仮面ライダーメカニック   作:玲音考人

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vol.2「戦う理由×パワフルシナジー!」

裕輝「俺、機道裕輝は音慈牧市の片隅で喫茶店・からくりを営み、ヒーローに憧れていた。

そんなある日、遂に憧れの仮面ライダーへの変身を果たした俺は“目的”のために動き出すのだった…」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

コンコンコン

 

「……どうぞ」

 

才花「失礼します」

 

 「理解準備室」と書かれた札のある一室の前にやって来た才花は3度ノックすると、中からの入室を促す声に従って教室へ入る。

 

才花「用事はなんでしょうか、院部先生」

 

「ふふ、もうわかってるでしょう?」

 

才花「……もう一人の仮面ライダーのことですか?」

 

 理科準備室にて積み上げられた資料やPCのモニターから目を離し、入って来た才花の方を振り向いたのは儚げな雰囲気の美女。しかして自信家の側面も見て取れる強気で妖艶な笑みを浮かべる彼女の名は院部(いんべ)明南(めいな)。この紀佳井高校の教師だった。

 

明南「そう。デジカメドローナーを通じて様子を見ていましたが…まさか噂の彼が仮面ライダーになるとは」

 

才花「……正直、私から話せることなんて先生が見ていた範囲以上のものはありません。…彼とはそこそこの付き合いになりますが…仮面ライダーになるなんて予想外でしたし」

 

明南「それはわかっていますよ。あなたに頼みたいのはその先です」

 

才花「?」

 

明南「仮面ライダーメカニック…機道裕輝さん?でしたっけ?彼を私に紹介いただけないでしょうか?」

 

才花「!機道をですか?」

 

明南「ええ。彼から直接話を伺おうかと思いまして。必要なら場所は確保しますが」

 

才花「多分、場所はなんとかなると思いますが…。わかりました。彼に話してみます」

 

 先日の裕輝がメカニックとなった一件を受けて、明南から裕輝を紹介してほしいという依頼を受けた才花は自身も裕輝に聞きたいことがあるということもあり、その依頼を了承する。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

vol.2「戦う理由×パワフルシナジー!」

 

裕輝「はぁ……」

 

「裕輝にーちゃん、なんかあったの?」

 

裕輝「和樹君。何でもないよ。…何か注文かな?」

 

和樹「うん!オムライス二つお願いします!」

 

裕輝「りょーかい。ちょっと待っててね」

 

 何故だか落ち込んだ様子の裕輝の元にやって来た小学生ほどの少年…和樹は注文を伝えに来たらしく、それを聞いた裕輝は気持ちを切り替えて注文のあったオムライス作りを始める。

 

裕輝「はいお待たせ。喫茶からくりの特製オムライスです」

 

和樹「いただきまーす!」

 

 和樹から受けた注文通りオムライスを作り、席へと運ぶ裕輝。

 運ばれて来たオムライスを食べ始める和樹の様子を裕輝は微笑ましげに見やると、自身は皿洗いを始める。

 

和樹「そういえば裕輝兄ちゃん、最近学校で変な噂があるんだよ」

 

裕輝「噂?」

 

和樹「うん。カニ人間の噂」

 

裕輝「カニ人間…」

 

和樹「学校からの帰り道に現れて、子供を攫ってっちゃうんだって。…実際近くの学校でも行方不明の子供が出てるらしいし…本当なのかな」

 

裕輝「……確かにここ数週間で子供の行方不明事件が増えたとは聞くなあ」

 

和樹「…それから一人で帰るのが怖くて」

 

裕輝「まあ、そりゃそうだよな。今は集団下校なんだっけ?」

 

和樹「うん。今日はお休みの日だからサッカーの帰りに来たんだけど、お母さんも迎えに来るまでこの店で待っててだって」

 

裕輝「全然良いよ。ゆっくりしていきな。君のお母さんからもお願いされてるしね」

 

和樹「ありがとう!」

 

 和樹から「カニ人間」の噂を聞いた裕輝。

 噂の真偽はさておき、実際に子供の行方不明が増えているのは確かであることもあり、習い事の帰りだという和樹は親が迎えに来るまでからくりに残ることに。

 

「和樹、迎えに来たよ」

 

和樹「あ、お母さん!」

 

裕輝「どうも」

 

「すみません、和樹のこと見てもらってて…」

 

裕輝「いえいえ、常連さんの頼みですから」

 

「オムライス美味しかった?」

 

和樹「うん!美味かった!」

 

裕輝「なら良かった。気を付けて帰ってね」

 

和樹「はーい!」

 

裕輝「あ、そうだ和樹君。…カニ人間、怖いか?」

 

和樹「……うん」

 

裕輝「そっか。…なら、俺が調べておくよ。カニ人間について」

 

