デジタルワールドでの過酷な冒険を生き抜き、現実世界へと帰還した八神太一をはじめとする「選ばれし子供たち」。
彼らがお台場で束の間の平和な日常を取り戻す一方、別の場所で静かに、しかし確実に、新たなる運命の歯車が回り始めていた。
石田ヤマトの妹・ミコト。
彼女はその身に『魔王の因子』という恐るべき闇の力を宿し、一年中桜の咲き誇る初音島の病院で、孤独な「テイマー」として相棒のデジモン・ジーク(チビモン)と共に、人知れず己の闇と戦い続けていた。
妹の身を案じ、初音島へと急行したヤマトと太一。
だが、大好きな兄をこれ以上過酷な運命に巻き込むまいと決意したミコトは、完璧な「嘘」と笑顔で兄たちの目を欺き通す。
デジヴァイスが反応しなかったことから、子供たちは安堵して日常へと戻っていく。
ただ一人、太一の妹である八神ヒカリだけが、兄たちの服に残る微かなデジモンの残り香と、背筋が凍るような『悪いもの』の気配を察知し、言葉にできない不安を抱え込むこととなった。
そして迎えた、9月1日の新学期。
お台場で太一たちが再びありふれた平穏を満喫していたその裏側で、初音島の水越総合病院は突如として「凍れる地獄」へと変貌する。
ミコトの奥底で爆発的に活性化した闇の因子に引き寄せられ、デジタルワールドの深淵から凶悪なデジモン、アイスデビモンが急襲してきた。
病院に居る無関係な人々を巻き込むまいと、ミコトはジークを成熟期・デビドラモンへと進化させ、海岸線へとアイスデビモンを誘導する。
しかし、圧倒的な氷の力の前にデビドラモンは身体の半分を凍らされ、行動不能になってしまう。
絶体絶命の危機、アイスデビモンの凍てつく魔の手がミコトに襲い掛かろうとしたその瞬間――ミコトの魂の輝きと、初音島に満ちる『枯れない桜』の力が、彼女の中の魔王の因子を根本から変異させ、臨界点を突破した。
噴き上がる闇のオーラが形作ったのは、デーモンではない、漆黒の翼を宿した妖艶なる美しき女性のシルエット。
「これは妾の器ぞ‥‥気安くふれるでない。消え去れ、下郎が!!」
絶対的な威厳に満ちた女性の声と共に放たれた圧倒的な闇は、アイスデビモンを一瞬にしてデータへと分解、消去してしまう。
「妾はしばらくまた眠るとする。またいつか会おうぞ、ミコト」
不気味で妖艶な笑い声と共に闇は去り、ジークの氷も溶けた。
しかし、ミコトの胸に残ったのは、己の内に眠る闇が「デーモンとは別の、より不可解で強大な何か」へと変貌を遂げてしまったという、言いようのない戦慄だった。
兄たちの預かり知らぬところで、少女の過酷な運命は、予測不可能な方向へと大きく狂い始めていく――。
『――昨夜未明、初音島の海岸線において、局地的な急激な気温の低下と、何らかの爆発によるものと思われる大規模な破壊痕が発見されました。現在も警察による調査が続いていますが、犯人や原因は不明であり……』
お台場のマンションで朝食を食べながら朝のニュースを何気なく見ていたヤマトはこのニュースを聞いて絶句する。
(初音島の海岸……爆発……!? まさか、デジモンの仕業じゃあ……!)
