キミとアイドルプリキュア♪~魂と輝き~ 作:Ryo02913
――朝
「……苦しいプリ……」
小さな声に、うたは目を覚ました。
「ん……?」
まだ眠い目をこすりながら、枕元を見る。
プリルンとメロロンが寝ているはずの場所で、妙なことになっていた。
プリルンの身体が、メロロンの長い耳に絡まっている。
「プリルン!?」
うたは慌てて起き上がった。
「大丈夫!?」
絡まった耳をほどいていく。
ようやく解放されたプリルンが、布団の上へ転がった。
「助かったプリ……」
「どうしてこんなことに?」
「違うメロ」
メロロンがむくりと身体を起こした。
「え?」
「絡まったんじゃないメロ」
「じゃあ何?」
メロロンはプリルンへ抱きついた。
「絡めたメロ」
「自分で!?」
「ねえたまが寝ぼけて、うたの方へ行こうとするからメロ!」
「プリルン、何も覚えてないプリ」
「ねえたまはメロロンと一緒に寝るメロ!」
「みんなで寝るプリ」
「二人がいいメロ!」
「みんながいいプリ」
「二人メロ!」
「みんなプリ!」
「朝から元気だな……」
部屋の入口から声がした。
うたが振り向く。
「お兄ちゃん?」
響が半分開いた扉から中を見ていた。
「何してるの?」
「下まで聞こえてんだよ」
「そんなに?」
「そんなに」
メロロンはまだプリルンを抱きしめている。
響は二人を見て、少しだけ眉を寄せた。
「というか、何でそんなにプリルンと二人きりになりたいんだ?」
「それは……」
メロロンが顔を赤くする。
「問われるたび思い知るメロ。近くにいても、ハートは遠く――」
「始まった」
響が小さく呟く。
「あなたを見つめても、届かない思いは――」
「お兄ちゃん、行こ」
「ああ」
「待つメロ! ポエムの途中メロ!」
うたと響はそのまま部屋を出た。
「聞いてほしいメロー!」
――喫茶グリッター
昼。
プリルンとメロロンは、窓際の小さなテーブルに向かい合って座っていた。
「今日はデートメロ!」
「デートプリ?」
プリルンが首を傾げる。
「大好きな相手と二人きりでお出かけしたり、ご飯を食べたりすることメロ!」
「なるほどプリ!」
「今日はねえたまとメロロン、二人だけメロ」
メロロンは嬉しそうに頬を緩める。
「誰にも邪魔されない、特別な時間メロ!」
「お待たせしましたー!」
うたが勢いよくやってきた。
「グリッター特製クリームソーダ! キラッキランラン~!」
「……」
メロロンの笑顔が消えた。
「どうしたの?」
「咲良うた」
「何?」
「何でまだいるメロ」
「え?」
「運んだら帰るメロ!」
「味の感想聞きたいなーって」
「帰るメロ!」
少し離れた席。
ななとこころが二人の様子を見ていた。
「かわいい……」
ななが頬に手を当てる。
「メロロン、一生懸命ですね!」
こころも目を輝かせている。
そのさらに後ろでは響が本を読んでいた。
読んでいるふりをしているだけだ。
さっきから視界の端に全部入ってくる。
「ねえたま、どうメロ?」
「おいしいプリ!」
「よかったメロ!」
「うたが作ったプリ?」
「田中さんだよ!」
またうたが入ってきた。
「咲良うた!」
「はい!」
「帰るメロ!」
「はい……」
うたがしょんぼり戻ってくる。
響は本から視線を上げた。
「お前、邪魔しに行ってるだけだろ」
「そんなつもりないよ!」
「結果的にはそうなってる」
「仲良くなりたいだけなのに……」
「なら少し離れてろよ」
「気になるじゃん」
「だから邪魔になるんだよ」
「お兄ちゃんまで!」
向こうでは、メロロンがプリルンへ身を寄せていた。
「ねえたま」
「プリ?」
「メロロンのこと、もっと見てほしいメロ」
「見てるプリ」
プリルンが真正面から見つめる。
「……メロ」
「じー」
「……」
「じー」
メロロンの顔がどんどん赤くなる。
「そういうことじゃないメロー!」
店内に声が響いた。
響は本を閉じた。
「難しい奴だな……」
――少し後
メロロンは咲良家のうたの部屋で布団に顔を埋めていた。
「メロロン……」
うたが少し離れたところから声をかける。
返事はない。
「怒ってる?」
