ということで、筆が乗りに乗ったので早めの投稿です。
ムクロ過去編はこの話で完結になります。
ムクロがいた世界の日本は、現実よりも遥かに治安が悪いifの日本です。
当時、日本の裏社会は荒れに荒れていた。日本各地で刻刻と水面下で勢力を伸ばしつつある反社会的勢力。海外から浸食するように攻め入る海外マフィア。そんな者たちが日夜覇を競い合い、拡大する抗争。そんな中、彼……幽玄骸が加入した組織、黒澤組の所属する新城会は裏社会では新参の組織。年功序列を排し、徹底的な実力主義を掲げる異端の暴力団であった。骸の加入当初は、未だ勢力の小さい組織であったが――――――――。
「若頭、お手を煩わせてすみません」
「いいよいいよ。それで、こっちにいるんだね?」
「はい」
黒いスーツを着用した者に案内され、彼は歩く。
そんな彼を見た構成員たちは、ひそひそと内輪で話す。
「おい、あれ…………」
「ああ、若頭の幽玄骸だ」
「まじでガキなのかよ」
「子供だが、舐めるなよ。二年前の抗争じゃ、あの方の指揮で敵組織が3日で消え去ったらしい。――――――全員残らず、この世からな」
「マジかよ」
「ああ、それからは黒澤組の悪魔……「黒の悪魔」なんて呼び名で、裏社会に名を轟かせてる。舐めた口を利いたら、魂まで吸い取られるぞ」
そんな彼らの話が耳に届いていたが、骸は気にせず先を急ぐ。
そうしてたどり着いた鉄の扉、その先には――――――――。
「敵組織の構成員です。情報を聞き出そうにも、一向に口を開かず…………」
「うん、分かってる。ねぇ、ここに書いてあるものを持ってきてくれる?」
「はい、只今」
構成員を走らせ、道具を持ってこさせる。
刃渡りが十分に大きい刃物が数本、紐、ロウソクとライター、カメラ。それらが乗せられる台車と共に、扉の中に入る。
「ああ?また拷問か?いくらやったって何も喋らねーぞ」
「拷問……ま、半分は正解かな?」
「半分………?」
「一応聞いておくけど、情報を喋るつもりはないんだね?」
「ああ、そう言ってんだろ?」
「なら仕方ない。……ねぇ、凌遅刑って知ってる?」
そう言いながら、椅子に拘束された男の指に紐を強く巻き付ける。その指の爪は、残らず剥がされていた。
「昔中国とかで行われていた処刑方でね、四肢の末端から少しずつ肉体を切り落としていくんだって。痛そうでしょ?」
「………俺を、殺すつもりか?」
「うん。君以外の構成員を捕らえた。これから君に行う凄惨な処刑をこのカメラで撮って、脅しに使う」
「そんなもの見せられても、誰も吐いたりしねぇよ」
「それはどうだろう?人間は理性という殻で本能を覆い隠しているが、一度その殻が破れれば、そこに残るのは己の利益しか考えられない獣だ。本当に、何も喋らないなんて信じられるかい?」
「…………」
男は沈黙する。
「大丈夫、簡単に殺したりしない。しっかりと紐で止血して、傷口は焼いて塞ぐ。ちゃーんと、ゆっくり……ゆっくりと、殺してあげるから」
「…………っひ」
数時間後、そこには指を数本切り落とされ、秘密を全て暴かれた男が弱々しく椅子にもたれかかっていた。
「全部……喋った………もう、殺してくれ」
「いいよ。最初からそのつもりだし。あと、君以外の構成員を捕らえたと言っていたね……あれ、嘘だから」
「…………そうかよ」
「最後に言い残すことはあるかい?」
銃口を額に押し付けながら、男に問いかける。
「……この、悪魔め」
その言葉に対し、骸は一発の銃弾をもって返答した。
骸は身を翻し、扉を開く。
「悪魔、か。―――――言われなくても、知ってるよ」
そんな僕にも、友人と呼べる人がいた。
その日も、彼の家に招かれて夕餉を共にすることになった。
暖かな光が窓からこぼれる、ごく一般的な民家。そこに入っていく。
「なんだ、遅かったじゃねーか。今日はお前の大好きな、ハンバーグだぞぅ?」
「はいはい、何時までそのネタこするのさ?」
「うふふ、この人も嬉しかったんですよ。骸くんが、初めて子供らしいところを見せてくれたんですから」
僕が初めてこの家でご飯を食べた時の献立がハンバーグだったのだ。
先日、好きな料理を聞かれた時、そんなエピソードも相まってハンバーグなんて答えたのが間違いだったかもしれない。それ以来、友人の
「子供っぽいのは、竜馬のほうだよ。この前だって、くだらないことで殴りかかって――――」
「あれは仕方ねーだろ!今でも許してねーからな……俺だって、俺だってぇ………一花にお嫁さんになるって言われたかった……!!」
少し前、竜馬の娘に「しょーらい、むくろくんのお嫁さんになるー!」と言われたのだ。
それを聞いた竜馬は、大人げなく激怒して僕に殴りかかってきた。
「なんですか、それ?私、聞いてませんけど?」
「あっ、いや……これは違うんだ!落ち着け、花奈!」