異常な冷気と破壊痕。
普通の人間や自然現象では不可解な事件にしか思えなくても、過酷なデジタルワールドを生き抜いてきた彼らには、それがデジモンの持つ特殊な能力による爪痕である可能性が高いと直感できた。
しかも、場所はミコトがいる初音島だ。
ヤマトの脳裏に、最悪の想像が渦を巻き始めていた。
その日の放課後、三軒茶屋の小学校に通っているタケルは物理的に不参加、そしてヒカリは掃除当番なので、この二人を除く選ばれし子供たちは、人気のない図書室の奥のテーブルに集まっていた。
ヒカリには家に戻った後で太一が伝える事になった。
「……なるほど。僕たちが夏期講習や旅行でいない間に、ヤマトと太一で初音島に行っていたのか……」
「ごめんね、丈先輩、ミミちゃん。連絡しようと思ったんだけど、二人とも忙しそうだったし、結局あの時はデジヴァイスにも何も反応がなかったから……」
夏期講習で勉強漬けだった丈と家族で海外旅行に行っていたミミに対し、光子郎と空がこれまでの経緯を説明していた。
その横で、ヤマトは光子郎から借りた携帯電話を耳に当て、苛立たしげに貧乏ゆすりを繰り返していた。
「……はい、はい。そうですか。……ええ、ニュースを見て心配になったもので……本当に、妹の病室や病院の周辺には何も異常はなかったんですね? ……わかりました。お忙しいところ、ありがとうございました」
『ピッ』と通話終了のボタンを押し、ヤマトは深く、ひどく重い安堵の息を吐き出した。
「どうだった?ヤマト」
太一が身を乗り出して聞くと、ヤマトは携帯電話を光子郎に返し、首の裏をさすりながら答えた。
「……病院の看護師さんに確認した。ミコトは無事だ。体調も落ち着いているし、昨夜の事件の時間帯も、ずっと病室で寝ていたらしい。病院自体にも被害は窓ガラスが何枚か割れただけで大した被害はないってさ」
「そうか……よかったな、ヤマト!」
太一が自分のことのように明るく笑う。だが、ヤマトの表情は晴れない。
「……ああ。でも、胸騒ぎが消えないんだ。あの事件の犯人がもしデジモンだとしたら、ミコトのすぐ近くに危険が迫っているかもしれないのに……オレは今、こんな遠くにいる」
今すぐにでも初音島へ飛んでいき、自分の目で妹の無事を確認したい。
しかし、昨日新学期が始まったばかりだ。
小学生や中学生が、親や教師の目を盗んで、平日にフェリーや飛行機を乗り継いで離島へ向かうなど、物理的に不可能に近かった。
警察に見つかれば補導されてしまうかもしれない。
そのもどかしさが、ヤマトの心を黒く焦がしていた。
「……あの、ちょっと待ってくれないか」
重苦しい空気の中、丈が困惑したように手を挙げた。
横ではミミも、目をぱちくりとさせている。
「さっきから話に出てくる。その『ミコト』って……誰なの?」
「光子郎君の話を聞いていて、なんとなく状況はわかったけど……太一さんたちの知り合い?」
丈とミミの純粋な疑問に、太一とヤマトは顔を見合わせた。
空が苦笑しながら、二人に説明を補足する。
「丈先輩、ミミちゃん。ミコトちゃんっていうのはね……ヤマト君の、妹さんなのよ」
「「えっ!?」」
丈とミミの大きな声が図書室に響き、空が慌てて「しーっ!」と人差し指を口に当てる。
「い、妹!? ヤマトに妹がいたの!?」
丈はまるで世界の真理がひっくり返ったかのような驚愕の表情を浮かべた。
「ミコトはタケルの双子の妹で、両親が離婚した時に、父親の方に引き取られたんだ。ずっと身体が弱くて、今は初音島の病院で療養している」
ヤマトが気まずそうに視線を逸らしながら言うと、ミミは「そうだったんだ……」と痛ましそうに眉を下げた。
そして、光子郎がパソコンの画面をみんなに向けながら口を開く。
「先ほどのニュースの件ですが、僕がネットで初音島周辺の電波状況や磁場の乱れを解析したところ、昨夜の深夜に、間違いなく『巨大なデジタルデータの波形』が観測されていました……つまり、初音島にデジモンが現れたことは、ほぼ確実です」
「デジモンの反応があったってこと……!?」
空が息を呑む。
その言葉を聞いた瞬間、ミミの表情がパァッと明るくなった。
「それじゃあ……!デジタルワールドへのゲートが開いたってこと!?それって、またパルモンたちに会えるの!?」
かつてのパートナーとの再会。その魅力的な響きに、丈も太一も、一瞬だけ期待に目を輝かせた。
デジモンが現実世界に現れたということは、デジタルワールドとの繋がりが再び生まれたという証拠でもあったからだ。
「……可能性は、ゼロではありません」
光子郎は冷静に頷き、キーボードを叩いた。
「ただ、僕たちだけで推測しても限界があります。一番確実なのは、デジタルワールドにいるゲンナイさんとコンタクトを取り、初音島にゲートが開いているのか、どんなデジモンが入り込んだのかを尋ねるのが手っ取り早いのですが……」
光子郎のパソコンのメーラー画面は、虚しく「新着メッセージはありません」という文字を表示したままだった。
「僕の方から何とかコンタクトを取ろうと、ゲンナイさんに何度もメールを送っているのですが、ゲンナイさんからの返信(メール)は一向に来ないんです」
「なんだよ、それ……」
太一は後頭部で手を組み、椅子に深く寄りかかって天井を仰いだ。
