デジタルワールドの平和を脅かす魔王デーモンの野望を阻止すべく、敵の本拠地『デーモン城』へ乗り込もうとしたタイチとミコト。
しかし、彼らの前に立ち塞がったのは、天才テイマー・彩羽ネオが放った究極体を操る刺客「エイリアスⅢ」だった。
タイチとゼロ丸は絶対的に不利な状況下の中でお互いの絆の力で覆してシグマとピエモンを撃破。
一方、ミコトとギガドラモンも格上の究極体であるマリのロゼモンに対し、イガモンとの決死の連携で見事大金星を挙げる。
戦いの後、自らの命を削ってまで敵を回復させるミコトの慈愛は、ネオの使い捨ての駒として扱われていたマリの心に静かな変化をもたらした。
だがその裏で、ネオは敗北しデーモン城へ帰還したシグマのパートナーであるピエモンを無残にも超究極体アルカディモンの餌として生贄に捧げてしまう。
ピエモンの生体エネルギーを吸収し、幼年期から成長期へと進化したアルカディモンをさらに育成するため、ネオは次なる標的をホーリーエンジェモンに定め、大軍勢を率いて「ホーリーエンジェル城」への直接攻撃へと乗り出した!
シグマからの通信でネオの凶行を知ったタイチたちは、戦力を分ける決断を下す。
タイチとゼロ丸は総力戦に備えるべくホーリーエンジェル城の防衛へ急行。
マリは同志であるシグマと秀人の真意を確かめるべく、ロゼモンと共にデーモン城へと帰還していった。
そして、岩場に身を潜めるミコトは、レイの口から「冷酷無比なネオが彼女の実の兄である」という衝撃の事実を告げられる。
現実世界での怪我や病気によって、家族の絆が壊れてしまったという悲しい共通の過去を持つミコトとレイ。
二人は互いの痛みを分かち合い、暴走するネオを止めて「優しいお兄ちゃん」を取り戻すため、共に戦うことを固く誓い合う。
迫り来るネオの軍団と迎え撃つホーリーエンジェル城の総力戦‥‥
デジタルワールドの命運を懸けた、かつてない激闘の幕が今、切って落とされようとしていた――!
ホーリーエンジェル城に迫るネオの軍団はホーリーエンジェル軍の防衛ラインを次々と突破していよいよホーリーエンジェル城をその肉眼で捉えた。
「ククク…見えて来たぞ、アルカディモン。あそこがお前の餌のある場所だ‥‥」
「キ‥ギチギチ‥‥!!」
ホーリーエンジェル城側も迫りくるネオの軍団の姿を捕捉していた。
「緊急事態発生!!緊急事態発生!!ネオの軍勢がついに最終防衛ラインを突破!!間もなくこの城に入られます!!」
伝令のパタモンの報告を受けて、それまで静かに座して待っていたタイチ、ゼロ、ホーリーエンジェモン、そしてレオが目を開けて立つ。
「遂に来たか、デーモンの超究極のデジモンが‥‥」
「皆の者、予め伝えておく。この戦い、間違いなく今までにない規模の壮絶な戦いになる筈だ。大勢の死者も出るかもしれない‥‥だが、皆、心してかかってくれ。そして出来る限り、生きてこの戦いに勝とう!!」
「「「「「おう!!」」」」」
そして城の外に出るタイチたち。
最終防衛ラインを突破したネオが騎乗していたグリフォモンから降り、タイチの視線とかち合う。
なお、このグリフォモンも究極体のデジモンである。
「フフフフフ…また会ったな、八神タイチ」
「ネオ‥‥やっぱり、生きていたか‥‥」
「総大将と戦闘隊長自ら、お出ましか‥‥覚悟を決めてきたようだな」
ホーリーエンジェモンとレオの姿を見てネオは目を細める。
「何があろうと、この城は渡さん!!」
「我が主君の身はこの命に代えても守る!!」
レオがホーリーエンジェモンの前に立ちはだかる。
「キ…ギチギチ…!!」
ネオの隣には見慣れないデジモンがまるで舌なめずりするかのように呻る。
「タイチ‥あれが‥‥」
「ああ。奴が超究極体のデジモン‥アルカディモンだろうな」
「フフフフフ、貴様ら全員こいつの生贄となってもらうぞ」
「そうはさせない!!アルカディモン諸共今度こそ絶対に倒す!!」
「全軍突撃!!」
「「「「「オ――――――――!!」」」」」
遂にネオ率いるデーモン軍とタイチ&ゼロを据えたホーリーエンジェモン軍の戦いの火ぶたが切られた。
次々と雪崩れ込んでくる敵のデジモン、そしてそれを迎え撃つホーリーエンジェモン軍。
タイチとゼロはネオを見据えるが、彼は一向に動く様子はない。
本当だったらこの時点で動いてもおかしくない。
