交流戦、俺は約1ヶ月に及び凄まじい酷使を受けた。
フロントと高中監督は約束通り神のお告げとかわけわからない理由で帰国した外国人助っ人を解雇して、アメリカの2軍とも言うべきAAA(トリプルA、メジャーの下部リーグ)で活躍していたビンソンという投手を獲得してきたのだが、こいつもすっげぇ地雷投手だった。
イニングイーターって入ってきたのに日本の夏に適応できずに6回でスタミナ切れを起こすし、成績もよいとは言えなく、ローテに割り込む前に、2軍で幽閉されてしまった。
というか野手外国人2人が比較的当たりだったばっかりに、1軍登録の関係で、野手の2人を降ろすことができず、ビンソンと一緒に取ってきた期待されてなかったイギリス出身のロビンソン・カス投手ことロビカス投手の方が活躍する有様。
ロビカス投手は日本大好きだし、21歳の若手。
日本語もペラペラだったので、俺も直ぐに仲良くなり、交流戦終盤から一緒に過ごすことが多くなっていた。
『大久保、今日も投げるんですか?』
「投手の人数足りてないからな。交流戦優勝がかかっているから、監督も気合入っちゃってさぁ……」
『一昨日完投して、昨日少林寺が火だるまになってましたが、終盤に逆転したは良いけど投手不足で大久保が抑えやってましたよね? で藤寺がアクシデントで大久保がスクランブルでロングリリーフして勝投手に……で、今日も完投って大久保化け物ですか?』
「実は宇宙人に改造手術を受けたサイボーグでして……」
『おう! 漫画の主人公でしたか! でも本当によく壊れませんね』
「頑丈に産んでくれた両親に感謝だよ」
ロビカス投手とは仲良くなり、せっかくだからと、俺の負担軽減も合わせて、直感でロビカスに合ってそうな変化球を数種類教えてみた。
「ロビカス、一緒にキャッチボールやろうぜ」
『いいですよ!』
と、キャッチボールに誘って、ボールを投げ合っている時に、プロ同士でも変化球を教えたりするのはリスクが伴うので推奨されてないけど、助っ人外国人だし、数年後には居なくなるロビカスだったらいっかと思って色々実験をしてみることに。
投手コーチには一応ロビカスとバディー組みたいって言ったら了承されたので、色々行動を一緒にした。
ロビカス中継ぎだから基本毎日球場に来ているのでちょうどいいし。
「ロビカス、この握りで親指に力をかける感じで投げてみてくれない?」
『わかりました!』
キャッチボールをしながら教えたら、その球は俺が思っている以上に鋭く曲がり、ロビカスの投球に合っていたっぽい。
「いいじゃん。後でブルペンで投げてみれば?」
『はい! これは使える変化球デース!』
その数日後にロビカスはその球を実戦投入したら、面白いようにバンバン三振が取れる。
ロビカスは元々打たせて捕るピッチャーだったが、三振が取れる高速シンカーを覚えたことで、投球の幅が広がり、投球が安定。
シンカーを覚える前が防御率3点台だったのが、シンカー覚えてから1点台前半にまで落ち着き、ファンからも当たり外国人として認識されることに……。
「ロビカスさぁ、これも覚えてみる?」
『これは?』
「スローカーブ。ロビカスには合ってると思うんだよね」
ついでに合ってそうなスローカーブも教えたら、緩急も合わさって、更に投球の幅が広がっていた。
交流戦が終わってから、ロビカスはうちのチームのクローザー(抑え投手)に高中監督は抜擢して、守護神として活躍することになる。
俺は一緒に練習しただけであるが、こういう風に教えれば、投手が大化けするって感覚をなんとなく覚えながら、チームメイトの日本人投手達を見ながら、あの選手はここを改善すれば伸びるなぁ、あの選手にはこの変化球を覚えれば化けるなぁみたいなシミュレーションをする選手観察が趣味になるのであった。
ちなみにロビカスは抑えとして活躍してヒーローインタビューでスローカーブとシンカーを覚えられたのは大久保のおかげって素直にゲロったことで、ファンから大久保選手兼任投手コーチ待望論という馬鹿げたスレタイが乱立することになるのだった。
【交流戦終了】高中監督今年の名采配、迷采配で打線組んだw
交流戦ヤクエナキャッツ成績
13勝4敗1引き分け(大久保8勝)
交流戦1位 優勝
セ・リーグ順位
1位猛虎イエローズ
2位東京ジャイアンズ
3位ヤクエナキャッツ
4位中部日本ノブナガーズ
5位神奈川スターズ
6位広島ハンズ
交流戦2位の猛虎イエローズが首位を独走。
4ゲーム離れてジャイアンズとヤクエナキャッツが1ゲーム差で首位争い。
2ゲーム離れてノブナガーズが後を追う形。
そんな交流戦を終えた段階で高中監督の印象深い采配で打線を組んでみた。
1番 中 大久保限定火薬庫
大久保投手の驚異の奪三振能力によりファイヤーフォーメーションを組むことが可能になったことによって生み出された最強打線。
