デジモンアドベンチャー Re:Life   作:ステルス兄貴

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二十七話 復活のゼロ

 

エイリアスⅢ最後の刺客・藤本秀人と彼のパートナーデジモン、究極体の聖騎士オメガモンを決死の連携で打ち破ったタイチとミコト。

 

戦いの中でデジモンとの真の絆とテイマーとしての誇りを取り戻した秀人は、過去の罪悪感を振り払い、暴走する親友・彩羽ネオを止めるためオメガモンと共にデーモン城へと向かう。

 

しかし、デーモン城では誰もが予想し得なかった最悪の事態が進行していた。

 

ネオは魔王デーモンに対して反旗を翻し、アルカディモンにそのデータを吸収させ、最凶の究極体デジモン、アルカディモンへと進化させてしまったのだ。

 

さらに城へ乗り込んだ秀人とシグマに対し、ネオは残酷な真実を告げる。

 

エイリアスⅢの激闘はすべて、アルカディモンを完全制御するための鍵「デジメンタル」に戦闘エネルギーを充填するための“充電作業”に過ぎなかった。

 

その他に実の妹であるレイがデジタルワールドに巻き込まれたことすら「単なる予定外のイレギュラー」と言い捨て、新世界「ネオ・ワールド」の創世へと突き進むネオ。

 

その冷酷な狂気に秀人の怒りは頂点に達し、オメガモンを呼び出し決死の戦いを挑むが、究極体となったアルカディモンの圧倒的な力の前に防戦を強いられる。

 

この未曾有の危機をシグマからの決死のメールで知ったタイチたちは、アルカディモンの「超究極体」へのさらなる進化を阻止すべく即座に動き出す。

 

ミコトはホーリーエンジェル城へ伝令として飛び立ち、マリはオメガモンをサポートすべくデーモン城へ急行する。

 

そしてタイチは、生命を燃やす大技「ドラゴンインパルス」の反動で満身創痍となった相棒・ゼロ丸の回復を信じ、治療ボックス越しに決戦の地を見据える。

 

一方、デーモン城の一室に隔離されていたレイもまた、偶然部屋に迷い込んできた風変わりなプチマモン姉弟(パル・プル)の協力を得て、兄の暴走を止めるために決死の脱出を図っていた。

 

究極体となった最凶の悪魔と、狂気に呑み込まれた天才テイマー。

 

かつてない絶望がデジタルワールドを覆い尽くそうとしていた。

 

 

デーモン城ではオメガモンのガルルキャノンが見事に決まったところだった。

 

しかしネオはまるで余裕を崩さない。

 

「ハハハハ…データは集まった。さあアルカディモン、反撃開始だ」

 

すると後ろでデータを取っていたシグマが反応する。

 

「…あ…有り得ん……」

 

「どうした、シグマ!?」

 

「アルカディモンが…まるでダメージを受けていないぞ!?」

 

「何!?」

 

ガルルキャノンを真正面からくらっても無傷の状態のアルカディモンがオメガモンの眼前に居る。

 

「そ…そんなバカな…ガルルキャノンが直撃したというのに…」

 

「信じられない…」

 

「ふはははは!アルカディモンはもはや貴様たちが足掻いたところでどうにかなる代物じゃないぞ」

 

アルカディモンのステータスを間近に目の当たりにしたネオは高笑いをする。

 

(くっ‥‥一体どうなっているのだ!?このアルカディモンは!?)

 

(いくら強くても、アルカディモンもデジモンの筈‥‥どこかの必ず弱点はある筈だ)

 

シグマはアルカディモンもデジモンである以上、必ずどこかに弱点がある筈だと思いつつアルカディモンを睨みつける。

 

そこへ、マリからメールが来た。

 

(マリからメール?)

 

その内容は、

 

『ゼロ丸は未だに回復作業中、ミコトとギガドラモンはホーリーエンジェル城へ向かった。私とロゼモンはそちらのサポートへ向かう。それまで何とか持たせて!タイチもゼロ丸が回復後、そっちへ向かう』

 

と書かれていた。

 

秀人はそのメールを確認し、ニヤリと笑うとシグマと共に親指をグッと立てて、防御と回避に徹する事に決めた。

 

(タイチ、マリ…早く来てくれ!!)