「……」
「ごめんね?」
「咲良うたは、ねえたまとずっと一緒メロ」
「え?」
メロロンが顔だけを上げる。
「毎日一緒に寝て、一緒にご飯を食べて、一緒にお出かけしてるメロ」
「う、うん」
「ずるいメロ」
「ずるいって言われても……」
メロロンは再び布団へ顔を埋めた。
「メロロンだって、ねえたまともっと一緒にいたいメロ」
うたは困ったようにメロロンを見る。
仲良くしたい。
でも、どうすればいいのか分からない。
――喫茶グリッター
「まずはメロロンのことをもっと知った方がいいんじゃないかな」
ななが言った。
「そうですね」
こころも頷く。
「どうしてあそこまでプリルンのことが大好きなのか、何か理由があるはずです!」
「理由かぁ……」
うたが腕を組む。
響は壁際で話を聞いていた。
「本人に聞いても答えねぇしな」
「ポエムになっちゃうもんね」
「ポエムにも何か意味があるんじゃない?」
ななの言葉に、うたが顔を上げる。
「意味?」
そのとき、アイドルハートブローチが光った。
「女王様?」
ブローチを開く。
ピカリーネの姿が映し出された。
『メロロンと無事に会えたようですね』
「はいプリ!」
プリルンが画面へ近づいた。
「メロロン、プリルンを追いかけてきたプリ!」
『ええ』
ピカリーネの表情が少し柔らかくなる。
『あの子は、あなたに会いたい一心で、一人でキラキランドを出たのです』
「一人で?」
うたが驚く。
『メロロンは昔から、一人でいることの多い子でした』
「そうなんですか?」
こころが聞く。
『本を読み、物事を深く考え、自分の思いを詩のような言葉にする。それがメロロンなのです』
「だからポエムなんだ」
『けれど、あの子は自分が他のみんなのように輝けないと思っていました』
「輝けない……」
『そんなメロロンに、初めて声をかけ続けたのがプリルンでした』
プリルンが自分を指差す。
「プリルン?」
『はい』
ピカリーネは頷いた。
一人で本を読んでいたメロロン。
そこへプリルンが何度もやってきた。
一緒に遊ぼうと誘った。
断られても、次の日にはまたやってきた。
「プリルン、覚えてるプリ!」
プリルンが嬉しそうに笑う。
「メロロン、最初はいつも難しいこと言ってたプリ!」
「難しいこと?」
「光は光、闇は闇、とか言ってたプリ」
「それ、今も変わってない気がする」
響が呟く。
うたが画面を見る。
「じゃあ、メロロンが前に言ってた『冷たいものを溶かした温かいあなた』って……」
ななも気づく。
「プリルンのことなのかも」
「なるほど……!」
こころの目が輝いた。
「一人だったメロロンの心に、プリルンが入ってきたんですね!」
「プリ?」
プリルン本人だけがよく分かっていない。
響はその顔を見て、小さく息を吐いた。
「肝心の本人に一番伝わってねぇな」
「だったら!」
うたが立ち上がった。
「今度こそメロロンのデートを成功させようよ!」
「賛成」
ななが笑う。
「全力で応援します!」
こころも拳を握る。
「お兄ちゃんも手伝って!」
「俺もかよ」
「みんなで応援するんだよ!」
「二人きりにしたいんじゃなかったのか?」
「今度は邪魔しないから!」
「それなら何もしないのが一番だろ」
「そういう意味じゃない!」
響は少し考えた。
どうせ断っても巻き込まれる。
「……分かったよ」
「やった!」
「ただし、本当に邪魔すんなよ」
「分かってるって!」
その返事が一番不安だった。
――午後
「メロロン!」
部屋にプリルンの声が響く。
「何メロ……」
まだ少し拗ねているメロロンが振り返った。
プリルンは何かを抱えている。
「一緒に着るプリ!」
広げられたのは、小さな衣装。
キュアアイドルを思わせるデザインで、二人分用意されていた。
「これ……」
「うたたちが作ってくれたプリ!」
「お揃い……?」
「お揃いプリ!」
メロロンの目が輝く。
「それで、一緒にデートするプリ!」
「ねえたまから……?」
「プリ!」
「行くメロ!」
さっきまでの落ち込みはどこへ行ったのか。
メロロンはすぐに立ち上がった。
――はなみちタウン