「肝心な時に、いつも役にたたないんだよな、あの爺……」
悪態をつく太一の隣で、ヤマトは静かに拳を握りしめていた。
初音島で起きている不可解な事件。
無事だと報告された妹。
そして、沈黙を続けるデジタルワールド。
ヤマトは初音島で何かが起ころうと予感した。
その重苦しい空気を打ち破るように、ミミが机から身を乗り出してきた。
「ねえねえ、ヤマトさん、太一さん。そのミコトちゃんって、どんな子なの?」
「あっ、俺が教えてやるよ!」
ヤマトが口を開くより早く、太一がニカッと笑って話し始めた。
「ミコトちゃんはな、すげぇー大人しくていい子なんだよ。小二の子ながらなかなかの美人だぜ……まぁ、うちのヒカリには負けるけどな!」
誇らしげに鼻をこする太一。
しかし、その最後の一言に、ヤマトの眉間がピクッと引きつった。
「……おい、太一。ちょっと待て」
「あん?なんだよ?」
ヤマトは腕を組み、太一を正面から睨み据えた。
「確かにヒカリちゃんは可愛いかもしれないが……家のミコトの方が断然、かわいいに決まっているだろう」
「はぁ!? お前、ヒカリの天使みたいな可愛さがわかんねーの!? あの笑顔は世界を救えるレベルだぞ!」
「ミコトのあの儚げで健気な微笑みこそ至高だ! お前こそ全然わかってない!」
「ヒカリは俺がオムライス作ってやると最高に喜ぶんだよ!」
「ミコトだって、オレがフルーツ籠を渡した時、すっげぇ嬉しそうに笑ってくれたしぃ!」
緊迫していたはずの図書室は、一瞬にして低レベルな「妹アピール合戦」の会場と化してしまった。
「何やっているんですか?あの二人は‥‥」
「やれやれ、また始まったよ‥‥」
光子郎が呆れたようにため息をつき、丈が頭を抱える。
過酷なデジタルワールドの冒険を潜り抜けても、二人の重度の妹への愛情(シスコン)だけは変わらないようだった。
「ねぇ、空さん。ミコトちゃんの写真とかないの? 私も見てみたい!」
ミミが空に尋ねるが、空は困ったように首を横に振った。
「この前ヤマトくんも言っていたんだけど、手元に写真はないみたいなのよ。ずっと離れて暮らしていたしね」
「えぇーっ、残念! どんな美人さんなのか気になるのに!」
ミミは頬を膨らませた後、少しだけ羨ましそうに窓の外の青空を見つめた。
「でもさ、初音島っていいなぁ。デジモンが来るってことは、デジタルワールドへのゲートが開きやすい環境なんでしょう?……私も初音島に行ったら、またパルモンに会えるのかな?」
かつてのパートナーとの再会を夢見るミミの横で、二人の兄バカはまだヒートアップしていた。
「だいたいお前、ヒカリちゃんのこと過保護に甘やかしすぎなんだよ!!」
「お前だってミコトのことになると冷静さゼロじゃねぇーか!?」
「いい加減にしなさいよ、あんたたち!!」
静かな図書室に、空の容赦ない一喝が響き渡った。
ビクッと肩を揺らした太一とヤマトは、般若のような顔で睨みつける空の迫力に一瞬で押し黙り、姿勢を正す。
「そ、そうだよ、二人とも。今はどっちの妹が可愛いか言い争っている場合じゃないだろう……」
丈がオロオロしながら、会話を本筋に引き戻した。
「もし本当に初音島にデジモンが来ているんだとしたら、すごくマズイよ。あのお台場事件(ヴァンデモンの襲撃)みたいに、またデジモンたちが現実世界に来て暴れ回るかもしれないじゃないか……?」
丈の顔には、かつて東京を恐怖に陥れた過酷な戦いの記憶がはっきりと浮かんでいた。
その言葉に、子供たちは再び沈痛な面持ちになる。
現状、彼らの手元には「デジヴァイス」と「紋章」がある。
しかし、肝心のパートナーデジモンがいなければ、野生の狂暴なデジモンに対抗する術など何一つないのだ。
「……やはり、今僕たちにできることは、デジタルワールドの状況を知ることだけです」
光子郎がパソコンの画面を再び確認しながら、力強く言った。
「引き続き、僕の方でゲンナイさんとのコンタクトを試みます……何かわかったら、すぐにみんなに連絡しますから」
「ああ……頼むぞ、光子郎」
太一が真剣な顔で頷き、ヤマトも無言で深く頷いた。
パートナーデジモン不在という圧倒的な無力感の中、お台場の子供たちは見えない脅威への警戒を強めていくのだった。
此処で時間は朝まで巻き戻り、視点は初音島の水越総合病院へと移る。
朝の白々とした陽光が、ビニールシートで応急処置された病室の窓から差し込んでいた。
昨夜、アイスデビモンによって吹き飛ばされた窓ガラスの破片は、夜勤の看護師たちが「突風で割れた」と信じ込み、慌ただしく片付けてくれた。
海岸線での爆発騒ぎも相まって、病院内は朝から妙な胸騒ぎに包まれている。
ベッドの上に三角座りをしたミコトは、消音にした小型テレビのニュース画面をただぼんやりと見つめていた。
『――昨夜未明、初音島の海岸線において、局地的な急激な気温の低下と謎の爆発が起きており、警察では事件とテロの関連を含めて捜査しております……』
画面には、昨夜ミコトとジークが死闘を繰り広げた砂浜が映し出されている。
アイスデビモンが放った絶対零度の爪痕。
そして……ミコトの中から溢れ出した『新たな魔王』が、完全体のデジモンを一瞬にして消し去った、底知れぬ闇の爆心地。
(私が……やったの……?)
