ハーメルンのバイオリン弾き ベース戦if   作:コたろー

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とても急ですが、今回でこのシリーズは完結になります!
個人的にやりたい要素は全てできたので、ぜひご覧ください!


希望の協奏曲

「行け、フルート!お前の演奏(ばん)だ!」

 

ハーメルのマリオネットによって力を得たフルートが、ベースに突っ込んでいく。

 

「馬鹿め!ファゴットにも勝てん奴がまともに戦えると思うな!」

 

ベースは迎撃態勢に入り、フルートを迎え撃つ。しかしフルートの動きが予想以上に良く、ベースの攻撃を上手く避けている。

 

「何!?いかに魔曲の力があるとはいえ、ただの人間が!?」

 

それもそのはず。現在のフルートは、かつてのコルネットの特訓を経ることにより、ブルーサンダーを素手で倒せるほど強くなっていた。そのため今の状態でマリオネット化すれば、その強さはかつての比ではない。

 

「(あの特訓はかなりムカついたけど、一応感謝してるわ、コルネット!あなたの事は絶対に忘れない!)」

 

一応死んではいないが、コルネットに感謝の意を伝えるフルート。しかし、戦況はあまり良いとはいえなかった。すぐにフルートの動きに対応し、反撃をしてくるベース。的確な攻撃を仕掛けられ、劣勢に陥っていた。

 

「不味い!マリオネットを長く続ければ、フルートの体も持たんぞ!」

 

長時間マリオネット化しているフルートの体に限界が訪れようとしていた。本来ならマリオネットが終了した後に来る地獄の筋肉痛が、既に少し出始めている。それを見ていたトロンも、激しい焦りを感じていた。

 

「(フルート姉ちゃん!駄目だ、さっきのダメージで体が動かねえ!)」

 

クラーリィもトロンの様に戦いを見ていたが、先ほどまでとは様子が違っていた。

 

「(リュート王子...あなたがこれ以上人を殺めてしまう前に、あなたを止める!俺は、リュート王子を助けると誓ったから!)」

 

クラーリィの顔に、かつて魔法兵団に入るとリュートに誓った少年が重なる。

 

「例えあなたに届かなくとも、俺はスフォルツェンドを、そして皆を守る!」

 

フルートと同じように、クラーリィの体も光り始める。ハーメルの魔曲によって感受性を刺激され、クラーリィがマリオネット化した!

 

「氷縛結界!」

 

地面に出現した魔法陣から氷の結界が発生し、リュートの体を包むように拘束する。

 

「今です、フルート王女!」

 

リュートの魂めがけて、フルートが一直線に進んでいく。

 

「まだだ!喰らえ、餓哭喰噛嚥魂(ブラッディ・デス・イーター)!」

 

再び地面から巨大な口が出現する。前進することに集中にしていたフルートでは、今から避けることはできない。

 

「フルート!」

 

もう駄目かと思ったその時、どこからか剣が飛んできて、フルートの足元に刺さった。

 

「フルート姉ちゃん、その剣を足場に!」

 

飛んできた剣はトロンのものだった。トロンの言う通りフルートは剣の持ち手を足場にし、餓哭喰噛嚥魂(ブラッディ・デス・イーター)を大きく飛び越える。

 

「お兄ちゃんを返しなさい!」

 

フルートがベースの左目からリュートの魂を取り出す。

 

「(馬鹿め!まだ頭を持っていた右手が残っておるわ!)」

 

ベースの本体がリュートの右手から離れたことを利用し、右手からさらなる魔法を使おうとする。しかしベースの思惑とは違い、魔法を放つことができなかった。

 

「なっ、体が動かん!」

 

ベースはリュート方を見る。リュートの表情は苦しみながらも喜んでいるように見えた。

 

「忌々しい人間が!」

 

そしてついにリュートにフルートの手が届いた。リュートの口から魂を戻す。

 

「これでお兄ちゃんが...!」

 

フルートが油断した一瞬の隙を突き、ベースがフルートに襲い掛かる。

 

「(この小娘だけなら今の状態でも勝てる!リュートと同じように体を支配してやるわ!)」

 

フルートは既にマリオネット状態ではなくなっており、ベースに対して反撃をすることができない。他のメンバーも皆ボロボロで、今からフルートを助けに行っても間に合わない。しかし...

