キミとアイドルプリキュア♪~魂と輝き~   作:Ryo02913

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第10話 心、響く

朝。

学校へ向かう道を、うた、なな、こころの三人は並んで歩いていた。

「そういえばさ、最近アイドルプリキュアの活動、増えてきたよね!」

うたが楽しそうに振り返る。

「そうだね。前より忙しくなったかも」

ななが笑う。

「でも、私はまだまだやりたいことがたくさんあります!」

こころも大きく頷いた。

もっと歌いたい。

もっと踊りたい。

もっとたくさんの人をキュンキュンさせたい。

考えただけで、胸が少し弾む。

「こころちゃん、やる気いっぱいだね!」

「もちろんです!」

「じゃあ次は何する?」

「えっ?」

そこまでは考えていなかった。

こころが言葉に詰まった、そのときだった。

「みんなー! 大変プリ!」

後ろからプリルンが飛んでくる。

「プリルン?」

うたが足を止めた。

「どうしたの?」

「それが……それが大変プリ!」

プリルンは三人の前で止まり、息を整えた。

何だろう。

また何か事件?

こころの表情が少し固くなる。

「アイドルプリキュアの歌が……CDになるプリ!」

「え?」

三人の声が重なった。

一瞬、意味が分からなかった。

CD?

私たちの歌が?

「CD!?」

うたがプリルンへ身を乗り出す。

「本当に!?」

「本当プリ!」

「私たちの歌が……CDに」

ななが目を丸くした。

こころも両手を握る。

「すごいです!」

自然と声が大きくなった。

「これなら、もっとたくさんの人に私たちの歌を届けられますね!」

「うん!」

うたが勢いよく頷く。

「絶対キラッキランランにしよう!」

「はい!」

CD。

自分の歌が形になる。

まだ少し信じられない。

でも――楽しみだ。

 

放課後。

三人は田中の案内でレコーディングスタジオへやってきた。

「ここがスタジオです」

扉が開く。

「わあ……!」

うたが真っ先に中へ入った。

マイク。

ヘッドホン。

見たことのない機材。

いつものステージとは全然違う。

「本格的だね」

ななが部屋を見回す。

「そうですね……」

こころは答えながら、中央のマイクを見る。

……あれ?

さっきまで楽しみだったはずなのに。

急に緊張してきた。

「こころ?」

うたが顔をのぞき込んでくる。

「え?」

「大丈夫?」

「だ、大丈夫です!」

思わず背筋を伸ばした。

大丈夫。

歌うだけ。

いつも歌っている。

何も問題は――。

「顔、ちょっと固いよ?」

「えっ?」

やっぱりバレていた。

「歌うだけ……ですよね」

「そうだよ?」

うたは不思議そうに首を傾げる。

「いつもプリキュアで歌ってるじゃん」

「それは……そうなんですが」

こころはもう一度マイクを見る。

ステージなら観客がいる。

仲間もいる。

でもここでは、自分の声だけを録る。

何だかいつもと違う。

「こういう場所で歌うのは初めてなので……」

「ああ、そっか」

ななが隣に立った。

「大丈夫だよ。いつも通りで」

「いつも通り……」

簡単に言われても、それが難しい。

でも、やるしかない。

「はい……!」

レコーディングが始まった。

最初にマイクの前へ立ったのは、こころだった。

ヘッドホンを付ける。

ガラスの向こうでは、うたとなながこちらを見ていた。

「それでは、お願いします」

田中の声が聞こえる。

「はい」

こころは息を吸った。

大丈夫。

いつも通り。

いつも通り……。

曲が始まる。

「――」

声を出した瞬間、自分でも分かった。

硬い。

喉に力が入りすぎている。

そのまま少し歌ったが、どんどん苦しくなる。

「すみません!」

こころは歌うのを止めた。

「もう一度お願いします」

もう一度。

今度こそ。

けれど、二度目も同じだった。

声が思ったように出ない。

「……すみません」

こころはヘッドホンを外した。

悔しい。

いつもならもっと歌えるのに。

「私……全然できません」

「こころ……」

うたが心配そうにこちらを見る。

「練習したのに……」

何で?

