キミとアイドルプリキュア♪~魂と輝き~ 作:Ryo02913
ー昼休みー
中庭のスピーカーから、校内放送が流れていた。
『次回のお便りテーマは――あなたの夢ってなんですか?』
「夢かぁ……」
夢。
そう言われると、すぐに何か浮かびそうな気がする。
歌うのは好き。
アイドルプリキュアも楽しい。
やってみたいことだっていっぱいある。
なのに――。
「……あれ?」
何も出てこない。
隣をみると、ななが少し考えていた。
「ななちゃんは夢ある?」
「私は……」
ななは空を見上げる。
「まだ一つに決めてないけど、音楽に関わることは続けたいかな」
「おお……!」
ちゃんとある。
うたは感心して頷いた。
「こころは?」
「もちろんあります!」
こころが勢いよく手を上げる。
「もっともっとダンスが上手くなって、たくさんの人を心キュンキュンさせたいです!」
「おお……!」
こっちもある。
二人ともちゃんと答えられている。
じゃあ私は?
「うたちゃんは?」
ななが聞いてくる。
「私?」
「はい! うた先輩の夢、気になります!」
二人の視線が集まった。
「私の夢は……」
歌?
いや、歌うこと自体は今もやってる。
アイドル?
今もアイドルプリキュアをやっている。
もっと有名になること?
……それなのかな。
「……」
「うたちゃん?」
「うた先輩?」
「分かんない……」
「え?」
「私の夢、分かんないよー!」
ー次の日の放課後ー
「というわけで!」
こころが紙を机の上に広げた。
大きな文字で書かれている。
『うた先輩の夢を探そうプロジェクト』
「プロジェクト?」
うたは紙を見る。
「はい!」
こころが胸を張った。
「うた先輩がキュンキュンする夢を、私たちで探します!」
「おお!」
何だかすごそう。
「こころ、朝からずっと考えてたんだよ」
ななが苦笑する。
「えへへ……」
こころは少し照れた。
「まずはこちらです!」
一枚目の紙をめくる。
そこにはケーキを作るうたの絵が描かれていた。
「パティシエ!」
「わあ!」
うたの目が輝く。
「ケーキいっぱい作れる! キラッキランラン~!」
「では、パティシエで決まりですか?」
「うーん……」
うたは少し考える。
「違う気がする」
「では次です!」
二枚目。
白衣を着たうた。
「お医者さん!」
「おおー! みんなを元気にできる! キラッキランラン~!」
「これですか?」
「うーん……違う」
三枚目。
宇宙服。
「宇宙飛行士!」
「宇宙!? 行ってみたい! キラッキランラン~!」
「では――」
「でも違う!」
「ええっ!?」
こころが目を丸くする。
その後も続いた。
先生。
スポーツ選手。
動物のお医者さん。
料理人。
どれを見ても楽しそうだった。
どれを見ても、一度はやってみたいと思った。
そして全部――。
「キラッキランラン~!」
「またですか!?」
こころが机に手をついた。
「全部キラッキランランしてます!」
「だって全部楽しそうなんだもん!」
「これでは決まりません……」
ななも困ったように笑った。
「うたちゃんって、何でも楽しめるもんね」
「それっていいことじゃない?」
「いいことなんだけど……」
ななが少し考える。
「夢を一つに決めようとすると、大変かも」
「うう……」
うたは机に突っ伏した。
やっぱり分からない。
夢って、もっと簡単に見つかるものだと思っていた。
好きなことを考えれば、それが夢になる。
そう思っていたのに。
「夢……」
何なんだろう。
ーーーー
うたは一人で公園を歩いていた。
ななとこころには先に帰ってもらった。
少しだけ、一人で考えたかった。
ベンチに座る。
「はぁ……」
結局、答えは出ない。
「そんなにため息をついて、どうしたの?」
「え?」
顔を上げる。
「カイトさん!?」
少し離れたところに響カイトが立っていた。
