デジモンアドベンチャー Re:Life   作:ステルス兄貴

20 / 21
二十話 仮面空間の戦い

 

天空樹での死闘を制し、ついに五つ目のタグを手に入れたタイチとエアロブイドラモンのゼロ丸。

 

時を同じくして、激戦の末にホスピタウンを防衛し抜いたミコトとメタルグレイモンとの絆で超進化を遂げて、完全体のギガドラモンへと進化したデビドラモン。

 

戦闘後に無事に合流を果たした二人のテイマーとパートナーデジモンたちは、すべての元凶たる魔王デーモンの野望を打ち砕くため、敵の本拠地デーモン城へと歩みを進めていた。

 

その過酷な道中、彼らは次元の歪みに巻き込まれて人間界から迷い込んでしまった少女・レイを救出する。

 

閉ざされた「ゲート」を開き、元の世界へ帰るため――そして二つの世界の未来を守るため、レイもまたタイチたちと共にデーモン城へ向かう決意を固める。

 

彼女が自分たちの命を狙う冷酷な天才テイマー・彩羽ネオの妹であるとは知る由もなく……。

 

一方、不気味な黒煙を上げるデーモン城の最奥では、世界の理を破壊する最凶の「超究極体」が産声を上げていた。

 

天空樹から生き延びたネオは、タイチたちを確実に抹殺すべく、究極体を操る三人の刺客「エイリアスⅢ」を解き放つ。

 

迫り来るかつてない脅威。

 

デジタルワールドと人間界、二つの世界の命運を懸けた最終決戦が、今まさに幕を開けようとしていた!

 

 

デーモン城の超究極体の卵が育っている部屋、そこに椅子を構えてドンと構えているネオの元に三人のテイマーが現実世界よりやって来た。

 

一人は背の高い男の子。

 

一人は派手でけばけばしい恰好をした女の子。

 

そして最後は仮面を被った背の低い男の子。

 

「エイリアスⅢ…先程チャットで話したように超究極デジモン、アルカディモンが遂に誕生した。つまり我々の計画が完成へと近づいているということだ。だが、この世界にはそれを邪魔しようとする悪のバグテイマー共が居る。忌々しいことに俺たちの計画を止めようとこのデーモン城に向かってきている」

 

ネオの後方にあるモニターにタイチとゼロ丸、ミコトとギガドラモンの姿が映し出される。

 

「さしあたってはこいつらを止めるのがお前たちの仕事だ。その間に俺はこのアルカディモンの育成を行う。相手のテイマーは二人だ。だから二人出てそれぞれ一対一で相手して貰うことになる。さあ、誰が行く?」

 

すると仮面の男と露出度の高い服に身を包んだ女の子が前に出て来た。

 

「ほう、お前たちがやってくれるのか?」

 

「ええ、私はギガドラモンとテイマーの方をやらせてもらうわ。調べたところ八歳の子供なんでしょう?ちょうどいい獲物だわ」

 

『フッ、デハ、ボクガエアロブイドラモントヨバレルカンゼンタイノホウヲアイテニスルヨ。ショウリツ100%テイマートヨバレテイヨウトモ、ワタシのモンスターニカカレバアカゴドウゼン、アラタナリソウキョウヲソウゾウスルタメニ』

 

二人の決意を聞き、ネオはニヤリと嗤う。

 

「そうか‥期待しているぞ、シグマ、マリ」

 

『リョウカイ』

 

「任せといて」

 

シグマとマリはタイチとミコトを迎え撃つためにデーモン城を後にした。

 

そして残るもう一人の少年は何も言わぬままその部屋から出ていき、全員が居なくなったのを確認してネオは静かにアルカディモンの元へ向かった。

 

「待っていろよ、アルカディモン。すぐにでも美味しい餌を与えてやるからな」

 

「ギチ…ギチ…」

 

ネオの言葉を理解しているのかアルカディモンは返事をしているかのように声を上げた。

 

エイリアスⅢの内、二人のテイマーがタイチとミコトの迎撃に向かっているとは知る由もなく、タイチたちは新たに加わったレイと一緒に夕飯の準備をしていた。

 

デーモン城近くの荒野に立ち上る不気味な瘴気が、夕暮れの空を紫黒に染め上げていく。

 

鬱蒼とした岩場の陰に身を隠すようにして、タイチたちは小さなキャンプを張っていた。

 

パチパチと音を立てて燃える焚き火の光が、一同の顔をオレンジ色に照らす。

 

「よーっし! 特製・デジ特大肉焼き、いい感じに火が通ってきたぜ!」

 

タイチが大きな骨付き肉(デジタルワールドの野生デジモンが落とした食料データだ)を器用にひっくり返しながら、満足げに鼻を鳴らした。

 

「わーい!!夕飯だ!!夕飯だ!!」

 

その香ばしい匂いに、隣に座るゼロ丸の長い尻尾が左右に激しく振られる。

 

