これも全部、碌にプロットを作らない作者が悪いんだ!!
気分転換に(今のところ)曇らせ要素なしのオリジナル小説書きました。興味ある人は是非。
そっちにプロットはあるのかって? 無いんだなこれが。
そう、それが――――――――。
「それが、僕のこれまでだ」
己の過去を語るムクロの顔は、こちらに感情を読ませない無表情であった。
ムクロの話は、私が想像していたものよりも遥かに暗く凄惨なものだった。
それを聞いた私の心は、ぐしゃぐしゃだ。
もっと早く聞くべきだったという後悔、その過去への憐憫と悲しみ、ムクロの傷に気づかなかった自分への怒り……色々な感情がごちゃ混ぜになって、まとまらない。
それでも、彼に伝えたいことだけはハッキリとしていた。
きっと、彼は自分が嫌いなんだ。嫌いで、憎くて、仕方ないんだ。
誰であっても受けるはずの無償の愛を受けられず、ようやく手に入れた友愛すらも喪って、
積み重ねた罪から、目を背けることも出来なくて――――――――。
「分かっただろう、先生?僕が一体どういう人間なのか。……分かったなら、もう放っておいてくれ。…………これ以上、僕に
それでも、例えどれだけ彼が自分を憎んでいたとしても………私は――――――――。
「嫌だ」
「………先生?」
「私は、君を放っておくことなんて出来ない」
「は?先生、一体何を言って――――――――」
混乱する彼に近づいて、その体を抱きしめる。
「ごめんね。私は、君に頼ってばかりで……君の痛みに気づかなかった」
「違う……違うだろ、先生。どうして、僕を嫌悪しない?……こんな悍ましい正体を隠して、ずっと偽善者面していたんだぞ………?」
「君を嫌いになんか、なれないよ。君は確かに過去に罪を犯したのかもしれない。でも、私が知っているのはキヴォトスに来てからのだけだ。何時も頼りになって、誰かを助けるために本気になれて、少し無茶をしがちな普通の男の子だ」
「違う、僕は―――――」
「君は、悪魔なんかじゃない」
ムクロの瞳が揺れる。
「君に起こったあらゆる不幸は、決して君のせいなんかじゃない。それだけは、譲れない」
「どう、して?」
「私が――――――君のことが大好きだから」
僅かにムクロの体が震えるのを感じた。
彼が自分を愛せないなら、私がその分愛する。
どれだけ彼が自分に罵詈雑言を浴びせようとも、私がその倍の数称賛する。
彼がいつか、自分を好きになれるように。
自分を悪魔だなんて思わないように。
「離さないよ、ムクロ。これからもずっと………私そばにいて?」
答えは聞かない。イエスだろうがノーだろうが関係ないから。
これはただのエゴの押し付けだ。大人としては、きっと恥ずかしいことだろう。
でも、耐えられないのだ。このまま彼が消えてしまうのが。彼が自分を否定し続けることが。
「駄目だ先生、僕なんかと一緒にいてはいけない。僕は容易く人を殺せる。人を傷つけても、なんとも思わないような人間だ。当然のように罪を重ねる――――――――」
「駄目、それ以上は禁止」
彼の頬を両手で包むようにして、彼の顔を捕まえる。
そして、彼と目を合わせて話す。
「君は、そんな人間じゃない」
「そんな訳が―――――」
「そんな訳あるの。君はちゃんと優しい子だよ。だから、こんなに心を痛めてる。誰にも傷ついて欲しくなかったんでしょう?誰のことも憎みたくなかったんでしょう?だから、自分を憎んでる」
「…………」
否定の言葉は帰って来なかった。
「それでも、君のことが好きな人はたくさんいる。だから、ほんのちょっとでもいいから…………自分を好きになってあげて?」
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嗚呼、本当に―――――。
本当に、信じられない人だ。
これだけ話しても、僕の正体に気づかないのか?
いや、気づいているのにこう言っているのだ。
こんなにも醜い僕の在り方を知っていながら、「それでも」とこの大人は言う。
僕はこれまで、あらゆる不都合は、あらゆる不幸は全て僕が引き起こしたのだと思っていた。
母が狂ったのも、母が死んだのも―――――――友の不幸も、友の死も―――――全て、全てが僕のせいなのだと。
でも、彼女はそうじゃないと云う。
本当にそうなのだろうか?
これまでの全てが、ただ間が悪かったのだと、運が悪かったのだと、巡り合わせが悪かったのだと言えるのだろうか?
もしそうならば――――――――。
この、背負うには余りに重く、目を背けるには余りに大きい十字架を、降ろすことが許されるのだろうか?
