない!」
トロンは食べられないように逃げていたが、ついに捕まってしまった。剣を口に指すことで辛うじて耐えているが、長くは持たないだろう。
「(このままじゃジリ貧だ!こうなったらイチかバチか...)」
「お前たち、話にならんな。リュートはわしを傷つけることはできたぞ。油断していたとはいえな。」
魔界軍王No.1冥法王ベース。やはりその力はすさまじく、かつて戦ったドラムが赤子のように思えるほどだった。
「...確かに俺ではリュート王子には遠く及ばない。それこそ、一生かかっても追いつけないほどにな。」
幼い自分の目の前で、いとも簡単にドラムを倒してみせたリュート。リュートとの力の差など、クラーリィは嫌という程分かりきっていた。
「だがあの人は、その強さゆえに常に孤独だった...誰もあの人を助けることができなかった...」
「だが今の俺は違う!俺には、ともに背中を預け合える仲間がいる!」
「何を言うかと思ったら、とんだ妄言だな。」
クラーリィの言葉を戯言だと切り捨て、とどめを刺そうとしたその時。
「シーザースラッシュ!」
「なんだと!?」
ブラッディー・デス・イーターに食われていたトロンが、内側から口を切り裂いて現れた。そしてそのままベースに斬りかかる!
「そんな真正面からの攻撃が通用すると思うか!」
トロンを迎撃しようとベースが構える。
「させるか!」
クラーリィは耳に付けていたイヤリングを取り、ベースに投げつける。イヤリングはベースの近くで大爆発を起こした。
「小癪な!」
予想外の威力の攻撃に、ベースが一瞬怯んだ。
「今度こそ決める!シーザースラッシュ!」
トロンの太刀筋は確実にベースを捉えた!トロンの剣圧で、ベースは少し吹き飛んだ。
「やったぞ!クラーリィ!」
トロンが満面の笑みを浮かべる。クラーリィもそれに応じる。
「クラーリィ、今の攻撃は...」
クラーリィが先ほど行った攻撃は、スフォルツエンドで使ったものと同じ。法力を凝縮しており、大きな破壊力を持っている。フルートはそれに気付いていた。
「仲間ですよ。同じ想いを持った、10人のね。」
クラーリィは懐かしさを含んだ顔を浮かべ、故郷へと思いを馳せる。
「そうだ、早く魂を回収しないと!」
トロンは急いでベースの元へと駆け寄る。そしてベースの左目に手を伸ばそうとしたその時、強烈な衝撃波が起き、トロンが勢いよく吹き飛ばされた。
「トロン!」
地面に倒れたままハーメルが叫ぶ。
「...まさかリュート以外の人間に、ここまでやられるとはな。窮鼠猫を嚙むとはよく言ったものだ。」
異様なほど静かに、ベースが起き上がる。
「惜しかったな、貴様ら。リュートの魂などに拘らなければ勝っていたものを。」
段々とベースを纏う気が増し、さらに力強く変わっていく。
「もはや一片の希望も残さん!二度と抵抗できんよう、消し炭にしてくれる!」
ベースの力が増すごとに、リュートの体が段々と傷ついていく。フルートは、かつて寿命を使い果たし、体が消えてしまったオカリナの事を思い出す。
「まさかお兄ちゃんの寿命を...このままじゃお兄ちゃんが!」
「人の心配をしている場合か?」
ベースはフルートに向かって魔法を放つ。
「フルート王女!」
クラーリィが間に入って防御する。しかし今のベースの前では、クラーリィの力も意味を為さなかった。
「クラーリィ!」
「無駄な事を。一瞬しのいだところで何も変わらんというのに。」
絶望的な状況を前にして、フルートは涙を流す。
「(こんな時、お母さんなら魔法でみんなを守れる...お兄ちゃんなら、1人でも敵に立ち向かっていける...私にも、もっと力があれば!)」
自分の無力さを痛感するフルートだが、どれだけ力を望んでも状況は変わらない。
「(クソっ、こんな鎖で!このままではあいつらが死んじまうぞ!)」
ハーメルは鎖を破壊しようともがくが、ベースの魔法は強力で、破壊することができない。
「さあ、次の一撃で終わりだ。所詮は人間。我ら魔族には絶対に敵わんのだ!」
ベースは自身の真上に魔力を溜め始める。集まる魔力は、先ほどまでの比ではない。
「(頼む、オレの体よ動いてくれ!復讐のためじゃない、あいつらを助けるために!)」
復讐の気持ちにとらわれず、純粋に仲間の無事を願うハーメル。その想いが、ハーメルの中に眠る何かを動かした!
「チャイコフスキー作曲!『幻想曲』テンペスト!」
魔曲が起こした竜巻がベースに襲い掛かる!
「な、なぜ貴様が動ける!」
動けるはずのないハーメルが動いたことにより、動揺を隠せないベース。さらに急な攻撃によって魔力のコントロールを乱され、自身の足元に着弾させてしまう。
「(辛うじてバイオリンは弾けるが、それだけじゃ駄目だ!何か奴に対抗できるものは...)」
ハーメルは辺りを見渡す。そしてあるものに気付いた。
「(私にもっと力があれば...みんなを助けられる力が!)」
フルートから湧き上がる激しい感情を、ハーメルは見逃さなかった。
「バッハ作曲!最愛の兄の旅立ちに寄せて!」
ハーメルは再びバイオリンを弾き始める。
「(この曲はバッハの兄ヨハン・ヤーコプが、スウェーデン宮廷オーボエ奏者として旅立つ際に作曲されたもの!その兄を想う気持ちは今のフルートと似ているが...まさかハーメル、マリオネットを使う気か!)」
オーボウの予想通り、魔曲によってフルートの体が光り始める。
「行け、フルート!お前の演奏(ばん)だ!」
聖十字王家親衛隊(クルセイダーズ)を期待していた方々、本当に申し訳ありませんでした!!
流石にあの大量殺人は、リュートの気持ちを考えるととてもできなかった...
トロンが餓哭喰嚙嚥魂(ブラッディー・デス・イーター)を斬れたのは、外側は固くても内側は脆いという一寸法師と同じ理論です。
『最愛の兄の旅立ちに寄せて』は本当は鎮魂歌ではないのですが、語感と原作リスペクトだけでタイトルを決めさせていただきました(笑)
そしてギャグができないんじゃあ!!