桐藤ハルは走り出す 作:コンテンダーは良いぞおじさん
口調の画一化と先生の対応を少し変更してます。
甘く見すぎていたかもしれない。
今更ながらに後悔し始めたのはアビドス地区に入って暫くしてからのことだった。
『ですからちゃんと準備するべきだと言いました!』
プンプンと怒った様な声が耳に痛い。
"ごめんねアロナ…次からはちゃんと気をつけるよ"
手元のタブレット…シッテムの箱と名付けられたオーパーツから響く声に謝ると画面の中で怒っている少女がチラリと私を見て
『もう、しょうがないですね!』
なんて言いながら笑いかけてきた。
初めて起動した際にアロナと名乗ったこの子はシッテムの箱の管理AIだそうで。
何故か他の人には見えないし声も聞こえない謎仕様の女の子だ。
そんな少し不思議な子ではあるが今までも何くれとなく助けてくれた、頼りになる相棒である。
先程までよりも機嫌が上向いてくれた様で良かった、と微笑みながら呟く。
"それにしても凄い砂だね…"
人影が無く、見渡す限りの砂。
都市部から電車一本で行ける範囲にこんな風景が広がっているなんて…ちょっと『外の世界』じゃ考えられなかった。
『…アビドスはそういう土地柄ですから』
少し言い淀んだ様子のアロナに疑問符を浮かべる。
それはどういう意味か、と尋ねるより先に
『兎に角、今の先生の装備で砂漠を渡るなんて自殺行為ですよ』
引き返して準備を整えましょう?と促してきた。
確かに…この分ではアビドス高校にたどり着く前に倒れかねない。
用意してきたペットボトルの水も既に空だ。
この様子じゃ多少重くなっても2リットル入りを2.3本持ち込む必要があるかもしれない。
"そうだね、一旦…!?"
そう言いかけた瞬間に銃声の様な音が響き渡った。
様な、としか形容出来ないそれは銃声によく似た音ではあるもののキヴォトスに来てから耳にしたどの銃声よりも異質だった。
"アロナ!"
『はい!…あっちです!』
タブレットをみると青い髪をした少女が向かって右側を必死に指さしている。
"ありがとう!"
私がどうするかを把握して音の方を示してくれた事に感謝を述べて走り出す。
そんなに距離はないと思うけど…なんて考えている内に間を置いてもう一回、同じ音が鳴り響いた。
"銃声…かな?"
『火薬の炸裂音だと思いますが…銃声かは判断がつきません…』
申し訳なさそうな言葉に首を振る。
"十分だよ…ありがとう、アロナ"
少なくとも自然に出た音ではないと確定した。
人為的なものならばそこには人がいる。
銃声の様な音がしたということは戦闘かそれに類する何かが起きているのだろう。
近づくにつれてパラパラと聞き慣れた銃声が耳に入ってくる。
何を言っているのかは判別できないが怒鳴り声も。
『…「なんなんだ、てめーは」と言ってますね…』
抗争中の様です、と伝えてくるアロナに再度感謝を述べて
"なんとか止めないと"
キヴォトスが超銃器社会で、撃たれた程度じゃどうってことないとはいえ…
"大抵の場合、喧嘩は良くないからね"
ぶつかり合わなければ分かり合えないと言う事も無くはないが。
"取り敢えず…!?"