ミコトは震える両手を目の前にかざした。
透き通るような白い肌。細く、力のない指先。
しかし昨夜、この手から、いや、この身体の奥底から、空間そのものを腐食させるほどの圧倒的な闇が噴き出したのだ。
ミコトはそっと目を閉じ、昨夜の光景を脳裏に蘇らせた。
荒れ狂う漆黒のオーラの中から現れた、背に黒い翼を持つ女性のシルエット。
両目を静かに閉じ、まるで重力から解放されたかのようにふわりと宙に浮遊するその姿は、おぞましい魔王であるはずなのに、どこか神々しいほどの妖艶さを放っていた。
『妾はしばらくまた眠るとする。またいつか会おうぞ、ミコト』
鼓膜の奥にこびりついた、あの蠱惑的で甘い声がフラッシュバックし、ミコトは「ひっ」と短い悲鳴を上げて両耳を塞いだ。
デーモンの因子は、初音島の『枯れない桜』の力とミコト自身の魂を養分にして、全く別の恐ろしい怪物へと羽化してしまったのだ。
彼女は今も、ミコトの胸の奥底で、静かに、そして確実に息を潜めている。
次に目覚めた時、果たして自分は彼女の意識を抑え込めるのだろうか?
抱いていた不安要素が新たな不安へと変わっていた。
「ミコト……大丈夫か?」
枕元で丸くなっていたチビモンのジークが、心配そうに身を起こしてミコトの指先にすりすりと頬を寄せた。
「……ごめんね、ジーク。起こしちゃった?」
「ううん、僕はずっと起きていたよ。ミコトが震えているのが分かったから」
ジークの温かい体温に触れ、ミコトの目から張り詰めていた涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「ねぇ、ジーク‥‥どうしよう‥‥私の中に居たデーモンがいつの間にかデーモンじゃなくなっちゃった。もっと得体の知れない、恐ろしい女の人に……あんなの、もう私の力じゃどうにもできないかもしれない……ッ」
ミコトはジークを両手で包み込むように抱き寄せ、声を殺して不弱音を吐く。
(あの時、デーモンは確かにデーモン自身の思念が書き換えられたって最後に言っていた‥‥)
(私自身が別の魔王を生み出しちゃったんだ‥‥)
(そして、そいつは私の中に居る‥‥デーモンの代わりとして‥‥)
デジタルワールドを生き抜いたテイマーとしての強がりも、この小さな相棒の前では脆く崩れ去ってしまう。
「ミコト……」
ジークは小さな両手で、ミコトの涙を拭った。
「大丈夫だよ。ミコトがどんな闇に飲み込まれそうになっても、僕が絶対に引きずり出してみせる。僕はミコトのデジモンだ。最後まで、一緒に戦うって決めたんだ」
「ジーク……」
「だから、一人で抱え込んじゃダメだ……なぁミコト、やっぱりヤマトさんに僕やミコトの中に居る奴の事を伝え……」
「それはダメ!!」
ジークの言葉を遮るように、ミコトは強く首を振った。
不安と恐怖が入り混じるその瞳には、恐怖を上回るほどの強靭な意志が宿っていた。
「ヤマトお兄ちゃんには、絶対に言えない。言ってはいけないの‥‥」
ミコトは胸元のパジャマをきゅっと握りしめる。
ニュースでこの初音島の事件を見たなら、遠く離れたお台場にいるヤマトは、間違いなく今頃生きた心地がしていないはずだ。
妹の無事を確認するために、見えない脅威に怯え、焦燥感に駆られているに違いない。
(ヤマトお兄ちゃんは、優しすぎるから)
もし、自分が新たな魔王をその身に宿してしまったと知れば‥‥
もし、その魔王が初音島全体、いや現実世界そのものを脅かす存在になりつつあると知れば‥‥
ヤマトは自分の全てを投げ打ってでも、ミコトを助けようとするだろう。
太一たちを巻き込み、再び血みどろの過酷な戦いへと身を投じてしまう。
やっと手に入れた、普通の小学生としての平和な日常。
それを、自分のせいで奪うことだけは、絶対に許せなかった。
「……私が、決着をつけないと‥‥私の中の『彼女』と……」
ミコトはベッドからゆっくりと降り、ビニールシートの隙間から、島の中心にそびえ立つ『枯れない桜』の大樹を見上げた。
季節外れの桜の花びらが、青空の下で狂おしいほど美しく舞い散っている。
その光景は、ミコトの内に眠る『彼女』の妖艶さとどこか重なって見えた。
「ジーク。私は、強くなるよ。あの『彼女』の力に飲み込まれないくらい、もっと強靭な心を……テイマーとしての力を身につける」
(そうよ‥‥魔王がデーモンから彼女に代わっただけじゃない‥‥)
「……わかった。僕も、もっと思い通りに進化の力を引き出せるように特訓する。二人で、この運命をぶっ飛ばそうぜ」
小さな相棒の力強い言葉に、ミコトはようやく微かに微笑んだ。
お台場で自分の身を案じてくれているであろう、大好きな兄の顔を思い浮かべる。
(待っていてね、ヤマトお兄ちゃん。私が本当の笑顔で、お兄ちゃんに会いに行けるその日まで――)