帽子を深くかぶり、いつものように目立たない格好をしている。
「こんにちは」
「こ、こんにちは!」
うたは慌てて座り直した。
まさかこんなところで会うなんて。
カイトは隣のベンチへ腰を下ろした。
「何か悩みごと?」
「えっと……」
言っていいのかな。
でも、カイトさんなら。
「夢について考えてたんです」
「夢?」
「学校の放送で聞かれて……」
うたは膝の上で指を組んだ。
「ななちゃんも、こころも、ちゃんとやりたいことがあるんです。でも私は何を考えても、全部楽しそうで」
「うん」
「歌も好きです。みんなといるのも楽しいです。でも、それが夢って言われると……よく分からなくて」
カイトは黙って聞いていた。
「カイトさんは、夢ってありますか?」
「あるよ」
答えは早かった。
「やっぱり……」
さすがカイトさん。
そう思ったところで、カイトが続けた。
「でも、最初から今の夢があったわけじゃない」
「え?」
「やってみて、誰かと出会って、考えが変わることもある」
カイトは公園の向こうを見る。
「夢って、最初から一人で完成させておくものじゃないと思う」
「一人で……?」
「誰かと一緒だから見つかる夢もあるんじゃないかな」
うたは目を瞬いた。
誰かと一緒だから。
頭の中に、ななとこころの顔が浮かぶ。
「誰かと……」
「焦らなくてもいいよ」
カイトが立ち上がる。
「今、大切だと思っているものを考えてみたら?」
「今、大切なもの……」
「それじゃあ」
「あ、ありがとうございます!」
うたは立ち上がって頭を下げた。
カイトは軽く手を振り、公園を出ていった。
うたはもう一度ベンチへ座る。
大切なもの。
歌。
プリキュア。
ななちゃん。
こころ。
プリルン。
家族。
全部大切だ。
「……やっぱりいっぱいある」
余計に分からなくなった気もする。
でも、さっきまでとは少し違う。
何かが引っかかっている。
あと少しで分かりそうなのに。
その日の夜。
「ただいまー」
「おかえり」
リビングでは、響がソファに座っていた。
手には本を持っている。
うたは靴を脱ぎながら兄を見る。
そうだ。
「お兄ちゃん!」
「何だよ」
「夢ある?」
響の手が止まった。
「……は?」
「だから夢!」
「急だな」
響は本を閉じた。
「学校で聞かれたの。自分の夢は何ですかって」
「ああ」
「でも私、分かんなくて」
うたは響の向かいに座った。
「お兄ちゃんは?」
「俺?」
「うん」
響は少し黙った。
……夢。
そう聞かれても、すぐには出てこない。
将来やりたい仕事。
なりたいもの。
そういう意味なら――。
「特にねぇな」
「ええっ!?」
うたが身を乗り出した。
「ないの!?」
「悪いかよ」
「だってお兄ちゃん、もっとこう……ありそうじゃん!」
「どういうイメージだよ」
「世界を救うとか!」
「規模がでかすぎる」
何でいきなり世界なんだ。
響はため息をついた。
「じゃあ、やりたいこともないの?」
「そういう意味じゃねぇよ」
「え?」
響は少し考える。
夢。
やりたいこと。
言葉が違うだけで、本当に別物なのか。
「そもそも、夢って将来の職業じゃなきゃ駄目なのか?」
「え?」
「今やりたいこととか、続けたいことでもいいんじゃねぇの」
うたは黙った。
「続けたいこと……」
「俺は夢って言えるものはまだ分からねぇ」
響は自分の手を見る。
時々、説明できない感覚がある。
戦い方。
斬月。
虚。
どうして知っているのか分からないことばかりだ。
そんな自分が将来のことを考えても、まだ答えは出ない。
「でも」
「うん?」
「やりたいことならある」
「何?」
「……今は、お前たちが好きなことを邪魔されないようにしたい」
「え?」
響は少しだけ顔を背けた。
「マックランダーだの虚だの、最近ろくでもねぇのが多いだろ」
