双つの翼、交差する刻   作:咲野 皐月

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 皆様、おはこんばんにちは。咲野 皐月です。

 先週の更新を忘れていた為……今回はその後のお話も含めて3話連続投稿をしようと思います。以下、この後を読むにあたっての注意点です。


※バンドリとヴァンガードのクロスオーバー作品の企画小説です。
※オリキャラが多数登場します
※クロスオーバーとなってますが、ヴァンガードのアニメや漫画関連のキャラクターは登場しません
※バンドリキャラがヴァンガードをやる描写が出る時があります


 以上が許容できる方はぜひご覧下さい。


第1話

「……遅いなぁ、そよりん……」

 

 

 勇さんからお誘いを受けて一週間後、私はその人から集合場所として指定された駅前に来ていた。その時の格好に関しては堅苦しく無くて良い、と指定を受けていたので、いつも通りの服装に身を包んでいた。数日前から初夏を思わせる様なジメジメした天気が続いていて、着ていく服を選ぶのにも一苦労だ。

 

 まあ、普段はなかなか会えない勇さんと会えるんだし、ちょっとくらいはお洒落してもいいかなーと思ったけど、あまりやり過ぎも禁物だもんね。キチンと程度は考えなければ話にならない。

 

 

 そんな私は今、駅前にある噴水広場の前で、今回同行する予定のそよりんを待っていたんだけど……。

 

 

「まさか、すっぽかされたかな……。あーあー、せっかくさっきーも来るって言うのに……本人が聞いたら何て言うか」

「愛音ちゃん、私がどうかしたの?」

「あ、おっそーい! 集合時間まであと一分弱……えっ」

「……ジロジロ見ないで」

 

 

 ジト目のそよりんがそう言うけど、私はそんな事なんて気にする余裕が無かった。何処かの社交パーティーにでも行くかの様なその格好は、口では嫌と言いながらも本当に気合を入れて来た物だと理解出来る様で。

 

 勇さんから事前に指定された集合時刻は、現在時間より三分ほど前の10時30分。そんな時間ギリギリに登場したんだから、人一倍着て行く時の格好には気を遣っていたのかもしれない。それに加えて両の耳朶に付けられた、ノンホールピアスがそれを後押ししていた。

 

 

「愛音ちゃん、本当にその格好で行くの。失礼の無い様にするのが普通じゃない?」

「そ、そよりんこそ!? 私、勇さんから普段通りの格好で良いよって言われたからこの格好で来たんだけど!? 何その格好……って、あぁ〜。そう言う事かぁ〜」

「……なに、急にニヤニヤしだして……気持ち悪いんだけど」

 

 

 んなっ!?

 

 そよりんよりは酷くありませんー、と言うかさっきから私に対しての当たりがかなり強くない!? これ訴えたら勝てるよね、事実無根の正当防衛なんだけど!?

 

 

「ん、んんっ!」

「「はっ!?」」

「おはようございます、お二人とも。兄様からお話をお伺いしていた者ですが……」

「はい、そうです。あ、隣の彼女はおまけです」

 

 

 ちょっ、何でそんなにサラッと流れる様な速さで私を売るの!?

 

 

「私、白咲(しらさき) 莉々(りり)と申します。以後お見知り置きを。早速ですがご案内させて頂きますので、此方へどうぞ。兄様たちは既にご到着されてますので、あとはお二人だけです」

「そうだったんですね。ありがとうございます」

「あっ、ちょっと待ってよそよりん!」

 

 

 唐突にその場に置き去りにされそうだったので、私はそよりんと一緒にその白咲さんが乗って来た車に乗り込んで、勇さんから指定された集合場所に向かう事にした。車の中は以前ひと悶着あった時に乗り込んだ、祥子ちゃんの家の車と同じ感じがして……ん?

 

 

「どうぞごゆるりと」

「ありがとうございます。本当にすみません、急に押しかける形になってしまって」

「構いません。私も兄様からお話はお伺いしておりましたし、いずれお目にかかりたいと思ってたので好都合です」

 

 

 ……ん、お目にかかりたい……って?

