悪魔と契約した次の日の土曜。
両親が仕事で海外を飛び回っているため、今までほぼ一人暮らしだった家で。
「さあ、どうぞこちらを。飲んだ者を不老にする霊薬ですわ。ご主人様の就寝中に魔界に帰還して、館の宝物庫から取ってきましたの」
「いきなりだね」
ソファで漫画を読む白斗の前に立ったメサニアが、液体が入った小瓶を差し出してくる。
液体は黄金色に輝いており神聖な雰囲気がある。
ちなみに、白斗はメサニアと話す際に敬語を外すよう、そして呼び捨てにするよう言われている。
外見年齢40代前半の中年女性に対してタメ口は抵抗があるが、慣れるしかない。
「悪魔である
「その計画は初耳なんだけど。それにしても、不老か……」
不老になれば自分は人間社会で普通に生きていくことは叶わない。
それに、周囲の人間たちは皆、若いままの自分を置いて死んでいくだろう。
「よし、飲もう」
小瓶の中身を一気に飲み干した。
恋人を悲しませるわけにはいかないので。
白斗は惚れた相手に一途すぎる人間だった。
その性格のせいで、たった二日間のうちに悪魔と契約した上に不老の肉体を得るという結果となってしまったわけだが。
「これで永遠に一緒ですわね、ご主人様……」
今までの柔らかな微笑みではなく、悪魔らしい昏い微笑みを浮かべるメサニア。
ミニスカート仕様のゴスロリドレスに、膝下までを覆う編み上げロングブーツ。
土足なのに、歩いた後の床はなぜか全く汚れていない。
室内だからか日傘は閉じた状態で、まるで剣のように腰に帯びている。
その立ち姿を眺めて、白斗は初めて見た時から気になっていたことに言及する。
「ずっと思ってたけど、変わったファッションだね。俺は可愛いと思うけど」
微妙に嘘をついた。
可愛いと思う気持ちは一応あるので完全な嘘ではないのだが、それ以上に、エッッッという気持ちが強い。
ゴスロリドレスの腰から上はきっちり肌が隠れており、そのため、ミニスカートによる脚の露出が目立っている。
高身長ゆえの長さがありつつも肉付きが良く太い脚……それが強調されているのだ。
ムッチムチすぎる太ももには、どうしても目が行ってしまう。
良い形の膝にも。
熟女を守備範囲外に置く人が見ればキツすぎて無理、となるだろうけど個人的にはこのキツさがむしろエッッッだなあ、と白斗は純粋な気持ちで思った。
「うふふ、こういった服が好みなので。九千年ほど、ずっと同じような格好ですわね。この格好を揶揄してきた者はそれなりにいましたが、尽く葬ってきましたわ」
メサニアが腰に帯びている日傘の柄を手に持って少し引くと、両刃の細い剣身がチラリと現れた。
どうやら仕込み傘だったらしい。
「ご主人様には理解していただけたようで何よりですわ」
絶対に格好を悪く言ってはならない、と白斗は心に刻んだ。