ネオの不気味な沈黙に違和感を覚えつつも今はまず目先の大量の敵を片づけることが先決だ。
ゼロ丸の背中に乗り、タイチはホーリーエンジェル城の上空を埋め尽くすデビモン、フライモン、デビドラモン、クワガーモン等の敵デジモンを蹴散らしていく。
地上の方でもレオに向かってギガドラモンとメガドラモンが襲い掛かる。
そこを二体の鎧騎士の姿をした完全体のデジモン、ナイトモンが前に出るとギガドラモンとメガドラモンを必殺のベルセルクソードで切り刻む。
「レオ様が出るまでもない」
「次はどいつだ?」
そんなナイトモンたちの前に一体のデジモンが立ちはだかる。
「フン、雑魚がいきがりおって‥‥」
そのデジモンは背中に背負っていた大きな斧を取り出し構える。
「「うぉぉぉぉぉぉー!!」」
二体のナイトモンがそのデジモンに斬りかかる。
「トマホークシュタイナー!!」
そのデジモンは斧を投げると一撃で二体のナイトモンを斃してしまった。
「グハハっ!!オレ様は究極体のデジモンだぜ、完全体のお前らが敵う訳がないだろうが!!」
二体のナイトモンを斃したのは究極体の試作型サイボーグデジモン、ボルトモンであった。
高笑いをしたボルトモンはレオの前に立ち、
「さて、またせたな、戦闘隊長殿。くっくっくっ‥‥」
不敵な声を上げる。
サイボーグ型なので、表情は読み取れないが、おそらくは声と同じく不敵な笑みを浮かべているのだろう。
「貴様は称号や地位は持っているかもしれんが、所詮は完全体だ!!つまり‥‥究極体のオレ様には絶対に勝てないのだ!!」
ボルトモンはトマホークを振りかざしながらレオとの距離を詰める。
しかし、ボルトモンのトマホークはレオの剣によって止められた。
「なにっ!?」
「貴様の動きなどとうに見切っている」
「生意気な!!‥‥この俺の一撃を防いだからって調子に乗るな!!」
ボルトモンはトマホークで斬りかかるが、どの斬撃もレオの剣で防がれる。
「あり得ん!!貴様など所詮は完全体の癖に!!」
レオを仕留められない事に段々と苛立ちと焦りを覚えるボルトモン。
「この城は命に代えても守る!!」
「何?」
「この城は…光を守る最後の砦なのだ!」
「光だと?」
「そうだ、光だ!弱肉強食のこの世界では、多くのモンスターが若くして亡くなってしまう。この城はそんな小さな光を守り、育んでいくところなのだ。そしてこの世界を照らし平和を後の世界に次いでいくためにも‥‥!」
レオは一際大きく剣を掲げ、
「貴様の邪な手に触れさせはせん!!」
強烈な一振りでボルトモンを真っ二つにした。
「戦闘隊長を舐めるなよ」
完全体のギガドラモン、メガドラモン、そして究極体のボルトモンはネオの軍団の主力戦力であったにもかかわらず、短時間で撃破されてしまった。
しかし、そんな戦況の中でもネオは相変わらず薄い表情を変えない。
「そうこなくては面白くない。そうだろう?アルカディモン」
「ギギギ‥‥」
「ふん、だが貴様に用事はない。俺が用事あるのは只一人…ホーリーエンジェモンお前だ」
「‥‥」
ホーリーエンジェモンはしばらくの沈黙の後、アルカディモンを見やった後でネオに話し始めた。
「それがアルカディモンか…何とも禍々しい。今すぐにこんなことはやめろ。少年、君は超究極体の恐ろしさを知らんのだ!超究極体はこの世界の物事の平衡を破壊してしまうほどのエネルギーを持つ。もしそのアルカディモンが最終形態に辿り着いてしまえば、それはもはや人の手に負えるものではなくなるのだ!!君はデーモンに利用されているだけに過ぎんのだ!!奴はお前がその超究極体を育て上げた時点で利用価値の無い物として処分するつもりだぞ!!」
タイチとゼロも空中戦をやりながらその会話を聞いていた。
「ハーッハッハッハ!!!奴が俺を利用しているだと?笑わせるな!!確かに貴様らの考えているように俺がこいつを最終形態まで育て上げれば、手がつけようがない超究極のモンスターになるだろうな。だがこいつを従わせる方法が一つだけある」
「何?」
レオはネオの言葉に訝しむ。
いくら天才テイマーのネオであってもアルカディモンの能力はあまりにも未知数であり、成長すればテイマーの指示を聞かない可能性は十分にある。
しかし、ネオは確実にアルカディモンを制御できる方法があると言う。
ホーリーエンジェモンは戦慄した。
(まさか……奴はあの伝説を知っているのか……!?)