先程聞こえた炸裂音が響き渡った。
それと同時に銃声が鳴り止む。
『上です!』
アロナの声を聞いて上を注視すると。
2階の窓があった場所から降ってきた女の子…ヘルメットを被っているからヘルメット団の子だろう。
余程慌ててたのか着地時に足をもつれさせて転んでしまっていた。
大丈夫?と駆け寄るよりも速く2人目が飛び降りてきた。
榛色の長髪が靡く。
手にした拳銃と言うには余りに無骨な、少女の手には大きすぎるそれは何故かその子には似合っているように思えた。
銃撃戦の結果だろうか、ズタボロになっている服を見て硬直していると空中でチラリとこちらを見た少女と目が合った。
不審な物をみる目で私を一瞥した後、難なく着地したその子は最初に飛び降りてへたり込んでいる子に向かって足を進めた。
「ま、待って!降参、降参するから…!」
両手を挙げて無抵抗を示すヘルメット団の子。
既に散々やり合った後の様だ。
…それにしては2人目の子がボロボロ過ぎる気がするけれど…と不思議な情景に疑問を持っていると
「悪いね…とは思えないな、やっぱり。恨んでくれて良いよ」
淡々と告げて銃口を突きつける2人目。
それを前にしてただ震えるヘルメット団の子を見て思わず
"ちょ、ちょっと待っ"
割って入ろうとする私を見ることもなく。
「はい、ドカンと」
無情にも放たれた銃弾がヘルメットを砕いた。
先生と名乗った大人の簡単な自己紹介の後。
「シャーレ…?あぁ、先日発表が有った連邦生徒会の人ですか」
珍しく連邦生徒会が開いた記者会見で会長代行が話してたやつ。
バカみたいな権限を持つ連邦生徒会会長の後釜なんじゃないか、なんて言われてた要注意人物。
目の前の優男がそうなのか、と少し意外に思う。
あの超人生徒会長と違って凄みを感じない…これが擬態なら相当な食わせ物だけど。
"よく知ってるね…"
「インフラの回復に貢献されたと発表がありましたから」
今のキヴォトスで存在を知らない人の方が少ないと思いますよ?と続けると
"照れるね…別に私が何か出来たってわけでもないのだけど"
…プロパガンダに利用されただけなのかな?
今の連邦生徒会に形振り構ってられる余裕はないだろうからあり得ないとは言い切れないけど…実際にインフラが回復しつつあるんだよなぁ…
何にせよ連邦生徒会に関連する人なのは間違いないし、警戒するに越したことはないんだけども。
"君の名前は?"
「桐藤ハルです。…覚え無くても良いですよ」
関わる気もないですし。と続けると困ったように苦笑された。
調子が狂うなぁ…なんて考えながら今しがた気絶させたヘルメット団の懐を漁る。
んー…持ってないか。
あ、水あるじゃん。貰っとこ。
"えーと、何をしてるのかな?"
「盗られた物を取り返してます。ついでに迷惑料も」
やっぱり弾はリーダー格のアイツが持ってるのかな?
流石に捨ててないと思うけど…と立ち上がると同時に先生から声をかけられた。
"…さっき、降参してた子を撃ったのはなんで?"
「…?信用出来ないからですが?」
この人、常識が無いんだろうか?
そんな当たり前の事を聞く必要はないだろうに。
「私達はあの程度の銃撃では死にませんし。安全を取るなら気絶させた方が良いでしょう?」
覚悟の決まってる輩だと最後に一撃加える為に自爆してくる奴もいるし。
「敵対したなら零か百しか有りませんよ」
過去にブラックマーケットで学んだ事の一つがそれだ。
"それでも、流石にあれはやり過ぎじゃ…"
相手は既に戦意喪失してたじゃないか、と言いたいんだろうが…それは現実を見ていない意見だ。
「先生。無法者には無法者なりのルールがあります」
ヘルメット団なんてやってる連中は食い詰めてる様な末端が多い。
それこそ負ければ根刮ぎ持ってかれる事だってある。
「目には目を、なんて古臭いことは言いませんが」
略奪するなら相応のリスクを背負うべきだと思いませんか?と続けながら気絶している子の上着を剥ぎ取った。
上から羽織って袖を捲くる。
ちょっと丈が長いけど今着てるボロ布同然の上着よりはマシかな。
肩を軽く回して可動域を確かめながら話を続ける。
「
先生が来てから少し機能が回復したようですがそれでもすぐに元通りとはいかない。
「仮にヴァルキューレにつき出したとしたとしても簡単な調書を取って2〜3日拘留して開放されるだけです」
なにせ拘置所は違反者で常に満員だそうですから。
「私が負けてたら全部奪われてたのに割に合わないでしょ?」
笑いながら続ける。
「それでもやり過ぎと言われれば…そうなんでしょうね」
此処が
もしくは
「その土地を管理している学校の規則に従うのは当然の事でしたし、私もそう思いますよ」
もしも此処がそういう状況なら先生の言い分が通った。
でも今、この場では違う。
「こんな砂漠で。管理している学校も無い所なら
寧ろ全部盗らない分、情をかけている方ですよ?