 

 

「ねーねー、もしかして貴女って私の」

「ファンとはまた違います。しかし、兄様からお二人の事に関してはお話を伺っていますので、実際にどのような方なのか見てみたかったんです」

「あー、それならすみません。彼女、今みたいに(やかま)しいだけなので、私としてはお引き取り願おうかと考えてたんですけど」

 

 

それってどういう意味ッッ!?

 

 

「言った通りの意味なんだけど、不満?」

 

 

 そよりんの言い放った言葉に無性にムカついた私は、そのまま彼女と口論になってしまった。そしてそんな私たちの傍らでりりーが苦笑いしてるのも構わず、お互いにああでも無いだのこうでも無いだの……恐らくこの場にりっきーが居たら、いつものかと呆れられるくらいなんだろうなぁ。

 

 

 ……この後を思えば、私たちはこの場で喧嘩をやめておくべきだったのかもしれない。

 

 

「はい、白咲です。あ、兄様。少し小耳に入れて頂きたいお話が」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 白咲先輩の先導を受けた私たちは、乗り込んだ車に揺られて数分後……無事に目的地に辿り着く事が出来た。ここ短期間で先輩と多く関係を持つ事が増えたし、颯樹さんは兎も角としても……直近で知り合った方二人がこんなに大きな豪邸に住んでるとは思わなかった。

 

 それを体現するかの様に、愛音ちゃんは開いた口が塞がらないと言った具合だ。私としてはこのまま大人しくしてくれるなら良いけど、彼女の事だし直ぐに立ち直りそうかな。……はぁ、なんでこんな目に……。

 

 

『お帰りなさいませ、お嬢様』

「お出迎えありがとうございます。ところで兄様は」

「颯樹様でしたら、ファイトルームを利用されています。なんでもお連れの方と一緒に、お嬢様が戻られるまでの間を使って対戦したいと申し出られましたので、鍵をお渡ししております」

「わかりました。報告ありがとうございます」

 

 

 ……何やらメイドさんと話をしていたみたいだけど、これは私たちが聞いていても良かったのかな。そうして玄関前に集っていたメイドさん達がそそくさと自らの持ち場に戻って行くと、白咲先輩が私たちの前に向き直って来た。

 

 

「さて、兄様の所在が判明しましたので、其方に向かいましょうか。何せファイトルームとの事でしたし、現在地よりそう距離は離れていないはずですから」

「えっ、今見える範囲にそんな場所一つも……」

「私たちが今居るのは本館の玄関口、兄様の居るファイトルームはこの広間から少し移動して、反時計回りに移動した廊下の途中にあります」

 

 

 ……何だろう、愛音ちゃんだけじゃなくて、私まで思わず頭が痛くなって来そうな感じなんだけど気の所為かな……。

 

 

「ああ、それと」

「「???」」

「千早さんは左手奥の方に一人控えておりますので、其方に向かってください」

「……え、なんで私?」

 

 

 そう言われて彼女の指定した方向を見ると……そこには、先程私たちを出迎えてくれたうちの一人が立っていて……あ、こっちに気づいた。と言う事はあの人って。

 

 

「要件は行けば分かります。長崎さんは私と一緒にファイトルームまで参りましょう。家内は広いので、迷子にならない様にお気をつけて」

「あ、はい。ありがとうございます」

「えっ、なんでそよりんだけ!?」

「では参りましょうか」

 

 

 驚く愛音ちゃんを他所に私は白咲先輩の案内を受けて、颯樹さん達の居るであろうファイトルームに向かう事となった。その傍らで何だか不平不満を連ねた様な文句が聞こえて来たけど、無視無視。

 

 

「それにしても白咲先輩」

「はい?」

「本当に今日は誘ってくれてありがとうございます。私、先日ヴァンガードを始めたばっかりで。そこまでその手の知識に強くないので、この機会を頂けて助かりました」

「あぁ、そうだったんですね。私はまだ始めて1年近くですが、長崎さんのお気持ちもよく分かります。私も始めたての頃は兄様の厳しくも熱心な指導を受けまして……」

 

