メシマズ世界ノ魔女裁判   作:しがなくない

5 / 6
再会のおにぎり

・・・あれから、ハンナが失踪してから数日後、遠野兄妹は朝から俺の店に来て、3人で町中を駆けまくりハンナを探し回った。その最中でハンナに教えたことを兄妹達に話したりした。しかし、ハンナが見つかることはなかった

 

「…はぁ、チッ・・・」

 

俺は店の中で一人舌打ちを打った。兄妹はすでに飯を食った後にそれぞれ自分の家に帰っていた

 

「ったく、どこをふらついてんだあいつは…兄妹をほっぽって、勝手に一人で…」

 

俺は背もたれに背を預け、天井を見上げた

 

「…はぁ、クソが」

 

俺がそう軽く落ち込んでいると・・・

 

ガラガラガラッ

 

店の扉が開かれた

 

「…ああ、悪いが今日は店じまいだ、また明日…」

 

「悪いが、我々にとってはそんなのは関係ない」

 

「…あ?」

 

俺が顔を上げると、そこには黒いスーツを来て、サングラスをかけた人物立っていた

 

「…客ってわけじゃ、なさそうだな…」

 

そう言いながら立ち上がった

 

「…小鳥遊茜は、お前だな」

 

「ああ、そうだが?」

 

(うーん…山の中に入って勝手に食材とか取ってたのが森林法に触れたか?それとも海での密猟がバレたか…まぁ、この世界が食物に関しての法律が制定されてないのが悪いが)

 

「我々について来てもらう」

 

「悪いが、素性を明かさない奴にはついていかないって決めてるんだ」

 

「…我々は、政府のものだ」

 

「政府?はっ、馬鹿馬鹿しいな。より怪しくなって来たってもんだ。ついてこいって言っても、どう言った理由でついてこいっていうんだ」

 

「…遠野ハンナが、お前を指名したからだ」

 

「…なんだと?」

 

俺は黒服の言ったことに耳を疑った

 

「わかったか、ならさっさと」

 

「待て。なぜお前らがあいつのことを知っている」

 

「それはお前の知ることじゃ…っ!」

 

俺は黒服の首筋に包丁を添えた

 

「…死にたくなきゃ、話すことだな。言っておくが、俺は殺人を躊躇わないんでな…」

 

刃を軽く首元に当てて、薄皮1枚切った、そこからツー…と血が垂れる

 

「わかった!話す、話すから!」

 

「なら早くしろ。俺の気が変わらんうちにな」

 

そうして、黒服から情報を聞き出した

今はここから遠い孤島に住んでいること、今は無事で、同年代の女子と共に共存生活を送っていること、そして…あまりの飯の不味さに、ハンナが拒絶反応を示していること

 

「…はぁ、そうか」

 

「お、俺が知ってることは全て話した!だから、命だけは…」

 

「…わかった」

 

俺は首筋の包丁を外した。黒服はへなへなと腰を抜かした

 

「…わかった、お前達について行こう。だが…時間をくれ。1週間ほどでいい」

 

「は、ハンナからは…できれば、いますがにでも来てほしいと言われているが…」

 

「…そこまでか。わかった、じゃあ…明日の夜でいい。1日待ってくれ」

 

「ま、まぁそのくらいなら…」

 

「ああ、頼む。…どうせだ、お詫びとして食っていけ」

 

「な、何を…?」

 

俺は厨房に入って、黒服に料理を差し出した

 

「食え、毒はない。なんなら目の前で一口食ってやろうか?」

 

「…ああくそ!」

 

そう言って黒服はスプーンを奪い取り、本能のままかっこんだ

 

「・・・!?!?!?」

 

黒服は目をかっぴらいて手をとめた。

 

「な、なんだ…これ、はぁ!?」

 

「ああ、そういやあいつらも最初食ったらそんな反応してたな。あいつらの反応に慣れすぎてて忘れてたわ」

 

「お、おい!?なんだこれは!?これは…くそっ、手がとまらねぇ!なんだぁ、なんだこれはぁ!?」

 

「それはな・・・美味いって言うんだよ」

 

「う、美味い?」

 

「ああ」

 

「・・・そう、か!」

 

再度黒服は飯をかっこんだ

 

「ああクソ!うめぇ!うめぇよ!今まで食ってきたもんが全部吐瀉物と思えるほどだ!うめぇ…うめぇ…!」

 