「こらゼロ、これはみんなの分なんだからな。特にレイは人間界から来たばかりでお腹もペコペコだろうし、多めに分けてやらねぇと」

 

タイチに話を振られ、少し離れた岩に腰掛けていたレイはハッと顔を上げた。

 

彼女の前には、ミコトが器用にナイフで切り分けた乾燥果実や、温かいスープの入ったクッカーが並べられている。

 

ガーボはホスピタウンで新しく支給されたデータの入ったバックパックを出した。

 

これは食器やコンロなど使うアイテムをフロッピーディスクの中に保存し必要な時に差し込むことで実体化して取り出すことが出来る。

 

「へぇ~凄いわね。これ全部このバッグの中に入っているの?」

 

「ああ、全部データだからな、コンパクト化できるようにな。で、使わないものはこうして中に入れて…ほら!」

 

マントを入れて、フロッピーディスクのデータとして取り出す。

 

「わあ、凄く便利ね」

 

元の世界では決して見られない非現実的な技術に驚くレイ。

 

「はい、どうぞ」

 

スープが入った器をレイに渡すミコト。

 

「あ、ありがとう……でも、本当にこんな化け物の……いえ、デジモンの世界の食べ物なんて、人間が食べてもお腹を壊したりしないの?」

 

不安そうにスープを見つめるレイに、ミコトがふわりと優しい微笑みを向けた。

 

「大丈夫ですよ、レイさん。こっちの食べ物も、口に含めばちゃんと私たちの身体に必要な栄養(データ)になってくれますから。ほら、このスープ、ちょっと甘くて美味しいですよ」

 

「そう、なんだ……ミコトちゃんは、本当にしっかりしているのね。私よりずっと年下なのに、こんなに落ち着いていて……」

 

レイはおずおずとスプーンを取り、スープを一口啜った。

 

途端に口いっぱいに広がる優しい甘さに、固くなっていた表情が自然と綻んでいく。

 

「……本当。美味しい」

 

「でしょ? ミコトは料理も上手なんだぜ。俺なんていっつも肉を焼くくらいしか能がないからさ、旅の仲間にミコトが加わってくれて、本当に助かっているんだ」

 

タイチが笑うと、ミコトは少しだけ頬を赤くして「もう、タイチさん、大袈裟です」とはにかんだ。

 

その傍らでは、巨大な鋼鉄の竜であるギガドラモンが、レイを怖がらせないように少し距離を置き、物静かに身体を丸めていた。

 

しかし、その鋭いデジタル色の瞳は、周囲の警戒を怠ることなく絶えず動いている。

 

スープで身体が温まってきたせいか、レイの心も少しずつ解きほぐされていくようだった。

 

「レイさん、それペンダントですか?随分と変わったデザインですけど‥‥?」

 

食事をしている中、ミコトがレイの首から下げているペンダントに気づき、彼女に尋ねる。

 

「ええ、でもこれ不思議なのよね。現実世界ではなかったんだけど、ここに来た時に私の隣にあったの‥‥」

 

「デジヴァイスやデジタマ‥‥ではないですね。デジモンの落とし物かな?」

 

ネットサーフ村でもゴンはホエーモンからメダルを貰いソレを首から下げていた。

 

なので、レイが今首から下げているペンダントも、もしかしたらデジモンが持っていたアクセサリーの可能性もある。

 

「今日、この世界に来たばかりで、色々と大変な目にあって疲れているのに、俺たちの旅に付き合わせちまってすまなかった。レイの安全を確保するなら、俺かミコトがホスピタウンに送った方が良いんだが、あいにくと時間がなくてな‥‥」

 

デーモンが人間界への侵攻を考えているというのであるならば、一分一秒とも時間を無駄には出来ない。

 

「大丈夫よ、タイチ君からデーモンの事を聞いてこのまま放っておくと、私たちの世界も危ないかもしれないって聞くと、急がないといけないって理解できているから‥‥疲れに関しても、人間世界に居た時は怪我をしていたんだけど…この世界に来てからは健康そのもの。だからちょっと休めば大丈夫よ」

 

「えっ?怪我?」

 

レイの『怪我』と言う言葉にミコトがピクッと反応する。

 

「うん。でも、この世界に来たらどういう訳かその怪我も治っていて‥‥」

 

(そう言えば、私もデジタルワールドに来てから持病の発作が起きていない‥‥)

 

(この世界だと人もデータになっているから怪我や病気もないのかな?)

 

レイが負った人間界での怪我の具合がどれくらいの怪我なのかは不明であるが、ミコト自身もベッドからなかなか出られず、辛い発作が起きていた病弱な身体であったが、デジタルワールドに来てから不思議とその発作が起きていない。

 

データとなった時、怪我や病気のデータは反映されることはないのか?