和樹「え…?」

 

裕輝「カニ人間が悪い奴だったら仮面ライダーがやっつけちゃうし」

 

和樹「裕輝兄ちゃん、仮面ライダーと知り合いなの!?」

 

裕輝「ああ。俺から仮面ライダーに伝えとく。…だから、安心しな」

 

和樹「……うん!ありがとう!」

 

「ありがとうございました」

 

裕輝「またのご来店、お待ちしてます!」

 

 母親が迎えに来た和樹を見送る際に「カニ人間」への不安を抱えていることを悟った裕輝は和樹に「カニ人間」について調べることを約束する。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

裕輝「カニ人間…か。軽く調べてみたけどやっぱラズマだよなぁ……。今はまた変身できなくなっちゃったし…どうすっかな…」

 

ベータ「いつも言ってるだろう。安請け合いは止めておけ、と」

 

裕輝「そうは言っても、困ってるのを見て見ぬ振りすんのも…なんか嫌じゃん」

 

ベータ「……そうだな」

 

 翌日、銀色を基調とした箱型装置のエナジーチャージケースに仕舞われているホッパー、バイク、ゴリラの三種のエナジーデンチを眺めながら裕輝は自身が現在変身出来なくなってしまったことを思い出し、どうするべきか思い悩むが、そんな裕輝にベータは苦言を呈する。

 

裕輝「なあ、どうして俺はまた…変身できなくなったんだ?」

 

ベータ「答えを教えてしまったら意味がない。……自分で考えないとダメだ。ま、この前は変身できたんだ。大丈夫だろう。」

 

裕輝「んな適当な…」

 

ベータ「そうだ、次変身した時にこいつを使ってみるといい」

 

裕輝「…エナジーデンチ?いつの間に……」

 

ベータ「この間倒したラズマから回収したエナジーを注入して有効化したんだよ。エナジーチャージケースに入れてエネルギー補充しておくんだぞ」

 

裕輝「ああ…」

 

ベータ「…おや?誰か来るみたいだぞ」

 

裕輝「え?」

 

 ベータが置いた二つのエナジーデンチ──一つは黄色のチェーンソーが描かれたもの、そしてもう一つは黒色の蝙蝠が描かれたもの──を手に取り、エナジーチャージケースにセットすることで収納しつつエネルギーの充填をしておくと、変身に必要な条件を考える裕輝だったが、そこに来客が現れる。

 

才花「……」

 

裕輝「あ、いらっしゃい」

 

才花「何か話し声聞こえたけど…」

 

裕輝「あー…才花さんには紹介した方が良いか。ベータ」

 

ベータ「…初めまして。サイビアのお嬢さん」

 

才花「ろ、ロボット!?」

 

 やって来たのは才花だった。

 先日の一件のこともあり、裕輝は才花にベータを紹介することを決めると、咄嗟に店の奥に引っ込ませていたベータを呼び戻す。

 

ベータ「ただのロボットじゃないぞ。僕様は天才ロボットのベータだ。以後お見知り置きを」

 

才花「よ、よろしく。知ってるかもだけど、私は械条才花です」

 

ベータ「ああ、よろしく頼むよ」

 

才花「…機道、色々と聞きたいことはあるんだけど…そのためにこの店に呼びたい人がいるんだ。その、良いかな?」

 

裕輝「……わかった。才花さんがそう言うってことは、信頼のおける人なんでしょ?…なら、大丈夫」

 

才花「……ありがとう」

 

 ベータと互いに自己紹介を済ませると、才花は裕輝に大切な話のためにからくりに呼びたい人がいるのだと聞かされる。

 それを裕輝が承諾すると、才花はどこかに連絡する。

 

明南「はじめまして。私は院部明南。紀佳井高校で物理を教えてます。よろしくお願いしますね」

 

ベータ「……!」

 

裕輝「えっと、機道裕輝です。この喫茶店…からくりの店主をやってます。よろしくお願いします」

 

ベータ「僕さ…僕はベータ。見ての通りロボットさ」

 

明南「ベータさんに使われている技術も気になりますが、今回の本題ではないので後にしましょう。…さて、単刀直入にお伺いしますが…あなたは一体どこで仮面ライダーの力を手にしたのですか?」

 

裕輝「……それは言えないです」

 

明南「理由をお伺いしても?」

 

 からくりにやって来た明南とそれぞれ挨拶を交わすと、本題に移る裕輝たち。

 どこで仮面ライダーの力を手にしたのかという問いに対し、裕輝はそれは答えられないと返す。

 

裕輝「…仮面ライダーだということがバレているようですし、才花さんの連れて来た人なので俺とベータの存在を明かしてますけど……まだあなたを信じ切れたわけじゃないので」

 