「そうか。…ちなみに、他のもあるが食うか?」

 

「っ!ああ!」

 

〜〜〜

 

・・・そして、ようやく黒服は食べ終えた

 

「…はぁ、はぁ、はぁ…は、腹が苦しい…だが、なんだ…この、幸せな気分は…」

 

「美味かったろ」

 

「ああ…これは、遠野ハンナが望むのも、納得だ…」

 

「…ここで悪いが、1泊してくか。ろくに動けないだろ」

 

「あ、ああ…ありがたい。お言葉に甘えさせてもらう」

 

そうして黒服は一泊した

 

〜〜〜

 

次の日

 

ガラガラガラッ

 

「おじさん!今日も…」

 

「いや待て、お前ら…話がある」

 

店の中に入ってきた遠野兄妹を引き留め、店にあげた。そして黒服から聞いたことについて軽く話した

 

「っ…じゃ、じゃあお姉ちゃんは、無事なの?」

 

「ああ、そうらしい」

 

「よかった…お兄ちゃん!」

 

「ああ、ああ…!よかった、本当に…!」

 

遠野兄妹は互いに抱き合って喜んだ

 

「…んで、まずはハンナに会うために、俺はあいつらについて行くことになるわけだが…」

 

「うん。おじさん、僕たちは大丈夫!」

 

「お兄ちゃんと一緒に、頑張るよ!」

 

「ああ、それでだが…これを渡しておく」

 

俺は机に、鍵を置いた

 

「…この鍵は?」

 

「ここの鍵だ。俺がいない間はここに先に来てもいい」

 

「…ええ!?」

 

「通帳も渡しておく。…これからの俺には必要ないからな、いつ戻ってくるかもわからん」

 

「い、いやいやいや…そんな簡単に受け取れないよ!?」

 

「受け取ってくれ。…俺が帰ってくるまで、ここを頼んだぞ」

 

「っ…はい!」

 

遠野兄は鍵と通帳を受け取った

 

「…俺は今夜、あいつらについて行く。ハンナと一緒に帰ってくるから…その間、無事でいろよ。お前らの健康こそが、あいつの心の支えだからな」

 

「「はい!」」

 

「…じゃ、行ってくる」

 

そう言って俺は机を立ち、荷物を持って外に出た

 

〜〜〜

 

その日の夜、俺は黒服と会っていた

 

「…準備は、できたか」

 

「そっちこそ、俺の言っていたものは出来たか?」

 

「…ああ、だが出来ないのもあった。それは随時送らせてもらおう」

 

「ああ、それでいい。…じゃ、いこうか」

 

俺がそう言うと、黒服は俺に目隠しをして耳栓をつけた

 

〜〜〜

 

「・・・」

 

「・・・は、ハンナちゃん・・・」

 

「大丈夫ですかね、ハンナさん…ゴクチョーと話をした日から、どんどんやつれていってます」

 

「でも、でも…私たちには、なにも…」

 

「一応、果物はとっていますけどね…」

 

「でもそれだけじゃ、最低限生きるだけで体がもたないよ」

 

「ですが、食堂に用意されてる料理をハンナさんは食べようとはしませんし…」

 

「食べさせようとすると、鬼気迫る表情で拒否してくるしね…」

 

「どうしましょうか…」

 

「…」フラッ

 

エマとシェリーが話していると、ハンナが立ち上がりふらふらと外に出た

 

「っ、ハンナちゃん!?」

 

「ハンナさん!?」

 

エマとシェリーはハンナの後を追った

 

〜〜〜

 

「・・・」

 

(…ここに連れてこられて、どれくらい経ちましたの)

 

ハンナは半ば呆然とした思考で考えた

 

(いきなり牢屋敷に連れてこられて、そして・・・そし、て・・・)

 

「・・・ああ、あ、ああ・・・」

 

(・・・友達を、殺した・・・)

 

ハンナはフラフラと歩きながらも、自分の両手を見た。魔女因子は回収され、魔女化の兆候は無くなったとはいえ・・・ハンナは、自分の手が黒くなって爪が伸びる幻覚を見た。

 

(っ…どう、して!?だって、魔女化は、もう…!?)