普段DHの4番ペロスをライトに、空いたDHに肩の古傷の影響で守備に就けない代打の切り札である森本を置き、セカンドにもサービスエリアと称される守備難の酒蔵をスタメンに組み込むことで、恐怖の打線を形成。
お陰で大久保の平均援護点(打線が1試合に何点援護できるかの指標)が、6点を超えて、圧倒的な勝率を生み出す要因となっている。
2番 二 寺門5番固定
どんなオーダーでも寺門を5番に固定したことで、寺門の勝負強さで打点を量産。
交流戦終了時点で60打点を稼ぎ、シーズン120打点ペースである。
本塁打のペースは落ちてしまったが……。
3番 一 先発大久保全完投
大久保のガソリンタンクっぷりを示すエピソード。
現在先発で20試合出ているが、延長戦になろうが大久保に完投させることで、不足気味の中継ぎに週2日(月曜の試合のない日を合わせると週3日)休養日が設けられることで、(大久保以外の)連投を強制回避。
夏場で消耗戦が始まるがそれを耐え切れるか。
4番 三 大久保大久保雨大久保
大昔の投手に遠藤、遠藤、雨、遠藤という登板をさせられた投手がいたが、それにもじられて上記のフレーズがネットで揶揄されたが、実態は大久保4連投。
高中監督の狂気とも言われる投手運用で、被害を受けた船橋マリーンズのファンは絶望を味わうことに。
というのも、大久保投手が普通に先発完投して1勝を勝ち取ったが、続く試合に投手をつぎ込みすぎて、投手不足に陥った高中監督はあろうことか昨日完投した大久保投手を抑えで起用。
これで大久保投手は初セーブを記録。
そして続くマリーンズ第3戦では藤寺投手が1回に投手ライナーを直撃して緊急降板し、1回途中から、昨日抑えをした大久保投手がロングリリーフを敢行。
流石に7回までであったが、ちゃんと勝利投手となってマウンドを降りていた。
マリーンズ地獄の3戦を終えて、次の日の仙台イーグルスも何故か登板し、4連投。
この試合も普通に完投して全野球ファンをドン引きさせていた。
4日目の完投した日にはネット掲示板が鯖落ちした。
5番 左 大久保中2日ローテ
交流戦前までは中3日ローテであったが、交流戦から中2日ローテに間隔が狭まり、交流戦でパリーグ全球団が大久保の被害を受けることに。
普段はパリーグの方が交流戦が強いことが多いが、大久保という災害のお陰でリズムを崩して、セリーグが今年は圧勝。
一番被害を受けた船橋マリーンズの交流戦成績が悲惨なことになっていた。
6番 右 使われ続ける少林寺
イニングイーターができるということで、大久保の次に投げさせられている大卒新人の少林寺投手。
防御率は5点台後半、勝敗も2勝6敗と悲惨なことになっているが、先発投手不足の結果、交流戦が終わってもローテで投げさせられ続けている可哀想な人。
7番 遊 高中マジック
高中監督が偶にやる特殊采配。
大久保4連投もそうだが、打率1割の守備固めの選手を代打に出してサヨナラ勝ちを勝ち取ったり、ギャンブルスタートの奇策を使って得点を得たりしていて、大久保の起用を除けば少ない戦力で勝利を拾う采配をしている。
焼け野原の様な投壊(投手壊滅)状態で大久保を犠牲に捧げて2位にいれるのは高中マジックが炸裂しているからである
8番 捕 ロビカスの当たり
采配というよりフロントが久しぶりに頑張った。
というより打線の要のペロスとレフト守ってるグラスノーの2人が野手として当たりだったが、獲得する投手は殆どが外れを引く中、期待されていたビンソン投手の付属品として獲得してきたロビンソン・カス投手が当たり。
交流戦序盤では登板3試合連続失点を記録してしまったが、後半に覚えた高速シンカーで覚醒。
ロングリリーフもできるスタミナもあるため、便利屋として数日起用された後に、交流戦最終盤では抑えを任されるに至る。
なおシンカーとスローカーブを教えたのは大久保の模様。
9番 投 戦術大久保
とりあえず大久保をぶつければ勝てる為、最近雑な起用になり始めているが、交流戦で大久保は22勝を達成。
中2ペースで投げ続けるのであれば、勝利数が50勝を超えるペースである。
というか交流戦から解禁したライズボール、ライトアッパー、レフトアッパーという3種類の魔球により、打者はボールを当てることがほぼ不可能となってしまった。
上方向に曲がる球を当てる為にはダウンスイングをしなければならず、そんなことをして当てても、ダウンスイングなのでろくに飛ばない。
現代野球で理想とされるレベルスイング(水平スイング)がVの字で曲がってくる大久保投手の変化球は天敵過ぎて、まず当たらないのである。
結果、交流戦9試合登板して全打者三振というキチガイ記録を達成。
それが休みなく投げてくるので戦術大久保と言いたくもなる。