お前のミスでした―――。 作:責任とれやクソボケ
今回は先生メインです。
今日も私はシャーレの部室に向かう。
キヴォトスに来てから随分と時間が経った。様々な事件を乗り越えて、私はキヴォトスにも馴染んできたと思う。生徒たちと過ごす日々は、大変だと思うこともあるけど、それ以上のに充実していてとても楽しく過ごせている。
キヴォトスに訪れた当初は、たった一人でキヴォトスの生徒たちを導かなければいけないという重責と、その仕事量に潰れてしまいそうになっていたけれど、ずっと隣で支えてくれる彼のおかげで私は今も先生として立っていられる。
最初の印象は、とても変わった子というものだった。なんせ、出会い方が出会い方だ。家を無くしてしまったという彼をシャーレに連れて来て、学校にも通っていないというのでシャーレの部員になってもらった。当時は当番の生徒が来ることも少なかったので、彼が仕事を手伝ってくれてとても助かった。
生徒たちのことは、皆大切に思っているけれど………彼、ムクロに向ける感情は、他の生徒たちに向けるものとは違う特別なものだと思う。そんな感情を向けるようになったのは、多分あの日のムクロの言葉を聞いたときからだろう。
あの日私は、出張から帰ってきた後に溜まっていた書類を徹夜で片づけていて……そのまま、過労で倒れてしまった。幸い、仮眠室で寝て体調はある程度回復したが、目を覚ました私は「急いで仕事を終わらせないと」なんて焦って、すぐさま仕事を再開しようとした。そんな私を、無理矢理に寝かしつけて彼は言った。
『先生、君は少し無茶をし過ぎてしまう癖があるようだけど、それはいけない。君はもっと、誰かを頼ってもいいんだ』
『でも、私は先生だから――――』
『ああ、そうだね……君は先生だ。けれど、何でも一人でこなせてしまうような
沈黙する私を見て、彼は私が肯定したのだと捉えて、言葉を続けた。
『頼りないかもしれないが、僕はこれでも男だ。女性一人を支えられるくらいの甲斐性はあるさ。
残っていた仕事は、私が責任を持って終わらせる。だから、君は安心して眠っていたまえ。何、もし仕事が終わらなくても、私が一緒にリンちゃんに謝ってあげるとも!』
彼は笑って仮眠室を去っていった。
仮眠室に一人取り残された私は、生徒に説教されてしまったと恥ずかしくなって、でもなんだかとても心が暖かくて………顔が熱くて、とても眠れそうに無かったけれど、どこか安心してしまった私は気づいたら眠っていた。
朝日が昇ってきた頃に私は目を覚ました。部室に向かうと、既に仕事は終わっていて―――――
『ほら、大丈夫だったろう』
なんて、得意げに笑うムクロがいた。
それからというもの、私はムクロをただの生徒として見ることが出来なくなってしまった。
困ったものだ……先生として、生徒には平等に接しなくてはいけないのに。
ムクロのことを考えていたせいか、頬が少し熱くなる。その反面、部室に向かう足取りは軽くなっていた。ムクロはもう、部室にいるだろうか?