 

何とか秀人はオメガモンで間を持たせることにした。

 

ミコトはギガドラモンの背中に乗り、一路ホーリーエンジェル城へと向かっていた。

 

そんな中、空の彼方からこちらに向かってくるモノが見えた。

 

「ん?ミコト、こっちに何か来る」

 

「デーモン軍のデジモン?」

 

「いや、違う‥‥あれは‥‥」

 

ギガドラモンの目が捉えたのはバードラモンとそれに乗ったジジモンであった。

 

「ジジモン先生!?」

 

「ん?おお、ミコトではないか」

 

「先生、そのバードラモンはもしかして‥‥」

 

「そうです‥あの時のピヨモンです。僕、あれから頑張って進化したんです」

 

ジジモンが乗っていたバードラモンは天空樹の麓で出会ったピヨモンが進化した姿であった。

 

「進化できたんだ‥おめでとう」

 

ピヨモンが進化できたのは彼の努力の賜物である。

 

ミコトはそんなピヨモン‥もとい、バードラモンの努力を祝福する。

 

「ところでお前たちはこんな所で何しておるのじゃ?」

 

「実は‥‥」

 

ミコトはジジモンとバードラモンに現状を説明した。

 

「成程、ならばこうしなさい。まずホスピタウンに行ってすべての町に居るデジモンたちに連絡してホーリーエンジェル城に集めるのじゃ。その後でお前さんは、デーモン城へ向かいなさい」

 

「えっ?でも‥‥」

 

「お前さんが本当は誰よりもデーモン城へ行きたいのは分かっておる。ワシはこれからタイチたちの元へ向かう。伝えたいことがあるんじゃ」

 

「分かりました。ギガドラモン」

 

「分かった」

 

ギガドラモンは行き先をホーリーエンジェル城からホスピタウンへと変えて全速でホスピタウンに向かう。

 

ホーリーエンジェル城よりもホスピタウンの方が近い。

 

これならば、デーモン城に少しは早く戻れる。

 

その頃、デーモン城では、オメガモンとアルカディモンとの戦闘が続けられていた。

 

オメガモンはアルカディモンに攻撃を入れつつ、反撃して来るアルカディモンの攻撃を回避していた。

 

「どうした?秀人、いつまでそうして遊んでいる気だ?アルカディモンを倒して俺を止めるんじゃなかったのか?ハハハハハ‥‥」

 

ネオは皮肉を込めつつ高笑いをしながら秀人に言い放つ。

 

「くっ‥‥」

 

「まぁ、貴様らの魂胆など俺には端から分かっているけどな。大方、増援を待っているのだろ?」

 

「何!?」

 

「ネオ…貴様どうしてそれを!?」

 

「ハハハハ…俺を甘く見るなよ。お前らの考え何てお見通しだ。オメガモン単体で勝てないのであるならば、数で圧倒するつもりだろう?」

 

「ちっ、分かっていたか‥‥」

 

「本当なら今すぐに潰してやってもいいんだけどな、究極体となったアルカディモンのデビュー戦だ。たっぷり楽しもうじゃないか」

 

ネオはどこまでも高みから人を見下した態度で応答する。

 

何があろうと自分とアルカディモンは負けるつもりがないのか?

 

だが、一方でネオの言うことも事実であるから反論が出来ない。

 

すると何者かが近づいて来た。

 

「あんたの思い通りにはさせないよ、ネオ!!」

 

「「マリ!!」」

 

マリとロゼモンがデーモン城に到着したのだ。

 

揃ったエイリアスⅢ…ピエモンが居ないがこれで何とか一応の迎撃態勢は整った。

 

すぐさまマリは秀人とシグマの傍に降りた。

 

「二人とも大丈夫かい!?」

 

「あ、ああ…何とかな」

 

「マリ、気を付けろ。ガルルキャノンさえ効かなかったアルカディモンだ。他にもどんな能力があるか分からないぞ」

 

「分かっているわ。ネオ、私が来たからにはあんたの思い通りにはさせないからね!!」

 

「ふん、所詮貴様らなど、究極体を引き連れて来ようが烏合の衆だ。行け、アルカディモン…そいつらを始末してやれ」

 

「来るよ、秀人…」

 

「ああ」

 

「ふん、見ていろよ…」

 

ネオはニヤリと嗤った。

 

一方、タイチはゼロ丸の回復が出来ておらず、待機状態が続いており、歯痒い思いだった。

 