 

聖魔炎滅(ジャスティス)!」

 

魂を取り戻して復活したリュートが、ベースを魔法で吹き飛ばした。そのままベースに突っ込んでいく。

 

「今のお前には負ける気がしない!はあっ!」

 

リュートはベースを魔法で拘束し、すぐにメギドの炎を放った。

 

「15年前の清算だ!人々をいたぶった事を後悔し、地獄に落ちろ!」

 

リュートのメギドの炎により、ベースが段々と消滅していく。

 

「くそ、貴様ら人間なんぞに!だがお前らではあのお方には到底敵わん!大魔王、ケストラー様にはな!はっはっはっは!」

 

最後までその態度を変えることなく、ベースは完全に燃え尽きた。それに伴い、ハーメルとオーボウを拘束していた鎖も同時に消え去った。

 

「ベース、決してお前の思い通りにはならないよ...」

 

「お兄ちゃん!」

 

戦いが終わり安心したフルートは、リュートにすぐに駆け寄った。しかし、無慈悲にもリュートの体は崩壊し続けていた。

 

「そこまで長い時間は...持たなかったみたいだね...僕は既に死んでいるから。」

 

全ての力を使い果たしたリュートは、その場に膝をつく。そして、自分のもとに駆け寄ってきた皆の顔を見る。

 

「あの赤ちゃんが、本当に大きくなったなぁ...こんなにたくさんの仲間を持って。」

 

自分を取り戻したリュートは、15年前と変わらない笑顔を浮かべている。

 

「ごめんねお兄ちゃん、私のせいで...私のせいでお兄ちゃんが!」

 

リュートが死んだことに責任を感じているフルートが涙を流す。

 

「そんなことないよフルート。自分の大切な人のために力を使えるなら、僕は絶対に後悔しないさ。きっと母さんだって...」

 

そこまで言ったところでリュートは口をつぐむ。リュートはベースを通じて、母・ホルンの死を知っている。しかしクラーリィの辛そうな表情を見て、今はフルートにそれを伝えるべきではないと考えた。

 

「クラーリィ、君も本当に立派になったね。」

 

リュートは泣いているフルートの背中をさすりながら、クラーリィに話しかける。

 

「あの時の小さかった少年が、今はスフォルツェンドを支える英雄だ。君はもう、立派な大神官だよ。」

 

15年前にクラーリィは、魔法兵団に入ってリュートを支えると約束した。その約束を果たすことはできなかったが、クラーリィはリュートが思う以上に素晴らしい大神官になっていた。

 

「リュート王子、あなたの想いは必ず受け継ぎます。スフォルツェンドは、俺が絶対に守る!」

 

最期までリュートを心配させまいと、今にも流れそうな涙を堪えながらクラーリィは答える。

 

「本当はもっと話していたいけど、もうお別れの時間みたいだ...」

 

それまでは緩やかだったリュートの体の崩壊が、堤防が決壊したかのように急に加速した。

 

「お兄ちゃん!」

 

兄と離れたくない一心で、一層強い力でリュートに抱き着くフルート。リュートはそれを優しく受け止め、最後にハーメルの方を向く。

 

「勇者ハーメル、妹のことを頼んだよ。フルートに変なことをしたら承知しないぞ!」

 

そう言い終えるとリュートは、ゆっくりと瞼を閉じる。

 

「(なんだ、占いの結果なんてあてにならないじゃないか。だって今のフルートには...素晴らしい仲間がたくさんいるんだから!)」

 

フルートやクラーリィ、そしてその仲間たちの幸運を祈りながら、リュートは消滅した。

 

「お兄ちゃん...」

 

フルートはリュートが消えてもその場から一歩も動かず、ひたすら泣き続けた。

 

「フルート...」

 

実の兄を失った直後のフルートに、ハーメルはどう声を掛ければいいのか分からなかった。何もできず立ち尽くしていたが、やがてフルートの様子がおかしいことに気付く。

 

「どうした!?フルート!」

 