明南「ふむ…なるほど。一理ありますね。では提案をさせてもらいましょうか。…私はあなたたちをサポートし、いつか私を信じてくれたなら、その時に話す……ということでどうでしょうか?」

 

裕輝「悪くない提案ですが、院部さんはどうしてそこまでして経緯を知りたいんですか?」

 

明南「……仮面ライダーという存在を追うことで、私の家族の手がかりを得られるかもしれないから、ですかね」

 

裕輝「……?」

 

明南「私には兄がいるんです。…ですが、五年前に行方知れずになってしまいました。……兄も研究者でして、そんな兄が残した唯一の手がかりが“仮面ライダー”なんです」

 

ベータ「……家族、ね」

 

裕輝「ご家族の……わかりました。話してくれてありがとうございます。その…提案を受けさせてもらおうと思います」

 

明南「ありがとうございます。…では早速ですが情報の共有、という形で貢献させてもらいましょうか」

 

裕輝「情報?」

 

明南「はい。……ラズマについてです」

 

裕輝「!」

 

 明南の理由を聞いた裕輝はベータとアイコンタクトを交わすと、提案を受けることに決める。

 すると、明南は信頼を勝ち取るためにも、まずはラズマについての情報を裕輝たちに共有することを申し出る。

 

明南「お二人はラズマについてどこまで知っておりますか?」

 

裕輝「……えっと、ベータからはエネルギー生命体で、人間の感情を奪う怪物…と教えてもらってます」

 

明南「大凡の認識はあるみたいですね。ベータさんはラズマについてお詳しいんですか?」

 

ベータ「おおまかなデータは持っている。…ラズマとは特殊エネルギーである“メタックスエナジー”によってその身体を構成するエネルギー生命体の総称。体内器官で感情のエネルギーをメタックスエナジーに変換することでその肉体を保つ…故に人を襲い、その感情を喰らう。…感情のエネルギー…即ち“気力”を喰われた人間は生きる力を失い、最終的にはその命を落としてしまう。…そうだな?」

 

明南「ご説明の通りです。……ではより深いところに突っ込んで補足説明をいたしますと…そもそもラズマはどのようにして発生するのか、についてお話ししましょうか」

 

裕輝「そういえば…あんなの普通に現れるわけないもんな…」

 

明南「ええ。……結論から言えば、ラズマは人為的に発生させられている存在となります」

 

裕輝「人為的に…?」

 

明南「ええ。まずはラズマの発生メカニズムを説明しましょうか。…ラズマとは、先程ベータさんが説明してくれたようにメタックスエナジーで構成されたエネルギー生命体です。とはいえ、無からいきなりメタックスエナジーが集まって生まれるわけではありません。ラズマが生まれるためには“感情のエネルギーを持つ生物”が必要不可欠となります」

 

才花「つまり…人間だね」

 

裕輝「…!」

 

明南「まず、ラズマの発生には必要なものが二つあります。一つは感情のエネルギー、つまりは気力。もう一つはメタックスエナジーの影響を受けることで変質した鉱物類…“メタクリスタル”」

 

裕輝「メタクリスタル…」

 

明南「メタクリスタルは意外と身近なところにあるのですよ?…例えばそう、あなたたちが仮面ライダーに変身するために使っているエナジーデンチ、とか」

 

裕輝「これの中に、メタクリスタルが!?」

 

明南「ええ。…とはいえ、エナジーデンチに用いられているメタクリスタルは特殊な加工を行われていて、そこからラズマが出てくることはないのでご安心を」

 

裕輝「なるほど…」

 

明南「話を戻しますが…ラズマは発生するために気力とメタクリスタルの二つを必要とします。……具体的にはメタクリスタルが人間に取り込まれることでその感情のエネルギーを急速に取り込み、そしてラズマが生み出されるんです」

 

裕輝「……人為的に生み出されるって…まさか」

 

才花「…そのまさかだよ。ラズマを生み出すために社会の裏で暗躍している組織があるの。その名も“産業革命軍”」

 

ベータ「産業革命軍…」

 

明南「産業革命軍はエナジーデンチとよく似た“ラズマデンチ”という道具を用いてラズマを生み出します。こっちはラズマを確実に生み出すための加工を施されたものになりますけどね」

 

裕輝「…そいつらは一体何が目的なんだ…?」

 

明南「人類を滅ぼし、ラズマをこの世界の主に変えること…らしいです」

 

裕輝「そんな無茶苦茶な理由でラズマを…」

 

才花「…だから私たちも度々交戦してきたの。…一筋縄ではいかない相手だよ」

 

裕輝「なるほど…」

 

明南「さて…今日はこの辺りで退散させてもらいましょうか。長居も迷惑になるでしょうし」

 