そんなタイチたちの元へ飛んでくる者が居た。

 

「久しぶりじゃのう、タイチ、ガーボ」

 

「「ジジモン先生!!」」

 

「先生、こちらに一体何の用で?」

 

ガーボがジジモンに来訪理由を尋ねる。

 

「うむ、ゼロのオーバーライトを強く感じての…どうしても心配になったのじゃ。ついさっき、空でミコトとも会ってのう‥‥」

 

「ミコトと?」

 

「ああ、彼女にはホーリーエンジェル城ではなくホスピタウンに向かってもらい、ホーリーエンジェル城への伝令はホスピタウンのデジモンに頼むように言ってある。ホスピタウンへ伝令が終わり次第、ミコトにはデーモン城に向かってもらう様に言ってある」

 

「そうですか‥‥」

 

「それで、ワシが此処に来たのはゼロが完全に回復したら調べさせてほしいことがここにあるのじゃ」

 

「調べさせてほしいこと?」

 

「それはじゃな‥‥」

 

「そうはさせぬ」

 

「そいつが二度と目を覚まさんようにしてやる」

 

そこには二体の仮面を被った悪魔みたいな姿をしたデジモンが現れた。

 

セリフからしてデーモン軍団のデジモンである事は分かる。

 

「な、なんだ!?お前たちは!?」

 

「イガモン、デーモン城であんな姿のモンスターを見たことあるかい?」

 

突然現れたモンスターにジジモンは驚愕し、ガーボはイガモンにデーモン城でこの手のモンスターを見た事があるかを尋ねる。

 

「いや、拙者もデーモン城に潜入していた時にこのような姿のモンスターは見たことないでござるな」

 

しかし、イガモンも眼前に居るモンスターたちは初めて見るモンスターだった。

 

「我々はネオデビモン」

 

「ネオ様から貴様たちを倒すように託って来たのだ」

 

「ネオデビモン!?」

 

「こいつら、普通のデジモンじゃないぞ‥‥」

 

「その通り」

 

「我々はネオ様が作り出した新たなモンスター‥‥人造デジモンだ」

 

「なんだって!?」

 

「人造デジモン!?」

 

「ネオの奴、自分でデジモンを造り出していたのか‥‥」

 

「おしゃべりは此処までだ」

 

「全員、死んでもらうぞ」

 

「ゼロ丸さんたちには指一本触れさせない!!」

 

ネオデビモンたちの前にバードラモンが立ち塞がる。

 

「メテオウィング!!」

 

バードラモンが上空で羽ばたき、燃え盛る隕石の群れがネオデビモンたちに向かって降り注ぐ。

 

しかし、ネオデビモンたちは冷酷な笑みを浮かべたまま、その炎の雨を鋭い爪で易々と切り裂いてみせた。

 

「なっ…!?」

 

「成熟期風情の攻撃が、ネオ様の叡智の結晶である我々に通じると思ったか?」

 

「愚かな鳥め、落ちろ!」

 

「「ギルティクロウ!!」」

 

二体のネオデビモンが両手から放った漆黒の爪撃「ギルティクロウ」が、無防備なバードラモンの巨体を容赦なく襲う。

 

「ピィィィィッ!!」

 

「バードラモン!!」

 

悲鳴を上げて地に墜落するバードラモン。

 

進化したばかりで必死に戦った彼であったが、完全体クラスの強さを持つ人造デジモンとの間には、いかんともしがたい絶望的な戦力差があった。

 

「おのれ、よくもバードラモンを!」

 

ジジモンが杖を構え、ネオデビモンたちの前に立ち塞がる。

 

究極体であるジジモンの放つただならぬ気迫に、ネオデビモンたちも一瞬動きを止めた。

 

しかし、彼らはすぐさま二手に分かれ、狡猾な連携攻撃を仕掛けてきた。

 

「老いぼれが、無理をするな!」

 

一体がジジモンの正面から素早い連撃を放ち、気を引く。

 

ジジモンは巧みな杖さばきでその猛攻を防ぐが、老体故のほんの一瞬の隙を、もう一体が見逃さなかった。

 

「もらったぞ! ネオ様の障害となる蒼い竜はここで始末する!」

 

「しまっ……!」

 

ジジモンの死角を抜け、もう一体のネオデビモンが一直線に治療ボックスへと向かって飛翔する。

 

「ゼロ!!」

 

タイチの悲痛な叫びが響く。

 

無防備に眠るゼロ丸の頭上へ、ネオデビモンの凶悪な「ギルティクロウ」が深々と振り下ろされた。万事休すかと思われた、その瞬間――。

 

バツゥゥゥンッ!!!

