キミとアイドルプリキュア♪~魂と輝き~ 作:Ryo02913
家へ帰った響とうたは、リビングに並んで座っていた。
いつもなら何気ない会話をしながら過ごす時間。
けれど、今日は違う。
うたは何度も兄の顔を見ては、口を開きかけていた。
「……お兄ちゃん」
「ん?」
「今日のこと、ちゃんと話してほしい」
響は小さく頷いた。
「分かった」
うたの隣にはプリルンもいる。
そして、うたのアイドルハートブローチにはキラキランドの女王、ピカリーネの姿が映っていた。
「俺は死神になったみたいだ」
「なった……みたい?」
うたが聞き返す。
「ああ。正直、俺自身もよく分かってない」
響は手を握る。
死神として戦う力。
斬月という名前を持つ刀。
そして、虚を見たときに感じる、説明できない違和感。
どれも自分の中にある。
けれど、それがどこから来たものなのかは分からなかった。
「戦い方とか、刀の使い方は分かる。でも、どうして俺がこんな力を持ってるのかは分からない」
『では、死神についても詳しくは……?』
ピカリーネが尋ねる。
「死神や虚について知っていることはある。でも、どうして知っているのかは分からない」
うたは兄の顔を見る。
いつもの響と変わらない。
けれど、昨日まで知らなかった力を持っている。
「じゃあ、あの怪物は?」
「虚」
響はその名前だけは迷わず口にした。
「虚は、人間の魂を襲う存在だ」
「魂を……?」
「ああ。普通の人には見えない。けど、霊力を持っている人間なら見ることができる」
うたは頷く。
「だから私にも見えたんだ」
「そういうことだと思う」
響は続ける。
「ただ、あの虚がどうしてこの世界に現れたのかまでは分からない」
『それは、私たちキラキランドにとっても重要な問題ですね』
ピカリーネの表情が真剣になる。
「俺もそう思う」
響は少し考えた。
「少なくとも、偶然現れているとは思えない」
「どうして?」
「虚が何度も現れている。それに、うたたちが戦っていた怪物とは明らかに違う」
響はこれまでの戦いを思い返す。
しかし、そこから先へ進もうとすると、頭の中に何かが引っかかった。
「……」
「お兄ちゃん?」
「いや……何でもない」
一瞬だけ感じた違和感。
それ以上は何も思い出せない。
響は話を続ける。
「今は、虚が現れたら俺が戦う。それしかない」
うたは少し心配そうに兄を見る。
「無理しないでね」
「ああ」
「絶対だからね」
「分かってる」
プリルンが横から顔を出す。
「響は無茶しそうプリ」
「お前まで言うのか」
「昨日も無茶してたプリ」
「……」
響は黙り込む。
「ほら」
「何が『ほら』だ」
うたが笑い始める。
「やっぱりお兄ちゃんだね」
「何がだよ」
少しだけ空気が和らいだ。
数日後
学校の昼休み。
うたとななの前に、こころがやって来た。
「二人にお願いがあります!」
「お願い?」
うたが首を傾げる。
こころは両手を胸の前で握った。
「もっとアイドルプリキュアのことを研究させてください!」
ななが少し驚いた顔をする。
「研究……ですか?」
「はい!」
こころは真剣だった。
「私は今までずっと、アイドルプリキュアのことを調べてきました。でも、これからは実際に一緒に戦う仲間です。だから、もっと二人のことを知りたいんです!」
うたは嬉しそうに笑う。
「もちろんいいよ!」
「本当ですか!?」
こころの目が輝く。
ななも頷いた。
「私もいいですよ」
「ありがとうございます!」
こころは勢いよく頭を下げた。
その日の放課後、三人はお泊まり会をすることになった。
うたの家。
夕食を終えた三人は、うたの部屋に集まっていた。
こころはカメラを構えている。
「では、まずキュアアイドルの写真を……」
「えっ、今撮るの?」
「もちろんです!」
その前に、響からななとこころへも死神について説明することになった。
「死神……ですか?」
ななが驚いたように聞き返す。
「うん。お兄ちゃんは死神になって、虚っていう怪物と戦ってるの」
うたが説明する。
響も頷いた。
「俺が使っている刀は斬魄刀。名前は斬月だ」
「斬月……」
こころが興味深そうに呟く。
「そして、死神代行証を使うことで死神になれるみたいだ」
「なるほど……」
ななは真剣な表情で話を聞いていた。
「じゃあ、響さんは私たちが見えないところでも、ずっと戦っていたんですね」
「ああ。虚が人間を襲えば、俺が戦う」
「私たちも一緒に戦います」
ななが静かに言う。
こころも頷いた。
「はい。私もです!」
「……無茶はするなよ」
「それは響さんもですよ」
こころが返す。
「……」
響が黙る。
うたが笑った。
「お兄ちゃん、また言われてる」
「お前まで言うな」
少しだけ笑いが広がった。
そして、こころは再びカメラを構える。
「では、改めて研究を始めましょう!」
「切り替え早いな……」
響は呆れたように呟いた。
うたが変身する。
「キュアアイドル!」
続いてななも変身する。
「キュアウインク!」
こころは二人の姿を見つめると、次々に写真を撮っていく。