少女は、決意の眼差しで初音島の空を見つめ続けていた。
放課後の図書室での話し合いを終え、太一がマンションに帰ってきたのは夕暮れ時だった。
リビングで麦茶を飲みながら、太一は図書室での出来事をヒカリに話して聞かせた。
光子郎が観測したデジタル波形。
初音島の不可解な爆発事件。
そして、目に見えて焦燥感を募らせていたヤマトのこと。
「……ってわけでさ、光子郎のやつがゲンナイの爺さんに連絡を取ろうとしているんだけど、全く返事がねぇんだよあの爺‥‥」
太一はドスッとソファに背中を預け、イライラした様子で髪を掻き毟った。
「ヤマトのやつ、ミコトちゃんが無事だって聞いて一応ホッとはしていたけど……絶対、無理して落ち着こうとしていたぜ。あいつ、妹のことになると周りが見えなくなるからな」
「それはお兄ちゃんも同じ様な気がするけど‥‥?」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何でもない」
ヒカリは、太一の向かいの椅子に座ったまま、膝の上で両手をきゅっと握りしめていた。
(やっぱり……私の気のせいじゃなかったんだ)
光子郎のデータは、ヒカリの直感を完全に裏付けていた。
初音島にデジモンが現れた。
それも、ゲートを通って一時的に迷い込んだだけではなく、あの島で「何か」と戦うほどの大きな事件を起こしたのだ。
ヒカリの脳裏に、数日前に玄関で太一たちを出迎えた時の記憶が鮮明に蘇る。
ヤマトの服から漂っていた、あの背筋が凍るような『悪いもの』の気配。
(もし、あの気配の正体が初音島に隠れているデジモンで、ミコトちゃんがそのことを知っているとしたら……)
なぜ、彼女は実の兄であるヤマトに嘘をついたのだろう。
あの気配は、決して友好的なデジモンのものではなかった。
ヒカリの胸をざわつかせ、息苦しくさせるほどの深く暗い闇。そんな恐ろしいものと、病室にいるはずの女の子がたった一人で向き合っているのだとしたら。
「……なぁ、ヒカリ? どうした?怖い顔して」
不意に太一が身を乗り出し、心配そうにヒカリの顔を覗き込んできた。
「あっ……ううん、なんでもないよ」
「なんでもないことないだろう。お前は、そうやって一人で抱え込もうとするじゃないか」
太一の真っ直ぐな瞳が、ヒカリを射抜く。
過酷なデジタルワールドの冒険を経て、太一はヒカリの微かな変化にも敏感になっていた。
兄のその優しさと頼もしさが、今はヒカリの心を激しく揺さぶった。
言えばいい。
「お兄ちゃん、実はヤマトさんが帰ってきた時、デジモンの気配を感じたの。ミコトちゃんは何かを隠しているかもしれない」、と‥‥
そう打ち明ければ、太一は絶対にヒカリの言葉を信じてくれる。
光子郎に掛け合って、すぐにでも初音島へ向かう算段をつけてくれるだろう。
ヤマトだって、ヒカリの感覚がどれほど特別なものか知っているから、迷わず駆けつけるはずだ。
ヒカリの唇が微かに震え、言葉を紡ごうと開かれた。
「お兄ちゃん、あのね。私……」
その時。
『ミコトが危険な目に遭っていないなら、それが一番いい』
不意に、ヤマトが心の底から安堵したように吐き出した、あの優しい声がヒカリの耳の奥に蘇った。
(……ダメだ)
ヒカリはハッとして、口を噤んだ。
太一やヤマトが真実を知れば、間違いなくすぐに行動を起こす。
だが、それは同時に「ミコトが兄を騙していた」という事実を突きつけることにもなる。
ミコトが必死に、たった一人で重い秘密を抱え込もうとしているのなら、そこには絶対に「ヤマトを巻き込みたくない」という彼女なりの切実な理由があるはずだ。
それを、部外者である自分が、不確かな感覚の報告だけで強引に暴いてしまっていいのだろうか。
ヤマトから、あの束の間の安心を奪い去ってしまっていいのだろうか。
「……私?」
太一が続きを促すように首を傾げる。
「……私、ヤマトさんが心配だなって思ったの」
ヒカリはギュッと膝の上の服を握りしめ、自分に言い聞かせるように微笑んだ。
「ヤマトさん、すごく優しいから……ミコトちゃんのことで、また一人で無理しちゃうんじゃないかなって」
太一は少しだけ目を丸くした後、ふっと表情を和らげてヒカリの頭をぽんぽんと撫でた。
「なんだ、そんなことか……まあな、あいつは俺がついてないと、すぐ一人で背負い込もうとするからな。でも安心しろ、俺たちがいる。ヤマトに無茶はさせないさ」
「……う、うん」
太一の手の温もりを感じながら、ヒカリは胸の奥で小さく「ごめんなさい」と謝った。
大好きな兄に嘘をついてしまった罪悪感。
そして、重大な秘密を一人で抱え込むことの恐ろしさ。
(ミコトちゃん……あなたは今も、こんな気持ちで、一人で戦っているの?)