 

 そう言う先輩の眼は、どこか遠くを観ている様だった。

 

 

「しかし、私は後悔していません。兄様の御力添えがあったからこそ、今もこうしてヴァンガードが出来ているのですから。感謝こそしても文句なんて言えるはずもありません」

「……ちなみに聞きたいんですけど、先程から兄様って言葉が出てきますけど……」

「はい」

「それってもしかして、颯樹さんの事ですか? でも、それなら何で一人娘なんて……」

「私と兄様は義理の兄妹なんです。元々、お互いにお母様同士が仲が良くて……その関係で私たちは親交を深めて行きました。もちろん私の方からお誘いする事もあれば、兄様の方からも……」

 

 

 ……何だろう、聞いてるとすごく微笑ましいのに、無性に何だかモヤモヤしてしまう。義理とは言え兄妹なんだし、仲が良いのは当然として、その中にはより踏み込んだ所まで行っているのかもしれない。

 

 

(羨ましい。別に先輩たちの関係に首を突っ込む訳じゃないけど、私はそんな事一度も……って、これじゃあ本当に私……!)

 

「どうかしましたか?」

「あ、いいえ!お気になさらず!」

 

 

 少し考え事をしていた私に白咲先輩は声をかけて来た。

 

 

 別に疚しい事があった訳じゃないのに、もう私の頭の中はパニック状態になっていた。お陰でさっきまで考えていた事が全てパァ。こんな姿をもし仮に愛音ちゃんに見られでもしたら、軽く大ショックなんだけど……。しかも彼女なら、それをネタに私の弱みを握って来るかもしれない。

 

 こうなると本当に冗談抜きで、お嫁に行けないかもしれない。

 

 まあ、あの人なら私の内部事情にはあまり触れないでくれるだろうから安心だけど……問題はそれ以外に知られた時だよ……すっごい最悪。

 

 

「兄様が色々な方々に好かれているのは知ってます。確かに兄様は魅力的な殿方ですし、それに甘えてしまう女性が居るのも、私から見ればごく自然で有り得るであろうお話。……ですが、時折こうも思うのです」

 

 

他の方など気にせず、

私の事だけを見ていて欲しい……と。

 

 

「……え?」

「私の様な身分不相応な女が、兄様に対してこんな厚かましい想いを抱くなど……兄様からすると、迷惑千万である事は百も承知。ですが、頭ではわかっていても、この想いが抑えられないのです」

 

 

 ……そうか、白咲先輩も同じなんだ。

 

 

「それなら、私たち……同じですね」

「えっ、長崎さんもですか?」

「ええ、はい。愛音ちゃん達にはそれとなく誤魔化してるんですけど」

「あはは……そうですか……。あ、到着しましたよ」

 

 

 話をしてると目の前には大きな自動ドアがあった。

 

 

「この奥に兄様たちがいらっしゃいます」

 

 

 先輩は何処か慣れた手つきで、カードキーを扉横の装置にタップして扉を解錠した。そこに入ると中から射し込む光が目に入った。……と、思えばその光はすぐに収まった。

 

 

「一体何が……」

「少し遅かったですかね」

 

 

 白咲先輩は何かを察したようにそう呟いた。

 

 そこにはファイトを終えたであろう颯樹さんと勇さんが、テーブルを挟んで何かを話していた。

 

 

「お二人とも、お疲れ様です」

 

 

 そんな二人に私たちは歩み寄った。

 

 

「莉々、お疲れ様」

「いえ、兄様の頼みとあれば」

「そよもいらっしゃい」

「お邪魔してます」

 

 

 私が颯樹さんとそう話した後、白咲先輩が真っ先に颯樹さんの所まで駆け寄っていた。ある程度分かっていた事だし、兄妹の間に水を差すのは野暮な事だとも理解している。事実……あの二人を見ていたら、その光景だけで一つの画になりそうな程だった。

 

 