「右を向いてください!」
「こう?」
「次は手を上げて!」
「こうかな?」
こころの撮影は止まらない。
その様子を見ていたプリルンが首を傾げた。
「こころ、何でそんなに写真を撮るプリ?」
「実はですね……」
こころが取り出したのは、二人をモデルにした手作りのマスコットだった。
「この子たちの衣装を作りたいんです!」
うたとななは顔を見合わせた。
「すごい……」
「これ、全部こころが作ったの?」
「はい!」
こころは嬉しそうに頷く。
「だから、もっと細かいところまで見たいんです」
響は部屋の外からその様子を見ていた。
「……研究って、そういう意味だったのか」
「お兄ちゃん、いたの?」
うたが振り返る。
「いや、声が聞こえたから」
こころが響を見る。
「そういえば、響さんの『断る』」
即答だった。
「まだ何も聞いてませんよ?」
「顔に書いてある」
「そんなに分かりやすいですか?」
「分かりやすい」
「残念です」
こころは本当に残念そうだった。
「何でそこまで研究熱心なんだ……」
響は呆れたように呟く。
ななが小さく笑った。
「こころちゃんらしいですね」
そのとき、こころが思いついたように顔を上げる。
「そうだ!」
「何?」
「私も一緒に撮りたいです!」
こころもキュアキュンキュンへと変身する。
三人のプリキュアが並ぶ。
こころは嬉しそうにポーズを決めた。
「これで三人です!」
プリルンも隣に並ぶ。
「プリルンも一緒に撮るプリ!」
「もちろんです!」
しかし、写真を撮り終えたあと。
プリルンだけが少し寂しそうにしていた。
「……プリルンだけ、おそろいじゃないプリ」
三人はその言葉に気づく。
「プリルン……」
うたが近づく。
「ごめんね」
「ううん。プリルンは大丈夫プリ」
そう言いながらも、どこか寂しそうだった。
こころはその様子を見つめていた。
「……」
何かを考えているようだった。
翌朝。
こころはプリルンを連れて、朝のダンス練習へ向かっていた。
「プリルンも一緒に練習しましょう!」
「プリルンも踊るプリ!」
二人が練習していると、突然マックランダーが現れた。
「また出た……!」
『プリキュア! ライトアップ!
キラキラ、ドレスチェンジ! YEAH!
キミと~! YEAH!
一緒に~! YEAH!
キミと踊る、ハートのリズム! 心キュンキュン キュアキュンキュン!』
こころはキュアキュンキュンへ変身する。
マックランダーの動きを見ながら、こころは一人で立ち向かった。
「今度は、私が守ります!」
しかし、マックランダーの力は強かった。
こころは攻撃を受け、後ろへ下がる。
「まだ……!」
そのとき、うたとななが駆けつけた。
「こころ!」
「大丈夫です!」
二人も変身する。
三人のプリキュアが揃った。
「一緒に戦おう!」
「はい!」
三人はマックランダーへ向かっていく。
うたとななが敵の動きを止め、こころがその隙を狙う。
「今です!」
こころが前へ出る。
しかし、マックランダーの攻撃が迫った。
そのとき、プリルンが声を上げる。
「キュンキュン、がんばれプリ!」
こころの胸に、恐怖がよぎる。
それでも、プリルンの声を聞いたことで、もう一度前を向いた。
「ありがとう、プリルン!」
こころは踏み込む。
三人の力が重なる。
マックランダーは浄化され、キラッキランランの光へと変わっていった。
戦いが終わる。
こころはプリルンへ駆け寄った。
「プリルン、ありがとう」
「プリルンは応援しただけプリ」
「その応援が嬉しかったんです」
こころは笑った。
部屋へ戻ると、こころは一つの袋をプリルンへ渡した。
「これ、プレゼントです」
「プリルンに?」
中に入っていたのは、プリルンの身体にぴったり合うポシェットと、キュアアイドルとおそろいの衣装だった。
プリルンの目が輝く。
「プリルンのために作ってくれたプリ!?」
「はい」
プリルンは嬉しそうに衣装を身につける。
「どうプリ!?」
うたが笑顔になる。
「すごく似合ってる!」
ななも頷いた。
「かわいいです」
こころはカメラを構える。
「では、最後に一枚!」
プリルンは胸を張ってポーズを決めた。
「キラッキランランプリ!」
その姿を見て、うたたちは笑った。
部屋の隅では響もその様子を見ている。
「……平和だな」
「何か言った?」
うたが振り返る。
「いや」
響は小さく笑った。
「こういう時間も悪くないと思っただけだ」
プリキュアとして戦う妹。
死神として戦う兄。
そして、新しい仲間たち。
笑顔に包まれた日常の裏側では、虚を生み出す何者かの影が少しずつ近づいていた。
けれど今はまだ、その影を知る者は少ない。
この日、うたたちはいつもの日常を過ごしていた。
そして、響もまた、その日常を守るために静かに歩き始めていた。
ぼくたちは ひかれあう
水滴のように 惑星のように
ぼくたちは 反発しあう
磁石のように 肌の色のように
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