歌は好きなのに。

ちゃんとやらないとって思えば思うほど、身体が固くなる。

「じゃあさ」

うたが手を上げた。

「私が先にやってみる!」

「え?」

「うたさん?」

ななも少し驚く。

うたはそのままマイクの前へ立った。

「お願いします!」

曲が始まる。

次の瞬間、うたは楽しそうに歌い始めた。

緊張している様子なんてない。

マイクへ近づいたり、少し身体を揺らしたりしている。

……すごい。

まるで、いつものステージみたい。

歌い終わると、うたは満足そうに笑った。

「ありがとうございました!」

「うた先輩……すごいです」

こころは思わず口にした。

「え? そう?」

「全然緊張していませんでした」

「んー……」

うたは少し考える。

「だって、歌うの楽しいし」

「え?」

「私は歌うのが楽しいから、そのまま歌ってるだけだよ」

そのまま。

こころはマイクを見る。

ちゃんと歌わないと。

失敗しちゃいけない。

ずっと、そればかり考えていた。

ななが隣で微笑む。

「こころも、いつものように歌ってみたら?」

「いつもの……」

好きだから歌う。

楽しいから歌う。

そういえば、最初はそれだけだった。

「……分かりました」

こころはもう一度マイクの前へ立った。

今度は肩の力を抜く。

失敗してもいい。

まずは楽しもう。

曲が始まった。

こころは歌う。

さっきより声が出る。

苦しくない。

楽しい。

そうだ。

これでいいんだ。

歌い終わり、こころは小さく息を吐いた。

「……できました」

「うん!」

うたが親指を立てる。

「すっごくよかったよ!」

「本当ですか?」

「本当!」

「私もそう思うよ」

ななも頷く。

「ありがとうございます!」

こころは笑った。

さっきまであんなに怖かったマイクが、今は少しだけ好きになれそうだった。

 

数日後。

完成したCDが三人のもとへ届いた。

「本当に完成したんだね……」

なながケースを手に取る。

「私たちの名前が書いてあります」

こころも隣からのぞき込んだ。

本当にCDになっている。

何度見ても不思議だ。

「すごい……」

「これ、みんなに聴いてもらえるんだ!」

うたはCDを高く掲げた。

「はい!」

こころは頷く。

たくさんの人に聞いてもらえる。

だったら――。

「それなら……」

「ん?」

うたとなながこちらを見る。

「握手会をやりませんか?」

「握手会?」

「はい。CDを買ってくれた人たちに直接会って、お礼を伝えたいんです」

せっかく応援してくれている。

歌を届けるだけじゃなくて、ちゃんと顔を見てありがとうと言いたい。

「いいね! やろう!」

うたはすぐに賛成した。

「私も賛成」

ななも笑う。

「ありがとうございます!」

今度は大丈夫。

ちゃんとみんなと話したい。

 

その頃――。

チョッキリ団のアジト。

「アイドルプリキュアたちがCDデビューだと?」

チョッキリーヌが不機嫌そうに言った。

「そうなんですよ、チョッキリーヌ様!」

ザックリーが身を乗り出す。

「CDだけでもマジか!? って感じなのに、握手会とかザックリ言えばなめんな! って感じっす!」

「まったくですぞ」

カッティーが腕を組む。

ザックリーはそこでカッティーの手元を見た。

「……ん?」

「何ですかな?」

「お前、爪切った?」

「……」

カッティーが一瞬だけ黙る。

「ってかお前、ザックリ握手会行く気満々じゃねぇだろうな?」

「な、何を言っているのですぞ!」

カッティーは慌てて手を隠した。

「これはただのエチケットですぞ!」

「何のエチケットだよ」

「情報収集のためにCDを手に入れに行くのですぞ。握手会は、ただのおまけですぞ」

「おまけって言った時点で行く気じゃねぇか!」

「うるさい!」

チョッキリーヌの声が響く。

二人の動きが止まった。

「いいから、とっとと世界をクラクラの真っ暗闇にしてくるんだよ!」

「は、はいですぞ!」

「ザックリ了解っす!」

 

