春大会、一番能力的に活躍できたのは加速するボール……ターボボールだった。
投げた瞬間からボールを少し押し込む感じで力が加わる為、ボールが伸び上がるように打者から見れるのだろう。
140キロ前後の直球とターボボール、あと時々のフォークで三振の山を築くのであるが、コントロールがまだ課題がある。
荒れ球というかストライクゾーンのど真ん中に投げ込むと、いい感じに球が散らばるので今は良いけど、これをちゃんと四分割くらいには投げ分けられるようにならないと……。
先輩キャッチャーが捕球が上手いお陰で、俺のボールは後ろに逸らさないけど、俺の同期にターボボールを捕球できる奴居ないからな……ましてや今開発中のライズボールや急変化する横や斜めの魔球も取れないだろうし……。
春大会は一応シード権を確保するところまでは勝ち進む事ができ、俺は無失点ピッチングを続けることができた。
「やったね大久保!」
清水さんが声を掛けてくる。
とりあえず夏の甲子園予選が2回戦からのシードが取れたから、今年こそはもう少し上……甲子園に手が届くくらいまで勝てればいいなぁと思いながらも、うちの打線じゃぁ強豪校のピッチャーは打てないからなぁと若干達観していた。
顧問も甲子園に行けるかは俺の超能力次第だと断言。
まあ普通の公立高校が甲子園に行くなら俺みたいにインチキ使うか、優秀な指導者が現れるしかないのだろうが……。
そして夏の大会までの期間……ライズボールは捕手が捕れない問題が出てきていたので、新しい魔球の開発を開始した。
清水に協力してもらい、マウンド(投手が投げる場所)からバッターボックス付近の距離に計量器とボールを置いてもらい、マウンドから念力をすることで、ボールの重さを重くしようとしたのである。
瞬間的な質量の増加。
これができればバッターは遠くに飛ばすことができなくなる。
バットに当てることができても飛ばないのであれば、内野の守備でカバーすることができるからである。
夏の大会までにものにできたのはボールの質量を1.1倍にすることしかできなかった。
効果はあるとは思うが、パワーのあるバッターなら、これでも吹き飛ばしてしまうだろう。
できれば2倍まで重さを増やせればよかったのだが……。
あとはシャドーピッチング……清水さんにビデオで撮影してもらって、投球フォームの再現性の向上に務めた。
変化球がチェンジアップ以外超能力由来が殆どなので、投球の癖は他の投手ほど少ないけど、内角のボールを投げ込む際に、足の踏み込み角度が内側を向くのがバッターからだと見えるとか細かい癖の修整も行い、夏の大会が始まる。
最初の数試合……強豪校でもなければ、ターボボールを投げ込んでいけば、バッターは目測を誤ってボールの下を振り続けて三振の山を築き、バッターが2巡目、3巡目で、ターボボールに慣れてきたら、普通のストレートを混ぜると、面白いように打ち損じのゴロを量産する。
去年先輩がやられた4回戦も勝ち進んだが、俺は監督が7回85球までの投球制限をかけていたので、毎試合7回でマウンドを降りる。
だいたい1回の守備で、俺は12球前後投げるため、7回で85球前後となる。
早打ちしてくれた試合では、7回60球いかなかったのもあったけど、あれは気持ち楽だった。
質量を上げるグラビティボールが実戦段階まで上げることができれば、投球数が減らなくて済むと思う。
ベスト16決定戦……この日俺はいつものように投球をしようと、練習に入ったが、違和感を感じた。
(やべ……絶不調だ)
超能力がほぼ機能しない絶不調状態……。
練習でも殆ど起こることは無いけど、2ヶ月から3ヶ月に1日、そんな日が来てしまう。
それが今日だった。
監督にその事を話すと、試合展開によるけど、2番手や3番手で準備しておいてくれと言われた。
強豪校ではないうちは戦力が乏しい。
超能力が使えなくても、MAX145キロ投げられる投手は十分に戦力だし、伸び上がる球という情報は相手校に伝わっている筈だから騙し騙し使えば打者1巡は騙せるだろうというのが監督の考えっぽい。
先輩方に体調不良で申し訳ないと謝ったが、先輩方はここまで勝ち進めたのは大久保のおかげだから気にするなと、逆に励まされてしまった。
試合が始まり、いつも俺の後ろで投げてくれた先輩が1番手として投げてくれたが、ベスト16まで勝ち進んでくる高校なだけあって普通に打たれるし、打線もなかなか点が入らない。
先輩方2人は必死に投げ抜いて8回3失点。
一方打線は1点しか取ることができなかった。