 

しかし、ヒーリングの使用での疲労感と鼻血、意識障害などは出る。

 

ミコトが考えを巡らせていると、

 

「でも、タイチ。時間がないのは分かるが、レイがついて来るのは痛手じゃないか?」

 

ガーボがこの旅にレイを連れてのデメリットを指摘する。

 

「どういう事だ?ガーボ」

 

「デーモン城はこの近くだ。これからより多くの戦いに巻き込まれていくだろう。それこそデスモンのような究極体クラスとの戦闘が多くなるかもしれない」

 

「心配し過ぎだぞ、ガーボ。ゼロもミコトのデビドラモンも完全体に進化できたんだから」

 

「そうかな‥‥?せめてレイにパートナーとデジヴァイスがあればな‥‥」

 

敵はあまりにも強大過ぎる。

 

いくらタイチとミコトのパートナーが完全体に進化出来たとは言え、相手は究極体‥‥

 

ガーボが不安になるのも分かる。

 

「‥‥」

 

ガーボの言葉の指摘を受けてレイ自身も俯いてしまう。

 

「レイさん、心配しないで下さい。タイチさんとゼロ丸さんはこれまでどんな強敵も倒してきたんですから」

 

「そう言うミコトだってデジモンの街を救ったんだ。俺たちが居れば、どんな奴が立ち塞がろうと俺たちが倒す!」

 

二人の自信満々の笑みを見て、レイはこの人たちと一緒なら大丈夫だと安心した。

 

「ええ、そうね。有難う、タイチ君、ミコトちゃん」

 

するとどこからともなく何者かの素早い足音が聞こえて来た。

 

「っ!?タイチ、ゼロ丸、ミコト、ガーボ‥何かこっち来る」

 

ギガドラモンがその気配を察知する。

 

「デーモン軍か!?」

 

タイチたちが警戒する中、その者はタイチたちの前に止まる。

 

見た目はイガグリで背中には刀を差し鎖帷子を装着している、忍者のような格好をしたデジモンだ。

 

「お待ちくだされ、拙者の名前はイガモン!!ホーリーエンジェモン様の命により、デーモン城で秘密裏に動いていたデジモンでござる!!」

 

「ホーリーエンジェモン様の!?」

 

「デーモン城でスパイ活動をしていたのか‥‥?」

 

ガーボとゼロ丸はイガモンの仕事に驚く。

 

「なんか、キャラが濃いな‥‥なぁ、ミコト‥この手のタイプのデジモンをどっかで見たことないか?」

 

一方でタイチはイガモンに似たデジモンを何処かで見たようなデジャヴを覚える。

 

「多分、STARCITYのスターモンさんではないでしょうか?」

 

「ああ、そうだ!!アイツだ!!」

 

ミコトの指摘を受けて思い出すタイチ。

 

「ちょっ、拙者をあの様な目立ちたがり屋と一緒にしないでもらいたい!!って、拙者は君たちにある報告を知らせるために来たのでござる」

 

「報告?」

 

「デーモン城にて、超究極体のデジモンが誕生。デーモンはテイマーを使い其奴の育成を開始、しかもそのテイマーは育成の時間稼ぎとして君たちに刺客を送り込んだ」

 

「「「「「何だって!?」」」」」

 

「超究極体のデジタマがもう孵化しちまったのか‥‥」

 

「その超究極体のデジモンの育成をするテイマーって‥‥」

 

「ああ‥十中八九、ネオの奴だ」

 

「えっ?ネオ‥‥」

 

タイチの口から出た『ネオ』と言う名前にレイはピクッと反応した。

 

「イガモン、時間稼ぎに送られてくる刺客ってやっぱり完全体デジモンなのか?」

 

ギガドラモンがイガモンに送られてくる刺客の正体について尋ねる。

 

「いや、君たちと同じ人間だ」

 

「人間!?」

 

「デーモン側に居るって事はネオの知り合いだろうな‥‥これはタグ集めの時よりも厄介だぜ‥‥」

 

メタルファクトリー、天空樹での戦いから野生のデジモンを相手にするよりもテイマーのパートナーデジモンの相手の方が苦戦する。

 

しかも相手のパートナーデジモンのランクは最低でも完全体クラスと見ていいだろう。

 

ネオの知り合いと言う事でそのテイマーも無限ジョグレスの戦術を使ってくるかもしれない。

 

「人間たちは『エイリアスⅢ』と呼ばれ、その内の二人が今、君たちの下に向かっている。もしも超究極体の育成が本格的に進みクラスが進んで行くと、ホーリーエンジェル城への侵攻を開始するかもしれぬ」

 

「ホーリーエンジェル城を!?」

 

「ネオの奴、そこまで企んでいたか‥‥」

 

「拙者はホーリーエンジェル城にこのことを知らせて来るでござる!!君たちは一刻でも早くそいつらを蹴散らしてデーモン城に向かってくれ!!事態が最悪になる前に何とかしなければならぬ!!」