「お兄ちゃん……」
「別に夢ってほどじゃねぇよ」
「ふーん」
うたが笑う。
「何だよ」
「お兄ちゃんらしいなって」
「うるせぇ」
「でも、そっか」
続けたいこと。
今、大切なもの。
カイトさんの言葉と、お兄ちゃんの言葉。
少しだけ、つながった気がした。
ー翌朝ー
「おはよう、うたちゃん」
「おはようございます、うた先輩!」
校門の前で、ななとこころが待っていた。
「二人とも、おはよー!」
うたが駆け寄る。
こころの手には、昨日の『夢を探そうプロジェクト』の紙がある。
「今日も続きをやりましょう!」
「まだやるの!?」
「もちろんです!」
「こころ、昨日より増やしてきたんだよ」
ななが苦笑する。
紙の束が倍くらいになっている。
「そんなに!?」
「うた先輩の夢が見つかるまで、諦めません!」
こころが力強く言う。
「……」
うたは二人を見る。
ななちゃん。
こころちゃん。
昨日からずっと、自分のために考えてくれている。
三人でCDを作った。
握手会もやった。
マックランダーとも一緒に戦った。
楽しかったことも、怖かったこともあった。
でも、二人がいた。
これからも――。
「あ……」
「うた?」
何かが胸の中でつながった。
これだ。
「分かった」
「え?」
「私、分かったよ!」
「夢ですか!?」
「うん!」
うたは笑顔になる。
「私の夢は――」
その瞬間だった。
遠くから暗い光が立ち上がった。
「え!?」
地面が揺れる。
「この感じ……」
ななの表情が変わった。
こころも振り返る。
「マックランダーです!」
しかも一つじゃない。
三方向から、大きな影が姿を現す。
「三体!?」
うたが目を見開いた。
「せっかく答えが出たところなのに!」
「後で聞く!」
ななが叫ぶ。
「今は行こう!」
「はい!」
三人は走り出した。
少し離れた場所。
チョッキリーヌの隣に、カッティーとザックリーが立っていた。
「今日は三体まとめていくよ!」
「さすがチョッキリーヌ様ですぞ!」
「ザックリ一気に決めるっす!」
三体のマックランダーが別々の道を進む。
「三体か……」
うたはアイドルハートブローチを取り出した。
「だったら、こっちも三人!」
「うん!」
「はい!」
三人がブローチを掲げる。
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!』
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと瞬く、ハートの勇気!」
お目目パッチン、キュアウインク!』
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン キュアキュンキュン!』
三体のマックランダーが、並ぶようにして三人へ迫ってくる。
「来るよ!」
アイドルの声に、ウインクとキュンキュンが頷いた。
三体が一斉に腕を振り上げる。
「散って!」
三人は左右へ飛び、攻撃をかわした。
そのままアイドルが一番手前のマックランダーへ走る。
「アイドルグータッチ!」
拳を叩き込む。
マックランダーの身体が後ろへ揺れた。
「今!」
キュンキュンが横から腕を構える。
「キュンキュンレーザー!」
放たれた光が二体目を捉えた。
しかし、残った一体がキュンキュンへ向けて腕を振り下ろす。
「危ない!」
「ウインクバリア!」
ウインクが前へ出る。
広がった障壁が腕を受け止めた。
「ありがとうございます!」
「まだ来るよ!」
押し返されたマックランダーがすぐに体勢を戻す。
三体が再び集まり、今度は三方向から三人を囲もうとしてきた。
「三体一緒だとやりにくい……!」
アイドルは拳を構えながら周囲を見る。
一体へ攻撃すれば、別の一体がすぐに割り込んでくる。
三人で戦えてはいる。
でも、このままじゃ浄化まで持っていけない。
