キミとアイドルプリキュア♪~魂と輝き~ 作:Ryo02913
虚が響へ向かって腕を振り下ろす。
響はその動きを見切り、横へ身体をかわした。
地面に振り下ろされた腕を足場にして、響は巨大虚の身体へ向かって駆ける。
「こいつ……今までの虚とは違う」
斬月を両手で握り直す。
巨大虚の身体は大きい。それだけではない。響へ向けられる霊圧も、これまで戦ってきた虚とは比べものにならなかった。
それでも、響は退かなかった。
「ここで逃がしたら、また誰かが襲われる」
響は虚の懐へ入り込む。
振り下ろされた腕をかわし、そのまま斬月を振り抜いた。
斬撃が虚の身体を捉える。
しかし、虚は倒れない。
「まだ動けるのか……!」
虚が身体を起こす。
響は距離を取り、斬月を構え直した。
その一方で、キュアアイドル、キュアウインク、キュアキュンキュンの三人もマックランダーと戦い続けていた。
「キュンキュン、右!」
「はい!」
キュアキュンキュンがマックランダーの攻撃をかわす。
その隙を逃さず、キュアウインクが攻撃を仕掛けた。
マックランダーが後退する。
「今だよ、キュンキュン!」
「はい!」
キュアキュンキュンも続いて前へ出る。
三人の息が少しずつ合い始めていた。
こころにとっては、これが初めての戦いだった。
マックランダーが目の前まで迫る。
「来ます……!」
こころは身構える。
マックランダーの腕が振り下ろされる。
こころはとっさに横へ飛び、その攻撃をかわした。
「危なかった……」
息を整える間もなく、マックランダーが再び距離を詰めてくる。
こころは後ろへ下がりながら、その動きを見つめた。
「ただ避けているだけじゃ……駄目」
うたとななが戦っている。
二人はマックランダーの動きを見ながら、互いに攻撃の隙を作っている。
こころも二人に合わせなければならない。
「私も……!」
こころはマックランダーへ向かって踏み込んだ。
攻撃を受け止める。
腕に力が伝わり、身体が後ろへ押される。
それでも、こころは踏みとどまった。
「負けません……!」
こころはマックランダーの腕を押し返し、そのまま距離を取る。
「今です!」
こころはマックランダーの動きが止まった瞬間を見逃さなかった。
うたとななの攻撃によって生まれた隙へ入り込み、自分も攻撃を繰り出す。
攻撃がマックランダーに届く。
「当たった……!」
自分の力が敵に届いたことに、こころ自身が驚く。
けれど、驚いている暇はない。
マックランダーが再び立ち上がった。
「まだ……終わってない」
こころは拳を握り直す。
怖い。
それでも、ここで逃げたくはなかった。
父親と向き合ったあの日から、自分の気持ちは少しずつ変わっていた。
好きなものを好きだと言いたい。
そのために、自分も戦えるようになりたい。
「私は……みんなと一緒に戦う!」
こころは再びマックランダーへ向かっていった。
一方、うたは戦いながらも、何度も響の方へ視線を向けていた。
「お兄ちゃん……」
そこにいるのは、これまで自分を何度も助けてくれた死神。
そして、その正体は自分の兄だった。
うたは今までの出来事を思い返す。
初めて虚に襲われた夜。
突然現れた死神。
自分を守るために戦ってくれた姿。
その声。
そして今、目の前で斬月を握って戦っている響。
「やっぱり…」
うたは確信していた。
そのとき、虚が再び響へ向かって動き出す。
「来る……!」
響は斬月を構えた。
虚の腕が迫る。
響はその攻撃を受け流し、身体を低くして懐へ入り込む。
斬月を振り上げ、虚の腕を斬りつけた。
虚が腕を引く。
「今だ!」
響はさらに踏み込んだ。
虚の攻撃をかわしながら、その身体へ何度も斬撃を与えていく。
しかし、虚は倒れない。
響の額から汗が流れる。
「こいつ……硬すぎる」
響は息を整えながら、虚を見つめる。
斬月を握る手に力を込めた。
そのとき、背後から声が聞こえた。
「お兄ちゃん!」
響が振り返る。
そこにはキュアアイドルが立っていた。
「うた……?」
「大丈夫?」
「ああ。まだやれる」
響はそう答える。
うたは兄の姿を見つめた。
以前なら、目の前にいる死神が誰なのか分からなかった。
けれど、今は違う。
「私も一緒に戦うよ」
「無茶するな」
「お兄ちゃんだって無茶してるじゃん」
響は一瞬、言葉を失った。
その言葉に、うたらしさを感じた。
「……そうだな」
響は小さく笑う。
「なら、気をつけろよ」