 

「ああ、分かった!!」

 

「気を付けて下さい、イガモンさん」

 

「ありがとう‥君たちも御武運を‥‥ではっ!!」

 

イガモンはデーモン軍のホーリーエンジェル城振興の可能性を知らせるために電光石火の如くホーリーエンジェル城へ向かった。

 

イガモンの背中を見送り、全員顔つきが変わった。

 

「こうしちゃいられないよ、タイチ」

 

「ああ。このまま一気にデーモン城に乗り込むぞ」

 

「はい!!」

 

「おう!!」

 

「うん!!」

 

「‥‥」

 

タイチたちはデーモン城に乗り込む為に気合を入れるが、レイだけは何だか浮かない様子だ。

 

「?どうかしましたか?レイさん」

 

ミコトがレイに声をかける。

 

「えっ?」

 

「なんだか顔色が悪いみたいですけど?」

 

「そ、そんなことないよ」

 

必死に体裁を取り繕うレイにミコトは首を傾げる。

 

その時、タイチたちに何者かが攻撃を仕掛けて来た。

 

タイチたちの居る場所を囲むように何枚かの茨が刺さった。

 

「な、何だ!?これは!?」

 

「ホーッホッホッホ、あんたたち、逃がさないわよ♪」

 

『フフフ、ヨウヤクデアエマシタネエ』

 

振り向くとそこには二体のデジモンと二人の人間が居た。

 

さっきイガモンが言っていた『エイリアスⅢ』だろう。

 

「あれはピエモンにロゼモン!!どちらも究極体のデジモンだ!!」

 

二人のテイマーが連れているパートナーデジモンを見て、ガーボが声を上げる。

 

「お前たちがネオに協力しているエイリアスⅢか!?」

 

タイチが確認する様に尋ねると、男の方が手にしたモバイルパソコンのキーボードを打ち始める。

 

すると、男の首元に装着しているスピーカーから電子音が鳴る。

 

『ソノトオリ。ボクノナハ、シグマ。ネオトハオナジリソウヲキョウユウスルドウシサ』

 

「そして私の名は豪徳寺マリ♪ネオくんから貴方達たちを始末するよう仰せつかっているのよ」

 

『カレノイダイナルケイカクノジャマハサセナイ。ココカラハイッタイイチデアイテシテモラオウ。ヤガミタイチ、ソシテゼロ‥オマエノアイテハコノボクダ』

 

「そしてそこのチンチクリンのお嬢ちゃんの相手は、わ・た・し」

 

「ち、チンチクリン‥‥」

 

ミコトとしては、初めて投げられた言葉であり、顔を引き攣らせながらリアクションに困る。

 

「‥‥場所を変えてもいい?」

 

「良いわよ、私としても余計な邪魔が入らない方が好都合だわ♪」

 

ギガドラモンの技をその性質上、広範囲にわたるので、この場で戦うとゼロ丸やタイチ、ガーボやレイを巻き込んでしまう恐れがある。

 

マリの許可も出たので、ミコトとギガドラモン、マリとロゼモンは場所を移動した。

 

 

『サテ、余ケイナジャマハイナクナリマシタ。サア、ヤガミタイチ、ボクトタタカッテモラウヨ。イケ、ピエモン!!バグヲデリートスルノダ!!』

 

「了解」

 

「タイチ、ゼロ、気をつけろ!!相手は究極体だぞ!!」

 

「ああ、分かっている」

 

「フフフフ‥‥」

 

ピエモンが不敵な笑みを浮かべると、その両手から不気味な磁場のようなエネルギーが放射状に広がった。

 

「マスクズ・スクエア!!!」

 

「えっ?」

 

「な、なんだ!?」

 

「きゃっ!!」

 

次の瞬間、タイチ、ゼロ丸、レイ、ガーボの身体がフワリと宙に浮き上がった。

 

周囲の荒野の景色がグニャリと歪み、まるで万華鏡かワープホールの中のような、不可思議で幾何学的な異空間へと変貌を遂げる。

 

「こ、ここは!?」

 

周囲を見回し、タイチが警戒の声を上げる。

 

『ココハボクノセカイサ』

 

空間のどこからともなく、仮面を被った少年――シグマの冷徹な声が響き渡った。

 

「なにっ!?」

 

『ココハ、ボクノイノママニナルマスクズスクエアー……コノクウカンデハキミタチノドンナテモツウヨウシナイ』

 

「へっ、ふざけるのも大概にしろ!!」

 

ゼロ丸が空を蹴り、ピエモンに向けて渾身のストレートを放つ。だが――。

 

「ふふふ、あなたの攻撃は私に当たらない」

 

ゼロ丸の拳がピエモンを捉える直前、ピエモンの姿がフッと掻き消え、全くの無傷でゼロ丸の背後に出現した。

 

「えっ!?」

 