「おはよー!」
扉を開けながら挨拶をしたものの、返事は帰ってこない。まだムクロは来ていなかったのか、と思っているとデスクの上にある一枚の紙に目がいく。他の整えられた書類たちとは違い、一枚だけポツンとデスクの上に鎮座していた
「………た、退部……届………?」
脳が理解を拒む。記された名前が何かの間違いであってほしいと願い、何度も読み直す。
「ム、ムクロ……何で?」
だんだんと理解が追いついてきた私は、涙がこぼれそうになる目を拭って走り出す。
まだシャーレにはいるかもしれない、そう願ってシャーレの居住区まで走る。何度も転びそうになりながら、ムクロの部屋に向かって………ドアノブに手をかける。鍵はかかっていなかった。扉を開くと―――――――そこは、もぬけの殻だった。
元々私物をあまり持たない子だったけど、その私物が殆ど消えていた。生活感の消え去ったその部屋を見て、へたり込む。
「な、なんで?どうして?………何処に行っちゃったの?」
モモトークでメッセージを送っても、電話をかけてみても、何も帰ってこない。
パニックになりかけた私を、アロナの声が正気に戻した。
『先生!落ち着いてください!他の学校の生徒たちに、ムクロさんを見ていないか聞いてみましょう!もしかしたら、ムクロさんを見た人がいるかもしれません!』
アロナの提案に従って、各学校の生徒たちに尋ねてみる。でも、望んだ答えは帰ってこなかった。
『見ていませんが………ムクロさんに何かあったのでしょうか?』
『ゲヘナには、来ていないと思うけど』
『うへ~アビドスには来てないけど、ムクロに何かあったの?』
「もしかしたら―――――――」
一つ、心当たりがあった。
あいつが、ムクロを狙っていることは知っている。もしかしたら、あいつに脅されてシャーレを去ることになったのかもしれない。
『クックック……私に電話とは、珍しいこともあったものですね、先生?』
「黒服、ムクロを知らない?」
『幽玄さんですか?』
「貴方がムクロを脅して何処かに連れて行ったんじゃないの?」
『クックック……何があったかは知りませんが、いきなり疑われるのは心外ですね』
「貴方の仕業じゃないんだね?」
『ええ、私は何もしていませんよ』
「そう…………もし嘘だったら、許さないから」
電話を切る。
黒服に拐かされた訳では無いことは喜ばしいことだが、これでムクロの居場所は見当もつかなくなってしまった。それに、強制された訳じゃないなら、自分から出て行った訳で………。
「わ、私……嫌われちゃったのかな?ずっと、頼りっぱなしだったから?」
どうしよう、ムクロに嫌われていたら………私は…………。
『そんなこと無いですよ、先生!!ムクロさんが先生のことを嫌いになるなんてありません!!』
『肯定。幽玄ムクロが先生を嫌厭する可能性は限りなく低いかと』
「で、でも………」
『提案。幽玄ムクロに直接問うべきではないでしょうか?』
『そうです!ムクロさんを見つけて、直接問い詰めてやりましょう!』
「そう、だね。ムクロを探そう」
理由も何もわからないまま、お別れなんて………厭だから。
ぜったい、ぜったいに………見つけ出して、連れ戻す。
そう決意した先生の瞳は、暗く澱んでいた。
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~一方その頃、幽玄ムクロは~
「んー!仕事が無いっていうのはいいものだね~。ひとまず、何処か適当なアパートでも借りて、その後は…………お金も溜まってるし、暫く遊ぼうかな!!」
先生の手前、アルコールを飲むわけにもいかなかったし、久しぶりに何か飲みたいなー。
あっそうだ!折角だし、黒服さんを誘って飲みに行こうかな!
スマホを取り出して、黒服に電話をかけるムクロ。
「黒服さん、久しぶりに飲みに行こうよ」
『……幽玄さん、シャーレにはいないのですか?』
「ん?いないけど、それがどうかしたの?………そんなことより、飲み会する?」
『ええ、色々と伺いたいことも出来たので、是非』
「そっか!じゃあ、場所はいつも行ってたところでいいよね?」
『ええ、構いません』
「それじゃあ、待ってるねー」
そう言って、電話を切る。
「いやー久々のお酒だなー!なんなら、急性アルコール中毒になって死んじゃうまで飲んじゃおうかなー!」
実に呑気に今夜の飲み会をセッティングするムクロであった。
散々甘い言葉を吐いておいて何も言わずに消えるムクロ。これもう何かの犯罪に抵触するだろ。
どういう話が見たいですか?今後の参考にしたいです。
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原作ストーリーに介入するムクロ
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最終章後のムクロや先生たちの話
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幽玄ムクロの過去(キヴォトスに来る前)