時間は、ムクロが買い物をしている時まで遡る――――――――。
「あいつ一人で行かせて大丈夫だったかしら?」
「隊長……それはちょっと過保護じゃないですか?」
「そうっすよ。アニキなら大丈夫ですって!」
団員に窘められてしまった。確かに過保護だったわね、今の発言は。ダメだ、あいつが来てから調子が狂ってばかりだ。
「それにしても隊長、めっちゃ仲良くなったですね。最初はあんな感じだったのに」
「は!?な、仲良くなってないわよ!!」
「いや、それこそないですって。今じゃ一緒の部屋で寝てるじゃないですか」
「いや………それは」
「そうっすよ!ズルいですよ隊長ばっかり!あたしもアニキと仲良くなりたいっす!」
「そーだそーだ!隊長ばっかムクロさんを独占しないでくださいよーー!」
「一緒の部屋って、最早恋人じゃないですかー!」
「は!?恋人!?」
くっ……こいつら、邪推ばっかりして………。別に好き好んであいつと一緒の部屋にいる訳じゃないし………あいつが危なっかしいから、近くで監視してるだけだし。でも、詳しいことは言えない。あいつ、自分の精神状態を隠してるっぽいし…………いや、何で隠してんのよ。明らかに隠してていい状態じゃないでしょ、アレ。
そんなことを考えていると、近くで爆発音が響き、衝撃で椅子から転げ落ちそうになる。
「な、何!?」
「ウフフフフ………ここですか?ムクロ様を拐かした無礼者たちの居所は?」
「げっ……この声は」
「さぁ、ジャブジャブヘルメット団の皆様?早くムクロ様を差し出してください。今なら、許して差し上げても構いませんよ?勿論、ムクロ様を丁重に扱っていたのなら、ですが。ウフフフフ♡」
やっぱりこうなったかー。正直、いつかこんなことになるような予感はしていた。けど、ちょっと早過ぎない?
「た、隊長………どうします?」
こんな時に限ってムクロは外出中だ。誤解を解いてもらうことも出来ない。いや、ワカモのことだしムクロが居ても居なくても変わらないかもしれないが…………。ひとまず、今のままじゃ誤解を解くことも出来ないし、戦闘は避けられない。逃げても追ってくるだろうし…………。
「いや、それは違うでしょ」
あいつ相手に逃げるなんて、したくない。あーあ、昔なら逃げてただろうけど………今は、何か嫌だ。理由は分かんないけど、ここで逃げるのは何かが違う気がする。
「徹底抗戦!ワカモにジャブジャブヘルメット団の恐ろしさを教えてやるわよ!!」
「「はい!!」」
そうして戦い初めた訳だけど………ま、勝てるわけないわよね。
数分でウチらはほぼ壊滅した。ウチも、ワカモの前で跪いている。
「ウフフフ、貴女はもっと賢い方だと思っていたのに……残念ですわ」
「……あんたさ、何でムクロの奴のこと……探してんの?」
「?私がムクロ様をお慕い申し上げているからですが………?何故そんなことを聞くんです?」
ワカモの言葉に、何故か怒りを覚えた。いや、何故か……じゃないか。
はー………最悪だ。こんなこと、気づきたく無かった。てか、チョロすぎない?私。
ちょーっと弱った所見せられただけで…………。あーあ、本当に最悪だ。
「慕ってるって………なら、何であいつはあんなことになってんのよ………」
「?」
「好きならっ!もっと、ちゃんとあいつのこと見てあげなさいよ!!」
「何を言っているやら、皆目見当もつきませんが………」
額に銃口を突き付けられる。
「最後の通告ですわ。……ムクロ様の居場所を吐きなさい」
言ってしまえばいい。そうすれば助かる。けど、嫌だ。言ってなんかやるもんか。
そんな思いを込めて、ワカモを睨み付ける。
「そうですか、残念です」
そう言って、引き金を――――――――
「ワカモ……かい?」
ああ、あいつが来てしまった。
あいつは、ワカモと幾つか言葉を交わして………………酷く、傷ついたような様子を見せて……
そして――――――――――
「ワカモ、彼女たちは僕の大切な人たちだ。どうか、もうこれ以上傷つけないでおくれ」
そう言い残して、走り去ってしまった。
ワカモは、雨に打たれながらもそれを気にする素振りさえ見せずに、へたり込んだまま動かない。
「ああ、ごめんなさい………ムクロ様…………ごめんなさい」
「あんた、何時までそうしてるつもりよ?」
ワカモは返事すらしない。ちょっとイラついた。
「あーもうっ!!そんな風にしてても、あいつは喜ばないわよ!?」
「なら………なら、私はどうすれば」
「そんなの決まってるでしょ!?謝るの!!」
「ですが………」
「ですが、じゃない!!ていうか、ウチらにも謝んなさいよ!!あんたの勘違いで散々な目に遭ったんだからね!!」