ゼロ丸が驚きつつも振り返りざまにもう一度パンチを繰り出すが、ピエモンはまたしても姿を消し、今度は頭上の遥か高みから見下ろしていた。

 

「ほほほ、どこを狙っているのですか? 私はここですよ?」

 

「ちぃっ、ボクのスピードじゃ奴に届かないって言うのか!?」

 

完全体のエロアロブイドラモンとなりスピードには自信がある筈のゼロ丸の高速の拳がピエモンにはかすりもしない。

 

この事実にゼロ丸は焦りが隠せない。

 

「な、なんて高速で移動するんだ‥‥姿が全然見えなかった‥‥」

 

ガーボが震える声で呟くが、その動きを冷静に観察していたタイチの眼差しは鋭かった。

 

「いや、速く動いているんじゃない。奴は……ワープしているんだ」

 

「えっ」

 

「ワープだって!?」

 

「‥‥」

 

タイチの推測にレイとガーボは驚愕する。

 

『フフフ、ダカライッタデショウ? コノクウカンボクノイノママニニナルト……』

 

シグマの声が、嘲笑を含んで空間に木霊する。

 

「おやおや、もうお仕舞ですか? では、今度はこっちの番だね……トランプソード!!」

 

ピエモンの背中から、鋭利な四本の剣が抜き放たれ、ゼロ丸へと猛スピードで飛来する。

 

「よけろ、ゼロ!! 上だ!!」

 

「了解、タイチ!!」

 

ゼロ丸は持ち前の反射神経で剣の軌道を見切って躱す。

 

だが――躱し終えた直後、何故かその目の前に剣が待ち構えており、そのままゼロ丸の身体を容赦なく切り裂いた。

 

「ぐあああッ!!」

 

「何!? ピエモンだけじゃなく、剣まで移動しただと!?」

 

『ククク‥ボクノクウカンカラハニゲラレナイヨ』

 

「それ、もう一度トランプソード!!」

 

「ゼロ、今度は右だ!!」

 

タイチの必死の指示に従いゼロ丸は右へ飛ぶが、剣はまるで意思を持っているかのように空間を跳躍し、再びゼロ丸に直撃する。

 

「うぐぅッ!!」

 

「剣はどれもゼロを追うようにワープしてくる! どうなっているんだ!? ホーミングミサイルのように追撃しているとでも言うのか!?」

 

「ハハハハハ!! 私の剣で踊れ!!」

 

(もしかして‥‥)

 

状況の異常さに気づいたタイチは、ふと口をつぐみ、敢えて次の指示を出さなかった。

 

「くっ‥‥」

 

すると、飛来した剣をゼロ丸はギリギリではあるが回避してみせた。

 

「避けた……!!」

 

タイチの頭脳がフル回転し、一つの恐るべき仮説に行き着く。

 

(やはりそうか……俺が声に出して指示を与えなかったら、剣はその方向に先回りしない。ということは……)

 

「あいつの剣は、俺の『指示』を聞いてワープしているということだ!」

 

「はっはっは! よく気づいたな。だが攻撃もまともに出来ずにいつまでよけ続けるつもりだい?少しずつ切り刻まれるのがお望みの様だな……?」

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥」

 

ピエモンは剣を投げるだけだが、度重なる回避とダメージで、いくら完全体であるゼロ丸は息が上がり始めていた。

 

(それならば……アップリンク!!)

 

タイチは声を出さず、デジヴァイス01を操作して『左に動いてピエモンに近づけ』という電子コマンド(指示)をゼロ丸に直接送った。

 

「そうか! デジヴァイス01で指示を送れば、ピエモンたちには聞こえない!」

 

タイチの声でピエモンの剣がワープするなら声を出さないデジヴァイス01からのアップリングならば、声を出さずにゼロ丸へ指示を送れる。

 

「――残念だっなな」

 

だが、ゼロ丸が動いた先には、すでにトランプソードが待ち構えていた。

 

「何!? 一体どうして? まさか……デジヴァイスの指示でさえも!?」

 

「つまり……タイチの指示は、全てこの空間ではお見通しということか!?」

 

「そんな!!」

 

タイチはギリッと奥歯を噛み締めた。

 

タイチのデジヴァイス01の指示は、この空間ではシグマのパソコンにハッキングされて筒抜け状態となるようだ。

 

「くそっ……このままじゃ、俺の指示が逆にゼロを傷つけるだけだ。ゼロに一人で戦わせるしかないというのか?」

 

「バカなこと言うなよ、タイチ!!相手はテイマーが居る究極体なんだぞ!」

 

ガーボが叫ぶ。

 

「ゼロは確かに完全体のエアロブイドラモンにはなったけど、タイチの指示がなければ太刀打ちできないんだ!!」

 

シグマの声が、勝利を確信したように響く。

 

『ドウダイ?コノマスクスクエアデハ、キミガニュウリョクスルシジハスベテボクノモトヘヒョウジサレル。ドウアガイテモ、キミタチニカチメハナイ!』

 

絶対的な八方塞がり。

 

タイチはデジヴァイスを握りしめ、冷や汗を流した。

 

(ちぃっ、ならばどうやって奴を倒す? ゼロにコマンドを送れば動く位置を読まれる……だが、俺の指示なしでは究極体には勝てない!)