そして、ネオはボソッとアルカディモンを従わせるその方法を呟く。
「デジメンタルだ‥‥」
その単語を聞いた時ホーリーエンジェモンの表情が一変した。
「バカな、その様な方法は聞いた事もないぞ‥‥!?」
一方、レオは超究極体を制御できる方法なんてあるわけがないと思っていたが、その方法をネオは知っていると言う。
「だが、総大将は知っているみたいだぜ、この裏技を‥‥」
「何という少年だ‥‥まさかあの秘法を知っているとは‥‥だが、そうと分かれば見過ごす訳にはいかん!!アルカディモンを亜空間に葬らなければなるまい!!」
ホーリーエンジェモンは空中に円を描くとその円からデスモンが発動したワープホールに似た次元の扉が開き、そこから凄まじい吸引力が発生する。
すると、近くに居たデビモンやイビルモンが次々と吸い込まれていく。
「天国の門よ、邪悪なる者を吸い込み消し去れ!!ヘブンズゲート!!」
「ギギ‥‥」
アルカディモンもデビモンたち同様徐々にヘブンズゲートへと吸い込まれていく。
レオやタイチ、ゼロがこの影響を受けないのは邪悪な心がないからである。
そしてアルカディモンはヘブンズゲートの中に放り込まれゲートの扉は閉まる。
「よし、アルカディモンはゲートの向こうに吸い込まれた!!」
「やったね、タイチ!!あとはネオとデーモンだけだ!!」
「悪く思うなよ。少年‥‥これで終わりだ」
「普通のデジモンならな‥‥だが、相手はアルカディモンだぜ‥‥」
ネオはアルカディモンがヘブンズゲートの中に放り込まれたにもかかわらず、余裕だ。
「ん?見ろ、ゼロ!!ゲートはまだ完全に閉じていない!!」
「なんだって!?」
「ギチギチ…ギチギチ…ギチ!」
アルカディモンは両手の爪を使って強引にゲートを開けて外に出て来た。
「そんな馬鹿な‥‥」
「ホーリーエンジェモン様の必殺技が効かなかっただと!?」
「本気を出せよ大将。あんたの力はそんなもんじゃないだろう?」
「良いだろう‥‥」
必殺技のヘブンズゲートが通じなかった事からホーリーエンジェモンは出し惜しみをしている余裕は無いと判断した。
ホーリーエンジェモンの体は聖なる光に包まれ、光を破って出てきたのは‥‥
「あれが、ホーリーエンジェモンの真の姿‥‥」
「姿が全然違う‥‥」
「そう、ホーリーエンジェモン様は今封印を解かれたのだ‥‥あの姿こそ、ホーリーエンジェモン様の本来のお姿なのだ‥‥」
『ホーリーエンジェモン、究極進化!!!セラフィモン!!!!』
鎧をまとった大天使デジモン‥‥クラスは究極体‥‥
「ホーリーエンジェモン様はもう既に究極体としての力を持っていた。だが、究極体では全身からあふれる力を制御できず、触れるものを傷つけてしまうためにその力を押さえていたのだ」
「この世に超究極体を出現させる訳にはいかない」
「いいぞ、それでこそ極上の餌だ!!行け!!アルカディモン!!」
「ギィッ!!」
待っていましたと言わんばかりにセラフィモンに襲い掛かるアルカディモン。
「行くそ!!我が奥義!!セブンヘブンンズ!!」
セラフィモンの必殺技を受けてアルカディモンは四肢が吹っ飛んだ。
「とどめだ!!エクスキャリバー!!」
セラフィモンの手甲に光る刃が出現し、四肢を失ったアルカディモンへと斬りかかる。
「フフ、アルカディモンの恐ろしさはその成長過程においても全てのデジモンの常識を超えるところにある」
アルカディモンが四肢を失い、セラフィモンに止めを刺されそうになってもネオの余裕は消えない。
アルカディモンはセラフィモンのエクスキャリバーを残った腕の部分で受け止めた。
「何!?切断された腕でエクスキャリバーを受け止めただと!?」
レオも流石にこれには驚愕する。
するとアルカディモンはドシュっとセラフィモンの体に切り離された筈の腕が突き刺す。
「切り離された筈の腕が生きているだと!?」
セラフィモンの身体に突き刺さった腕はアルカディモンの腕へと繋がっていく。
「データを修復しただと!?」
セラフィモンは上空に退避してアルカディモンから離れる。
「恐るべし、アルカディモン‥‥しかしこれで終わりにしてくれる…セブンヘブンズ!!」
再び七つの超熱光球がアルカディモンに向かって放たれる。
「ギチ…ギチギチ!!」
セラフィモンの技がアルカディモンに命中する。
しかし、アルカディモンは先ほど、セラフィモンのエネルギーを吸った際、そのパワーで成熟期へと進化し、セラフィモンの技をくらっても無傷であった。
「進化しただと!?」
「ハーッハッハッハ!!!だから言っただろう、貴様らにこのアルカディモンそんじょそこいらのモンスターと一緒にするな!!アルカディモン…セラフィモンを食ってしまえ」
アルカディモンがセラフィモンに襲い掛かろうとした時、
「させぬ!!」
パンジャモンへと進化を遂げたレオが、身を挺してセラフィモンの救援に向かおうとした、その時だった。
ドンッ!!!