握手会当日。

会場には多くの人が集まっていた。

「すごい人……」

こころは思わず声を漏らした。

予想していたよりずっと多い。

急に緊張してきた。

「本当にたくさん来てくれてるね」

ななが周囲を見る。

「ちゃんと、みんなとお話しできるでしょうか……」

「大丈夫だよ」

うたがこころの肩を軽く叩く。

「こころは、こころらしくすればいいんだから」

「こころらしく……」

レコーディングのときと同じだ。

ちゃんとしなきゃと思いすぎたら、また固くなってしまう。

「はい!」

握手会が始まった。

何人ものファンと話し、笑顔で手を握る。

最初は少し緊張していた。

でも、直接「応援しています」と言われるたび、嬉しくなっていった。

やってよかった。

そう思い始めたころ、一人の少女がこころの前へやってきた。

「こ、こんにちは」

「こんにちは!」

こころは笑顔で返す。

少女はかなり緊張しているようだった。

少し前の自分みたいだ。

「えっと……私、みゆっていいます」

「みゆちゃんですね」

「はい」

みゆは小さく頷く。

「私……キュアキュンキュンが大好きです!」

「本当ですか?」

思わず身を乗り出した。

「はい! いつも応援しています」

「ありがとうございます!」

嬉しい。

キュアキュンキュンを好きだと言ってくれる人が、目の前にいる。

みゆの隣にいた母親も微笑んだ。

「この子、今日をずっと楽しみにしていたんです」

「お母さん!」

みゆの顔が赤くなる。

「あ……すみません」

「いえ!」

こころは首を振った。

「私も、会えて嬉しいです!」

「本当ですか?」

「もちろんです!」

みゆの顔が明るくなる。

その直後だった。

「見つけたぞ! アイドルプリキュア!」

「え?」

聞き覚えのある声。

嫌な予感がする。

三人が振り向く。

会場の奥にカッティーが立っていた。

「カッティー!?」

うたが声を上げる。

「せっかくの握手会を……!」

カッティーの視線が周囲を動く。

そして――みゆで止まった。

「え?」

みゆの身体が闇に包まれる。

「みゆ!」

母親が手を伸ばした。

「お母さん!」

次の瞬間、みゆの姿が消え、巨大なマックランダーが現れた。

「みゆちゃん!」

頭の中が真っ白になる。

今、目の前にいたのに。

私に会いに来てくれたのに。

「みんな、逃げて!」

うたの声で、会場にいた人たちが出口へ向かう。

「そんな……」

こころはマックランダーを見る。

中にみゆちゃんがいる。

助けないと。

今すぐ。

「みゆちゃん!」

こころは前へ走り出した。

「こころちゃん、待って!」

うたが呼ぶ。

でも止まれない。

「助けないと!」

「こころ!」

ななが追いつく。

「三人で行こう」

「……はい!」

三人はアイドルハートブローチを手にした。

 

 

『プリキュア! ライトアップ!

キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!

キミと~! YEAH!

一緒に~! YEAH!

キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!』

 

『プリキュア! ライトアップ!

キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!

キミと~! YEAH!

一緒に~! YEAH!

キミと瞬く、ハートの勇気!」

お目目パッチン、キュアウインク!』

 

『プリキュア! ライトアップ!

キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!

キミと~! YEAH!

一緒に~! YEAH!

キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン キュアキュンキュン!』

 

 三人はプリキュアへと変身した。

キュアキュンキュンが一歩前へ出る。

「みゆちゃんを返してください!」

返事を待たず、マックランダーへ走った。

拳を振るう。

しかし、かわされた。

「え……?」

もう一度踏み込み、今度は蹴りを放つ。

それも当たらない。

「どうして……!」

焦る。

早く助けないと。

みゆちゃんが中にいる。

「もう一度!」

キュンキュンが前へ出ようとする。

「キュンキュン!」

アイドルがその腕をつかんだ。

「離してください! 私が助けないと……!」

「一人で全部やろうとしなくていいよ!」

「え……?」

ウインクも二人の隣へ並ぶ。

「私たちもいるよ」

「なな先輩……」

「こころだけの戦いじゃない」

キュンキュンは二人を見る。

そうだ。

レコーディングのときもそうだった。

一人でちゃんとやろうとして、力が入りすぎていた。

でも、うたさんとななさんがいたから歌えた。

今だって同じだ。

「……そうですね」

キュンキュンは息を吐き、二人の隣へ並んだ。

「私は一人じゃありません」

アイドルが笑う。

「うん!」

「三人で助けましょう!」

「はい!」

 