 

「ゼロ……タイチ……」

 

ガーボが不安げに見上げる中、シグマの非情な声が続く。

 

『フフ‥‥オトモダチドウシ、セイゼイシンパイシアウガイイ』

 

「悩んでいる暇はないぞ!!それっ!!」

 

ピエモンがまた剣を投擲してくる。

 

ゼロ丸は自分の意思で剣を避ける。

 

タイチのコマンドがないので、剣を避ける事が出来たが、やはりギリギリだ。

 

『キミノモンスターハニゲツヅケルシカミチハナイ。モシ、イドウスルノヲヤメタラ、ソノトキハジゴクガマッテイルヨ』

 

「なにっ!?」

 

「へっ、そんな脅しなどボクには通用しないぞ!! Vブレスア……!」

 

『オロカナ……』

 

ゼロ丸が必殺技を放とうとした瞬間、それよりも早く、ゼロ丸の身体にトランプソードが深々と突き刺さった。

 

「ぜ、ゼロ!!!」

 

「う、うぐぅ……ぐああ……ッ!」

 

「まさか……剣をゼロの体に直接ワープさせたのか!?」

 

ピエモンが嘲笑うように肩を揺らす。

 

「ラッキーでしたね。僅かでもずれていれば致命傷になっていたでしょうからね。さあ、ゲーム続行です。ふはははは!!そうやってライフが尽きるまで逃げ延びるが良い!! どこへ行こうと、私の剣が追い続ける!!」

 

「動きを止めるな、ゼロ!!」

 

傷つきながらも必死に空を駆け回るゼロ丸を見つめながら、タイチはシグマが潜むであろう虚空をキッと睨みつけた。

 

「おい、シグマ!! マスクスクエアはいかがですか? かなり楽しいでしょう? ってか!?」

 

タイチの挑発に、シグマは無言を返す。

 

「お前はどうなんだ? 俺からすれば、ちっとも楽しんでいるように見えねぇぞ!! 仮面を取れ!! 自分の笑い声を俺に聞かせてみろ!!」

 

少しの沈黙の後、シグマの電子音声のような声が響いた。

 

『……ソレハデキナイ。カメンヲツケテ、コエニダサナイコトコソガボクノアイデンティティ‥‥「チャット」ガボクヲジユウニシテクレル』

 

「チャット?どういう事だ!?そりゃ?」

 

「チャットはパソコンのネットで文字だけで会話をするシステム‥‥本名も顔も分からないからこそ、本音も言う事が出来るし、他人に対してもどんな事でも言える‥‥」

 

レイがチャットシステムを説明すると、

 

「そうやってネットの世界で仮面をつけて、偽名で話す……それがお前のやっていることか?シグマ!?」

 

タイチの言葉は、シグマの心の奥底に封じ込めていた痛切な記憶を呼び起こした。

 

――シグマは昔から人と話すのが苦手で、学校のクラス内でもいつも一人で孤立していた。

 

そんなある日、「ねぇ、デジモン一緒にやらない?」と声をかけてくれたクラスメイトがいた。

 

初めて会話できる友達ができたと、シグマは胸を躍らせた。

 

しかし、帰り道にその子の家へ向かう途中、路地裏から聞こえてきたのは、残酷な真実だった。

 

『おい、どうしてあんな暗いやつに話しかけたのさ?』

 

『あいつ、宿題をやってくれるからさ。そばに置いておくには都合のいい奴だよ』

 

『へ~、なら俺も友達の振りしてみよっかな~』

 

『『ハハハハハ!!!』』

 

『‥‥』

 

子供特有の無邪気で残酷な悪意。

 

彼らの言動にシグマの世界が、音を立てて崩れ去った瞬間だった。

 

信じていた者に裏切られた。

 

『……ダケドネ、ボクハアイソワライヲウカベナガラ、トモダチノメンヲカブッタヤツラトツキアイツヅケタ……』

 

シグマの声に、微かな感情の揺らぎが混じる。

 

『イッショニアソンデホシカッタカラネ。デモ、アイテニアワセテワラエバワラウホド、ドンドンジブンヲミウシナッテイッタ……ソンナトキ、チャットニデアッタ。ヒニクニモカメントギメイヲツケレバ、ボクハジユウニナレタ! ゲンジツデハイエナイコト、オサエコンデイルカンジョウ、ソノスベテヲハキダスコトガデキタ! カメンヲツケテコソ、ボクハハジオノレシュチョウガデキルノダ!!』

 