突然、天を突くような激しい地鳴りがホーリーエンジェル城全体を恐怖で揺るがした。
大地が大きく裂け、底知れぬ亀裂から、おぞましい暗黒の怨念が霧となって噴き出してくる。
「な、何事だ!?」
「地鳴り……? いや、この気配は……!」
ホーリーエンジェル軍の兵士たちが武器を震わせ、後退りする。
立ち込める暗黒の霧の向こうから、太陽の光さえも遮るほどの、あまりにも巨大で、あまりにも醜悪な「影」がゆっくりと姿を現した。
姿が見える前から、戦場には耐え難いほどの殺意と死臭が充満していく。
兵士たちの顔から血の気が引き、誰もが絶望に息を呑んだ。
「おっと、お前にはこいつを相手にしてもらうぞ」
ネオの冷酷な声が、その巨大な影の背後から響く。
「やれ、ヴェノムヴァンデモン」
究極体デジモン、ヴェノムヴァンデモンは拳を叩きつけてレオを潰そうとする。
しかし、大振りな攻撃なのでレオには当たらなかった。
「グフフフ‥‥コ、コロス‥‥」
怨念の塊であるその巨躯が、大気を引き裂くような咆哮を上げ、巨大な拳をパンジャモンへと叩きつけた。
「下品なモンスターが邪魔をするな」
「そいつは怨念を残したヴァンデモンが知性と引き換えに究極のパワーを得たモンスターだ‥‥こいつは誰かを殺したくてウズウズしているのさ」
「キシャァぁぁー!!」
ヴェノムヴァンデモンは狂ったように拳の連打を見舞うが、パンジャモンの卓越したスピードの前には空を切るばかりだった。
「遅い!! 図体がデカいだけで、知性の欠片もない攻撃など、私に当たるはずがなかろう!」
パンジャモンは巨体を翻弄しながらヴェノムヴァンデモンを足止めするが、その隙を突き、成熟期となったアルカディモンが再びセラフィモンへと狙いを定めた。
「ギィヤァァァァッ!!」
不気味な鳴き声を上げながら、背中の触手を槍のように鋭く伸ばし、セラフィモンの胸元へと襲い掛かる!
「しまっ――!」
セラフィモンが防御姿勢を取ろうとした、その刹那。
「させるかァァァッ!!」
真横から凄まじいスピードで飛来した青き影が、アルカディモンの顔面に向かって強烈なパンチを叩き込んだ!!
ドゴォォォォンッ!!
「ギギャッ!?」
奇襲を受けたアルカディモンは弾き飛ばされ、地面を無様に転がる。
「ゼロ!!」
「へへっ! 間一髪だったな、セラフィモン!」
拳を振り抜き、セラフィモンの前に降り立ったのはゼロ丸だった。
その背後には、デジヴァイスを構えたタイチの姿がある。
「すまない、タイチ、ゼロよ……しかし、奴の吸収能力は厄介だ。迂闊に攻撃すれば、逆に奴の糧となってしまうぞ!」
「分かっている。だからこれ以上、セラフィモンからエネルギーを吸わせるわけにはいかない。アンタは下がっていてくれ、アイツは俺たちがやる!!」
タイチは鋭い眼差しで、ゆっくりと身を起こすアルカディモンを睨みつけた。
(奴の攻撃はあの触手からセラフィモンのエネルギーを吸うところから始まるんだ。ってことは、もはや吸収できないようにフルパワーで奴にエネルギーを叩き込むしかない……!)
タイチの脳内で、瞬時にアルカディモンを撃破するための戦術が組み上げられていく。
「あいつが吸収できる量には限界があるはずだ。セラフィモンの力を吸収して進化した直後なら、なおさらだ! 許容量を超えたエネルギーを一気に叩き込めば、吸収しきれずに自滅するはずだ!ゼロ…お前の必殺技をフルパワーにして奴にぶつけてやれ!!」
「オゥッ! 任せとけ、タイチ!!」
タイチの指示を受け、ゼロ丸は全身のエネルギーを極限まで高め始めた。周囲の空気がビリビリと震え、青白いオーラがゼロ丸の身体を包み込む。
「喰らいやがれェェェッ!! ブイウィング・ブレードォォォッ!!!」
ゼロ丸の放ったフルパワーの光の刃が、空間を切り裂きながらアルカディモンへと直撃する。
ドゴォォォォォォォォォォォォッ!!!!