窓の外では、夕日が沈み、お台場の街に夜の帳が下りようとしていた。
ヒカリはポケットの中のデジヴァイスにそっと触れてまだ見ぬヤマトの妹に思いを馳せるのだった。
お台場のマンションを包む夜の帳は、石田家のリビングにも重苦しい影を落としていた。
ヤマトは自室のベッドに腰掛け、机の上の固定電話をジッと見つめている。
テレビ局の仕事で今夜も帰りが遅い父親の代わりに、静まり返った部屋の中で、ヤマトの思考だけが激しく空回りしている。
(本当に、ミコトは大丈夫なんだろうな……)
昼間、図書室で太一と馬鹿げた言い合いをして少しは気が紛れたものの、一人になるとやはりニュースの映像が頭から離れない。
局地的な激しい気温低下と、謎の爆発痕‥‥
光が丘の事件と今年の夏、自分たちがデジタルワールドへ初めて言った時と酷似している。
(もし、あいつがデジタルワールドへ飛ばされたら?)
あれがデジモンの仕業なら、病弱なミコトが巻き込まれたらひとたまりもない。
看護師の「無事だ」という言葉だけでは、どうしても拭いきれない不安が胸を焦がしていた。
その時、静寂を切り裂くように、ジリリリリンと固定電話のベルが鳴り響いた。
「っ……!」
ヤマトは弾かれたように立ち上がり、リビングへ駆けつけて受話器をひったくるように耳に当てた。
「もしもし! 石田です!」
『あっ……ヤマトお兄ちゃん?』
受話器の向こうから聞こえてきたのは、昼間ずっと案じ続けていた、愛おしい妹の、少しこもった可憐な声だった。
「ミコト!? ミコトなのか!?」
受話器を握るヤマトの指先に、思わず力がこもる。
『うん、夜遅くに電話しちゃってごめんなさい。パパは、もう寝ちゃった?』
「いや、親父はまだ仕事で帰ってない。それよりミコト、どうしたんだ!? 体調が悪いのか!? どこか痛むんじゃ……」
『ううん、全然違うよ』
慌てふためくヤマトの言葉を遮るように、受話器の向こうでミコトがクスクスと小さく笑った。
その穏やかな笑い声に、ヤマトの心臓のドクドクという高鳴りが、わずかに落ち着きを取り戻す。
『お昼にね、看護師さんから聞いたの。ヤマトお兄ちゃんがすっごく心配して、病院に電話してくれたって。だから……私の元気な声を直接聞かせてあげたら、ヤマトお兄ちゃん安心してくれるかなって思って。今、公衆電話からかけているんだよ』
「オレを安心させるために……?」
ヤマトは絶句した。
初音島では大騒ぎの事件が起きたばかりだというのに、妹は自分の体調よりも、東京にいる兄の心配を優先して電話をかけてきてくれたのだ。
「ミコト……お前、ニュースは見たか? 病院の近くの海岸で、なんか爆発があったって……病院の窓も割れたって聞いたぞ。本当に、怖い目に遭わなかったか?」
『うん、ニュースはテレビで見たよ。でも、私は全然平気! 昨日の夜はね、すっごく強い突風が吹いて、窓ガラスがガシャーンって割れてびっくりしちゃったけど……私、お布団を頭まで被って、ずっと大好きなぬいぐるみを抱っこして寝ていたから、怪我も何もしてないよ』
ミコトの声は、どこまでも明るく、完璧に「普通の世界の少女」のトーンを保っていた。
もちろん、その「ぬいぐるみ」とは、今も彼女の足元で心配そうに受話器を見上げている相棒・ジークのことだった。
しかし、ヤマトにはそんなことは知る由もない。