三人は同時に走り出した。

先に飛び出したのはアイドルだった。

「アイドルグータッチ!」

拳を突き出す。

一撃を受け、マックランダーの身体が大きく揺れた。

それでもマックランダーは腕を振り上げる。

「ウインクバリア!」

ウインクが前へ出た。

目の前に広がった障壁が腕を受け止め、そのまま押し返す。

「キュンキュン、今!」

「はい!」

キュンキュンが腕を構えた。

マックランダーの動きは止まっている。

今なら当てられる。

「キュンキュンレーザー!」

放たれた光がマックランダーを正面から捉えた。

マックランダーが大きく体勢を崩す。

「今です!」

ここで終わりじゃない。

みゆちゃんを助けるには、あの闇を消さないと。

キュンキュンは一歩前へ出た。

「クライマックスはわたし! 準備はオーケー!?」

周囲が光に包まれ、景色がキュンキュンのステージへと変わっていく。

「キュンキュン!」

「頑張って!」

アイドルとウインクの声が聞こえる。

キュンキュンは二人を見て、笑顔で頷いた。

一人じゃない。

だから、もう迷わない。

キュンキュンはステージの中央で「ココロレボリューション」を歌い始めた。

歌声とともに光が広がり、マックランダーを包んでいた闇が少しずつ薄れていく。

歌い終えたキュンキュンが、マックランダーへ向き直る。

「プリキュア・キュンキュンビート!」

紫色の光が一気にマックランダーを包み込んだ。

『キラッキランラン』

闇が消えていく。

マックランダーの姿も光の中で消え、その中からみゆが解放された。

 

 

しばらくして――。

騒ぎが収まり、握手会は再開された。

「本当に続けるんだね」

ななが少し驚いたように言う。

「もちろん!」

うたは笑顔で答える。

「せっかくみんな来てくれたんだもん!」

「はい!」

こころも頷く。

中止にしたくない。

今日を楽しみに来てくれた人たちがいる。

列が再び動き始める。

その中に、見覚えのある少女がいた。

みゆだった。

隣には母親もいる。

「みゆちゃん、大丈夫ですか?」

「うん!」

みゆは元気よく頷く。

そして、こころの前に手を出した。

少し照れながら笑う。

「心……キュンキュンしてます!」

「え?」

一瞬遅れて、こころも笑った。

「私も、心キュンキュンしてます!」

二人はしっかりと手を握った。

今度こそ、本当の握手だ。

何だか胸が温かい。

握手会が再開してしばらくしたころ。

会場の端に、響の姿があった。

「……すごい人だな」

隣ではプリルンが楽しそうに浮かんでいる。

「大人気プリ!」

「みたいだな」

響は列の先を見る。

うたも、ななも、こころも笑っている。

少し前まで普通の学生だった三人が、今はあれだけの人の前に立っている。

……大変そうだ。

俺には無理だな。

「でも、楽しそうプリ!」

「それは分かる」

「みんな、頑張ってるプリ」

「ああ」

響は三人を見る。

「うたも、ななも、こころも……ちゃんと前に進んでる」

プリルンが響を見る。

「じゃあ響もアイドルやってみるプリ?」

「やらない」

迷う理由がない。

「即答プリ……」

「俺はそんな柄じゃねぇ」

「そうかな?」

横から声がした。

「……うた」

いつの間に来たんだ。

うたが楽しそうに響の顔をのぞき込む。

「お兄ちゃん、意外と似合うかもよ?」

「絶対にやらない」

「じゃあ握手会だけでも!」

「やらない」

「写真撮影は?」

「やらない」

「歌は?」

「やらない」

「全部ダメじゃん!」

うたが笑う。

……何で俺まで参加する流れになってるんだ。

「プリルンは見てみたいプリ!」

「見なくていい」

「一曲だけ!」

「やらない」

「お兄ちゃん、歌えるの?」

「話聞いてたか?」

「聞いてたよ?」

絶対聞いてない。

響は小さくため息をついた。

それでも、うたたちの笑顔を見ていると、悪い気はしなかった。

この日、アイドルプリキュアの歌は、また少し遠くまで届いた。

そして三人もまた、自分たちだけではなく、支えてくれる誰かと一緒に前へ進んでいた。





そう、我々に運命などない
無知と恐怖にのまれ
足を踏み外したものたちだけが
運命と呼ばれる濁流の中へと
堕ちてゆくのだ

BLEACH/第6巻 浦原喜助

キミプリの推しは?

  • 咲良うた/キュアアイドル
  • 蒼風なな/キュアウィンク
  • 紫雨こころ/キュアキュンキュン
  • プリルン/キュアズキューン
  • メロロン/キュアキッス
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