才花「そうですね。……じゃあ、また」

 

裕輝「…うん。また」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

裕輝「うーん……」

 

 明南からラズマについて詳しく教えてもらった裕輝は、二人が去った後ぼんやりと天井を眺める。

 

裕輝「……なあ、ベータは組織の名前を覚えてないんだよな?」

 

ベータ「……ああ。あの日、君と逃げる最中で僕様は記憶領域の一部に損傷を負った。…修理したから今は問題ないけれど…失われたデータは戻せなかったからね。いかな天才の僕様と言えど、知り直すことができないことまでは教えられない」

 

裕輝「…だよな。……産業革命軍って、どう思う?」

 

 会話の中で出て来た組織、産業革命軍。

 それこそが自分の追う組織なのではないかと考える裕輝はベータに意見を求める。

 

ベータ「…何とも言えないが…ラズマを人に変わる支配者にしたいというのなら、何故ライダーシステムなんて物を保有していたのか、は気になるな」

 

裕輝「…別の組織で開発されたエナジーテクノドライバーを奪ったりすることで入手したとか?…目的を考えると少なくとも邪魔ではあるだろうし」

 

ベータ「まあ、システムを解析して応用すれば産業革命軍の目的にも合致しないこともないか。……とはいえ、まだクロと決めつけるのは早いな。暫くは様子見でいこう」

 

裕輝「わかった。まあ…この先衝突は免れない相手だもんな」

 

ベータ「ああ」

 

 ベータは裕輝の問いに対する自身の見解を示すと、まだ情報が足りないと判断し、まずは様子見が必要だと結論づける。

 

裕輝「そのためにも変身できるようにならないとなのに…何でできないんだ…!」

 

ベータ「だが、一度成功しているだろう。あの時の君と、今の君、その違いを考えてみるんだ」

 

裕輝「違い…」

 

 再び変身出来なくなってしまったことに焦りを募らせる裕輝。

 そんな裕輝を優しく諭すと、ベータは奥へと引っ込んでいく。

 

裕輝「…あの時、俺は……」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

明南「ファーストコンタクトとしては上々でしたね。中々の好青年ではないですか、彼」

 

才花「そう…ですね」

 

明南「おや、浮かない表情ですね」

 

才花「……機道のあんな顔、初めて見たんです」

 

明南「そういえば、彼とはそこそこ長い付き合いなのでしたっけ?」

 

才花「……まあ、半年程度の付き合いです」

 

明南「ふむ、学内ですら花笠さんや私くらいしか深い付き合いをしたがらない械条さんがわざわざ学外の彼に会いに行っていることを考えると、少なからず彼のことを気に入っているようですね」

 

才花「なっ…別にそういうわけじゃ…。何となく…腐れ縁みたいなものですよ」

 

明南「……そういうことにしておきましょう」

 

 ファーストコンタクトを終えた明南は、今まで見たことのない裕輝の様子に少なからず動揺している様子の才花に気付くと、からかい混じりに才花にとって裕輝は数少ない気の置けない友人になりつつあることを指摘する。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

「〜♪」

 

「上機嫌ですね、愛乃様」

 

愛乃「ええ。二人目の仮面ライダーの出現というイレギュラーはありましたが…。以降活動がありませんし、お陰で街で動いているラズマ様が伸び伸びとやれているようです」

 

「ああ、“クラブ”のことですね」

 

愛乃「ラズマ様が伸び伸びと活動し、その勢力を広げることこそ我々産業革命軍の目的ですから」

 

「存じております。…“クラブ”は安定態となり、きっと貴方様のお力になりますよ」

 

愛乃「うふふ、今から楽しみですね」

 

 怪しげな雰囲気を放つ建物の中で、84%と書かれたタブレットを見ながら上機嫌な様子を見せるのは海宝(かいほう)愛乃(まなの)

 そんな愛乃に“クラブ”なる存在が今後活躍するであろうことを伝えるのは紫のメッシュが入った独特の髪色で黒ずくめの衣服に身を包んだ青年。

 

愛乃「ふふ、産業革命軍の悲願を……必ずや」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

才花「……私は…どうすべきなのかな。機道に仮面ライダーとしての重荷を背負わせるべきじゃないとは思うけど……今の私が変身できない以上、機道に何とかしてもらうしかないのかな……」

 

陽菜美「あれ、才花先輩、戻ってきてたんですね。てっきりもう帰ったのかと」

 

才花「陽菜美ちゃん。…ちょっと用があって学外に行ってたんだけど、荷物を持って帰れてなかったから取りに来たとこ」

 

陽菜美「なるほど。…あの、先輩」

 

才花「?どうしたの?」

 

陽菜美「その…何か悩みとか、あったりしますか?……今日はずっと、見かける度に浮かない表情をされていたので…」

 