 

治療ボックスの強化ガラスが内側から粉々に弾け飛び、強烈な光と衝撃波が周囲を吹き飛ばした。

 

「な、なんだ!?」

 

ギルティクロウを振り下ろしたネオデビモンの動きがピタリと止まる。

 

いや、正確には止められたのだ。

 

砕け散った破片とスモークの中から現れた太く逞しい腕が、ネオデビモンの鋭い爪をガッチリと受け止めていた。

 

「……ふぁ~あ。せっかくいい気持ちで寝てたってのによぉ~」

 

「ゼロ!!」

 

タイチの顔にパッと歓喜の色が広がる。

 

そこには、大技の反動による深刻なダメージから完全に回復し、底知れぬ闘志をみなぎらせた相棒・ゼロ丸が立っていた。

 

「寝起きにコソコソとボクに手ぇ出してんじゃねぇよ、三流悪魔!!」

 

「ば、馬鹿な!? この私のギルティクロウを片手で……ぐあっ!?」

 

驚愕するネオデビモンに答える間も与えず、ゼロ丸のもう片方の拳が唸りを上げてその顔面に深く突き刺さった。

 

メキィッ! という鈍い音と共に、完全体クラスの人造デジモンがまるで紙くずのように吹き飛び、激しく地面に叩きつけられてそのままデータとなって消散する。

 

「な、なんだと!?たった一撃で‥‥」

 

残ったもう一体のネオデビモンが、信じられないものを見るように後ずさった。

 

「タイチ! 目覚めの準備体操だ、一気にいくよ!」

 

「ああ! 頼むぜ、ゼロ!!」

 

テイマーとパートナーデジモンの呼吸が完全に同調する。

 

タイチが力強く腕を振り下ろすと同時、ゼロ丸の口元に超高熱のV字型エネルギーが凄まじい勢いで収束していく。

 

「消えな! ブイブレスアロー!!」

 

ゼロ丸の口から放たれた極太の閃光が、夜の闇を切り裂いて一直線にネオデビモンへと直撃した。

 

「ギャアアアアアッ!?」

 

断末魔の叫びを上げる暇すらなく、残る一体もブイブレスアローの圧倒的な威力の前に完全に消し飛んだ。

 

静寂が戻った周囲を見渡し、ゼロ丸はニカッと白い歯を見せて笑い、タイチへ親指を立てた。

 

「待たせたね、タイチ!」

 

「おせーよ、バカ野郎!」

 

タイチもまた、頼もしい相棒の完全復活に、いつもの不敵な笑みを取り戻していた。

 

ネオからの刺客を片付けた後、タイチはバードラモンの手当てをしながらジジモンに尋ねる。

 

「それで、ジジモン先生。ゼロに聞きたい事ってなんです?」

 

「最近、ゼロに何か変わった事は起きなかったか?」

 

「変わった事?‥‥あっ、そう言えば、ゼロの奴、ドラゴンインパルスって技を使ったんだ」

 

「ドラゴンインパルスじゃと?‥‥古代種は時に自身の肉体でも制御できない技を生み出すことがあるんじゃ。どれ、調べてみよう」

 

「ええ‥ただ、秀人って言うテイマーはその技はゼロ丸の寿命を縮めるからもう使わない方が良いって言っていた」

 

するとジジモンは杖を使ってゼロ丸のデータを調べてみた。

 

すると意外な発見があった。

 

「ふうむ、これは…あの特殊なオーバーライトがゼロのエネルギーを活性化させておる。きっと今ゼロの肉体はそれに合わせて適応しようとしておるんじゃ」

 

「え、それってつまりどういうこと?」

 

「驚くべきことにパワーアップを遂げておるのじゃ」

 

「やった!!タイチ、ボク、パワーアップしているんだって!!」

 

『パワーアップ』という単語を聞いて喜ぶゼロ丸。

 

「じゃが、素直には喜べんぞ」

 

「えっ?」

 