目も開けられないほどの強烈な閃光と爆発が周囲を飲み込んだ。
「やったか!?」
だが、爆煙が晴れた直後、タイチたちの目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。
「ギ……ギチギチ……ギィヤァァァァァァァァッ!!!」
ゼロ丸の放ったフルパワーのブイウィングブレードのエネルギーは、アルカディモンの展開した触手によってすべて吸い込まれていた。
そして、膨大なエネルギーを取り込んだアルカディモンの身体が、禍々しい光を放ちながら急速に肥大化し、その姿をさらに醜悪で恐ろしいものへと変貌させていく。
「なっ……! ゼロの渾身の必殺技を……吸収しただと!?」
タイチが驚愕に目を見開く。
「嘘だろ……あいつ、また進化しやがった……!」
アルカディモン(完全体)。
究極体をも凌駕するエネルギーを内包したその姿は、圧倒的な絶望感をもってホーリーエンジェル城の庭に君臨していた。
「ハーッハッハッハ!! 素晴らしいぞ、アルカディモン! 貴様らのフルパワーの攻撃すらも、こいつにとっては極上のディナーに過ぎなかったというわけだ!!」
ネオの高笑いが戦場に響き渡る。
彼は、完全体へと進化したアルカディモンを満足げに見つめると、上空で待機していたグリフォモンを呼び寄せた。
「ネオ! 逃げる気か!?」
タイチが叫ぶが、ネオは冷酷な笑みを浮かべたままグリフォモンの背に飛び乗った。
「ふん、逃げるだと? 勘違いするな。今の俺が貴様らと戦う理由はない。アルカディモンは完全体になった。目的は達成したからな。セラフィモンの力と貴様らの渾身のエネルギーでこいつが進化した今、これ以上こんな所で時間を潰す必要はない」
ネオは眼下で暴れ狂うヴェノムヴァンデモンを一瞥する。
「あとはお前らで仲良く、そこの知性のないバケモノの相手でもしていろ。行くぞ、アルカディモン!」
「ギィィィッ!!」
ネオの指示に従い、完全体となったアルカディモンもまた空へと舞い上がり、グリフォモンと共にデーモン城の方角へと姿を消していった。
「待て!! ネオォォォッ!!」
タイチが空に向かって叫ぶが、すでにその背中は遠く見えなくなっていた。
「グォォォォォォッ!! コロス……スベテ、コロス!!」
標的を見失ったタイチたちの背後で、殿(しんがり)として残されたヴェノムヴァンデモンが、周囲の建物を破壊しながら狂ったように咆哮を上げる。
「くそっ! またネオの思惑通りにされたか……だが、今はこいつを止めるのが先決だ!」
タイチが唇を噛み締め、デジヴァイスを構え直す。
「タイチ、ゼロよ。先ほどの助太刀、改めて礼を言う」
傷ついた身体を引きずりながらも、セラフィモンが力強く二人の横に並び立った。
「ネオたちを取り逃がしたことは無念だが、今は我が城を守り抜くことが最優先! レオ、行くぞ!!」
「ハッ!! 猛獣の牙、とくと味わうが良い!! 氷獣拳!!」
「セブンヘブンズ!!」
「セラフィモン! レオ! 俺たちも続くぜ!! ブレス・オブ・ワイバーン!!」
セラフィモンの放つ七つの神聖なる光球、パンジャモンの氷となった獅子の闘気、そしてゼロ丸の口から放たれる極大の熱線。
ホーリーエンジェル城が誇る最強の布陣による三位一体の必殺技が、狂乱するヴェノムヴァンデモンの巨体へと同時に突き刺さった。
「ギギャァァァァァァァァッ!!?」
究極体の生命力を持つヴェノムヴァンデモンでさえ、この三つの必殺技の直撃には耐えられなかった。
断末魔の叫びと共にその巨体は無数のデータの塵となって四散し、完全に消滅した。
ネオが撤退し、ヴェノムヴァンデモンが倒れたことで、残存のデーモン軍のデジモンたちも蜘蛛の子を散らすように撤退を開始し、ホーリーエンジェル城の防衛戦は、なんとか勝利という形で幕を閉じた。
だが、タイチたちの顔に晴れやかな喜びはなかった。
「……勝った、けどよ……」
タイチが忌々しそうに空を見上げる。
完全体へと進化してしまったアルカディモン。
あれほどのエネルギーを吸収してもなお底が見えないその存在は、タイチたちの心に重く暗い影を落としていた。
「ネオ……そしてアルカディモン。次に会う時、奴はどんなバケモノになっているんだ……」
タイチの呟きは、誰の答えも得られないまま、ホーリーエンジェル城に吹き抜ける風に虚しく溶けていった――。
一方、こちらはデーモン城ではマリがシグマに接触して事情を聴いていた。
「そう‥やっぱりネオの奴は、アルカディモン育成のためにあんたのピエモンを‥‥」
「ああ、君はここから逃げた方が良い。このままこの城に居ると君のパートナーまで餌食にされるかもしれん」
「みたいだね。じゃあ私はすぐ後で秀人に話をしたら、ミコトにメールをしてロゼモンと共にここを出る。あんたはどうするのさ?」
「僕は此処に残って。あいつの‥アルカディモンのデータをここで取っておく。奴はいずれ人の手には負える存在じゃなくなる。そうなる前に奴の弱点を見つけてタイチたちにしらせないと‥‥アイツを止められるのはもうタイチたちしかいない」
「分かった。気を付けてね」
「ああ、マリもな‥‥」
シグマの部屋を出るとマリは秀人の居る部屋に向かう。
すると秀人の部屋の前で二匹ほどのデジモンが居るのを見たマリは何事かと物陰に隠れてひっそり耳を立てて聞いてみる。
「秀人様、「デジメンタル」の在処を発見しました」