才花「!…陽菜美ちゃんにはバレちゃうか〜。ちょっと、色々あってね」

 

陽菜美「その、私なんかで良ければお話聞きますよ?」

 

才花「えっ」

 

陽菜美「あっ、いや…無理に、とは言いませんけど……」

 

才花「心配してくれたんだよね。ありがとう。…じゃあ、聞いてもらおうかな。良い?」

 

陽菜美「!はいっ!」

 

 音慈牧高校まで荷物を取りに戻って来た才花。そこで出くわした陽菜美に心配され、話を聞いてもらうことに決める。

 

才花「…その、知り合いに全然知らない一面があったというか……色々あって本当なら私がやるべきことをその知り合いがやろうとしてるんだけど…このまま任せていいのかわからなくて……」

 

陽菜美「……その知り合いの方は信用できない方なのですか?」

 

才花「…そういうわけじゃないんだ。その、一応信用はしてる。けど…なんていうか、そのやろうとしてることが荷が重いって言えば良いのかな。まあ、そんな感じで……」

 

陽菜美「……なるほど…。その、私もなんて言えばいいのかわからなくて…大した意見とか出せなくて申し訳ないです…」

 

才花「……ううん。聞いてくれるだけでもありがたいよ。…ちょっとスッキリしたし。ありがとね。それじゃ、また」

 

陽菜美「は、はいっ!……先輩、大丈夫かな」

 

 話を聞いた陽菜美は何かコメントを返したりすることが出来ず落ち込むが、対する才花は聞いてもらえて助かったことを伝えると、手を振って帰っていく。

 そして、そんな才花の様子を、陽菜美は心配そうに眺めるのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

裕輝「……うーん、こうして見るとカニ人間の噂は結構広まってるみたいだな」

 

ベータ「SNSって便利だなあ。…さて、裕輝が集めてきた出没情報を集めると……こんな感じか」

 

裕輝「この辺りがカニ人間の縄張り、ってことかね」

 

ベータ「……恐らくな」

 

 裕輝がSNSを活用して集めたという情報を元にベータが音慈牧市の地図にチェックを入れていくと、ある一定のエリアが浮かび上がり、二人はそこをカニ人間……そう呼ばれているラズマの縄張りと考える。

 

裕輝「そしたら俺、調査に行ってくる」

 

ベータ「了解。気を付けろよ」

 

裕輝「……止めないんだな」

 

ベータ「ま、止めても行くだろうし…君ならきっと大丈夫だからな」

 

裕輝「ありがとな」

 

ベータ「……やれやれ、僕様もすっかり甘くなっちゃったものだね。これ以上スイートになってしまったら困るんだが…」

 

裕輝「何言ってんだ自己陶酔ロボット」

 

ベータ「……良いからさっさと行きたまえ」

 

裕輝「はいはい。…んじゃ、行ってきます」

 

ベータ「ああ、行ってらっしゃい。…そうそう、移動にはメカニカルダッシャーを使うと良い」

 

裕輝「ああ。ありがとな」

 

 カニ人間の調査を行うべく実際に目撃範囲に向かおうとする裕輝。

 そんな裕輝を、自己陶酔を挟みつつもベータは暖かく送り出す。

 

裕輝「……よし」

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

和樹「……うう…忘れ物さえしてなければ…」

 

「……次はアイツだな」

 

和樹「カニ人間…出ませんように……」

 

 夕方、日が暮れ始め段々と夜の闇が空を支配し始める頃、和樹は慌てた様子で道を進んでいた。

 忘れ物が原因で遅い時間に一人で行動することになったようであり、カニ人間に出くわさないことを祈りながら早歩きで帰路に就いている和樹を、しかしその祈りも虚しくトゲトゲとしたシルエットの人ならざる何かが木の陰から狙っていた。

 

ガサッ…

 

和樹「……っ!」ビクッ

 

 近くの茂みから鳴る音に反応し、恐怖を堪えられなくなった和樹はとうとう駆け出す。

 

和樹「っ…」

 

ザバアアアン!!