 

ハンナは思わず走った

目的地なんて知らない、わからない、無我夢中のまま走り回った。そしていずれ足がもつれて転んだ、転んだのは花畑だった

 

「・・・」

 

ぐぅ〜・・・

 

お腹の音が、空虚に鳴り響く

 

(・・・おなか、空きましたわ・・・)

 

(・・・さいごに店主さんの料理を食べたのが、だいぶむかしのように感じますわ・・・)

 

 

 

 

(・・・私、ここで死ぬのでしょうか・・・)

 

 

 

 

 

 

(兄妹のことは・・・店主さんが、なんとかしてくれるでしょう・・・店主さんには、迷惑をかけますわね・・・)

 

 

 

 

 

ハンナの意識が、少しずつ薄れてきた

 

 

 

 

 

(・・・ああ、かみさま。さいごに、さいごにひとつだけ、ねがいがかなうなら・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(・・・あのひとに、さいごでいい、さいごでいい、から・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あい、たい・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・ぅえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声を耳にすると、ハンナの体は浮かび上がった。いや、誰かに抱き抱えられたのだ

 

「・・・どう、して?」

 

「どうしてって…お前が呼んだんだろう?」

 

「・・・は、はは・・・幻聴、かしら・・・」

 

「馬鹿言え。…ほれ、食えるか?」

 

ハンナは地べたに座らされ、目の前には握り飯と味噌汁が置かれた

 

「…はい。いただきます」

 

ハンナは味噌汁を一口つけた

 

「…おい、しい…」

 

「…お前、あの場所で倒れるとか…どれだけここの飯は不味いんだ?全く…」

 

男の声が聞こえるが、それを気にせずハンナは目の前の料理を食べる

 

「…ご馳走様、でした」

 

「…そうか」

 

ハンナはようやく、声のした方を見た

 

「…お久しぶりですわね、店主さん」

 

「…おう。心配したぞ」

 

「ごめんなさい。…弟達は?」

 

「とりあえず、しばらくは心配いらない。店に住まわせるようにしたからな」

 

「そう、なら安心ですわね」

 

「ああ…ん?」

 

「・・・ハンナさんから〜〜〜離れて、ください!!!」

 

遠くから、1人の少女がものすごい勢いで駆けてきて、店主に向けて拳を振りかぶった

 

「っ!いけませんシェリーさん!この人は…」

 

「…ふっ!」

 

店主は拳を両手で包み込み、威力を受け流して後ろに放り投げた

 

「っ…!」

 

シェリーは受け身を取りながら体制を立て直した

 

「…ハンナさん、その人から離れてください!」

 

「シェリーさん!!この人は、私が…」

 

「はぁ、はぁ、はぁ…は、早いよシェリーちゃん・・・」

 

店主と青髪の少女がが対峙していると、その後ろからもう一人の少女が息を切らして走ってきた

 

「え、エマさんまで!?どうして、ここに?」

 

「そ、それは…シェリーちゃんと一緒に、ハンナちゃんを追ってきたんだよ。力なくふらふらしてるから、心配で…」

 

「そ、そうですの…」

 

「エマさん!今すぐ牢屋敷に戻って、ヒロさんやレイアさんを呼んできてください!この人、ハンナさんに何かしました!どう考えても政府の方の陰謀にしか思えません!」

 

「ええっ!?」

 

「ち、ちがっ。違いますわシェリーさん!」

 

「ハンナさん、今助けて…」

 

「いい加減にしろ!」

 

「…むぐっ!?」

 

店主は青髪の少女の口元目掛けてあるものをぶん投げた。おにぎりだ

 

「て、店主さん!?」

 

「むぐ…むぐ、むぐ…むぐぅ!?」

 

青髪の少女は食べ進めると、目を開いた。すると口元のおにぎりがどんどん無くなっていった

 

「…むぐむぐ…ごくん」

 

「…しぇ、シェリー、ちゃん?」

 

「…なんですか」

 

「?」

 

「なんですか、これはぁ!?なんですかなんですかなんですかこれ!?今までこんなの食べたことありませんよ!」

 

「しぇ、シェリーさん?」

 

「なんなんですかハンナさん!?それとあなた!?これはいったい、なんなんですか!?」

 

「おにぎりだが」

 

「おにぎり!これまた絶妙なネーミングセンスですね!」

 

「・・・なぁ、ハンナ。色々と・・・説明してくれるな?」

 

「・・・は、はい」

 

〜〜〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・ちなみにその間エマは、状況が理解しきれずにおろおろしていた




はい、半ば勢いで店主が(牢屋敷に)インしました
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。