「そうか‥分かった」
デビモンからその知らせを受けた秀人は静かに部屋から出て行った。
「秀人様、ネオ様のご命令はデジメンタルの居場所を突き止め次第、デジメンタルの確保することですが?」
オーガモンがネオからの命令を伝える。
「分かっている、あいつが究極のモンスターを作り上げるのに必要なアイテムみたいだからな」
そう言いながらコツコツと部屋を出ていく。
いまいち表情の読めない男だと思いながら、デビモンとオーガモンは秀人の部屋を後にする。
一方、会話の一部始終に耳を立てていたマリは話を聞いて秀人に話しかけようとするが、今の話を聞いて秀人はデジメンタルを回収しに行くつもりだ。
話を聞きたい所ではあるが、これ以上此処に居るとネオに見つかり、ロゼモンがアルカディモンの餌にされてしまうかもしれない。
マリはミコトにメールを送り、パートナーのロゼモンと共にデーモン城を後にした。
その頃、ネオの軍団の襲撃を辛くも防いだタイチたちは城の修繕と負傷者たちの救助と手当てを行い、ようやくその作業が終わった頃、ホーリーエンジェル城の玉座の間に集まる。
「さて、君たちに話したいことだが、ネオはアルカディモンを進化・制御するために、伝説の力を使うつもりだ」
「伝説の…力…?」
「デジメンタルの力だ」
「デジメンタル?それって何だ?」
「デジメンタルとはこの世界のどこかに存在すると言われている特殊素材だ。恐るべき力がそのクリスタルの中に隠されていて、それがあればモンスターを進化させることができ、デジメンタルの使用者はそのデジモンを制御することが出来る」
「何!?そんなものが…本当に存在するのか!?」
「分からん。私も最初は伝説だと思っていたのだ…だが、ネオのあの自信に満ちた態度からすると、奴はもうデジメンタルの在処に見当をつけているのかもしれない‥‥ネオはデジメンタルの本質を理解している…奴はアルカディモンを支配下に置きながらデジメンタルを使って超究極体へ進化してしまえば」
「そんなことになれば…この世界は‥‥」
「ああ、ネオとアルカディモンのものとなってしまう」
「デーモンはソレを理解した上で、ネオをこの世界に連れて来てアルカディモンのテイマーにしたのか?」
「そこまでは分からない。ネオの人となりをデーモンが見誤った可能性もある」
「行こう、タイチ!!ミコトたちにもすぐに知らせなきゃ!!あいつが超究極体に進化する前にボクたちで止めるんだ!!」
「ああ‥アイツを超究極体に進化させる訳にはいかない」
まだ成熟期の状態であの強さだったのだから、アルカディモンが超究極体へ進化してしまえばそれこそ、デーモン以上の脅威になる。
しかもゼロ丸のフルパワーの必殺技を受けてダメージを負うどころか、完全体に進化してしまった。
「よし、ゼロ。行くぞ!!」
「ああ!!」
タイチとゼロはホーリーエンジェル城を後にした。
その頃、デーモン城近くの岩場ではミコト、ガーボ、レイ、ギガドラモンがタイチたちの帰りを待っていた。
するとミコトのデジヴァイスにメールが二通来た。
一つはデーモン城に向かったマリから、
『シグマから話は聞いた。あいつはデーモン城に残ってアルカディモンのデータを収集するみたい。そしてもう一人、秀人なんだけど…詳しい話はそっちに行って直接する。もうすぐで着く』 という内容で、
もう一つはタイチからで、
『ホーリーエンジェル城は何とか守った。だが、超究極体のアルカディモンは完全体に進化しちまった。そしてネオは「デジメンタル」という伝説のアイテムを使ってアルカディモンを超究極体に進化させるつもりだ!しかもその場所まで正確に把握しているらしい、今すぐそちらに向かう!!事態が最悪になる前に奴を止めるぞ!!』
という内容で、どちらも良い内容のメールではなかった。
「これはちょっと不味い事態かも‥‥」
「ああ、デジメンタルってアイテムを使ってまさかネオがそんな事を企んでいるとは‥‥」
「しかもネオはデジメンタルの在処を知っているみたいだ‥‥」
「でも、そのデジメンタルって一体どんなアイテムなんだろう?」
デジメンタルについて皆が首を傾げていると、
「おーい、皆!!!」
マリとロゼモンが戻って来た。
「「マリさん!!」」
「ロゼモン」
「マリさん、メール読みましたよ。一体どうしたんすか!?」
「ハァハァ、秀人のことなんだけど…あいつ、これからデジメンタルを回収するつもりらしいんだ!」
「やっぱり、ネオはデジメンタルの在処を‥‥」
「それで、デジメンタルは何処にあるんですか?」
「どんな形なんですか?」
ミコトたちの問いに、マリは悔しそうに顔を歪めた。
「そ、それが、秀人が部屋を出て行っちゃって、詳しい話を聞けなくて‥‥あそこに残っていると、ネオの奴にロゼモンが食べられちゃうと思って、私は慌てて出て来たって訳」
ネオの手に渡る前にこちらで回収したかったが、肝心の情報がなければ動きようがない。しかし、パートナーの命を守るためのマリの判断を責める者は誰もいなかった。
その時‥‥
「ミコト、何か来る‥‥!」
ガーボが突然、怯えたように身を硬くした。
「うん、このエネルギー、尋常じゃない。ゼロ以上の……圧倒的な量だわ」
次の瞬間、天上の厚い雲が爆発したかのように激しく弾け飛び、眩いばかりの神聖な白光が、荒れ果てた空を引き裂いた。
――ゴォォォォンッ!!!