「どうする?」
キュンキュンが後ろへ下がる。
そのとき、三体のマックランダーが一斉に動きを止めた。
「え……?」
次の瞬間、それぞれが別の方向へ走り出す。
「散った!?」
一体は右へ。
一体は左へ。
もう一体は正面へ。
「逃がさない!」
アイドルが正面の一体を追う。
「私はこちらへ行きます!」
キュンキュンが右へ向かう。
「じゃあ私はこっち!」
ウインクも左へ走った。
結果として、三人はそれぞれ一体ずつのマックランダーと向かい合うことになった。
アイドルの前では、大きな腕を持つマックランダーが拳を振り上げる。
「こっち!」
横へ避け、懐へ入る。
「アイドルグータッチ!」
拳を叩き込む。
身体が後ろへ揺れた。
「よし!」
だが、すぐに体勢を戻してくる。
「うそ!? 硬い!」
少し離れた場所では、ウインクが別の一体の突進を受け止めていた。
「ウインクバリア!」
障壁がマックランダーの前進を止める。
「っ……!」
押される。
一体だけでもかなり力が強い。
「このままじゃ……!」
さらに反対側では、キュンキュンが三体目から距離を取っていた。
「キュンキュンレーザー!」
光が命中する。
それでもマックランダーは止まらない。
「効いてない……!?」
三人とも戦えている。
でも、一人では決め手がない。
アイドルは攻撃をかわしながら、遠くにいる二人へ視線を向けた。
ななちゃんも苦戦してる。
こころも同じ。
このまま一体ずつ相手をしていても――。
『二人とも!』
インカムからウインクの声が聞こえた。
「ウインク?」
『このまま一人ずつ戦っていても、倒せない!』
ウインクはバリアでマックランダーの拳を受け止めながら続ける。
『二人で三体を引きつけるの。その間に、残った一人がステージでまとめてキラッキランランする!』
「なるほど!」
キュンキュンの声が返ってくる。
『それならできます!』
二人が引きつける。
一人が歌う。
確かに、それなら三体まとめてキラッキランランできるかもしれない。
『では、誰がステージをやりますか?』
誰か一人。
その言葉を聞いた瞬間、アイドルの動きが止まった。
「……」
何か違う。
昨日ずっと考えていた。
カイトさんに聞いた。
お兄ちゃんにも聞いた。
夢は最初から一人で決めなくてもいい。
今、大切なもの。
これから続けたいもの。
アイドルは目の前のマックランダーの腕を受け止める。
足が後ろへ押される。
それでも、顔を上げた。
「……違うよ」
『え?』
「うたちゃん?」
「一人じゃない」
アイドルは腕に力を込め、マックランダーを押し返した。
「私、夢見つけた!」
『え!?』
「今ですか!?」
「今だから!」
アイドルは笑った。
「私、歌うのが大好き!」
もう一歩踏み込む。
「みんなをキラッキランランにするのも大好き!」
ウインクとキュンキュンが聞いている。
「でも、それだけじゃなかった!」
アイドルは遠くにいる二人を見る。
「ななちゃんと、こころと――三人でアイドルプリキュアを続けていきたい!」
一瞬、インカムが静かになった。
「それが今の私の夢!」
『うたちゃん……』
ウインクの声が少し弾む。
『うた先輩!』
キュンキュンも嬉しそうに答えた。
「だから、一人が歌うんじゃないよ」
アイドルはマックランダーから距離を取る。
「三人でやろう!」
『三人で?』
「うん!」
アイドルは大きく頷いた。
「二人が敵を引きつけて、一人だけステージに立つんじゃない」
ななちゃんと。
こころと。
三人で。
それが今、自分がやりたいことだから。
「三人で引きつけて、三人で集まって――」
アイドルは笑った。
「三人で歌おう!」
少しの間があった。
そして――。
『うん!』
『はい!』
ウインクがバリアを押し返した。
「そっちへ行って!」