シグマの悲痛な叫びを真っ直ぐに受け止めたタイチは、しかし毅然と言い放った。

 

「自分を取り戻したなら、その自分を現実に返してやればよかったんだ。匿名の気楽さに甘えて一生、仮面をつけて画面の裏で生きなければいけないなんて……そんなの間違っている!!」

 

『ナントデモイエ!』

 

タイチの言葉を聞きシグマが声を荒げる。

 

『ボクハピエモントトモニコノマスクスクエアヲツクリアゲタ。コノクウカンナラ、ボクハスベテヲシハイデキル。ココデハ、ボクハムテキダ!! ・・・・・・ネオハ、ソレヲヒョウカシテクレタヨ』

 

「何、ネオが!?」

 

『エエ、アルヒボクノモトニカレカラメールガオクラレテキタ。「お前のスキルはもっと有効に役立てられる。共に完璧な世界を作ろう」ト。ウレシカッタヨ‥‥ダカラカレトトモニウゴクコトニサンドウシタノデス。エイリアス1、シグマトシテ!!』

 

タイチの目に、怒りの炎が灯る。

 

「ネオがどんな世界をぶっ立てようとしているのかは知らねえ。だが、あいつは自分自身の計画のためなら、デジモンだろうがお前が傷つこうが構いもしない!お前はネオに利用されているんだよ!!」

 

『ダマレ!!オマエニボクタチノナニガワカル!!』

 

「俺はお前たちの事情なんてしらない‥だが、俺はあいつを許さない! ネオに協力し、俺たちの前に立ち塞がるなら、俺はお前を倒す!! お前の仮面を引っぺがして……お前自身の声で話させてみせる!!」

 

メタルファクトリーでかつて自分が育てたメタルグレイモンでさえ、簡単に切り捨てた様な男だ。

 

眼前に居るシグマだってネオにとっては都合のいい駒に決まっているとタイチは判断した。

 

『フン、ユウジョウナドトイウギゼンモ、オマエガカブッテイルカメンダ! ソンナモノヒキサイテヤル!』

 

「やれると思うか!?」

 

『ナニ?』

 

「お前がどの程度俺の指示を読めるか、勝負だ!!」

 

タイチの指が、デジヴァイス01のキーパッドの上で残像を残すほどの猛スピードで弾かれた。

 

『フン、ムダナアガキヲ‥‥コッチニハスベテオミトオシダ! コノクウカンデウチコマレルオマエノコマンドハ、スベテボクノモニターニヒョウジサレル!』

 

「なら、これはどうだ!」

 

タイチは一瞬の内に複雑な指示をまとめて入力し、アップリンクする。

 

『レンゾクコマンドデ、ヨミトリノソクドヲコエヨウトイウノカ?アマイヨ、ソノテイドノハヤウチジャア、ボクノキーボードサバキニハカテナイ』

 

シグマもまた、タイチのコマンドを凌駕するほどの凄まじい速度でカウンターの指示を打ち込み、ピエモンに指示を送る。

 

「ううっ、何てスピードだ!! シグマの奴、タイチの複雑なコマンドに悉く追いついている!!」

 

空中のゼロ丸は、タイチの指示通りの動きをするが、ピエモンの剣も徐々にゼロ丸に追いつき始め、剣がゼロ丸の身体を掠る。

 

「ああ、シグマのコマンドが追いつき始めて来た。このままじゃあヤバい」

 

ガーボが絶望的な声を上げる。

 

「!?」

 

ゼロ丸とピエモンとの戦いが激化していく中、レイが首から下げていたペンダントの赤い宝石部分が光り出した。

 

「?」

 

今まで首から下げていたペンダントがこんな光を発する事は無かった。

 

これが何の意味を成すのかレイ自身も分からなかった。

 

「どうやら息切れの様だな?これで終わりだ!!」

 

ピエモンから、最後の一撃となる剣が放たれた。

 

タイチはコマンドを入力する指を止め――上空で苦しむゼロ丸と、真っ直ぐに視線を交合わせた。

 

「ゼロ!!」

 

「タイチ……ッ!」

 

言葉はいらない。

 

デジヴァイスの通信もいらない。

 

百戦錬磨を共に潜り抜けてきた絶対のコンビだからこそ通じ合う、一瞬の「目くばせ」。

 

そして、タイチは最後にして最速のコマンドを叩き込み、シグマもまた完璧なタイミングでそれを迎撃するコマンドを送信した。

 

『オイツイタ!!コレデオワリダ!!』

 

勝利を確信したシグマの嘲笑。

 

だが、タイチは不敵に笑い返した。

 

「へっ、モニターの文字ばかり見て、現実の状況もまともに見ないでコマンドを送ったな?さっきのコマンドの座標には、誰がいると思う!?」

 

『――エッ?』

 

シグマがモニターから顔を上げ、現実の空間を見た瞬間。

 