大気を激しく震わせる地鳴りのような轟音とともに、天空から一条の「白い流星」が、凄まじい速度で岩場へと急降下してくる。
ドガァァァン!と地響きを立てて着地する直前、猛烈な突風が渦を巻き、ミコトたちの視界を砂煙で遮った。
暴風が吹き荒れる中、その砂煙の向こうに、不気味なほどの神々しさと威圧感を放つ、巨大なシルエットが浮かび上がる。
左右非対称の異形とも言える腕、そして背中に翻るマント。
砂煙が完全に晴れ、その姿が白日の下に晒された瞬間。
「あ、あれは……デジモンなのか!?」
「違う……ただのデジモンじゃない……!」
ガーボとイガモンが震える声で絶句する。
圧倒的な威圧感に、戦場の空気が一瞬にして張り詰めた。
「間違いない、あの姿は……伝説の聖騎士……オメガモンだ!!」
兜を被り、純白の鎧をまとった最高位の聖騎士。
その左腕にはオレンジ色のメタルグレイモンに似た頭部、右腕には青いガルルモンに似た頭部が鎮座している。
その圧倒的な存在感の前に、一同は言葉を失った。
オメガモンの肩から、エイリアスⅢの最後のメンバーである秀人が静かに飛び降りる。
「秀人‥どうしてあんたが此処に? デジメンタルの回収に行ったんじゃあ‥‥」
「マリこそ、どうして此処にいる?」
淡々と答える秀人。
その時、秀人の視線が、ミコトの隣に立つ少女――レイへと注がれた。
二人の視線がかち合ったその瞬間、お互いにハッと目を見開く。
「れ、レイ!? お前何故ここに!?」
「秀人君‥本当に秀人君なの?」
動揺する秀人だったが、ふとレイの胸元で怪しく、しかし美しく輝くものに目を奪われた。
「ああ‥っ!? まさか……俺が探していたデジメンタルが、お前のそのペンダントだったのか……!?」
秀人の冷静な顔に、一瞬だけ驚愕の色が走った。ネオが血眼になって探していた伝説のアイテムは、最初から妹であるレイが肌身離さず持っていたものだったのだ。
「えっ? これがデジメンタル……?」
レイが自身の胸元のペンダントに手をやる。
「行こう、レイ。ネオが待っている」
秀人が拒絶を許さない口調でレイの手を取ろうとした瞬間、マリが鋭い足取りでその間に割って入った。
「‥‥何のつもりだ、マリ?」
「行かせない、あんたにレイを連れて行かせない! あんた、ネオがそのデジメンタルとやらを使って何しようとしているのか、分かっていて言っているの!?」
「ああ。知っている。だが、俺はネオの事を止めるつもりはない。それに、どうしても一度レイにはネオに会ってもらいたいんだ。話があるからな」
「あんた、ネオの奴がアルカディモンを進化させるために、シグマのピエモンを食べたのを知っているんでしょう!?