「え、あ……その、申し訳ありません」
タジタジになりながら、こちらに頭を下げるワカモ。
ちょっと、
「悪いことしたら謝る!当然のことでしょ!?」
「でも、ムクロ様は許して下さるでしょうか?」
「許す許さないじゃないの!とにかく謝る!………そうしないと、何も進まないわ」
だから、あいつにも謝らせる。あいつのせいでこんな目に遭ってるんだから。
そして、私も謝るの。私がもっと強かったら、きっとあいつにあんな顔をさせなかったから。
護るって決めていたのに、結局護れなかったから。だから、私も謝るんだ。そうして、もう一回………あいつと食卓を囲んで、くだらない話をするの。あいつはもう、ウチの仲間だから。
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ずぶ濡れになったあいつを拠点まで連れて来た。項垂れるように座り込んだあいつの頭にタオルをかけて言う。
「取り敢えず、それで体を拭きな」
黙りこくったまま、タオルを手に取って髪を拭いているのを横目で見つつ、着替えを用意しようとクローゼットを開く。あいつと私じゃ大分体格も違うし、サイズの合う服はあるだろうか?まぁ、あいつは男にしては大分華奢な方だし……他の男とか見たことないけど……大丈夫だろう。
これなら着れるかな?
「ほら、着替えて。そのままじゃ、風邪ひくでしょ?」
「いや、大丈夫だから」
「何言ってんの?ほら、早く脱いで」
そう言って、濡れた服を剥ぎ取るようにして脱がせる。
「は?……何、この傷?」
彼の上半身には、色を失った火傷の跡が、皮膚の上を走る白い線が、傷口を縫った跡が………幾つもの傷痕が刻まれていた。
「……昔の傷だ。気にしないでいい」
「……気にしないでって………わかった」
こいつは……ずっと
「色々とありがとう。直ぐに出ていくから」
「直ぐに出ていくって、ふざけてるの?先生も、皆もあんたを探してるのよ?」
「先生が?……流石に何も言わないのはまずかったか。なら、君の方から伝えてくれ「ムクロはもうシャーレには戻らない」って」
「……ふざけないで。そういうのは、ちゃんと自分の口で言うものでしょ?というか、まずいのは何も言わないことじゃない。あんたがシャーレを離れること自体がダメなの。……そもそも、なんでシャーレを出てった訳?」
「……シャーレにはもう僕は必要じゃないから」
「は?そんな訳ないでしょ」
何て言ったんだ、こいつは?自分が必要ない?そんなはずないでしょ。
先生も、生徒も、皆が貴方を求めているのに。
「必要無くなったから、居なくなるの?そんなのダメでしょ」
「僕は……不幸を振りまく悪魔だ。誰かに必要とされているから、そこに居ても許される。必要無くなったのなら、そこに居る資格は無い」
「………は?」
不幸を、振りまく?どの口で言ってるんだ。癪だけど、こいつのおかげで今の私がいる。スクワッドの皆も、こいつに救われた。それが、不幸を振りまくだと?もう聞いていられない。こいつが望むなら、一緒に死んでやろうかとも思ってたけど、それも辞めだ。こいつには分からせないと。
「ちょっと、ミサキ?」
ムクロの両手を掴んで押し倒し、拘束する。
「先生呼ぶから」
「は?ちょ、ちょっと待ってくれないかい?」
「ダメ。待たない」
態勢を変えて、ムクロの体に腰を下ろしながらスマホに手を伸ばす。
「もうあんたの言い訳とか聞かないから。大人しく捕まってて」
「いや、僕は――――――――」
「聞かないって言った。………もしもし、先生?ムクロ捕まえたから………うん、ブラックマーケット。…………位置情報送るから、早く来て。…………うん、分かってる」
連絡を終えて、ムクロの方を見る。
「覚悟してね、ムクロ。……もう、ただじゃ済ませないから」
その言葉を聞いて顔を歪ませる馬鹿を見て、少し心がざわついた。
抵抗はしているけど、力は弱い。簡単に抑えつけておける。こいつ………こんなに弱かったんだ。
「はぁ…………」
先生、早くこないだろうか。
どういう話が見たいですか?今後の参考にしたいです。
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原作ストーリーに介入するムクロ
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最終章後のムクロや先生たちの話
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幽玄ムクロの過去(キヴォトスに来る前)