お揃いの衣装を着たプリルンとメロロンが並んで歩く。
「ねえたま、かわいいメロ!」
「メロロンもかわいいプリ!」
「ねえたまの方がかわいいメロ!」
「二人ともかわいいプリ!」
「メロ……」
少し離れた建物の陰。
「いい感じだね」
うたが小声で言う。
「うん」
ななが頷く。
「心キュンキュンです!」
こころも声を抑えながら拳を握る。
その後ろ。
響は腕を組んでいた。
「なあ」
「何?」
「これ、応援じゃなくて尾行じゃねぇか?」
三人の動きが止まる。
「……見守りだよ」
「言い方変えただけだろ」
「響さん、声」
「俺が一番小せぇよ」
「来ます!」
こころが慌てて全員を引っ込ませる。
プリルンとメロロンが前を通り過ぎていった。
響は額に手を当てた。
何してるんだ、俺は。
やがて二人が向かったのは、町外れにある大きな木だった。
枝が大きく広がり、葉の間から光が差し込んでいる。
ハートの木。
その近くには、恋人同士の誓いにまつわる小さな看板が立っていた。
「ここメロ!」
メロロンが目を輝かせる。
「なな先輩が教えてくれたメロ!」
「大きな木プリ!」
「ここには伝説があるメロ」
看板を読む。
そこには、ハート型の錠前と鍵の絵が描かれていた。
二人で誓いを立てる特別な場所。
「ねえたま」
「プリ?」
「あとで一緒にやるメロ」
「分かったプリ!」
メロロンは満足そうに笑った。
少し離れた草むら。
うた達はそこから二人を見守っている。
「いい感じ!」
「うたちゃん、静かに」
「はい」
プリルンとメロロンは木の下へ座った。
メロロンが弁当を開く。
「ねえたま、何食べたいメロ?」
「タコさんウインナープリ!」
「タコさん……」
メロロンの動きが止まる。
「うたのお弁当にいつも入ってるプリ! 大好きプリ!」
「……咲良うた」
メロロンの目が細くなった。
草むらの中で、うたが肩を震わせる。
「何で私!?」
「だから声」
響が小声で注意する。
メロロンは気を取り直した。
「今度メロロンが作るメロ」
「楽しみプリ!」
食事を終える。
風が木の葉を揺らす。
メロロンは隣にいるプリルンを見る。
今度こそ。
「ねえたま」
「プリ?」
「ねえたまの一番大切なものって何メロ?」
プリルンが首を傾げる。
「メロロンは――」
一度言葉を止める。
「メロロンは、ねえたまメロ」
「プリ?」
「キラキランドが襲われたとき、すごく怖かったメロ」
メロロンは自分の手を見る。
「一人で逃げて、何も分からなくて……でも、ねえたまのことを考えたら、会いに行かなきゃって思ったメロ」
プリルンは黙って聞いている。
「昔から、一人でも平気だと思ってたメロ」
メロロンがプリルンを見る。
「でも、ねえたまが来てから、一人は嫌だって思うようになったメロ」
「メロロン……」
「だから――」
メロロンが一歩近づく。
「メロロンにとって、一番大切なのはねえたまメロ」
少し離れたところ。
「言った!」
うたが小声で興奮する。
「メロロン、頑張ったね」
ななが微笑む。
「ここからです!」
こころが見守る。
響は無言だった。
これをここまで真剣に見届ける必要があるのか。
疑問はある。
だが今さら帰るのも違う気がする。
「ねえたまの一番大切なものは何メロ?」
「プリルンの一番大切なもの……」
プリルンが考え始める。
メロロンが固唾を飲む。
そのとき。
「ブルッときたプリ!」
プリルンが勢いよく立ち上がった。
「今!?」
草むらからうたの声が漏れた。
「咲良うた!?」
「しまった!」
三人が飛び出す。
響も仕方なく立ち上がる。
プリルンは辺りを見回していた。
「真っ暗闇の気配プリ!」
メロロンの表情も変わる。
「デートについてきてたメロ!?」
「俺たちもついてきてたけどな」
「響さん!」
「事実だろ」
木の向こう側から人影が現れた。
「むふぉふぉふぉ……」
「カッティー!」
うたが前へ出る。
カッティーは三人を見るなり、一瞬だけ目を輝かせた。
「アイドルプリキュア……!」
「え?」
「ゴホン! ついに見つけましたぞ!」
響が眉を寄せる。
今、明らかに喜んでなかったか?