『だからね、お兄ちゃん。私は何ともないから安心して』
「……ミコト」
受話器越しに伝わってくる妹の健気な優しさに、ヤマトの胸の奥がじんわりと熱くなった。
それと同時に、日中あれほど彼を支配していた不吉な胸騒ぎが、嘘のように引いていくのを感じていた。
(そうか……やっぱり、オレの考えすぎだったんだな)
光子郎のデータにデジモンらしき反応があったとはいえ、ミコトは事件に全く気づかず寝ていたのだ。
デジヴァイスも反応しなかった。
これ以上、妹の周りに邪悪なデジモンの影を疑う必要などない。
ヤマトは首の裏をさすりながら、ようやくふっと表情を和らげた。
「そっか……悪かったな、ミコト。オレが心配しすぎた。お前が元気なら、それが一番いいんだ」
『うん! 私、お兄ちゃんに声を聞いてもらえて嬉しい……じゃあ、もう遅いから切るね。お兄ちゃんも、学校頑張ってね』
「ああ、お前も無理すんなよ。また近いうちに、太一たちと一緒に遊びに行くからな」
『うん、待っているね。バイバイ、ヤマトお兄ちゃん』
プチッ、という切断音と共に、静かなツーツーという音が受話器から流れ出す。
ヤマトはゆっくりと受話器を置くと、深く、心からの安堵のため息を吐き出した。
リビングの窓から見えるお台場の夜景が、心なしかさっきよりも穏やかに見えた。
まさか、実の妹が『魔王の因子』というおぞましい闇を宿し、昨夜その因子がデーモンとは異なる『不可解で強大な何か』へと変貌を遂げたなどとは――そして、自分を巻き込むまいと必死で完璧な嘘を吐いていたなどとは、ヤマトは微塵も知らなかった。
一方、夜の初音島、水越総合病院の廊下では‥‥
薄暗い照明の中に置かれた公衆電話の前で、二年生の小さな少女――ミコトは、静かに受話器をフックに戻した。
「ぷはぁ……っ」
溜め込んでいた息を一気に吐き出すと、ミコトはその場にへたり込みそうになるのを堪え、胸元のパジャマをきゅっと握りしめた。
心臓が早鐘のように打っている。大好きな兄に、何一つ真実を告げずに嘘を突き通した罪悪感と、声を聞けた安心感が、交互に胸を押し寄せていた。
「ミコト……大丈夫?」
足元の暗がりから、チビモンのジークが顔を覗かせ、心配そうに声をかけてくる。
「うん……大丈夫だよ、ジーク」
ミコトはジークを優しく抱き上げると、誰もいない静まり返った廊下を自分の病室へと歩き始めた。
(お兄ちゃん、ホッとしてくれていた……これでいい‥これでいいの。お兄ちゃんたちは、もう戦わなくていいんだから)
病室に戻り、ビニールシートの貼られた窓辺に立つ。
外は深い闇。
しかし、島の中央で狂おしく舞い散る『枯れない桜』の花びらは、夜の闇の中でも妖しく視界に映り込んでいた。
その美しさを見るたびに、昨夜、アイスデビモンを一瞬で消滅させた『あの女性』の冷徹で妖艶な声が、脳裏にリフレインする。
――『これは妾の器ぞ……気安くふれるでない』――
ミコトはそっと自分の胸に手を当てた。
彼女は今も、自分の中に確実に居る。デーモンのように破壊を貪る衝動ではなく、もっと底の知れない、冷たい静寂を孕んだ闇として。
(私は負けない。お兄ちゃんたちの平穏を護るためなら、どんな嘘だって吐く。私の中にいるのが何者だろうと……絶対に、私の全部を渡したりしない!)