そう告げると黙り込む先生。
…納得してくれたかな?
「では、私はこれで失礼します」
一応頭を下げてからその場を離れる。
往年の力は無いとはいえ連邦生徒会はキヴォトスを運営する最大派閥。なるべく余計な波風を立てたくない。
そんな事を考えながら2階に上がってまだ気絶しているヘルメット団達の懐を漁る。
私の弾は…おお、やっぱりリーダー格が持ってた。
結構高いから持ってかれると懐が痛いんだよね…っと、財布も回収しないと。
それなりに愛着のある二つ折りの財布を回収。
中身は…多分大丈夫かな?小銭まで正確に覚えてないけど紙幣は間違いなく揃ってる。
分配される前で良かった…と胸をなでおろすと同時に振り返った。
「…まだ何か?」
さっきから後ろでチラチラと私を見ていた先生に問いかける。
"もし、管理する学校があるなら。桐藤さんはその決定に従うんだよね?"
「それはまぁ…」
そうなるかな?…それに私が納得できるなら、だけど。
「管理する土地を此処まで荒廃させた学校がまだ存続しているとは思えませんが」
此処まで砂漠化が進んでいるなら人が残っている方がおかしい。
それでもこんな砂しか残ってない様な土地に固執してる様な人がいるとしたら。
「その人達は相当な変わり者でしょうね」
それか行く宛も無い、食い詰めた子達の集まりだろう。
可哀想に、なんて口には出さない。
そういう学区はそこら中にあるのだから。
"此処の学区はアビドス高校が管理してるよ"
淡々と告げる先生の言葉に少し絶句する。
…それは聞きたく無かったなぁ。
溜息を一つ。
これからどうするべきかを思考しながら口を開く。
「まともに運営出来てないでしょうに…」
砂まみれになっている周りを見渡して続ける。
「…破綻しかけてる学校のルールに従う意味がありますかね?」
近い将来に丸ごと暴徒化するかもしれない学校の規則に従う意味があると思いますか?
言外にそう続けた言葉に
"それでも、まだ頑張ってる子達がいる"
私はその子達の為に此処まで来たんだ。
そう答えた先生に向き直って
「だからこいつらを引き渡せ、と?」
視線の先で気絶しているヘルメット団を見る。
"その土地の法には従うべき、なんでしょ?"
静かに、説得する様な口振りで告げられた。
……仕方がないか。
『管理している学校の規則に従うのは当然の事』
確かに私はそう言った。
これが何でもない、別の人相手に言った言葉なら無視しても問題なかったけど相手は連邦生徒会の人間だ。
口が滑ったなぁ…とはしたなく舌打ちをしたくなるのを抑えて大きく溜息を吐く。
こんな所で足止めを食らうのは想定外だけど、連邦生徒会の紐付き相手に変な確執を残す方が後々面倒になる気がする。
私の中の天秤は僅かに揺れてから答えを出した。
「…分かりました。盗られた物以外は返します」
管理者がいるのなら引き渡して裁きを受けさせましょう。
そう答えながら先程盗った上着を脱ぐと私から目を逸らす先生。
「何故目を逸らすんです?」
"その…見えてるよ?"
…あぁ、下着が見えてるのか。
「別に気にしませんが」
"私が気になるの!…これで良ければ羽織っといて"
そう言うと来ていたジャケットを手渡してくる。
気にし過ぎだと思うけどなぁ…と呆れながら受け取ったジャケットを羽織る。
…大きすぎる。袖から指先も出ない。
その様子を見て苦笑した先生が提案してくれる。
"適当に折っちゃって良いよ"
それは有難いけど…
「折り目が付きますよ?」
"そのくらい構わないよ"
じゃあ遠慮なく、と袖を折り返す。
大人の、それも男の人が着ているジャケットは先ほど剥いだモノよりも大きく、私みたいな平均以下の身長のやつが着ると思ったより不格好になってしまった。
スカートよりも長い丈のジャケットを羽織った私は後ろから見たらそれ以外着てない変態に見えるんじゃなかろうか、なんて思いながら先生に問う。
「…で、そのアビドス高校と連絡はつくんですか?」
出来るなら通報してさっさと離れたいんだけど。
"電波が届かないんだよね…"
先生曰く、アビドスの砂嵐は電波障害を起こすらしく繋がるときと繋がらない時があるらしい。
「じゃあ連れてくしかないですね…」
面倒な…早速後悔が重なりそうだ。
全員連行して行くとなると時間も取られるし、正しく踏んだり蹴ったりである。
無理矢理ポジティブに考えるならアビドス高校とやらに貸しを作れるけど。
…小さくて利用価値が薄い、あってもなくても変わらない様なものだから労力に見合うかと言われると大分微妙。
あ、でも学区がまだ破綻していないと確認できればもう少し大きな利点が生まれるかな?