 

和樹「うわああっ!?」

 

クラブ「ふっふっふっ。…お前の恐怖、実に良い。よく実っている。さあ…俺と共に来てもらおうか…!」

 

和樹「か、か…カニ人間…!」

 

 和樹がため池の近くを通ったその時、突如として飛沫を上げながらため池から飛び出したのは茶色を基調とした巨大なカニのような姿をしたラズマ…クラブラズマだった。

 そして恐れていた存在が目の前に現れたことで腰を抜かしてしまった和樹にクラブラズマはこれ見よがしに両腕の鋏を開閉しながら近付く。

 

裕輝「させるか!!」

 

クラブ「ぐあっ!……貴様は…!?」

 

和樹「ひ…裕輝兄ちゃ…」

 

裕輝「和樹君…怪我はないか?」

 

和樹「う、うん…」

 

裕輝「なら良かった……さ、逃げるんだ」

 

和樹「で、でも、裕輝兄ちゃんは…」

 

裕輝「!……俺なら大丈夫。…言ったろ?カニ人間が悪い奴だったら…俺の知り合いの仮面ライダーがやっつけてくれるって」

 

和樹「…!」

 

裕輝「だから大丈夫。心配してくれてありがとな。さ、早く帰るんだ。……またお店においで」

 

和樹「う、うん…裕輝兄ちゃん…ありがとう!!」

 

 間一髪のところで駆け付けた裕輝はメカニカルダッシャーでクラブラズマを撥ね飛ばすと、和樹を逃す。

 

クラブ「貴様…よくも俺の獲物を…!」

 

裕輝「やはりラズマだったか。…ここでお前を倒して…連れ去った子供たちも返してもらうぞ…!」

 

クラブ「ふん。ガキどもならじっくり楽しむために俺の中に取り込んだ!俺を倒さなきゃ解放なぞ出来るものか!」

 

裕輝「……そういうカラクリか。なら丁度良い。お前を倒して…子供たちを返してもらうことにするよ」

 

クラブ「そのベルト…お前まさか、仮面ライダーか…!?」

 

 和樹が逃げたことを確認しつつ、裕輝は憤慨しているクラブラズマと対峙する。

 そしてこれまで行方不明になっていた子供が全てクラブラズマの中に取り込まれていて、倒さなければ助けられないことを知ると、静かな怒りを燃やしながらエナジーテクノドライバーを装着する。

 

裕輝「……ドライバーを使える。やっぱり、必要なのは…。ありがとう、和樹君」

 

和樹『で、でも、裕輝兄ちゃんは…』

 

裕輝「……君の優しさのお陰で大切なことに気付けた」

 

 エナジーテクノドライバーを装着出来たことで、裕輝は漸くその使用に必要な条件に気付く。

 そして、気付けたキッカケは自分も恐怖を覚えながらも他者を思いやる和樹の純粋な優しさだったため、裕輝は一人和樹への礼を告げる。

 

クラブ「何をごちゃごちゃと…!」

 

裕輝「っと…覚悟しろカニ野郎。ここでお前を倒す!」

 

《ホッパー!》

 

クラブ「フンッ!」

 

裕輝「よっ…と!」

 

《バイク!》

 

《エナジーオン!》

 

 襲いかかるクラブラズマに対し、裕輝はその鋏を振り下ろす攻撃を身体を左に捻ることで回避しつつホッパーエナジーデンチを、右鋏での突きを受け流してバイクエナジーデンチをエナジーテクノドライバーへと装填していく。

 

裕輝「…変身!」

 

《アクティベート!

 

シナジースピード!ホッパーバイク!》

 

クラブ「……!やはり仮面ライダー…いや、関係ない!ここで亡き者にしてくれる!」

 

メカニック「そう簡単に…やられるかよ!」

 

 裕輝は仮面ライダーメカニック ホッパーバイクシナジーへと変身し、クラブラズマの鋏を振り回しての一撃をホイールモードのホイールカリバーで受け止める。

 

《カリバーオン!》

 

メカニック「はあっ!…硬っ!?」

 

クラブ「はん!俺の殻はそんな攻撃じゃ破れねえよ!」

 

メカニック「うああっ!!」

 

 メカニックはホイールカリバーをカリバーモードへと変えつつ斬撃を叩き込むが、クラブラズマの強靭な殻に阻まれてしまい、返しの鋏の斬撃を受け、装甲から火花を散らす。

 

メカニック「なるほど…これは厄介だな。……だったら、パワーで対抗するまで!」

 

《ゴリラ!》

《エナジーオン!》

 

《アクティベート!

 

ゴリラ&バイク!》

 

メカニック「うおらぁッ!」

 

クラブ「くっ…!このパワー……確かに効くが…だが、その程度の力では負けるものかぁ!!」

 

メカニック「くっ…ぐああっ!…まだパワーが足りないのかよ!?」

 

ベータ『落ち着け裕輝』

 

メカニック「ベータ!…見てたのか」

 

ベータ『ああ。君ならやれると信じてたぞ。さあ、さっき渡したチェーンソーエナジーデンチを使ってみろ!』

 

メカニック「チェーンソー…これか」

 

 ゴリラバイクへとフォームチェンジしたメカニックはシルバパンツァーによる剛力を活かして重い斬撃を叩き込むが、通用はしつつもクラブラズマの殻を打ち破るには至らず、反撃に鋏での刺突を受けてしまう。

 しかし、そんなメカニックにメカニカルダッシャーを通じてベータがアドバイスを送り、それに従ったメカニックは腰のエナジーホルダーに装填された黄色のチェーンソーエナジーデンチを取り出す。

 

メカニック「……よし!」

 

《チェーンソー!》

 

《エナジーオン!》

 

メカニック「これで…!」

 

《アクティベート!