「ジーク。明日から、また特訓、頑張ろうね」
「おう! 僕、ミコトを泣かせる奴は、中の中にいる奴だって絶対に許さないからな!」
相棒の頼もしい言葉に、ミコトは今度こそ、偽りのない本当の笑顔を微かに浮かべた。
お台場の兄が信じてくれた「平穏な妹」であり続けるために。
少女はただ一人、自らの内に潜む深淵と対峙する覚悟を、静かに、しかしより一層強く固めるのだった。
翌日の放課後。
お台場の小学校に通う選ばれし子供たちは、今日も人目のつかない図書室の奥のテーブルに集まっていた。
昨日、あれほどギリギリと張り詰めていた図書室の空気は、今日は嘘のように穏やかだった。
その最大の要因は、テーブルの端で頬杖をついているヤマトの表情にある。昨日のような、今にも噛みつきそうな焦燥感は消え失せ、憑き物が落ちたかのようなスッキリとした顔つきをしていたのだ。
「……というわけでさ。昨日の夜、ミコト本人から実家に電話がかかってきたんだよ」
ヤマトは光子郎に携帯電話を返しがてら、安堵の滲む声で口を開いた。
「えっ! ミコトちゃんから直接!?」
空が目を丸くして身を乗り出す。
「ああ。病院の看護師さんからオレが心配して電話してきたのを聞いて、わざわざ公衆電話からかけてきてくれたんだ。……窓ガラスが割れて怖かっただろうに、オレを安心させるためだけにさ」
「そうか! ミコトちゃん、本当に無事だったんだな。いやぁ、よかった、よかった!」
太一が自分のことのように嬉しそうに笑い、丈やミミも「本当によかったね」と胸をなでおろした。光子郎もホッと息をつき、タイピングする手を休めた。
「ああ、心配かけて悪かったな」
ヤマトは照れくさそうに頭を掻いた。
だが、安心しきって気が緩んだのか、ヤマトの口からは無意識のうちに、妹への熱すぎる思いがとめどなく溢れ出し始めた。
「それにしても……あいつ、本当に健気すぎるんだよ。自分のいる病院で爆発騒ぎがあったっていうのに、『お布団かぶっていたから平気』なんて強がってさ。でも、電話越しの声は少し震えているように聞こえて……その庇護欲をそそるような儚さがまた、たまらなく可愛いというか……」
ヤマトの視線は宙を彷徨い、完全に「自分の世界」に入り込んでいる。
「わざわざ夜の病院の廊下を歩いて公衆電話まで行く勇気。そしてオレを気遣う優しさ……。あの天使のような『ヤマトお兄ちゃん』って響きを聞いた瞬間、オレは本気で初音島まで走って抱きしめに行こうかと思ったね……」
「…………」
その熱弁を聞いていた太一の笑顔が、ピタッと止まった。
そして、眉間をピクピクと引きつらせながら、静かに口を開く。
「……へぇ。そりゃよかったな。でもさ」
太一は腕を組み、ヤマトを真っ向から見据えた。
「『天使』っていうなら、うちのヒカリだって負けてねーぞ? 今朝なんてさ、俺が起きる前にわざわざトースト焼いてくれて、『お兄ちゃん、無理しないでね』って微笑んでくれたんだぜ? あの朝日に照らされた笑顔の神々しさ、お前にも見せてやりたかったぜ!」
太一の対抗心に火が点いたのを見て、ヤマトの目つきもスッと鋭くなった。
「はっ。トースト焼くくらいでなんだ。ミコトのあの、ガラス細工みたいに繊細で、オレがいないと壊れちゃいそうな純粋無垢な可愛さには勝てないね。オレの声を聴いて安心したのか、少しホッとしたように笑う声……あれは国宝級だ」
「はぁ!? お前、ヒカリのあの包み込むような母性すら感じる優しさを舐めてんのか!? ヒカリが『お兄ちゃん』って呼ぶときの、あの絶妙なトーンこそ至高だろうが!」
「ミコトの『ヤマトお兄ちゃん』の方が断然心に響く!!」
「ヒカリの可愛さは世界を救うレベルだっつーの!!」
ガタッ! と立ち上がり、机を挟んで火花を散らし合う二人の兄たち。
緊迫した空気が解けたのも束の間、図書室は昨日と全く同じ、いや、昨日以上に低レベルな「妹アピール合戦」の会場と化してしまった。
「…………また始まった」
光子郎が呆れ果てたようにノートパソコンの画面に視線を戻し、カタカタと虚しくキーボードを叩く。
「昨日の今日で、よくもまあ飽きずに……」
丈が深いため息をつきながら、ずり落ちた眼鏡を指で押し上げた。
「ねえ、どっちでもいいけど声が大きいよぉ……先生に見つかったら怒られちゃうじゃない」
ミミが両耳を塞ぎながら迷惑そうに呟く。
「だいたいお前、ミコトちゃんを甘やかしすぎなんだよ! 少しは独り立ちさせろ!」
「お前こそヒカリちゃんに頼りすぎだろうが! 兄貴の威厳ってものがないのか!?」
延々と続く不毛な言い争い。
ついに堪忍袋の緒が切れた空が、般若のような笑顔を浮かべて二人の背後に立ち、その両肩をガシッと力強く掴んだ。
「……あんたたち。ここが図書室だってこと、忘れてないわよね?」
地を這うような空の低い声に、太一とヤマトはビクッと肩を震わせ、同時に口を閉ざした。
「ミコトちゃんが無事で安心したのはわかるけど! 今はそんなで争っている場合じゃないでしょう!? これで二度目よ!?分かっているの?」
「「は、はい」」
「それで、光子郎くん、ゲンナイさんからの連絡はどう?」
有無を言わせぬ空の迫力にねじ伏せられ、二人の兄バカは小さく縮こまって席に座り直した。
かくして、ヤマトの妹を想う「本心からの安堵」は、平和な日常の象徴とも言えるバカバカしい言い争いによって消化されていく。
だが彼らはまだ誰も気づいていない。
ヤマトが聞いたミコトの穏やかな声が、彼女の決死の覚悟で編み上げられた「完璧な嘘」であったということに‥‥