ピエモンが放ち、シグマの完璧な指示によってワープしたトランプソードは――ゼロ丸ではなく、ピエモン自身の身体に深々と突き刺さっていた。

 

『ナ、ナニ!? ピエモンニササッタダト!?ア、アリエナイ‥‥ヤツノコマンドハスベテヨミキッタハズダ!!』

 

「俺は確かに全てのコマンドを送った。だが、最後に送ったコマンドは、お前を誘導するための『フェイク』だ!」

 

『フェイクダト? ダガ、ゼロニハフェイクダトイッタワケデハナイダロウ!?』

 

「言ったさ。この『目』でな」

 

タイチがニカッと笑い、ゼロ丸が力強く頷く。

 

『バ、バカナ!?タダノアイコンタクトデ?コトバデモ コンピュータモカイサズニ!? アリエン‥‥フカノウダ!!』

 

「いいや、可能さ! ボクとタイチならね!! でも、画面の奥に引きこもって、仮面をつけているお前には一生不可能だ!!」

 

シグマが呆然としている隙を突き、ゼロ丸がピエモンに接近すると渾身の右ストレートが、ピエモンの顔面を強打する。

 

バキィッ!! という凄まじい破壊音と共に、ピエモンの仮面に亀裂が走り、同時に、絶対的だと思われていたマスクスクエアの空間そのものに、ガラスのような巨大な罅が入っていく。

 

「おお!! ゼロの攻撃が当たって、マスクスクエアが崩れていく!!」

 

(そんな‥‥ボクの世界が‥‥)

 

(負けるなんて‥‥)

 

ゼロ丸は構わず、怒涛の連続攻撃をピエモンに叩き込む。

 

「これで止めだ!!」

 

そして、ゼロ丸がとどめの一撃を振りかぶった、その時だった。

 

「や、やめろ……!! やめてくれ……ッ!」

 

空間に響いたのは、電子音声ではない。

 

震えるような、シグマの‥‥少年自身の肉声だった。

 

「これ以上、ピエモンを殴らないでくれ……ボクの負けだ……」

 

パリンッ!!

 

彼の言葉と共に、マスクスクエアの空間が完全に砕け散った。

 

周囲の光景は元の荒涼とした岩場に戻り、夕闇の風がタイチたちの頬を撫でる。

 

「やった……全てが元に戻った……!」

 

ガーボが歓喜の声を上げる中、タイチは崩れ落ちたピエモンとその傍らに姿を現したシグマを見つめた。

 

「やっとお前も……ついに自分の口で喋ったな」

 

きっと、本当に大切なものを守りたいと願った時、偽りの仮面やチャットなど介さずとも、自ずと言葉は口から出るものなのだ。

 

タイチは確信を持ってそう結論付けた。

 

「本当に何かを伝えたいときに自然に声が出るものなのかも‥‥取り戻した自分で今度は誰かにこえをかけてみたらどうかな?確かに、世の中全員が良い人ばかりじゃない‥‥貴方を傷つける人もいるけど、逆に良い人もいる筈よ」

 

レイが自分の声を取り戻したシグマに語り掛ける。

 

「レイの言う通りだ。折角喋れたんだ、仮面なんか取ってさ……今度は俺たちとデジモンについて語り合おうぜ!」

 

タイチの裏表のない真っ直ぐな言葉に、シグマはハッと息を呑んだ。

 

だが、すぐに顔を背け、忌々しそうに吐き捨てる。

 

「ふん……なぜボクが、お前みたいな奴と話さねばならん。行くぞ、ピエモン……」

 

「……りょ、了解」

 

傷ついたピエモンと共にシグマは最後まで憎まれ口を叩きながら、夕闇の中へと姿を消していった。

 

「あらら~‥‥」

 

「はぁ~最後までひねくれた奴だったか‥‥」

 

ガーボは呆れつつシグマたちが消えた方を見て呟く。

 

「でも、何とか倒せたんだよ! ボクたちコンビの絆の勝利だね!」

 

ゼロ丸が安堵の息を吐きながら笑い合う。

 

「タイチ君の気持、きっと彼に届いていると思うわ」

 

「ああ、そうだといいけど‥‥」

 

(ミコトもシグマみたいになっていたかもしれないな‥‥)

 

シグマとミコトが置かれていた環境が似ていた事から出会いによってはミコトもシグマの様になっていたかもしれないと思うタイチ。

 

そして、レイがタイチを励ましたその時、タイチのデジヴァイス01が「ピピッ」と小さく電子音を鳴らした。

 

画面を見ると、一通のEメールが届いている。

 

『またいつかな. シグマ』

 

その短いテキストを見たタイチの顔に、ニッと嬉しそうな笑顔が浮かんだ。

 

「ああ……またな、シグマ」

 

二つの世界の命運を懸けた戦いの中で、また一つ、不器用な心が救われた瞬間だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。