「今日のハンバーグ、竜馬さんだけ半分ですからね?」
「そ、そんな!?」
「は・ん・ぶ・ん、ですからね?」
「は、はい。ごめんなさい」
竜馬は裏社会でも名を轟かせる凄腕のくせして、家庭におけるヒエラルキーは最下層に位置している。最近は、明らかに外様である僕よりも扱いが雑になっているのが目立つ。
「ったく……」
「いい気味だー」
「なんだとこの野郎?」
暖かな日常。許されるはずもない、春の記憶。
それは、そう長くは続かなかった。これより間もなく、僕以外の全員が―――――死んだからだ。
新城会は、数年に渡る抗争の勝利者となり大幅に勢力を伸ばした。
その勢いは凄まじく、その当時に至っては東日本最大の勢力となっていた。
その日は西日本の最大勢力たる、至天連合との交渉日。各地でバラバラに勢力を伸ばすヤクザ一派を統合し、海外勢力に対抗しようとしていた。
そんな日だった。連合の末端組織に、花奈さんと一花ちゃんが誘拐され、殺されたという一報が入ったのは。
「竜馬、行ってはいけない」
「止めんじゃねぇ」
「いいや、止める。いくら君でも、単独で何の策もなく一つの組織を相手取るのは無謀だ。それに、今は連合との交渉中。君が今手を出せば、会は君を見捨て最悪の反逆者として始末することになる」
「だからどうしたってんだ?」
「それに、新城会内部の動きが怪しい。恐らく、花奈さんたちの情報をリークし、誘拐させたのはうちの裏切り者だ。本当の仇を取るには――――――――」
「んなもん、関係ねーってんだ!!……俺は、もう終わりなんだよ」
どれだけ正論を重ねようと、彼を止めるには余りにも軽かった。
「……頼む。行かないでくれ、竜馬」
だから、言葉と心を重ねた。それでも――――――――。
「……骸、てめーは裏社会に向いてねーよ。………もっと日の当たる世界で生きろ」
彼を止めることは、出来なかった。
それから数日後であった。
連合の組織が一つ消えたらしい。
そして…………相澤竜馬が処分された。その遺体は、徹底的に痛めつけられており、原形すら保っていなかった。
その数年後、僕はさらに成り上がり、一つの組を任されるまでに至った。
そしてようやく、友人を死に追いやった首謀者に辿り着いた。
「菊池さん……数年前の事件、覚えているよね?」
「……例の反逆者の件か?」
「うん。……それを引き起こしたのは貴方だ。そうだろう?」
「………貴様、あの男とは仲が良かったそうだな。復讐のつもりか?」
「いいや、違う。彼は優秀な人材だった。それをただ邪魔だからという理由だけで、君は喪失させた。君は、組織にとっての癌だ。生かしておけば、さらなる不利益を招く」
「………くっ、意趣返しのつもりか!?たかが小僧のくせに!!」
「なんとでも捉えるといい。どうせ君の人生は、ここでお終いだ。――――さようなら」
そう言って引き金を引いた。彼の脳漿が床に飛び散り、あっけなく生に幕を閉じた。
復讐ではない、と口にはしたものの………これはきっと復讐だったのだろう。
そんな資格は、僕にはないはずなのに。
一つの目標を終わらせて、次はどうしようかと考えた。
だが、何の解答も浮かばない。そうして、気づいたんだ。
結局、僕は―――――生きる意味など、持ち合わせていなかったのだと。
「じゃあ、死のうか!!」
それからは早かった。自分で苦しまずに死ねる薬剤を調合し、それを飲み干した。
死の瞬間、何も思わなかった。ただ、これで終わりだという、酷く冷たい達成感だけが胸の内を満たしていた。そして、目を閉じても――――――終われなかった。
目を覚ました時には、キヴォトスの路地裏にいた。気づけば、どれだけ生命活動を停止しても死ねない体になっていた。それが――――――――。
「それが、僕のこれまでだ」
おまけ ムクロくんのトラウマで打線組んでみた!
1 母親からの虐待
2 花奈と一花の死
3 母親に殺されそうになったこと
4 母親を自分で殺したこと
5 裏ホストで強制されて性的な行為に及んだこと
6 友人の死
7 友人が自ら死を選んだ=生きている自分よりも、死んだ妻と娘の復讐の方が大事だった
8 自分が死ねなくなったことに気づいた瞬間
9 自分の生に意味が無いと悟った瞬間
どういう話が見たいですか?今後の参考にしたいです。
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原作ストーリーに介入するムクロ
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最終章後のムクロや先生たちの話
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幽玄ムクロの過去(キヴォトスに来る前)