勢いを失ったマックランダーを中央へ誘導する。
キュンキュンも距離を取りながら走った。
「こっちです!」
追ってきた一体を、同じ場所へ引きつける。
「私も!」
アイドルも自分を追うマックランダーを連れて中央へ向かった。
三方向から走ってきた三体が、再び同じ場所へ集まる。
その前で、アイドル、ウインク、キュンキュンも合流した。
「行こう!」
「うん!」
「はい!」
三人が並ぶ。
「はじめよう 私たちアイドルプリキュアの初ステージ!」
三人の周囲が光に包まれた。
ステージが広がっていく。
音楽が始まる。
三人は「Trio Dreams」を歌いながら、息を合わせてステージを進めていく。
三体のマックランダーを包んでいた闇が揺らぎ始める。
「もっと上げてくよ!」
アイドルの声に、ウインクとキュンキュンが頷く。
三人の光が一つになる。
『プリキュア・ハイエモーション!』
強い光が三体のマックランダーをまとめて包んだ。
闇が消えていく。
「キラッキラッター」
三体のマックランダーが光の中から解放され、元の姿へ戻っていった。
「やった!」
アイドルが二人へ振り向く。
「三人でできた!」
「うん!」
「最高に心キュンキュンです!」
三人が笑う。
そのときだった。
アイドルの表情が止まった。
「……え?」
空気が変わった。
さっきまでとは違う。
暗い。
冷たい。
胸の奥が重くなる。
「うたちゃん?」
ウインクが周囲を見る。
「これ……」
キュンキュンも表情を変えた。
三人とも、もう分かる。
マックランダーじゃない。
「虚……」
アイドルが呟いた。
建物の陰から、白い仮面が姿を見せる。
細長い腕。
背中から伸びた何本もの突起。
人の倍以上ある身体がゆっくりとこちらへ向いた。
「また……!」
虚が三人を見る。
いや。
見ているのは三人そのものじゃない。
三人からあふれている力。
今のステージで、一気に大きくなった霊圧。
「私たちの力に引き寄せられた……?」
ウインクが息をのむ。
虚が腕を振り上げる。
「危ない!」
三人が左右へ飛ぶ。
腕が地面へ叩きつけられ、そこが大きくへこんだ。
「まだマックランダーを浄化したばっかりなのに!」
アイドルが立ち上がる。
虚は止まらない。
キュンキュンへ向けて腕を伸ばした。
「ウインクバリア!」
障壁が間に入る。
「っ……!」
ウインクの足が後ろへ滑る。
「重い……!」
「ななちゃん!」
アイドルが駆け寄ろうとする。
そのとき。
離れた住宅街。
響が足を止めた。
「……この感じ」
胸の奥がざわつく。
この霊圧はもう覚えている。
虚だ。
しかも、うたたちのいる方向。
「またかよ……!」
響はポケットから死神代行証を取り出した。
考えている暇はない。
代行証を身体へ押し当てる。
肉体から魂が抜ける。
死覇装。
背中には斬月。
響はすぐに走り出した。
あいつらがいる。
それだけで十分だった。
虚の腕が再び振り上がる。
アイドルたちは距離を取る。
さっきの戦いで力も使っている。
このまま続けるのはきつい。
「どうしよう……」
アイドルが構える。
虚の腕が振り下ろされた。
その直前。
黒い影が三人の前へ入った。
大きな刀が腕を受け止める。
「お兄ちゃん!」
「響さん!」
響は刀を押し返した。
「下がってろ」
「でも!」
「マックランダーと戦ったばっかだろ」
虚がもう片方の腕を振るう。
響は身体を低くして避け、そのまま横へ回る。
斬月を振り抜く。
刃が虚の脇腹を切り裂いた。
虚が大きく後退する。
「こいつは俺がやる」
アイドルは一瞬迷った。
でも、響の背中を見る。
大丈夫。
今は任せてもいい。
「……分かった!」
響が虚へ踏み込む。
虚の腕が伸びる。
横へ避ける。
もう一度。
今度は上から。
斬月で受け流す。
身体が勝手に動く。
次にどこから来るか分かる。
何で分かる?