先ほどから小刻みにフルートの体が震えていたが、段々とその震えが大きくなっていく。

 

「ぎゃーっ!地獄の筋肉痛がーっ!」

 

そう、ハーメルの魔曲によってフルートはマリオネット状態になっていたため、反動の地獄の筋肉痛が始まったのだ。

 

「こんな大事な時に何をしてんだお前はーっ!ってクラーリィもか!」

 

フルートと同様、クラーリィもマリオネット状態になっていたため、右腕に地獄の筋肉痛が訪れていた。

 

「元はと言えばあんたのせいでしょうがーっ!」

 

動けないながらもフルートは全力で反論する。

 

「やべぇ!向こうから大量のモンスターが来てるぞ!」

 

周りを警戒していたトロンが驚きながら叫ぶ。

 

「噓でしょ、私たちは動けないのに!しかもハーメルはガン無視で逃げてるし!」

 

ハーメルは動けないフルートたちに構わず、1人でそそくさと逃げようとしていた。

 

「このままではどちらにしろ全滅だ!ハーメル、オーボウ、トロン!お前たちは先に行け!ここは俺に任せろ!」

 

重症の体を気合で起こし、クラーリィがフルートを守るように立つ。

 

「そんな無茶だ!お前1人だけで!」

 

クラーリィの無謀な言葉に、(仲間を見捨てて1人で逃げようとしていた)ハーメルが驚く。

 

「安心しろ!国を守ることに比べれば、王女1人を守ることなど容易い!」

 

リュートからこれからのスフォルツェンドを託されたクラーリィは、意地でもフルートを守らなければならなかった。筋肉痛の被害に遭っていない左手で錫杖を手に取り、モンスターの群れに矛先を向ける。

 

「分かった、ここは任せたぞクラーリィ!そしてフルート!」

 

いつの間にか帰ってきていたハーメルはフルートの側でしゃがみ込んでこう話す。

 

「最後に回復魔法だけかけてくれんか?」

 

「この状況で言うことか!」

 

地獄の筋肉痛に見舞われながら、皆の回復をするフルート。クラーリィは少しでもフルートの寿命を削らせまいと拒否したが、重症だったためフルートに押し切られてしまった。

 

「ああっ、マリオネットの上からさらに寿命が縮んでいく...」

 

気の毒なことにフルートは、このわずかな間にかなりの寿命が縮んだだろう。

 

「ごめんなフルート姉ちゃん。必ず大魔王ケストラーを倒すから!クラーリィも、フルート姉ちゃんに傷ひとつでも付けたら承知しないからな!」

 

「お前に心配される筋合いは無い!さっさとケストラーを倒してこい!じゃあな!」

 

そう言うとクラーリィは、モンスターの群れに突っ込んでいった。

 

「ハーメル!必ず後から追いかけるけど...絶対勝つって、信じてるからね!」

 

ハーメルたちの去り際に、フルートが満面の笑みで話す。

 

「ああ、もちろんだ!」

 

それに対しハーメルも、同じように明るい顔で答える。

 

「行くぞ!トロン、オーボウ!」

 

ハーメルが先陣を切って走り出す。

 

「ああ!」

 

「もちろんじゃ!」

 

トロンとオーボウも、ハーメルに応え後に続く。

 

「あら、何かしらあれ?」

 

ハーメルたちを見送ったフルートは近くに落ちていた羽に気付いた。

 

「きれいな羽...まるでサイザーのものみたい。」

 

天使の血を引くサイザーのような純白の羽。果たしてそれが何を意味するのか。

 

「くっくっく、遂に来ましたね...」

 

ケストラーがいる部屋の門の前に佇むモンスター。ハーメルたちは直後、彼とも相まみえるだろう。

 

「行くぞ!これが最後の戦いだ!」

 

ハーメルたちはケストラーの下へ、全力で駆けていく!

 

ケストラー(バケモノ)退治だ!」




少し本文が長くなってしまいましたが、今回でこのシリーズも完結です!
至らないことも多々あったかと思いますが、最後までご覧いただき本当にありがとうございました!
いつかこの作品を改良して、漫画版としてリメイクさせてみたいと考えています!(ライエルとサイザーの出番も入れたいし)
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