此処がルール無用の無法地帯でないならトリニティが手を伸ばすのが難しくなるから。
トリニティはその性質上他学区に遠征出来る程の口実を用意するのが難しい。
外部の学校にちょっかいをかけるなんて内輪揉めのついでに出来ることじゃ無いし。
少しモチベーションが上がった所で早速行動を起こす。
ヘルメット団の銃器を先程盗った…外のヘルメット団に返す予定の上着で一纏めにして縛る。
簡単に再利用出来ないようにしてから片手に持つと、何をするんだろう?と言った表情の先生を尻目に
「ほら、起きて」
最初に撃ったリーダー格のヘルメットを強めに蹴る。
頭を張ってるなら他の奴より頑丈だろうし、回復も速いだろうと思っての事だったけど…
"ちょっ、何してるの!?"
先生が驚いた顔で止めてきた。
別にとどめを刺そうとしてるわけじゃないよ?
「1人でも起こさないと全員背負う事になるじゃないですか」
私はそんな重労働をする気はない。
「先生が全員連れていけるなら話は別ですけど…」
それなりに均整の取れた体つきだけど流石に5人引きずるのは無理があるでしょう?と問うと少し肩を落として頷く。
それを見て足元のリーダー格のヘルメット団員を手に持った銃器の塊で指しながら
「起こして運ばせれば万事解決ですよ?」
武器も持たないチンピラなら簡単に制圧出来ますし。と続けると
"もう少し手心を加えても良いと思うんだけど…"
甘い、甘すぎるよ先生。
「調子に乗らせて反抗される方がお好みですか?」
敗者は勝者に要求出来る立場では無いと明確に示さなければこう言う輩は図に乗る。
そう言うと納得したような、してないような表情になる先生。
…本当、今のキヴォトスには向いてない人だ。
甘さで身を滅ぼすタイプ。
その分人に好かれやすいんだろうけど…私は余り好きになれそうにない。
誰にでも優しい人は潜在的な敵と変わらないから。
そんな事を考えていると
「ん…あぁ?」
先ほど引っ叩いたリーダーが意識を取り戻した。
即座に相棒を突きつけて忠告する。
「動くな。…よし、良い子ですねー」
突きつけられた銃口を見て状況を理解したリーダーが口を噤んで固まる。
「これから貴女達をアビドス高校に引き渡します。お仲間を担ぐなり引きずるなりして着いてきて。…分かったら首を縦に振って下さい」
淡々と指示すると少し怯えながら首を縦に振るのを見て頷く。
「宜しい。…さ、行きましょうか」
撃った頭が痛むのか少しフラつきながらその辺に転がる仲間を担ぐリーダーから目を逸らさずに促す。
"うん、そうだね…"
何処か上の空で呟く先生。
大人なんだからしっかりしてほしいものである。
「アビドス高校まではどのくらい掛かりますかね?」
"正確な位置は分からないんだけど…大凡このくらい?"
……本当に存在してるんだよね?
正確な位置が分からないとか既に滅んでても不思議じゃないんだけど。
私達の会話を聞いていたリーダーがその場に転がった三人を器用に担いで先生に語りかける。
「…なぁ、あんた」
「誰が喋って良いと言った?」
即座に相棒を引き抜いて銃口を押し付けて黙らせる。
コイツ、先生を見てワンチャン行けるとか思ってないだろうね?
