そこに痺れる、憧れる
『異能』
それはこの世界に突然生まれた、神の祝福、或いは、悪魔の呪い。
2000年の末、ある時、ある場所で、突然人間が発火する事件が起きた。
『人体自然発火現象』というものがあるが、その類いと思われていたその事件を皮切りに、人が凍りつき、人が空へと飛び上がり、人が爆発起こし──明らかに異常な現象が次から次へと起こり始めた。
そしてそういった超常現象が次々と起こる中、超常現象を起こし死亡した人間を調べた結果、体内に異常な機関が作られていることが判明。
無論、それその人だけに限らず、異常現象を起こした人々は身体の何処かに何かしらができており、DNAや細胞と言った身体を構成するものは人間に近しいものへと置き換わっていた。
そして遂に判明する。
それは突然変異によって生まれた、細菌によるものであると。
即ち、病気の一種であると。
故に元々の病原菌に耐性を持つ人間には異常現象が芽生えず、元より耐性のない人間がそういった力を持つようになっていった。
判明した最初期は差別や、芽生えた異常による暴走、殺人事件などと言った、力に振り回され、力を振り回し、そしてそれを指さして恐怖する人間による、混沌とした時代が訪れた。
だが次第に、人々は力の扱い方を学ぶと、それを『異質』な『才能』として扱い、こう呼ばれるに至る。
──『異能』と。
さて、異能による時代の混沌は終わり、遂に人々は異能を支配下に置く時代が訪れた。
16歳までに発現する事が判明した異能。
人々はそれを正しくかつ、暴走しないように扱えるようにするため、取り扱い方を学ばせるようにし、普通に生きていけれる時代を作った。
異能が発現した少年少女は各国で政府からの監視を受け、16歳になるまで抑え方の手ほどきを受けながら、ある『学園』への入学を強制させられる。
それが異能者養成学園、通称『異学』。
世界中の異能者が集まる学園都市だ。
16歳以降はここでの生活を強制させられ、大人になるまでの3年間で異能の正しい使い方を学ぶ。
それが異能に目覚めた者の義務だ。
……長々と異能について話したが、『俺』は異能が好きだ。
好き、というのは些か違うか。
こう言うと不謹慎だと言われるが『憧れて』いる。
異能が一般化する前はそういった漫画やラノベがあったものだが、異能が世界に浸透してからは禁書扱い。
今となっては多少は緩和されたものの、それでも未だ読めるものは少ない現代。
父親が根っからのオタクだったこともあり、そういった本をかき集めて秘密裏に保管していたのを見つけた俺は、その本たちを覗いてしまった。
かっこよく戦う主人公、可憐に力を操るヒロイン。
そういった『幻想』の世界に囚われた俺は、最も身近な特別な力である、強大な『異能』に憧れてしまった。
兎にも角にも、憧れてしまったんだ。
だから──こんな日が来るなんて、思いもしなかった。
「君、異能に目覚めてるね」
「へ?」
「今はまだ微弱だけど、いつ大ごとになるかわかんないから、早いうちにもっと大きな病院行ったほうがいいね。紹介状出しておくから、早めに行くんだよ?」
中学3年生のある日。
なんとなしに受けた身体検査でそう言われてしまった。
お医者さん曰く、『体内に見慣れない臓器がある』とのことで。
見慣れない臓器かぁ、と多少の不安などはあったが、それでも憧れの力を手に入れていた俺は、密かな興奮の中で大病院に検査をしてもらうことに。
結果。
「うん。君の能力は
これである。
「まじですか」
俺ははっきりと『強くない』そう言われてしまい、真顔でそう答えちゃったわけだ。
ある意味、憧れへの否定とも言える言葉に、思いっきり落胆してしまった俺は、能力管理機関の職員さんから能力の手解きを受けながらも、今までと変わらず平凡な日々を過ごすことに。
とは言え。
いくら弱くても俺は異能持ち。
学園への入学は義務付けられている。
そして今日。
中学を卒業して春休みを終えた俺は、飛行機へと乗っている。
何故かって?
理由はシンプル。
学園都市は日本から東に行った、地図にも載ることはない海上。
人口の足場と共に並び立つ建物と施設。
北太平洋、そのド真ん中にある都市。
名前を『エクス・サーベーション・シティ』。
通称『ExSs(エクサス)』。
そこが、俺が今日から3年間、異能の扱い方を学ぶとともに、過ごすことになる海上・学園都市の名前である。
さて。
改めてになるが、俺のことについて話そう。
俺の名前は
所有する
体内に生まれた新たな臓器により、体内で電気を生み出す事ができる異能だ。
生まれた電気は溜め込むことで、身体のありとあらゆる部位から放出したり、電子機器に使うことで充電を回復させたりできるし、こう聞いてみれば、かなり万能よりかつ強力な能力なように聞こえるだろう。
だが聞こえるだけだ。
実際は俺の放電能力は──
ちょっと痺れる程度、