「その秀人というテイマーの言う通り、もう二度とドラゴンインパルスは使うな、確実にゼロの寿命が縮まるぞ」

 

「わ、分かった」

 

「そんな、折角ゼロはパワーアップしたのに、あの技を二度と使えないなんて‥‥」

 

ガーボは残念そうに言うが、

 

「へっへー、パワーアップしたなら大丈夫さ!!あんな技使わなくたって勝てるよ!!ねぇ、タイチ?」

 

「ああ、そうだな」

 

「よし、じゃあゼロ、ガーボ、さっさとデーモン城へ行くぞ!マリたちが待っているはずだ!!」

 

「うん」

 

「タイチ、僕やイガモンはジジモン先生と一緒にホーリーエンジェル城に行ってこの状況について話し、戦える準備しておくよ」

 

「気を付けて行くんじゃよ~!!」

 

バードラモンはイガモンとジジモンを連れてホーリーエンジェル城へと向かう。

 

タイチ、ゼロ丸、ガーボはデーモン城へと向かった。

 

その頃、決戦の地であるデーモン城の空中では、究極体デジモン同士の激闘が繰り広げられていた。

 

マリの参戦によって、かつて「エイリアスⅢ」として恐れられた最強のテイマーたちのうち、二人が再び肩を並べる形となった。

 

しかし、その眼前に立ち塞がる究極体デジモン、アルカディモンの放つ威圧感は、これまでの敵とは文字通り次元が違っていた。

 

不気味に蠢く異形の肉体、底の知れない禍々しいオーラ。オメガモンとロゼモンという二体の究極体を同時に相手にしながらも、その佇まいには絶対的な強者の余裕が漂っている。

 

「行くよ、秀人。ロゼモンとオメガモンのコンビネーションで奴を仕留めるわよ!!」

 

マリがデジヴァイスを強く握りしめ、鋭い声を張り上げた。

 

「ああ!!」

 

秀人もこれに応じる。

 

失ったはずの絆を取り戻した今の彼らに、迷いはない。

 

「ガルルキャノン!!&グレイソード!!」

 

「フォービドゥンタンプテーション!!」

 

聖騎士と妖精型の究極体が、息の合った連携で一斉にアルカディモンへと襲い掛かる。

 

美麗な薔薇の花弁が舞い散る中、オメガモンの放つ絶対零度の冷気と一閃の剣撃が同時に炸裂する――かに見えた。

 

しかし、そんな猛攻を前にしても、ネオは冷酷な薄笑いを浮かべたままであった。

 

「フッ、無駄だと言っているだろう?」

 

アルカディモンは身じろぎ一つせず、ただその巨大な両腕を一振りした。

 

ズガァァァンッ!!!

 

それだけで、オメガモンとロゼモンが放った必殺のエネルギーは霧散し、二体の巨体はラグドールのように簡単に払いのけられてしまった。

 

「くっ、なんというデタラメな腕力だ……!」

 

秀人が歯噛みする。

 

だが、ここで引き下がるわけにはいかない。

 

「まだよ! ソーンウィップ!!」

 

吹き飛ばされながらも、ロゼモンが空中で体勢を立て直し、茨の鞭を鋭くしならせた

 

放たれた鞭は正確にアルカディモンの左足を捉え、その自由を奪うように何重にも強く巻き付く。

 

「奴の動きは封じた!!今だ、オメガモン!」

 

後ろでデジヴァイスの画面を凝視していたシグマが好機を捉えて叫んだ。

 

「よし、奴にダメージが行っているぞ。そのまま攻撃を続行だ!!」

 

「オッケー!!」

 

マリの言葉に、秀人も即座に呼応する。

 

「畳み掛けろ、オメガモン!!」

 

秀人はシグマの指示通り、アルカディモンに反撃の隙を与えないよう、休む間もなくオメガモンを突撃させた。

 

グレイソードが鋭い軌跡を描き、アルカディモンの肉体を何度も切り裂いていく。

 

「ぎ…ギギ……」

 

アルカディモンの口から、苦悶とも取れる不気味な軋み声が漏れる。

 

「ふん、逃がさないわよ……!」

 

ロゼモンはさらに鞭を引き絞り、アルカディモンの動きを完全に封じ込めようと全エネルギーを注ぎ込む。

 

勝機が見えたかと思われた。

 

しかし、それはあまりにも浅はかな希望に過ぎなかった。

 

「……フッ、その程度か?」

 

ネオの冷たい声が響いた瞬間、アルカディモンが不気味に目を光らせた。

 

バキバキバキッ!!!