分からない。
でも――。
「今は考えるな」
響は地面を蹴った。
虚の懐へ入る。
斬月を斜めに振り上げた。
虚が後ろへ下がる。
まだ浅い。
「硬ぇな……」
虚の仮面が響へ向く。
口が開いた。
嫌な感じがする。
響は反射的に横へ飛んだ。
直後、さっきまで立っていた場所を霊圧の塊が通り抜ける。
「危な……」
少し遅れていたら直撃だった。
アイドルが声を上げる。
「お兄ちゃん!」
「大丈夫だ!」
響は立ち上がる。
虚は再び口を開く。
同じ攻撃。
だったら――。
響は斬月を握り直した。
刀身へ霊圧を集める。
この技なら、何度か使っている。
斬月に霊圧を乗せ、それを斬撃として放つ。
使い方はもう分かっていた。
ただ――どうして最初から知っていたのか。
それだけは、今も分からない。
「月牙――」
響は斬月を振り下ろす。
「天衝!」
斬撃が飛ぶ。
虚の放った霊圧と正面からぶつかり、そのまま押し切った。
光が虚の身体を切り裂く。
虚が大きくよろめいた。
「今だ」
響は一気に距離を詰める。
虚が腕を振るう。
身体を横へずらす。
目の前には、白い仮面。
響は斬月を両手で握った。
「終わりだ」
真っすぐ振り下ろす。
斬月が仮面を斬った。
虚の動きが止まり、身体が少しずつ消えていった。
響は斬月を下ろす。
「……」
終わった。
アイドルたちが駆け寄ってくる。
「お兄ちゃん!」
「だから大丈夫だって」
「でも今の攻撃、すごかったじゃん!」
「当たってねぇよ」
「そういう問題じゃないよ!」
ウインクとキュンキュンも追いつく。
「響さん、大丈夫でした?」
「ああ」
「すごかったです!」
こころが目を輝かせる。
「今の『月牙天衝』、前にも使っていましたよね?」
「ああ」
響は斬月へ目を落とした。
「これで何度目かだな」
「やっぱりすごい技ですね!」
「……まあな」
そう答えながらも、響の表情は少しだけ曇った。
月牙天衝。
名前も、使い方も分かっている。
初めて斬月を握ったときから、身体のどこかに最初からあった。
なのに――。
何で知っている?
どこで覚えた?
そこだけが、どうしても出てこない。
「お兄ちゃん?」
うたの声で、響は顔を上げた。
「……いや、何でもねぇ」
今考えたところで答えは出ない。
アイドルが少し心配そうに見る。
「お兄ちゃん……」
「それより」
響はうたを見る。
「夢、見つかったのか?」
「え?」
一瞬きょとんとしたあと、うたは笑った。
「うん!」
変身が解ける。
うたはななとこころの間に立った。
「私の夢はね」
二人を見る。
「ななちゃんと、こころと、三人でアイドルプリキュアを続けていくこと!」
「うたちゃん……」
ななが微笑む。
「うた先輩!」
こころも嬉しそうに笑った。
響は三人を見る。
昨日まであんなに悩んでいたのに。
答えが出れば、いつもの顔だ。
「そうか」
「反応薄くない?」
「何て言えばいいんだよ」
「『いい夢だな』とか!」
「自分で言うのかよ」
「いい夢でしょ?」
「はいはい」
「何その言い方!」
ななとこころが笑う。
響も小さく息を吐いた。
夢なんて、まだ自分には分からない。
でも――。
目の前の三人が笑っている。
今は、それでいい気がした。
少し離れた場所。
誰もいなくなった空間に、わずかな黒い影が残っていた。
さっき消えた虚の霊圧とは違う。
もっと静かで、冷たい気配。
それは一瞬だけ揺れ――。
誰にも気づかれないまま、消えた。
我々は涙を流すべきではない
それは心に対する肉体の敗北であり
我々が心というものを
持て余す存在であるということの
証明にほかならないからだ
BLEACH/第7巻 朽木白哉
キミプリの推しは?
-
咲良うた/キュアアイドル
-
蒼風なな/キュアウィンク
-
紫雨こころ/キュアキュンキュン
-
プリルン/キュアズキューン
-
メロロン/キュアキッス