このままだと、あんたのオメガモンだっていずれはアルカディモンの餌にされるんだよ!?」
マリの必死の訴えに、秀人はピクリとも表情を変えない。
「エイリアスⅢの台詞とは思えないな‥‥俺たちはネオの目的を共有する同志の筈だぞ」
「その同志のパートナーデジモンをあんな化け物に食わせておいて、今更同志面するネオこそ裏切り者じゃないか!!」
「どんな心境の変化があったのかは知らないが、これ以上邪魔をするなら、お前と言えど、容赦はしないぞ」
秀人の目が冷たく据わり、オメガモンが静かにその巨腕を構える。
ロゼモンもマリを守るために茨の鞭を構える。
一触即発の空気が両者の間に流れた。
「秀人君、マリさん、やめて!!」
その緊張を破ったのは、レイの悲痛な叫びだった。
「マリさん、ごめんなさい。私…秀人君と一緒にお兄ちゃんの所に行くわ」
「なっ――!?」
マリとロゼモンが驚愕に目を見開く。
しかし、ミコトはレイの決意の裏にある、深く切ない想いを知っているがゆえに、ただ静かに顔を伏せることしかできなかった。
「マリさん‥今回だけはレイさんに行かせてあげて下さい」
「ミコト、あんた正気!? 今、この子をネオの所に行かせれば、デジメンタルがネオの手に渡ってアルカディモンが超究極体になっちゃうんだよ!?この世界がどうなってもいいの!?」
激昂するマリの言葉はもっともだった。超究極体の恐怖は、すぐそこまで迫っている。
それでも、ミコトは真っ直ぐな瞳でマリを見つめ返した。
「分かっています……ネオさんがアルカディモンを超究極体にするつもりなのも、それがどれだけ危険なことなのかも‥‥でも、レイさんはずっと、お兄ちゃんとちゃんと話がしたかったんです。家族の絆を取り戻すために……」
「家族の絆……? 馬鹿言わないでよ! あいつが自分のデジモンを平気で犠牲にするような冷酷な奴だって、さっき聞いたでしょう!?今のあいつに、妹の言葉なんて届くわけがない!」
「届くかもしれないじゃないですか!!」
ミコトの悲痛な叫びが、岩場に強く響き渡った。
「……ミコト」
「レイさんは、現実世界でずっと苦しんできた。怪我をして、お兄ちゃんが変わってしまって……それでも、昔の『優しいお兄ちゃん』がまだどこかにいるって信じているんです。直接会って話せば、きっと分かってくれる。アルカディモンを育てるのも、こんな悲しい戦いも、全部やめてくれるかもしれないって……!」
ミコトの脳裏には、先ほどまでここで語り合ったレイの涙が焼き付いていた。
自分と同じように、家族のことで深い傷を負った少女。
その彼女が、たった一つの希望に縋ろうとしているのを、ミコトにはどうしても止めることができなかったのだ。
「マリさん、心配してくれてありがとうございます」
レイが一歩前に出て、マリに深く頭を下げた。彼女の胸元では、ペンダント――『デジメンタル』が確かな意思を持つかのように微かに輝いている。
「私が彩羽ネオの妹だという事実は変わりません。もし、お兄ちゃんが本当に間違った道を進もうとしているなら、私が止めなきゃいけない。このデジメンタルを渡す代わりに、もうこれ以上誰も傷つけないでって……直接、私自身の言葉でお願いしたいんです。自分が兄を説得すれば、きっとアルカディモンの育成も、この無意味な侵略も止めてくれると信じています」
「レイ……あんた……」
レイの小さな体から発せられる、決して揺らぐことのない強い意志、その瞳の奥にある真っ直ぐな光に射抜かれ、マリは思わず言葉を詰まらせた。
(……本当に、あいつの妹なのかよ。全然似てないじゃないか……)
マリは小さく舌打ちをすると、忌々しそうに視線を逸らした。
「……もう、勝手にしな。どうなっても知らないからね」
「マリさん……ありがとうございます」
レイが微笑むと、ずっと黙ってそのやり取りを聞いていた秀人が静かに口を開いた。
「話は済んだか?行くぞ、レイ」
「はい」
秀人が顎で合図をすると、巨大な聖騎士・オメガモンがゆっくりと片膝をつき、巨大な左手――グレイソードの腕を地面に下ろした。
レイがその手のひらにそっと乗り移ると、オメガモンは彼女を落とさないように慎重に立ち上がる。
「ミコトちゃん、いろいろお話し聞いてくれて嬉しかった。ありがとう」
「レイさん……気をつけて。絶対に、無事で戻ってきてくださいね」
「うん!」
レイは大きく手を振った。
秀人とオメガモンは、彼女を伴ったまま力強く大地を蹴り、禍々しいオーラを放つデーモン城の方角へと一気に空へ舞い上がっていった。
遠ざかっていく彼らの背中を、ミコトはただ祈るように見つめ続けることしかできなかった。
(どうか、レイさんの想いがお兄ちゃんに届きますように……ネオさんが、昔の優しいお兄ちゃんに戻ってくれますように……)
「……行かせちゃったね。これでタイチたちが間に合わなくて、本当にアルカディモンが超究極体になっちゃったら、私たちで責任取れるの?」
空を見上げたまま、マリがぽつりと呟く。
「その時は……私とギガドラモンが、命に代えてもアルカディモンを止めます」
ミコトの迷いのない声にマリは呆れたように大きなため息をついた。
「……あんたたち、本当にバカばっかり。でもまぁ、私もロゼモンも、これ以上ネオの好き勝手にはさせないけどね」
「マリさん……」
「ほら、ボヤボヤしてないでタイチたちを待つわよ! あいつらが来たら、すぐにデーモン城へ乗り込むんだからね!」
マリの力強い言葉に、ミコトは強く頷いた。
レイの決死の願いが通じることを信じつつも、最悪の事態に備える覚悟を決めるミコトたちであった。