 

驚くべきことに、アルカディモンはただ脚に力を込めただけで、ロゼモンが絶対の自信を持つ茨の鞭をまるで蜘蛛の糸でも引き千切るかのように簡単に解いてしまったのだ。

 

「「何!!?」」

 

秀人とマリが同時に息を呑む。

 

動きの自由を取り戻したアルカディモンの行動は、電光石火だった。

 

肉薄していたオメガモンの懐へ一瞬で潜り込むと、その分厚い装甲の隙間――鳩尾へと容赦のないキックを叩き込む。

 

「がはっ……!?」

 

最強の聖騎士たるオメガモンが声を詰まらせて、くの字に折れ曲がり、遥か後方へと消し飛んでいく。

 

さらにアルカディモンは、手元に残っていた茨の鞭の端を荒々しく掴むと、力任せに引き寄せた。

 

「きゃああっ!?」

 

引っ張られるまま、無防備に引きずり出されるロゼモン。

 

そこへ、アルカディモンの凶悪なカウンターの左ジャブが容赦なく炸裂した。

 

ドゴォォォンッ!!!

 

「う…うわああ!!!?」

 

悲鳴を上げながら、ロゼモンは凄まじい衝撃と共にデーモン城の頑強な岩場へと叩きつけられた。

 

激しい土煙が舞い上がり、岩盤が蜘蛛の巣状に砕け散る。

 

「ロゼモン!!」

 

マリが悲痛な声を上げる。

 

煙の向こうで、ロゼモンは全身の装甲を大破させ、かろうじて息をしているような有り様だった。

 

究極体同士の戦いであるはずなのに、あまりにも一方的すぎる蹂躙。

 

「ふん、ロゼモンでさえも、こいつの力試しには不十分だな」

 

ネオは冷徹な視線を這わせ、哀れむような口調で言い放った。

 

「さあ、お前たち…まだ遅くはない。人間世界に帰るなら今だぞ。そこまで頑なに固執しなくてもいいだろう?貴様らの育てたモンスターなぞ、いずれもアルカディモンの敵ではなく餌にしかならない」

 

「くっ…!」

 

マリは悔しさに唇を噛み締め、溢れそうになる涙を堪えるように目を閉じた。

 

自身のパートナーを究極体まで育成させたプライドも、目の前の圧倒的な現実の前に打ち砕かれそうになっていた。

 

しかし――その絶望の淵から、泥まみれの妖精が再び立ち上がった。

 

「……私たちを……甘く見ないでよ……ネオ!!」

 

ふらつきながらも、ロゼモンが鋭い眼光をネオへと向ける。

 

その身体からは、残された生命エネルギーがパチパチと火花を散らして燃え上がっていた。

 

「ロゼモン…あんた、まだ……!?」

 

驚き、制止しようとするマリ。

 

だが、ロゼモンの決意は揺るがなかった。

 

「マリは素晴らしいテイマーよ……あなたなんかより、ずっとね!! 誰にも……誰にもマリを馬鹿にさせないわ!!」

 

その言葉は、かつて冷酷な勝利だけを求めていた「エイリアスⅢ」としての決別であり、テイマー・マリへの心からの愛と信頼の証明だった。

 

「はああああああっ!!」

 

ロゼモンは残る全ての力を振り絞り、文字通り命を懸けた最後の特攻を仕掛けた。

 

「止めろ、ロゼモン!!」

 

秀人とオメガモンが叫ぶが、もう誰にも彼女を止められない。

 

次の瞬間――肉薄したロゼモンの胸をアルカディモンの鋭利な爪が容赦なく貫いた。

 

ドスッ……という生々しい音がデーモン城の空に響き渡る。

 

「がはっ……!」

 

口から鮮血(データ)を吐き出すロゼモン。

 

しかし、彼女の瞳から光は消えていなかった。

 

ネオが、そしてアルカディモンが勝利を確信したその刹那、ロゼモンはアルカディモンの左腕に自身の身体ごと茨の鞭を固く、二度と解けないように巻き付けた。

 

「オメガモン‥‥後は……任せるわ。絶対に‥アルカディモンを倒してね……!!」

 

ロゼモンの凄絶な笑みがマリの瞳に焼き付く。

 

「はああああああああああ!!!」

 

ズシャァァァァッ!!!