 

シナジーパワー!ゴリラチェーンソー!》

 

 メカニックはバイクエナジーデンチをチェーンソーエナジーデンチと入れ替えることでバイクのパーツが消え、所々にチェーンソーを模した装甲が追加された新たな姿…仮面ライダーメカニック ゴリラチェーンソーシナジーへとフォームチェンジする。

 

メカニック「パワーが漲る…!」

 

《パワーチェーンソースラッシャー!》

 

ベータ「僕様お手製の新装備だ!使いたまえ!」

 

メカニック「おお…!よーし、いくぜ!ふんッ!」

 

クラブ「!?ぐあっ!!……な、なんだこの攻撃力は…!?」

 

 メカニックはチェーンソーを模し、黄色と灰色を基調とした剣型の武装“パワーチェーンソースラッシャー”を召喚すると、それを力いっぱいに振るってクラブラズマに強烈な斬撃を叩き込む。

 

メカニック「凄え力……。よーし!ふんッ!はあッ!!」

 

クラブ「ぐあっ!うああっ!!」

 

 メカニックはパワーチェーンソースラッシャーを振り下ろしてクラブラズマを怯ませ、更に左腕で殴り飛ばすことで追撃を喰らわせる。

 

メカニック「これは…よーし!」

 

《ギューン!》

 

メカニック「オラアッ!!」

 

クラブ「ッ…うぐああっ!?」

 

 メカニックはパワーチェーンソースラッシャーの峰側の根本に付いた“ストロングスレバー”を引くことで刀身に橙色のオーラを纏わせると、それを力任せに振るってより威力の増した斬撃を叩き込む。

 

メカニック「まだまだ…!」

 

《ギューン!》

《ギュギューン!》

 

メカニック「はああッ!!」

 

クラブ「この…!ぐわああっ!!」

 

 メカニックがパワーチェーンソースラッシャーのストロングスレバーを2回引いて放ったより激しいオーラを纏った斬撃を繰り出すと、クラブラズマはそれを両腕の鋏で受け止めようとするが打ち破られ、痛烈な斬撃を受ける。

 

メカニック「今度は…」

 

《ギューン!》

《ギュギューン!》

《ギュギュギュギューン!》

 

メカニック「はっ!」

 

クラブ「!」

 

メカニック「なんてな!ダァッ!」

 

クラブ「うぐああっ!!お、俺の鋏が…!?」

 

 メカニックはパワーチェーンソースラッシャーのストロングスレバーを3回引いてその刀身にかなり激しい橙色のオーラを纏わせて振り下ろそうとするが、それを見てクラブラズマは防御姿勢を取る。

 しかし、それを見越したメカニックはフェイントを掛けて横一文字に斬撃を放つことでクラブラズマの両腕の鋏を破壊する。

 

《ギューン!》

《ギュギューン!》

《ギュギュギュギューン!》

《ギュイギュイギュイーン!チャージオン!》

 

メカニック「悲劇はこれで…終わりだ!」

 

《エナジーカッティング!》

 

クラブ「逃げ…れねえ…!?」

 

メカニック「逃がすかよ!はあーっ!!」

 

クラブ「ぐっ…うぐああああっ!!」

 

 メカニックはパワーチェーンソースラッシャーのレバーを4回引いて濃縮された橙色のオーラを刀身に纏わせると、地面を殴って木を模した光のフィールドを展開してクラブラズマを閉じ込め、そのまま渾身の力でパワーチェンーソースラッシャーを振るい、斬撃を叩き込む。

 その一撃は頑丈なクラブラズマの殻すら削り、爆散させる。

 

パキャンッ!

 

「っ…う…あれ…?」

 

 その頃、どこかの場所で寝たきりになっていた女性の体から歪な形のデンチ…ラズマデンチが排出されて砕け散る。そして、それと同時に女性は目を覚ますのだった…。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

裕輝「…ただいま。解放された子供たちも取り敢えず警察に送り届けてきたし、これで解決かな」

 

ベータ「おかえり。…やったな」

 

裕輝「ああ。…ありがとな」

 

ベータ「君の力さ。…もう気付いたんだろう?仮面ライダーになる条件」

 

裕輝「…打算じゃなく、何かを守りたいと願って戦う覚悟…つまりは『ヒーローの心』なんだろ?」

 

ベータ「…その通りだ。それに気付けた今の君なら、きっと戦っていける」

 