私がこの人に従ってるように見えたならそれはお門違いだぞ、と目の前のヘルメット団リーダーを睨みつけた私を先生が制止してくる。
"ハル"
先生の言葉に少し違和感を覚えた。
…あぁ、名前呼びに変わってるからか。
別にどっちでも構わないけど。
「…なんですか?」
この人こんな顔もできるのか、と意外に思いながら。
"銃口を離してあげて…それじゃ話せないよ"
続けた言葉に思わず溜息を吐く。
甘過ぎる。
ゲロ甘である。
少しどころではない呆れを含めた声で答える。
「話す必要があるとは思えませんけど」
コイツを起こしたのは他の連中を運搬させる荷車としてだ。
意見を求める為じゃない。
"話したいことがあるなら聞いてあげたいんだ"
私は先生だから。と真剣な顔で語るのを見て
「…そうですか」
早死にするなこの人…と思いながら銃口を下ろす。
正直この人が舐められる分には構わない。
今までの私との会話からして先生とコイツが話すと面倒な事になりそうな気がするから出来るなら黙らせたい、程度のものだし。
「……ありがとよ、先生」
感謝を述べるとそのまま先生に向かって話しだすリーダー。
「あんた、アビドス高校に行きたいんだろ?」
"うん。元々アビドスの子達に救援を求められて行く途中だったからね"
「私は場所を知ってる。案内出来るよ」
そう言ったヘルメット団リーダーは私の方をチラリと見て
「だから…」
「見逃せ、と?」
言いたいであろう事を先回りする。
「…あぁ。頼むよ…もうこんな事はしない。足を洗って真っ当に生きると誓う」
私に向かって器用に深く頭を下げたヘルメット団リーダー。
それを見た先生が私を見ながら何かを言いたそうにしている。
はぁ…やっぱり面倒くさいことになったじゃんか…
こんな問答は意味がない。
「嫌だね」
ハッキリと断る。
先生が絶句してるけど…当たり前の事じゃんね?
「負けた分際で図々しい」
仲間を担いだリーダーの目を見ながら続ける。
叩き割ったバイザーから覗く目は少し恐怖で歪んでいた。
理解出来ない化物を見るような目。
向けられ慣れたそれを見て更に心が凍って行く。
「もしも私が貴女達に負けてそんな事を言った所で聞く耳持たないでしょうが」
トリニティに身代金を要求するとか言ってたし。
弱者に容赦する様な人達では無いのは分かりきっている。
「敗者に交渉する権利は無い」
慈悲に縋ろうとするのは結構だけど…貴女達はそんな命乞いを今までに聞き入れた事があるのか?
そう続けると視線が地面に向いた。
ほらね、先生。
無法者に情を掛けるのは無駄なんだよ。
コイツがこんなあからさまな無理筋を通そうとしたのは貴方が舐められてるからだよ?
私一人ならこんな当たり前の事を言わなくて済んだのに。
「略奪するつもりで喧嘩を売って、負けたけど許してほしい?舐めるのもいい加減にしなよ」
Winner-take-all。
総取りが
…今回はアビドス高校に引き渡して終わりにしてやるけど。
「貴女達がどうなろうと私の知ったことじゃない」
所詮は友達でも何でもない赤の他人だ。
仮に何処かで野垂れ死んだ所で何とも思わない。
今は利用価値があると思ったからこうしているだけで。
「それに比べればアビドス高校への引き渡しなんて温情だろうに」
なにせ経済破綻寸前の高校である。
「碌な設備が残ってるとは思えないし拘束期間も短いでしょ。…
せいぜい骨の1〜2本折られて無一文で放り出されるくらいだよ…良かったね?と微笑むと僅かに見えていた顔が完全に地面に向いた。
ようやく自分の立場を理解してくれたようだ、と満足して続ける。
「じゃ、案内よろしくね?」
先生が言った時間内に着かなかったら足を撃つからそのつもりで。
釘を差してから先を歩かせる。
重い足取りで1階に向かうヘルメット団リーダーを見ながら呟く。
「話せてよかったですね、先生」
お陰でアビドス高校まで迷わず行けそうですよ?
先生の返答は無かった。
…私は何か間違った事を言っただろうか?
うーん…蛮族!