 

自らの身体が消滅していくエネルギーを利用し、ロゼモンは鞭諸共、アルカディモンの巨大な左腕を根元から強引に引き千切った。

 

「ギ、ギガァァァァァッ!?」

 

想定外の痛撃に、初めてアルカディモンが激昂の咆哮を上げる。

 

そしてロゼモンは、引き千切った左腕と共に、光の粒子となってゆっくりと城の底へと落ちて行った。

 

「ロゼモン!! バカ!!そんな形で死んで欲しくないのに!!」

 

マリはその場に膝をつき、激しく地面を叩きながら泣き崩れた。

 

パートナーを失うかもしれないと言う喪失感と絶望が彼女の心を限界まで締め付ける。

 

アルカディモンは左腕を失ったものの、その再生能力を始めようと全身のデータを波打たせていた。

 

「チッ、ロゼモンめ……鬱陶しい真似を」

 

ネオが不快そうに眉をひそめた、その瞬間だった。

 

シグマの持つパソコンがデーモン城に向かって来るデジモンの反応を捉える。

 

「上空から何かが来るぞ!!」

 

「タイチとゼロ丸か?」

 

突如としてデーモン城を包み込んだのは、絶望を切り裂くような、あまりにも強大で、温かい光の波動だった。

 

「諦めるな!!ロゼモン!!」

 

吹き荒れる暴風と共に、上空の雲を割って現れた巨影。

 

ホスピタウンへの決死の伝令を瞬く間に終え、約束通り戦場へと舞い戻ったミコトと相棒・ギガドラモンが、眩いエネルギーの奔流を纏いながら、ついにデーモン城へと到着した。

 

空中落下しているロゼモンをギガドラモンは背中で受け止める。

 

「ミコト!?あんた、どうして此処に?ホーリーエンジェル城に向かったんじゃないの!?」

 

「途中でジジモン先生に会い、ホーリーエンジェル城への伝令はホスピタウンのデジモンに頼みました」

 

傷ついたロゼモンを抱きかかえながらミコトはマリにこの短時間でデーモン城にもどった訳を話す。

 

「久しぶりだな‥‥メタルファクトリー以来だ‥‥どうやら完全体に進化できたようだが、今のアルカディモンは究極体のデジモンだ‥‥究極体のロゼモン、オメガモンでさえも苦戦したアルカディモンに完全体のギガドラモン程度で、お前は勝てると思っているのか?しかもロゼモンは既に瀕死の状態だ。そんなお荷物を捨てれば、0%から0.01%くらいは勝率が上がるかもしれないぞ」

 

「ロゼモンはお荷物じゃない。それに私のギガドラモンはただのギガドラモンじゃない」

 

「ほう?どう違う?」

 

「私のギガドラモンは、貴方が見捨てたあのメタルグレイモンさんの想いと力を引き継いでいるんだから!!私のギガドラモンは絶対に負けない!!」

 

「その通りだ!!」

 

ミコトの悲痛な、しかし力強い叫びに呼応するように、ギガドラモンもまた鼓膜を震わせる雄叫びを上げた。

 

その目には、圧倒的な力を持つ究極体アルカディモンを前にしても、微塵の恐怖も宿っていない。

 

「フン、下らない。敗北者の未練が融合したところで、このアルカディモンの前では塵と同じだ。その無駄な希望ごと、地の底へ叩き落としてやる」

 

ネオが冷酷に指を鳴らした瞬間、アルカディモンの右腕がミコトとギガドラモンを粉砕すべく高く振り上げられた。

 

その時だった。

 

「誰がやらせるかよ!! ブイウィングブレード!!」

 

上空から放たれた極太のV字型エネルギーが夜の闇を切り裂き、アルカディモンの右腕を真横から強烈に弾き飛ばした。

 

「チッ……!」

 

ネオが忌々しげに舌打ちをし、上空を見上げる。

 

「タイチ! ゼロ!!」

 

秀人とマリの顔に、パッと希望の光が差した。

 

「遅れて悪かったな、みんな!」

 