 クラブラズマを倒した裕輝がからくりに帰ってくると、ベータが出迎える。

 そして、裕輝の気付いた仮面ライダーになるための条件をベータは肯定する。

 

裕輝「…そうだな。…俺、ちょっと焦ってたのかも。……復讐を諦められるわけじゃないけど…それでも、今は…ラズマに苦しめられる人を助けるためにこの力を使うよ。…そうすれば、いつか組織に辿り着く気もするし」

 

ベータ「それが良い」

 

 裕輝は自らが復讐に焦っていたことを自覚すると、決意を新たにし、そんな様子をベータは微笑ましげに見守る。

 

コンコンコン

 

裕輝「?ベータ、隠れてくれ」

 

ベータ「…はいはい」

 

 そんなやりとりの最中、からくりの戸が叩かれ、裕輝は咄嗟にベータを店の奥に引っ込ませると、自身は入り口に向かう。

 

裕輝「はーい。って和樹君。どうしたの?」

 

和樹「裕輝兄ちゃん…良かった…無事だったんだね」

 

裕輝「心配で来てくれたんだ。ありがとな」

 

「すみません、こんな時間にいきなり…。どうしても機道さんの顔が見たいと聞かなくて…」

 

裕輝「いえいえ、和樹君の優しさですから。…そうだ、カニ人間は仮面ライダーがやっつけてたから、もう大丈夫だぞ」

 

和樹「本当!?」

 

裕輝「本当だ」

 

和樹「そっか。…仮面ライダーって凄いなぁ。…裕輝兄ちゃんも、助けてくれてありがとう!」

 

裕輝「どういたしまして。…じゃ、気を付けて帰りな」

 

和樹「うん!またね!」

 

「ありがとうございました」

 

 裕輝を心配して店を訪れたらしい和樹に、裕輝は笑顔で応対し、無事に事件が解決したことを伝えると、和樹は安心した様子で店を後にする。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

愛乃「…そう、ですか。“クラブ”が…。残念です」

 

「…次は私が出撃いたします。…新たな仮面ライダー…メカニック。奴の力を試してやる…!」

 

愛乃「…頼みましたよ、ギフト」

 

ギフト「…お任せあれ」

 

 クラブラズマが倒されたことを知り、表情を崩さぬまま悲しむような素振りを見せる愛乃。

 そんな愛乃に、ギフトと呼ばれた青年は恭しげに会釈し、自ら出撃することを告げる。

 

⭐︎⭐︎⭐︎

 

次回、仮面ライダーメカニック!

 

裕輝「お遊戯会ですか」

 

才花「相変わらずお人好しだねぇ」

 

裕輝「えっと…ウチに何か用…?」

 

陽菜美「実は知り合いがこのお店から出るところを見かけて…」

 

裕輝と陽菜美の邂逅──

 

ギフト「いい感情を持ってる」

 

才花「ギフト…!何を企んでるの…!」

 

裕輝「子供の感情を食い物になんて…させるか!」

 

動き出すギフト……子どもたちの楽しみを守れ!

 

裕輝「シナジーで勝負だ!」

 

vol.3「守れ笑顔!×猛毒ハンター!」

 

日曜午後9時!




第2話をご覧いただきありがとうございます。

主人公としては中々珍しい動機で戦っている裕輝でしたが、この第2話で仮面ライダーの主人公らしさが出てきたのかなと思います。
この先、復讐とヒーローという二つの軸の狭間で裕輝がどのように成長していくのか、是非ともお楽しみに!

また、今後展開するスピンオフ作品についてもお知らせを活動報告にて出しておりますので、そちらも是非ご覧ください!

さて、ここからは前作でも出していた、変身手順紹介のコーナーとなります。
新しいライダーや変身ポーズが出たタイミングで不定期に載せる予定となりますので、興味のある方は見ていただけると嬉しいです。

今回紹介するのは当然主人公のメカニックとなります。
①アニマルカテゴリのエナジーデンチを左手に、マシンカテゴリのエナジーデンチを右手に持って肩の高さくらいのところで構える。
②アニマルカテゴリのエナジーデンチをドライバーの右側のスロットに、マシンカテゴリのエナジーデンチをドライバーの左側のスロットにセットする。
③そのまま右手はドライバーの上に添えて、左手は腰ほどの高さのまま横に伸ばす。
④両手を大きく回すようにして、右手は左脇の下辺りへ動かし、左手は顔の右横まで動か手のひらを前に向けて止める。
⑤「変身!」の掛け声を上げつつ、左手を返して手の甲を前に向ける。
⑥ドライバーのレバーを右手で操作して左から右へと動かし、右手を右腰に添える。(1号の変身ポーズに似せるイメージ)
⑦左腕を下ろして変身完了。
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