「……なんかさ、俺ら忘れられてない?」

「そうですね……」

「っと、そう言えば。愛音はどうしたの? 一緒に来てると思ったんだけど」

「あっ、愛音ちゃんなら今頃……」

 

 

 勇さんの疑問に私が答えようとしたその時、ファイトルームの出入口が音を立てて開いた。そしてそこに立っていたのは……。

 

 

「あ、愛音!?」

「あ、勇さんにそよりんっ!」

 

 

 私たちに気づいた愛音ちゃんが声をかけて来たけど、近くに立っていたメイドさんが咳払いを1つした途端に大人しくなってしまった。

 

 

 ……まさか白咲先輩があの時に言っていた事って……。

 

 私がそんな事を思っているのを他所に、メイドさんは白咲先輩が自身の視界に入ると、軽く頭を下げて淡々と要件を伝え始めた。

 

 

「お嬢様、紅茶をお持ちいたしました」

「ありがとうございます。では、この後にゆっくり戴きます」

「畏まりました」

「あ、あの……少し聞いても?」

 

 

 勇さんがそう問いかけると、先程台車を押して来たそのメイドさんは特に迷う素振りすら見せずに返答して来た。

 

 

「何でしょうか、佐倉様」

「……不躾な事を聞くんですけど、愛音は何をしてるんですか?」

「私共の働く様子を実際に見て頂く方が本人の為になると判断し、今回は付き添わせています。何れはお嬢様にお飲み物をお出しするだけでは無く、身の回りの事をそつなく熟せる様に……」

 

 

 ……あ、あの後そんな事があったんだ。

 

 ……え?

 

 

「お嬢様からの指示で、千早様には当面の間白咲家に仕えて頂こうと。ただあまり長すぎると本人が痺れを切らす可能性もありましたので、一先ず1ヶ月間で様子を見ようとのお達しを」

 

 

 私の心の中を読んだかの様に、メイドさんが言葉を続けて来た。

 

 

 ……あー、つまりそう言う事?

 

 白咲先輩があの時に話していた事って、颯樹さんに報告するのと同時に愛音ちゃんの働き口まで確保する為だったんだ。まあ、私としてはガミガミガミガミ口煩い存在が席を空けてくれるのは非常に助かるからいいけどね。

 

 

「良かったね愛音ちゃん。これで将来は安泰だよ」

「なんでそんな冷たい事言うのっ!? 私泣くよっ、ギャン泣きしてともりんに迎えに来て貰うから!」

「お言葉ですが千早さん、私の家が何処にあるかを知ったうえで……その様な発言をなさっているんですか?」

 

 

 そう言われた愛音ちゃんは、思いっきり汗が噴き出る様な慌て方をし始めた……うん、完全にノープランだったよね。しかも燈ちゃんって、あまりこう言う所まで来ないと思うんだけど。さきちゃんの時だって、何処か遠慮しがちだったし。

 

 

「……まあ、愛音の粛清に関しては僕から後で直々に下すとして」

「酷いッ!」

「せっかく来たんだ、勇……さっき教えた事を元に莉々とファイトしてみない? 勇と莉々は始めた時期が然程変わらないんだ、良い勝負になると思うよ」

 

 

 そんな愛音ちゃんを軽くあしらった颯樹さんは、勇さんと白咲先輩のファイトを提案して来た。確かにせっかく来たんだったら、その家の家主とやるのが筋だよね。実際にあとから合流したのは私たちなんだし、それを考えたら筋は通ってる。

 

 

「わかりました。不肖の身ではありますが、兄様の頼みとあらばお引き受け致します。佐倉さんは如何ですか?」

「……おーけー。よろしくね、莉々」

「はい。どうぞお手柔らかにお願いします」

 

 

 そのやり取りをした後、私たちは所定の位置に着いた。

 

 

「勇さんと白咲先輩……どんなファイトになるんだろ」

「さてね。それは本人たち次第だけど、きっと良い物になるよ」

 

「それじゃあ、始めようか」

「はい、いつでも構いません」

 

 

スタンドアップ・ヴァンガード

 

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