風を巻き起こし、青き竜――反動によるダメージから完全に回復し、さらなるパワーアップを遂げたゼロ丸が、タイチとガーボを乗せてデーモン城の空中庭園へと降り立った。

 

ゼロ丸の全身からは、限界を超えたオーバーライトの力が陽炎のように力強く立ち上っている。

 

「ゼロ丸……! よかった、無事だったのね……!」

 

傷ついたロゼモンを抱きかかえながら、マリが安堵の涙を零す。

 

「へっへー、ボクがこんな所でいつまでも寝込んでいるわけないだろ? マリのロゼモンも、すっげー頑張ったな! 後はボクたちに任せてよ!」

 

ゼロ丸はニカッと白い歯を見せて笑い、アルカディモンへと鋭い視線を向けた。

 

「……ようやく現れたか、八神太一。だが、傷ついた手駒がいくら集まろうと結果は変わらん。アルカディモンの餌が増えただけのことだ」

 

ネオはタイチとゼロ丸を見下ろしながら、あくまで高みから見下すような態度を崩さない。

 

「ネオ……お前の野望もここまでだ。これ以上、お前の好き勝手な理由でデジタルワールドやデジモンたちを傷つけさせない!」

 

タイチが真っ直ぐにネオを睨み据える。

 

その時、城の入り口付近から切羽詰まった声が響き渡った。

 

「お兄ちゃん、もうやめて!!」

 

その声に、秀人とシグマが弾かれたように振り返る。

 

「そ、その声は……レイ!?」

 

崩れかけた城のゲートから姿を現したのは、隔離されていたはずのネオの実妹・レイだった。

 

彼女の背後には、道案内をしたらしいプチマモン姉弟(パルとプル)が怯えながらも必死に寄り添っている。

 

「秀人君!シグマさんも!」

 

息を切らしながら駆け寄るレイを、秀人は信じられない思いで迎え入れた。

 

(レイ……自力で脱出してきたのか!? 無事でよかった……!)

 

「お兄ちゃん、お願いだからもうこんな恐ろしいことはやめて! デジモンたちは生きているのよ、ただのデータなんかじゃないわ!」

 

レイは空中でグリフォモンに跨るネオに向かって必死に叫んだ。

 

妹からの魂の叫び。

 

しかし、ネオの瞳に妹を案ずる色は一切浮かばなかった。

 

「……レイ、何故大人しく部屋に居なかった?それに俺の計画は俺一人よがりの計画ではない‥‥俺の計画は‥‥」

 

「お兄ちゃんの計画なんて知らないけど、デジモンを虐めている事には変わりないじゃない!?デジモンを虐める事がお兄ちゃんの計画なの!?」

 

「レイ、どうして分かってくれない!?」

 

「ネオ、もう止めよう!!やっぱり俺たちが間違っていたんだ‥‥」

 

「ヒデ、お前もか!?」

 

秀人としては、かつての親友が、ここまで冷酷な狂気に呑み込まれてしまったことが許せなかった。

 

(俺が……俺がもっと早くこいつの心の闇に気づいていれば……こんなことには!)

 

「レイや秀人の言う通りだ、ネオ! お前は間違っている!!」

 

タイチが一歩前へ踏み出す。

 

「デジモンは俺たちの大切なパートナーだ! それをただの道具扱いするお前に、俺とゼロは絶対に負けない!!」

 

「行くよ、タイチ!! ボクの新しい力、見せてやる!!」

 

「ああ」

 

ゼロ丸が両拳を打ち鳴らし、底知れぬ闘志を爆発させる。

 

ミコトと想いを継ぐギガドラモン。

 

満身創痍ながらも再び剣を構える秀人のオメガモン。

 

そして完全に復活を遂げたタイチのゼロ丸。

 

レイという絶対に守るべき存在も合流し、テイマーたちの心はかつてないほど強く一つに結ばれていた。

 

一方のアルカディモンは、ロゼモンに引き千切られた左腕の断面からおぞましいデータを波打たせ、瞬く間に新たな腕を不気味に再生させていく。

 

「俺の理想を理解できないバグどもが!!せいぜい吠えていろ!!その無駄な絆ごと、すべてを無に還してやれ、アルカディモン!!」

 

究極体となった最凶の悪魔と決して諦めない心を持つテイマーたち。

 

デジタルワールドの存亡を懸けた最後の死闘が、いよいよ真の幕を開けようとしていた。

 

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