最終回に俺が投げることになったが、2安打打たれて四球を1個出して満塁のピンチを作るが、全力で投げたストレートを打者は打ち損じて、ピッチャーゴロ。
ホームに投げて、1アウト、キャッチャーが1塁に投げて2アウトのホームゲッツーが成立。
なんとか無失点で切り抜けられた。
ただ9回の裏……うちの打線は沈黙し、結果3対1でうちのチームは敗退。
2年夏は県予選ベスト32という結果で終わるのだった。
夏の大会が終わり、新チームが始まると、俺はエースナンバーの1番を顧問から預けられた。
「大久保……今年はお前のチームだ。全部の試合で投げ抜くつもりでいけ。中堅校でプロに行くなら圧倒的な成績が必要だからな。良いな!」
「はい!」
夏の大会で手応えは感じた。
課題は幾つもある。
コントロールにスタミナ……あと超能力が使えなくても使うことができる変化球をチェンジアップ以外にもう1球種……。
顧問はそれでカットボールという球を教えてくれた。
「大久保、カットボールは良いぞ。肘の負担がスライダーの比じゃないほど少ない。お前の場合超能力があるから、すこしの変化を更に大きく曲げることができる。超能力を使わなくても、ストレートとほぼ同速のカットボールを投げ込めれば、打者はなかなか打てないからな」
「はい!」
それにライズボールとグラビティボールの2種類の魔球の習得……。
やるべきことは多い。
俺は残りの時間を更に精度を上げるために頑張るのであった。
「むむむ……」
死ぬ気で頑張れば超能力の拡張ができるというのはわかったから、俺は未来視とか占いとかそういう能力が分からないか……というのを試していた。
打者が狙っている球とかを危険予知なんかができれば更に強く成れるからだ。
清水に協力してもらって、トランプを使ってハイアンドローや神経衰弱を手伝ってもらった。
勿論1人でやってもいいのだが、清水がいた方が色々捗る。
「清水は高校卒業したらどうするんだ?」
「どうしよっかなー大久保のお嫁さんって言ったら?」
「別に良いけど、俺野球くらいしかできないぞ?」
「じゃぁ、野球ができなくなっても支えられるように、私大学に行って色々勉強しようかな」
「俺もプロ行けなかったら大学かなぁ……」
「じゃぁ勉強いっぱいしないとね」
「うへ……」
そんなことを言っているが、俺の勉強成績はそこそこはできる。
逆に清水はうちの学校でも常に上位の成績を取っていて、良い大学に行けるだろうと先生方からも言われていた。
「じゃぁハイアンドロー」
「ドローじゃないか?」
清水がペラっとめくる。
「正解! これで6回連続正解……なんか掴んだ?」
「いや、まだ直感の域を出てないな。もう少しやらないと」
「頑張ろうね!」
秋の県大会は無事勝ち進み、地方大会に進出。
ここでも俺の超能力は冴え渡り、夏負けてからコントロールの練習を重点的に行なったこと、カットボールを覚えたことで、投球の幅が広がって、超能力を温存しながら投げ進めることができるようになった。
まあ超能力は100球は投げられるようになったけど、9回最後まで投げ抜くとなると100球は早打ちをするチームでもなければ超えてしまうので、節約できるところは節約しないと。
あと超能力を使うピッチングをしている時に体力をあまり使わなくても投げられる投球フォームを夏の間に顧問と一緒に改良することに成功し、お陰で長いイニングをなげても元気いっぱいで過ごすことができた。
超能力もすこし進化しているらしく、残暑の暑さを超能力で体温を涼しくできる技も身につけた。
夏の大会では滅茶苦茶暑くて大変だったのでこれはありがたい。
地方大会では3試合連続完投完封を達成して、春の甲子園の出場の枠を手に入れることはできた。
ただ神宮大会には途中で負けたので、残念ながら進む事が出来なかったが……。
地方大会の成績が良かったため、顧問からプロスカウトと接触があったと俺に報告があった。
どこの球団か聞いてみると、ヤクエナキャッツという神宮球場を本拠地とする、飲料メーカーが母体となっている球団だった。
「東京に本拠地があるし、2軍施設や選手寮が新設されたばっかりだから、寮生活は過ごしやすいんじゃないか? まあ、今は候補の1人として見られているだけだ。ここから活躍すれば更に接触が来るようになると思うが……下位指名でもプロに成れるんならプロに成りたいんだろ? 大久保は?」
できれば成りたい気持ちが強い。
地方大会で強豪校を抑える感触を掴めてきたところだ。
「よし、スカウトの人と連絡は取り合っておく、そのうち非公式に接触の場を設けるかもしれないが、その時は気持ちを素直に伝えるんだぞ」
「はい!」