「うん!」
二人はそれぞれ虚へ向き直った。
その様子を、少し離れた場所からキュアウインクとキュアキュンキュンが見ていた。
「アイドルが話している人って……」
キュアウインクが響を見る。
「知り合いなんでしょうか?」
キュアキュンキュンも不思議そうに首を傾げる。
しかし、二人には響が誰なのかまでは分からない。
ただ、ななには響の姿が見えていた。
以前なら見ることのできなかった死神の姿。
響の影響によって目覚めた霊力が、その姿を捉えていた。
「……あの人、普通の人じゃない」
ななはそう呟いた。
キュアアイドルと死神。
その二人が並んで戦っている。
ななはその光景に、何か特別な繋がりを感じていた。
虚が二人へ向かって迫る。
「来るよ!」
「分かってる!」
うたが構える。
響も斬月を構えた。
虚が腕を振り下ろす。
うたは身体を横へかわし、響はその反対側へ移動する。
二人が同時に虚の左右から攻撃を仕掛けた。
響が虚の身体を斬りつける。
その直後、うたの攻撃が虚へ命中する。
虚の動きが止まった。
「今だ!」
響は斬月を構え直す。
斬月を握る手に力を込める。
まだ自分が何者なのか、完全には分からない。
それでも、今は目の前にいる虚を倒すことだけを考えた。
響は虚へ向かって駆ける。
虚の攻撃をかわし、その懐へ入る。
そして、斬月を振り抜いた。
斬撃が虚の身体を深く捉える。
虚が大きく後退した。
響は追撃する。
しかし、その瞬間、巨大虚の霊圧が一気に膨れ上がった。
「何だ……?」
響が足を止める。
虚の身体から、さらに強い霊圧が放たれる。
うたもその異変を感じ取った。
「お兄ちゃん、気をつけて!」
「分かってる!」
虚が再び響へ向かってくる。
響は斬月を構え、正面から迎え撃った。
力と力がぶつかる。
響の身体が後ろへ押される。
それでも、足を止めない。
「こんなところで……負けるか!」
響は斬月を押し返す。
虚の腕を弾き、そのまま身体を斬り裂いた。
虚の身体から霊子がこぼれ始める。
響は最後の一撃を放つため、斬月を構えた。
「これで……終わりだ!」
斬月が振り抜かれる。
虚の身体を斬撃が通り抜けた。
虚はその場で動きを止める。
やがて、その身体が霊子へと変わっていった。
響は斬月を下ろす。
「……終わった」
静けさが戻る。
うたは兄のもとへ駆け寄った。
「お兄ちゃん!」
「うた」
「大丈夫?」
「ああ。怪我はない」
響はそう答えた。
うたは安心したように息を吐く。
「よかった……」
そのとき、少し離れた場所からななの声が聞こえた。
「キュアアイドル! こっちも終わったよ!」
振り返ると、マックランダーもすでに倒されていた。
キュアウインクとキュアキュンキュンもこちらへ向かってくる。
「あの時の…人…ですよね?」
こころが声をかける。
「ああ」
響は頷いた。
こころは響の姿を見つめる。
黒い着物
巨大な刀
そして、今まで何度も自分を助けてくれた死神。
「やっぱり……」
こころは何かを言いかける。
しかし、うたがそれを止めるように首を横へ振った。
まだ、ここで全てを話す必要はない。
響も同じことを考えているようだった。
戦いが終り、死神の状態からいつもの姿へ戻った響は、少し離れた場所にいる三人を見る。
「今日はもう帰るぞ」
「うん」
うたが頷く。
こころとななもそれぞれ頷いた。 四人はその場を後にする。
けれど、響とうたの間には、これまでとは違う空気が流れていた。
うたは響が死神であることを知った。
響もまた、うたがキュアアイドルであることを知った。
それでも、まだ何も話してはいない。
家へ帰る道の途中、うたは何度も兄の方を見る。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「帰ったら、話したいことがある」
響は少しだけ驚いた。
けれど、すぐに頷く。
「ああ。俺も話したいことがある」
二人は並んで歩き続けた。
アイドルプリキュアとして戦う妹。
死神として戦う兄。
それぞれ別の力を手にした二人の運命は、今まで以上に動き始めていた。
もし わたしが雨だったなら
それが永遠に交わることのない
空と大地を繋ぎ留めるように
誰かの心を繋ぎ留めることができただろうか
BLEACH/第3巻 井上織姫
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