「今日は絶対に負けませんぞ!」
カッティーが手を掲げる。
闇が集まっていく。
巨大な宝箱のような姿をしたクラヤミンダーが現れた。
「クラヤミンダー!」
「みんな!」
うた、なな、こころがブローチを掲げる。
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと歌う、ハートのキラキラ! 笑顔ニッコリ、キュアアイドル!』
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと瞬く、ハートの勇気!
お目目パッチン、キュアウインク!』
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン キュアキュンキュン!』
『ウィアー! キミとアイドルプリキュア!』
響もポケットから死神代行証を取り出した。
身体へ押し当てると、魂が肉体から抜け出した。
黒い死覇装をまとった響は、背中の斬月に手を伸ばした。
「また四人ですぞ……」
カッティーが少し嫌そうな顔をする。
「悪かったな」
響は斬月を抜く。
クラヤミンダーが蓋のような腕を振り上げた。
「来るぞ!」
四人が散る。
クラヤミンダーの腕が地面を叩く。
アイドルが横から駆け込む。
『アイドルグータッチ』
拳が側面へ入る。
クラヤミンダーが傾く。
「ウインク!」
「うん!」
『ウインクバリア』
反撃の腕を障壁が受け止める。
「キュンキュン!」
「はい!」
『キュンキュンレーザー』
光が正面へ当たる。
響も一気に距離を詰めた。
「そこだ」
斬月を振る。
刃がクラヤミンダーの肩口を切り裂く。
だが、傷は再び闇に覆われていく。
「やっぱり俺じゃ倒しきれねぇか」
斬れる。
動きを止めることもできる。
だが闇そのものを消すことはできない。
なら、やることは決まっている。
「俺が動きを止める!」
「うん!」
クラヤミンダーへ向かおうとした、そのときだった。
カッティーがプリルンとメロロンを見る。
二人は戦うアイドル達を応援していた。
「アイドルー!」
「頑張るプリ!」
「負けないメロ!」
カッティーの顔が引きつる。
「……うらやましい」
「え?」
「何であの二人だけ、あんな近くで応援できるのですぞ!」
「何の話だ?」
響が思わず聞き返す。
「クラヤミンダー! あの二人を捕まえるのですぞ!」
「プリ!?」
「メロ!?」
クラヤミンダーが突然方向を変えた。
「プリルン!」
アイドルが叫ぶ。
宝箱の蓋が大きく開く。
闇がプリルンとメロロンを包んだ。
「ねえたま!」
「メロロン!」
二人の身体が宝箱の中へ吸い込まれる。
蓋が閉じる。
鍵がかかった。
「カッティー!」
アイドルが睨む。
「鍵はいただきましたぞ!」
カッティーが小さな鍵を掲げ、その場から走り出した。
「待って!」
アイドルが追おうとする。
しかしクラヤミンダーが前へ立ちはだかった。
「うた!」
響が呼ぶ。
「俺たちでこいつを止める!」
アイドルが一瞬迷う。
宝箱の中から声が聞こえた。
「ねえたま!」
「大丈夫プリ!」
ウインクが前へ出る。
「アイドル、鍵をお願い!」
キュンキュンも構える。
「ここは私たちで!」
「……分かった!」
アイドルがカッティーを追う。
響はクラヤミンダーへ向き直った。
「行かせねぇぞ」
巨大な腕が振られる。
斬月で軌道をずらす。
「ウインク!」
「うん!」
バリアが正面から押し返す。
「キュンキュンレーザー!」
光が脚へ当たり、クラヤミンダーが動きを止める。
その隙に響が踏み込む。
斬月を横へ振り抜いた。
クラヤミンダーの身体が大きく傾く。
「今のうちに宝箱を!」
ウインクとキュンキュンが二人の入った宝箱をクラヤミンダーから引き離した。
――少し離れた道。
「カッティー!」
アイドルが追いついた。
「な、何ですぞ!?」
「鍵返して!」
「嫌ですぞ! これは大事な――」
アイドルがじっとカッティーを見る。
「……」
「な、何ですぞ?」
「返して」
「近いですぞ!」
「お願い!」
カッティーの顔がみるみる赤くなる。
「う……」
アイドルはさらに一歩近づいた。
「プリルンとメロロンを助けたいの」
「……」
「ダメ?」
「……はいですぞ」
カッティーが鍵を差し出した。
「ありがとう!」
アイドルの笑顔を見た瞬間。