もし、今日――――この荷物を降ろすことが出来るのなら――――――――。
「僕は、ここに居てもいいのだろうか?」
「いいよ。ここに居て欲しいの」
瞬間、世界に色がついたような気がした。
先生の言葉を聞いて、古い友人の最期を思い出した。
あの時僕は、彼に捨てられたのだと思った。
彼らは僕を家族のように扱ってくれたけど、結局は本当の家族のようにはなれなかったのだと。
絶望した。僕は誰にとっても特別じゃないのだと思った。
けど、きっと違ったんだ。
『………もっと日の当たる世界で生きろ』
それが、彼の最期の言葉だった。
それはきっと、不器用な彼なりの――――――――。
「先生……退部届の受領は、まだだよね?」
「うん、まだサインしてないよ。ほら」
そう言って、僕の退部届を見せる先生。
「ちょっと手錠外して? 大丈夫、逃げたりしない」
先生は頷いて、僕に施された拘束を外す。
そして僕は、彼女の持っていた退部届をひったくるように手に取って――――――――。
「えいっ!」
――――粉々に破り捨てた。
「ムクロ…………!!」
「先生、もうちょっとここにいようと思う。だから、これからもよろしくね?」
「うん………!!」
感極まった先生は、またもムクロに抱きついた。
もう少しだけ、生きてみよう。
死ぬのはもう少しだけ、後でもいい。
きっと、この自己嫌悪が消えることは無いのだろう。
先生がこれだけ言葉を尽くしてくれても尚、僕は自分を好きにはなれない。
心を苛む希死念慮は、これから先も続いていくのだろう。
それでも、あと少しだけ。そう……死んでしまうまでは、生きていよう。
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ムクロが己の過去を語り始めるより、少し前――――――――。
シャーレには、「ムクロが見つかった」という報告を聞いた生徒たちが集まっていた。
あらゆる学区の、あらゆる立場の生徒たちが一堂に会する。キヴォトスにおいて極めて珍しい光景が、そこには広がっていた。三大校だけでなく、治安組織たるヴァルキューレや、アリウスやアビドスの生徒、所属なしの生徒も複数名見られる。
エデン条約を締結して尚、犬猿の仲であるトリニティとゲヘナが同じ場所に集まっていながら、何の衝突も起こっていないのは、それほどに状況が逼迫していたが故だろう。
そんな中、一名が不穏な動きをしていた。
「ちょっとコタマ? それ、何を聞いているの?」
パソコンの画面を見つめながら、ヘッドホンから聞こえてくる音に耳を澄ましていたコタマに、チヒロが問いかける。
「別に、ただの音楽だけど………」
露骨に目を泳がせながらそう答える。
「さっき、あの部屋に盗聴器仕掛けてたよね?」
「……うぐっ」
あの部屋とは、現在先生とムクロが二者面談している部屋のことである。
チヒロは、何かと盗聴癖のあるコタマが怪しい動きをしているのを見逃さないように監視していたのだが……その懸念は見事に的中したようだ。
「流石に怒られるよ? というか、私が怒る」
「……でも、今回ばかりは許されると思いませんか? ムクロさんは方々に迷惑をかけた訳ですし、私たちにも何故あのようなことをしたのかを知る権利はあるはずです」
「それは……まぁ、否定できないけど」
「部長も知りたいでしょ?」
「……まぁ、ね」
「部長にも聞かせてあげますから、今回ばかりは見逃してください」
本来であれば、ここは断固として拒否し、盗聴を辞めさせるべきだろう。
しかし、目の前にぶら下げられた餌があまりにも魅力的だった。
「……先生たちの話が終わったら、直ぐに回収するからね」
故に、抗えなかった。
今は先生たちを邪魔する訳にもいかないし、今すぐに回収するべきじゃないよね。と自分に言い聞かせながら、コタマの提案を了承したチヒロ。
「おや、何をしているのですか?」
そこに現れるのは、超天才清楚系病弱美少女ハッカー(自称)明星ヒマリであった。
ヒマリは二人の話を聞き――――――――。
(ま、流石に止められるか)
「いいですね! 今回のムクロさんの行動には、如何に海よりも深い慈愛の心を持つ私でも、怒りを抱かずにはいられませんでしたから。彼の秘密の一つや二つ、聞いてしまっても良いでしょう」
―――――――普通に乗っかった。
「あれ、ヒマリ先輩たち……何をしてるんですか?」
「ユウカさん」
そうして、どんどん話は広がっていき――――――――。
「じゃあ、パソコンから音声を流しますね」
異なる学校、異なる学年の生徒が分け隔てなく、一つのパソコンから流れる音声に耳を傾けるという珍妙な光景が広がることになった。
彼女たちはまだ知らない。
秘密を暴くことは、想像より遥かに甘美で恐ろしいということを――――――――。
どういう話が見たいですか?今後の参考にしたいです。
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原作ストーリーに介入するムクロ
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最終章後のムクロや先生たちの話
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幽玄ムクロの過去(キヴォトスに来る前)