カッティーが固まる。
「キ、キラッキランラン……」
「?」
「何でもないですぞ!」
カッティーは顔を隠して走っていった。
アイドルは首を傾げる。
「何だったんだろ?」
考えている場合じゃない。
「みんな!」
急いで戻る。
宝箱へ鍵を差し込む。
蓋が開いた。
「プリルン! メロロン!」
「うたー!」
「ねえたま!」
二人が外へ飛び出す。
「大丈夫?」
「大丈夫プリ!」
「デートを邪魔されたメロ!」
「それは元気そうだね……」
クラヤミンダーが再び立ち上がる。
響が斬月を構え直した。
「話は後だ!」
「うん!」
三人が並ぶ。
響は一歩後ろへ下がる。
ここからは三人の役目だ。
ステージの光が広がる。
音楽が流れ始める。
三人は息を合わせて歌う。
クラヤミンダーを覆う闇が揺らいでいく。
プリルンとメロロンも並んで応援する。
「頑張れプリ!」
「頑張るメロ!」
三人の光が一つになる。
『プリキュア・ハイエモーション!』
光がクラヤミンダーを包み込んだ。
闇が薄れていく。
『キラッキランラン』
光が収まる。
クラヤミンダーの姿は消えていた。
「やったプリ!」
プリルンが飛び上がる。
メロロンも嬉しそうに笑った。
少し離れた場所では、カッティーが木陰から顔を出していた。
「やはり……まぶしいですぞ……」
誰にも聞こえない声で呟き、その場を去っていった。
響は斬月を背負い直す。
「……あいつ、本当に敵なのか?」
「敵だよ?」
「だよな……」
響はカッティーが去っていった方向を見た。
鍵を持って逃げたと思ったら、最後は自分から渡している。
「……敵としてそれでいいのかよ」
響は呆れたように息を吐いた。
もう考えるのはやめた。
――ハートの木
戦いが終わったあと。
プリルンとメロロンは、もう一度木の下へ座っていた。
今度はうた達も少し離れたところで普通に待っている。
尾行する必要もない。
「ねえたま」
「プリ?」
メロロンはさっき言いかけたことを思い出す。
「ねえたまの一番大切なもの……」
「あ!」
プリルンが顔を上げた。
「分かったプリ!」
「メロ!?」
メロロンが身を乗り出す。
「プリルンは、アイドルプリキュアにハートを撃ち抜かれたプリ!」
「……」
メロロンの動きが止まる。
「うたも、ななも、こころも大切プリ!」
「……メロ」
「メロロンも大切プリ!」
メロロンが顔を上げた。
「プリ?」
「メロロンも?」
「もちろんプリ!」
プリルンが笑う。
メロロンはしばらくその顔を見つめていた。
望んでいた答えとは少し違う。
いや。
かなり違う。
でも。
「今日は楽しかったプリ!」
プリルンがメロロンの手を握る。
「またデートするプリ!」
「……」
メロロンの表情が少しずつ明るくなる。
「するメロ!」
「プリ!」
「次こそ、ねえたまをメロロンにメロメロにするメロ!」
「メロメロプリ!」
「意味分かってないでしょ……」
うたが小さく呟く。
響も隣で頷いた。
「ああ。多分分かってねぇ」
「でも楽しそうだね」
ななが笑う。
「それが一番です!」
こころも笑顔になる。
メロロンはプリルンの手を握ったまま、ハートの木を見上げた。
その表情は、デートの最初よりずっと柔らかかった。
――その日の夜
部屋の明かりが消えたあと。
プリルンはすでに眠っていた。
「プリ……」
メロロンは隣でしばらく寝顔を見つめる。
「ねえたま」
返事はない。
メロロンはそっと布団を抜け出した。
鞄の奥へ手を入れる。
そこから、小さな宝箱を取り出した。
蓋を開く。
中に入っているのは――ハート型の錠前と鍵。
ハートの木の近くにあった看板。
そこに描かれていたものと、よく似ている。
「……」
メロロンはそれを両手で持ち上げる。
「伝説の……ハートキラリロック」
月明かりが錠前に反射する。
「これがあれば……」
メロロンは眠っているプリルンを見る。
「今度こそ、ねえたまを――」
そこで言葉を止める。
錠前を胸元へ抱き寄せた。
「……メロ」
その夜。
誰にも知られないまま、宝箱は再び閉じられた。
届かぬ刃に火を灯す
あの星を見ずに済むように
この
BLEACH/第11巻 阿散井恋次
キミプリの推しは?
-
咲良うた/キュアアイドル
-
蒼風なな/キュアウィンク
-
紫雨こころ/キュアキュンキュン
-
プリルン/キュアズキューン
-
メロロン/キュアキッス